大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年12月25日(金)9:32~9:56於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日はこれで年内最後の記者会見になりますけど、改めて1年間お世話になりました。よろしくお願いします。今日は、環境省関連の閣議案件はありませんでした。また、冒頭、私からは今日は2点あります。1点目が地球温暖化対策推進法の見直しの検討会の取りまとめ、そして、2点目が今年1年間の振り返りをさせていただければと思います。
 まず、地球温暖化対策推進法の見直しについて御議論いただいていた検討会について、今週月曜日の検討会での議論を踏まえて検討結果が取りまとまったので、本日報告いたします。この検討会では、11月から4回にわたって、地球温暖化対策推進法の見直しの方向性について、自治体や事業者からもヒアリングを行いつつ、様々な観点から御議論をいただきました。大塚座長、高村座長代理をはじめとする委員の皆さまに心から感謝申し上げるとともに、経産省をはじめオブザーバー参加いただいた皆さまやヒアリングに御対応いただいた皆さまなど、すべての関係者に御礼を申し上げたいと思います。検討結果の取りまとめのポイントは3点あると考えています。一つが温対法により脱炭素社会の実現をけん引していくべくパリ協定の2度、1.5度目標や脱炭素社会の実現を法に位置付けるとともに、2050年カーボンニュートラルについても法に位置付けることを検討すべき、これが1点目です。二つ目がゼロカーボンシティを含めた地域の脱炭素化のため、再エネの地域資源としての活用促進に向けて、地域の合意形成を促し、事業実施を円滑化する仕組みを構築すべきというもの、そして、最後の3点目が、国に報告される排出量情報のデジタル化、オープンデータ化により、投資家、自治体、消費者などによる活用可能性を高め、事業者の脱炭素経営を促進すべきというものです。環境省としては、今回の取りまとめでお示しいただいた制度的対応の方向性も踏まえ、来年の通常国会への法案提出を目指し、地球温暖化対策推進法の見直しの検討を更に加速していきたいと思います。これが1点目です。
 そして、2点目は、今年最後の記者会見ですから、1年を振り返って私の思いを申し上げたいと思います。この1年の成果を一言で表すなら、三つの風穴を空けたということだと私は捉えています。特に三つの風穴というのは、三つのCとも言えると思っています。一つ目のCは、コール、石炭です。そして二つ目のCがカーボンニュートラルのC、三つ目のCがカーボンプライシングのCと、こういった三つについて、一言ずつ少し語れればと思います。まず、一つ目のCですけど、今年1月にブンアン2、あの記者会見で問題提起をして以降、一気に様々な動きが出まして、環境省なりのファクト検討会、そして、最終的にはインフラ輸出戦略の中で、海外への公的支援は原則しない、そして、梶山経産大臣によって国内のフェードアウト、そしてさらに、今日は、一部の報道では、今後、海外、ODAも石炭を支援しないというような報道もありますが、いずれにしても、この石炭についての政策の風穴が空いたということが、今、振り返っても、あれは今年の1月だったのかと随分前に感じるぐらい、振り返ると思いがいろいろ沸き上がってきます。そして、二つ目は、やはり菅総理になってカーボンニュートラル宣言が行われたこと、このことによって一気に産業界の動き、企業の動き、そして政治の世界では政策の動き、急速な展開を見せています。こういったことからしても、今までもカーボンニュートラル宣言を早くやるべきだと訴えてきた立場として、この宣言によっての一つの時代を早めたというか、ようやくこの遅れを取り戻した、こういった思いを強くしています。改めて菅総理の政治的リーダーシップに感謝をしたいと思っています。そして、最後に三つ目のCのカーボンプライシング。このカーボンプライシングについても、この1年が始まるときに、ここまで来れるとは想像もしていなかった方が多いと思います。私自身もそうでした。経産省と一緒になって総理と指示を受けて、今後丁寧な議論をしながら、成長に資するカーボンプライシングの設計図を描くことになります。こういった年末の最後の週に大きな動きをカーボンプライシングについても一歩踏み出すことができたこと、1年間、私は、とにかく職員の皆さんのおかげだと思います。石炭の問題提起をするときも、今年の初め、省内でも激しいやりとりがありました。そのときからこの12月を比べたときに、本当に私の思いと職員の思いを一つにまとめてきて、一つにまとまったことが政策の推進力に変わってきたというふうに思います。今日はこの後、午後には国・地方の会議が初めて官邸で開催されますが、こういったロジを担う若手の職員を含め、本当に職員の皆さんが頑張ってくれたおかげで、この1年間、三つの風穴を空けることができたと思います。来年、環境省を挙げて一丸となった取組が更に政策の前進につながるように頑張っていきたいと思います。特に来年は環境庁発足から50年、そして環境省に格上げになって20年、そして東日本大震災から10年と、それぞれの政策についても非常に大きな節目を迎えますので、来年1年間も頑張っていきたいと思うので、皆さんにもまたよろしくお願いしたいと思います。今日は、冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)毎日新聞の鈴木です。幹事社から一点です。冒頭で大臣から発言があったとおり国・地方脱炭素実現本部の初会合が本日官邸で開催されます。今後どのような議論をこの場で進めていくのか、スケジュール感も含めてお聞かせください。
(大臣)まず、この国・地方脱炭素実現会議の意義は、環境省として官邸の会議や事務を担う、そこに私は思いを持っています。それは何を考えているかというと、環境省の政策を環境省だけがやっているのではなくて、環境省の政策を政府全体として運んでいくと、ここに強い思いを持って、総理にも所信表明の中で、国と地方の新たな場という形で触れていただいたのも、私からお願いして、そこに思いを込めたということもあります。今、最終的に今日の1回目に向けて詰めをやっていますが、この中では、ポイントは、2050年まで30年間時間があるのではなくて、この5年、10年が勝負だという、こういった認識を関係の省庁、そして政府全体、また、地方自治体とも共有をすること、そのために5年間の集中期間を設けて、その中で先行的にカーボンニュートラルを実現する地域を生んでいく政策を徹底的に動員していく。そして、イノベーションは大事ですが、いつ市場に投入できるか分からないイノベーションだけに期待を持つことなく、イノベーションに逃げ込むことのない、今の政策の強化と今の技術を徹底的に社会に実装していく、こういった思いで進めていきたいと思います。そのことによって、早く先行的なカーボンニュートラルの実現地域を生むことで、日本全体に脱炭素ドミノを起こしていきたい、そんな思いでやっていきたいと思います。今、事務方の方からも、各省の思いとか自治体側の資料とか、そういったことも拝見をしていますが、この国・地方脱炭素実現会議でなくては実現できないことに専念をしたいと思っています。つまり、自治体と連携しなければ実現できない政策、そして、各省と連携しなければ実現できない政策、こういったところに重きを置いて、この脱炭素実現会議を来年5月、6月、こういった年央に向けて、成長戦略や骨太、こういったことの動きも見ながら、この国・地方脱炭素実現会議も運んでいきたいと、スケジュール感としてはそういうことです。

(記者)テレビ朝日の藤原です。冒頭の温対法についてお伺いしたいのですけれども、今回、検討会で取りまとまった結果を見て、大臣の中でこれが一番意義があるなという思いのあるものがあれば教えてください。
(大臣)まず、3点、今日お話ししましたけど、それぞれに非常に重要な3点だなと思うんですけど、1点目の2050年カーボンニュートラルを法律に位置付けるべきだと、これは私はものすごく重要だと思っています。特にそこに閣議決定という一内閣の決定ではなく、法律という、より政策の継続性を担保する、こういう法的根拠を持たせるというこの方向性は、国内外に対して日本のカーボンニュートラルの決意、政策の継続性、信頼性を知らしめていくためには非常に重要なことだと思うので、今、事務方も最終的な詰めを法制局等ともやっていただいていますけど、そこをしっかり私としても思いを持って進めていきたいというふうに思っています。そして、二つ目の再エネを地域で導入を進めていくためには、地域の合意形成を促す仕組みが必要だと。これも非常に重要なので、こういったことも、私としては、再エネの理解なくして再エネの普及拡大はありませんから、最近特に地域で再エネの導入に対する反対の声なんかも出ているところもありますから、改めて地域の合意形成を促すような仕組みというのが重要になってくると思います。そして、3点目についても、今までだったら情報開示請求をして初めて出てくるようなデータ、こういったものを情報開示請求抜きに、最初からオープンにデータを開示していくことで、投資家の皆さんからも、企業の情報などを分かりやすく世の中に知らせることで、頑張っている企業が、前向きな取組をやっている企業に投資、融資、こういったものが集まっていく。結果としてESG投資を促していく、こういったところも重要なポイントだと思っています。

(記者)共同通信の田井です。昨日からの政治の動きを1点確認も含めてお伺いしなければいけないと思って、今日、安倍前首相が国会に対して説明されるようですし、昨日も記者会見されておられますけれども、今回の桜をめぐる問題について、どのように説明して、国民の理解を得ていくべきだと思われるでしょうか。
(大臣)まず、前総理が説明責任を果たされる、そういった問題だと思いますので、昨日御本人から記者会見をされ、今日は国会でということだと思います。そういった中で、少しでも国民の皆さんの政治全体の信頼回復につなげていく形になることを期待します。

(記者)NHKの吉田です。話が少し変わるのですが、福島の関連のことについて伺わせてください。今日持ち回りで原子力災害対策本部が開催される予定と伺っておりまして、この中で復興再生拠点区域自体のことも土地利用等、避難指示の解除の方針について議論がなされるというふうに事前に伺っているのですが、区域外のところの解除方針をめぐっては、これまでも除染をせずとも、土地利用の観点から考えて、有効なところは除染をせずに避難指示を解除するということが検討されていたかと思うのですが、改めてこうした事故から10年目を迎えようとする中で、こうした除染についての方針ですとか考え方が変わってきているなと感じる部分があるのですが、環境省として、これから除染にどういうふうに向き合っていこうとお考えでしょうか。
(大臣)まず、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う住民の皆さまの健康に係る安全と安心の確保は、震災からの復旧・復興の重要な柱の一つだと認識しています。今回決定した内容は、特定復興再生拠点区域外の帰還困難区域にある土地の活用に向けた避難指示解除とそれに関する仕組みを提示したものであると承知しています。環境省としては、それらの区域を往来する住民の皆さんの安全・安心のための放射線防護対策の一環として、住民の皆さまに寄り添って、健康面での不安を払拭できるように、放射線リスクコミュニケーション相談員支援センターの活動などを通じて、誠心誠意取り組んでいきたいと思います。また、除染についてのお話がありましたけど、やはり大事なことは、自治体、双葉郡の中でも8町村、それぞれの思いがあります。そういった中で、一つ一つの自治体の声を丁寧に聞いて、その自治体にとっての最善は何なのか、それと同時に、やはり私は最終的に双葉郡全体が一丸となって復興に取り組んでいくということが大事だと思いますから、一つ一つの自治体に対する丁寧な対応に加えて、8町村全体で一丸となって取り組む、そういった中での機運をしっかり高めていかなければいけないと、そんなことも感じています。

(記者)日刊工業新聞の松木です。冒頭の発言の中で、いつ投入できるか分からないイノベーションに逃げ込むのではなくて、今ある政策の強化の実装をしていきたいという発言があったと思います。今までも一部の企業であったりとかNGOから、イノベーションのような言葉遊びではなくて、今ある政策を導入してほしいという提言とかがいろいろ出ていたと思います。大臣がこの発言に触れたのは初めてではないかなと個人的には思っていまして、もしこの発言をされた意図等があれば教えていただければと思います。
(大臣)言葉としては、そういった表現を私は以前もしていたかもしれないなと思うんですけど、去年のCOP25でもそう思っていました。国際社会の受け止めは、日本の技術に対する評価は高いです。ただ、一方で、イノベーション、イノベーションとは言うけども、目の前の政策の野心的なものがあまり出てこないということに対する批判があったと思います。つまりイノベーションに逃げるなという声です。まさに総理がカーボンニュートラルを宣言して以降、一部の声として、まるで30年時間があるかのような、そういう受け止めや発言があることを私は懸念しています。全くそれは勘違いです。むしろこの5年、10年で、いかに政策の強化を図れるかが2050年のカーボンニュートラルの実現の可否を決定付ける、その思いを持っています。ですから、間違いなくイノベーションは不可欠です。ただ、イノベーション一本足打法はあり得ない。そういった思いをこの国・地方脱炭素会議では共有することで、とにかくこの5年、10年が勝負なんだと、そこにいかに政策の強化をするかという意思を共有できる場にしたいと思っています。それが結果として来年のCOP26に向けて、追加情報を提出するという方向を3月に提出したNDCの中に書いてあるわけですから、来年も様々な大きな動きがありますが、そこに向けてもこの5年、10年だという意思を共有することが、結果としていい追加情報を国際社会に提供できることになると思います。

(記者)毎日新聞の鈴木です。フリーのジャーナリストの横田一さんから質問が届いているので、幹事社が代表してお聞きしたいと思います。小泉純一郎元首相は、脱炭素と脱原発を同時に進めるべきだと北海道寿都町での講演で発言していることへの受け止めと、菅首相に脱炭素と脱原発を同時に進めましょうと進言する考えはないのか。既に提言をしている場合は、そのときのやりとりの内容を教えていただきたいと。もう1点質問がありまして、立憲民主の枝野代表が菅政権のエネルギー政策について脱炭素にかこつけた原発推進と批判していることへの受け止めや反応があれば教えてください。
(大臣)まず、再生可能エネルギーの導入をいかに引き上げていくかという意味では、ここは内外、そして与野党、変わらない思いだと思います。そして、この前、国会で衆参ともに、しかも与野党ともに決議で気候変動政策の強化ということが非常事態決議で表されたものは、まさにここにおいての政治的対立はないということだと思います。エネルギー政策について、来年のエネルギー基本計画の見直しに向けて様々な議論があると思いますが、まさにそれは再生可能エネルギーの導入比率をどこまで引き上げられるか、このことがその他の電源構成についても大きな影響を与えますから、私としては、再生可能エネルギーをいかに高く実現できるか、具体的には2030年の倍増、これを目指して、環境省として全力を尽くしていく、そういったことに尽きると思っています。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。国・地方脱炭素実現会議のことですけれども、首相官邸の会議として位置付けられて、環境省が仕切るというと大変なことだと思いますけれども、もう一つこの会議の狙いといいますか、そういうのが見えてこないのですけれども、どういう成果を期待するのか。あるいは国と地方とのパイプというか、意思疎通の図り方の手段はいろいろほかでもあるわけですよね。まして環境省は温暖化対策計画で地方の計画を作るということもあるので。菅総理も随分この会議にはこだわったようですけれども、どういうミッションと役割をこの実現会議に期待なさろうとしているのかその辺を伺いたいです。
(大臣)まずは一つ、先ほど触れたことに加えて補足をすると、この国・地方脱炭素会議でロードマップを提示していきたいと思っています。このロードマップは、単純に技術だけではなくて、地域の暮らしをどのように変えていくのかという、環境省が担う地域とライフスタイルの転換に基づくようなロードマップ、地域の暮らし、ライフスタイル版のロードマップであろうと思います。こういったものを、今日、全体の大枠というものを示していきます。こういったものが一つです。そして、併せて、エネルギー政策だけを変えて脱炭素社会の実現はない。地域の皆さんの中で、ゼロカーボンシティが9000万の規模まで膨れ上がってきて、もう200の自治体が宣言をするに至りました。こういった地域独自の取組を政府全体の取組とも組み合わせることによって、より政策の効果を高めたい。そして、頑張っている自治体が報われるような形を作っていく。そして、今日参加される一つの自治体は、何と再エネのポテンシャルが2000%という自治体が来ます。つまり、自治体の中での住民の皆さんの電力需要の20倍あるということなんです。そういう地域ってあるんです。だけど、ほとんど知られていませんよね。そして、環境省が屋久島なども再生可能エネルギー、既に99%だと、あと1%はこの数年で達成できると、我々は見ていますから、そういった地域の中で、もう既にそこまで来ていると。カーボンニュートラルは2050年に初めて実現できるのではなくて、国全体としては2050年までにということですが、地域で見れば、エリアで見れば、2050年どころかこの5年以内、そこで誕生させることができるということをちゃんと世の中にお示しすることで、そんな遠い先のことではない、もう目の前のことなんだ、こういう思いを伝えていきたいというのもあります。そして、何度も言いますが、環境省として官邸の会議の事務を担う、これは初めてのことだと思いますが、やはりそういった政権の中枢の中で政策を実現していく、各省と連携をする、こういったことは、政策をより国民の皆さんに発信する上でも、政府全体の理解を得るのも非常に重要な仕掛けですので、この場を作ることが、総理のバックアップもあって実現できたことに感謝しながら、あとは来年全体のこの会議を通じたよりよい政策の実現に全力を尽くしていきたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/piLHcFdURJk

(以上)