大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年12月18日(金)10:34~10:57於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日は、閣議では環境省関連の閣議案件はありませんでしたが、冒頭、私から3点いく前に、あしたから約1カ月間、エコライフ・フェアというものが開催されます。これは、今回コロナもありまして、オンラインで配信されます。そして、多くの関係省庁とも連携をしながら様々なコンテンツを載せていますが、私も環境省のアンバサダーのLiLiCoさん、そしてマシンガンズの滝沢さん、そしてアダストリアの福田取締役とライフスタイルのリデザインということで、主にファッションの世界のファッションロスの環境の課題についても対談、パネルディスカッションをやっていますので、よければ多くの方に、1カ月間、様々なコンテンツがありますので、御覧いただければと思います。また、昨日は国民会議もありましたが、よかったですね。様々な世代の方、そして産業界、また芸能界、そして企業、自治体、いろいろな方からそれぞれの思いの発信がありましたが、私としては、その場でもカーボンプライシングについても話が触れられたと、企業から前向きな発信もあったということがよかったことだと思います。それでは、3点いきたいと思います。1点目は断熱リフォームです。2点目が立入検査身分証の統合について、3点目が環境アセスについてです。
 まず1点目、断熱リフォームについてですが、カーボンニュートラルの実現には住まいの脱炭素化によるライフスタイルの転換が重要です。11月26日から開始している「みんなでおうち快適化チャレンジ」キャンペーンについては、特設ウェブサイトを立ち上げるとともに、ZEH支援事業の公募を開始したところです。また、関係団体でもホームページや機関紙を通じた発信などが行われています。このたびこれらの取組に加えて、12月15日火曜日から断熱リフォーム支援事業の追加公募を開始したのでお知らせします。戸建て住宅の窓などの改修に最大120万円の支援をして、先日、閣議決定した3次補正に先立って措置するものであります。この公募と3次補正をセットとして、切れ目ない支援を措置していきます。住宅の断熱性能向上による健康面などのメリットと併せて、環境省の支援メニューも積極的に発信することで多くの方に活用していただきたいと思います。1点目は以上です。
 2点目が、なかなか聞かないことかもしれませんが、立入検査身分証の統合、こういったテーマがあります。菅内閣は国民のために働く内閣を掲げており、環境省でも様々な規制について前例を打破して見直しに取り組んでいます。今般、愛知県から内閣府の河野行政改革担当大臣直轄チームを通じまして、環境省が所管する、又は他省庁と共管する法令に基づく県職員の立ち入り検査のための身分証が25種類もあるので、1枚、あるいは可能な限り少ない枚数に統合してほしい、そういう要望があり、年度内に対応すべく作業を進めることとしましたので、報告をしたいと思います。地方自治体職員が環境省所管法令に基づいて行う立ち入り検査については、1人の職員が複数の立ち入り業務を担うケースが多いです。このため、多い人では20枚を超える身分証を所持していることもあり、職員の異動時期の身分証の作成の負担が大きいと聞いています。また、職員が複数の法令に基づき立ち入りを行う場合に、複数の身分証を示すために時間を要するといった声もあります。このことから環境省では、共管省庁、共管省庁というのは経産省、国交省をはじめ何と12省庁ありますが、この共管省庁とも調整の上、自治体の意見も聞きながら、人事異動時期である来年4月から要望どおり1枚、あるいは可能な限り少ない枚数に統合した検査証が利用できるように省令改正の作業を進めていきます。これにより立ち入りを行う自治体と立ち入りを受ける事業者の業務の合理化、利便性の向上を実現していきます。これが2点目です。
 最後に3点目、アセスについてです。火力発電の脱炭素化について御報告をします。2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、再エネの主力電源化はもとより、火力発電のゼロ・エミッション化が必要不可欠です。この点を踏まえ、12月15日に株式会社JERAの知多火力発電所7、8号機建設計画、計画段階環境配慮書についての環境大臣意見を経産大臣に提出しました。本件は、菅総理の2050年カーボンニュートラル宣言以降、初めてのガス火力発電所設置計画に係るアセス手続きになります。これまでは、主に2030年度の削減目標を達成する観点から、石炭火力発電に対して厳しい対応を求めてきましたが、今後は2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく、石炭火力だけでなくガス火力発電に対しても、その目標と整合した対応を求めていくというのが大臣意見に込めた思いです。今回意見を提出したJERAの事業に限らず、電力業界には2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、更なる排出削減の取組を期待したいと思います。今日は冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)毎日新聞の鈴木です。今日は冒頭で発言があったアセスについて質問させてください。大臣がおっしゃったように、今後、同様の申請案件があったときに同じような大臣意見を出されるということだったのですけれども、すべからく同様のものにしていくのか、それとも今後更に文言を強めていかれるのか、その辺の御見解と、火力というと大体全体で電源構成が6割ぐらいあったと思うのですけれども、その中のガス火力と石炭に絞っている理由を教えてください。
(大臣)まず、総理のカーボンニュートラルの宣言を受けて、火力発電所に係る環境アセスの観点も大きく変える必要があると考えています。これまでの大臣意見では、主に2030年度の目標との整合性を求めてきましたが、今後は2050年までのカーボンニュートラルを実現する観点から必要な対応を求める、そういうことになります。火力発電所については燃料種に限らず、2050年までのカーボンニュートラルの実現という目標との整合性が図られるように検討を行うこと、これが一つ目、そして、水素やアンモニアの混焼、CCUSなどの火力発電のゼロ・エミッション化に向けた革新的技術などを追求すること、これが二つ目、この二つを求めていくことになります。環境アセスという政策ツールも活用して、電力業界全体の取組を促すことで、2050年までのカーボンニュートラル実現を確かなものにしていきたいと考えています。
(記者)火力全体に対して求めていくという理解でよろしいのでしょうか。
(大臣)そうです。

(記者)朝日新聞の戸田です。いつもカーボンプライシングのことについてで恐縮なのですけれども、昨日、大臣折衝後の会見でもお話があって、先日の会見でも来年の最大の目標ということでしたが、やはり注目度も高く、他省との調整なども発生してくると思います。そういう大きなイシューに取り組むに当たって、カーボンプライシングを具体化するために何かタスクフォースとかプロジェクトチームのようなもう少し手厚い体制を組むのかをお伺いしたくて、検討の体制やその拡充について今考えていることがあれば教えてください。
(大臣)必要な体制を構築していきたいと思います。それは、次官などとも話をしています。やはり御指摘のとおり、環境省にとってもこのカーボンプライシングは非常に重要な政策、代表的な政策の一つと考えていますし、この政策について非常に思いを持っている職員もいっぱいいます。一方で、これも御指摘のとおり、この実現のためには様々な関係者、ステークホルダーとの対話、これは欠かせません。ですので、丁寧にやる必要もありますから、改めて昨日は財務大臣にも、こちらの思いもお伝えをして、そして、昨日は国民会議の前に総理にお時間をいただいて、私と次官からカーボンプライシングについての環境省の今の現状の認識の報告と、年明けに議論を再開していく、こういったことの報告をして、総理からは、いいじゃないかと、梶山大臣とよく連携してやるようにと、そういったお話がありましたから、先ほど閣議のときに梶山大臣にお会いをしたので、少しそのことについてもお話をさせていただきました。今後も連携をして、この政策が少しでも来年前に進むように、間口を広げて懐深く議論をしていきたいと考えます。

(記者)NHKの吉田です。朝日新聞さんの重複にもなるかと思うのですが、昨日の閣僚折衝の方で、カーボンプライシングに関する部分について麻生大臣とどのようなやりとりがあったでしょうか、できる範囲で構わないので教えていただければと思います。
(大臣)私からは、昨日の大臣折衝は3点申し上げました。1点目が、環境省だけの政策や予算に対する要望ではなくて、政府全体として気候変動対策の予算を強化していただきたいと。それは世界の情勢を資料で示しまして、世界での気候変動対策に対する投資規模、そして政策の強化、これは今までとは異次元のスピードと勢いで進んでいること、それを示した上で日本にも強化が必要だと、そんなお話をさせてもらったのが一つ。そして、もう一つが福島の案件、これは復興に不可欠ですから。そして、三つ目がカーボンプライシング。このカーボンプライシングについては、今、世界でも多くの国々、地域が導入している、もしくは導入を検討している、そして、日本の国内でも東京、埼玉、そして多くの企業約170社ぐらいがインターナルカーボンプライシングを導入、もしくは検討している、こういった状況が今ありますと。いずれにしても、これから国境措置の様々な議論がある中で、議論は不可欠で、特に私からは1点、今まで記者会見で言っていることも紹介させていただいた一つが、石石税については階段があって、その階段の資料をお示しして、一番石炭が安くなっているということは、石炭をこれからどうやって使わなくなるかというインセンティブが働かない状況になっている。つまり脱炭素とは逆行する、そういった状況もあるので、こういった全体の方向に含めて価格インセンティブを脱炭素に向けて働かせると。カーボンプライシングの議論をしっかりやっていきたいということで、財務省の方としても連携を、ぜひ御理解をよろしくお願いしますと、そんなお話をさせていただきました。
(記者)なかなかファジーなことで恐縮なのですけれども、麻生大臣の方での感触といいますか反応みたいなものをどうお感じになったでしょうか。
(大臣)考えはよく承ったと、そんな感じです。

(記者)読売新聞の服部と申します。先日、経済産業省の事業なのですけれども、福島沖の洋上発電を全部撤去するということで、たしかタイプは浮体式だったと思うのですけれども、浮体式そのものが事業が難しいという、ある意味、誤解も広がる可能性もあると思うのですけれども、環境省として浮体式はかつて、今もやっているかもしれないのですけれども、事業を手がけられた経験もあると思うのですが、その辺、大臣のお考えをお聞かせください。
(大臣)まず福島沖のもの、これは経産省が設置した浮体式洋上風力発電でありますから、詳細は、まずは経産省にお尋ねをいただきたいと思います。一方で、水深が深い海域が多い我が国においては、浮体式洋上風力が再エネの中で最大の導入ポテンシャルを有していることは、我々も再エネポテンシャルマップなどでデータとして示しているとおりです。2050年カーボンニュートラルの実現には、日本の周りの急峻だが広大な海に眠る休眠電力の活用が重要です。つまり、浮体式洋上風力発電の導入を推進することが重要であることに変わりはありません。環境省は、2010年に長崎県五島市沖で実証を開始した浮体式洋上風力発電について既に実用化に結び付けています。この成果を踏まえて、浮体式洋上風力の普及拡大を含めて再エネの主力電源化を進めていきたいと思いますので、今回の案件が撤去されるということをもって、長崎県五島市のこの地元の漁業者も含めて大変歓迎をしている前向きな事業に対して一緒くたに扱われるような、そういったことは私はあってはならないと思いますし、昨日も国民会議でオンラインで出席をいただいた五島市長、今、五島市の再エネ比率は55%で、そして、これからこの浮体式洋上風力で80%まで持っていく、そして最終的には五島市をカーボンニュートラルにつなげていく、こういった方向で前向きに頑張っているところに何かマイナスな風評みたいなことはあってほしくないから、我々としてはしっかり、改めて五島市のPRをやっていこうというふうに思います。

(記者)産経新聞の奥原です。同じくカーボンプライシングについて伺いたいのですけれども、コロナ禍の経済状況の中で、炭素税の導入というのはなかなか国民負担を上げるという意味で厳しいのかなと、来年の税調案は通らないのではないかという指摘もありますし、排出量取引の方も経産省の方で産業競争力がそがれるという観点から結構、反発も想定されると思うのですけれど、いろいろな議論をしていけばいいと思うのですけれども、大臣はどの辺に焦点を絞っておられるのでしょうか。
(大臣)最大の焦点は、成長に資するかどうかです。これは梶山大臣も言っているとおり、成長に資するカーボンプライシングであれば検討の対象だと。しかし、成長に資さないものだったら検討の対象にならない。私も全く同感です。なので、カーボンプライシングには、よくカーボンタックスとトレード(取引)とありますけれども、私は最初から決め打ちすることはないと思っています。いずれにしても、一番大事なのはそれが成長になるのか。成長にならない制度を環境省が導入する、これはあり得ません。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。2点ほどありまして一つはカーボンプライシングに向けた各省庁の取組で、2兆円のファンドが設置されるということになっています。これは経産省のNEDOに運用、管理が行くと。一つの質問は経産省にファンドとか資金とかがある規模、行き過ぎているのではないかという具合に思っているのですが、対して環境省は事業的な面での対応が弱いのではないかと思っているのですけれども、それをどう感じておられるのか。もう一つは、今の話にも関係するのですが、カーボンプライシング実現のためには、地域の経済の活性化というのが非常に重要だと思うのですが、地域の経済、再エネもそうですけど、地域資源を使うとは言うものの、一体どういうものを環境産業として地域で興していって経済のプラスに結び付けるかというメニューといいますか、地域がそれぞれ違うわけですから、さっき洋上風力の話も出ましたけれども、こういうものは、環境省は前から言ってますけれども、環境産業ビジョンが必要なのではないかと。どういうものがありますよということを示すべきではないかと思うのですが、その2点をお願いします。
(大臣)まず、2点目について先にお答えをすると、まさに清水さんがおっしゃったような方向性をいかに形にしていけば、来週予定をしている国、地方、この脱炭素の会、この場では、まさに清水さんが今2点目におっしゃったところに当てはまるというふうに思います。今、その会議の運営を環境省が担っていますから、その1回目にどのようなものをお示しするか、関係省庁とも協議をしながら、官邸とも相談をしながらやっていますけれども、私からはこれ以上今お話をするのは控えますが、いずれにしても、清水さんの思い、そこはそこで出るものを見ていただくと、私は今の思いを反映されているものではないかなというふうに思っています。そして、1点目でありますが、予算については、清水さんおっしゃるとおり環境省の予算は他の省庁と比べたら規模が小さいと思います。大きい方がいろいろなことができるのは、それはそのとおりですが、私はより予算が欲しいとは思います。ただ、一方で、そこに環境省の資源を消費して頑張っても、伸ばせるレベルは私はある程度想定内だと思うんですよね。それよりも、環境省がもつ強みというのは何かといったら、やはり今回カーボンプライシングの議論を再開するといったように、世の中を変えていくための制度、そして規制、こういったツールを用いて地域と一緒になって世の中を変えていくこと、こういったところが環境省の強みだと思うんです。なので、予算は少しでも獲得できるように、大臣として職員の皆さんと一緒に汗をかきたいと思いますが、やはり限りある環境省の力の中でどこに一番力を集中すべきか、そういった観点からすれば、来週から始まる国、地方の場のように、地方自治体の皆さんと一緒にというところができることは、予算とは別に環境省の強みだと思うんですね。こういった強みをよく生かしていきたいと思います。

(記者)環境新聞の小峰です。昨日、17日に日本自動車工業会の豊田章男会長がオンラインで取材に答えていましたけれども、その中で、2030年代半ばに脱ガソリンということを経産省等が進めておりますけれども、これは自動車業界のビジネスモデルを崩壊させてしまうと非常に強い懸念を表明しました。小泉大臣が主導している2050年ゼロ目標に正面切って反対の意向を表明したようにも捉えられますが、小泉大臣の見解をお聞きしたいです。
(大臣)対立をあおる方がメディア的には面白いかもしれませんが、全くそんなことはないと思います。豊田章男社長の発言を一つ一つ読んでみると、非常に重要なポイントが、一部の分かりやすい見出しで私はかき消されたかなと思います。まず一つは、自工会として2050年のカーボンニュートラルを否定していない。そしてもう一つは、性急な脱ガソリンへの移行に対しての不安、懸念、そういったものは示されているかもしれませんが、移行に対して否定はしていない。そしてもう一つが、より再生可能エネルギーを導入できるように日本の社会を変革しなければいけない。じゃなければ、石炭などのCO2排出の多い電源によって生み出された電力でEVが走るということは、これは本末転倒だというのは全くそのとおりだと。なので、結論から言えば、いかに再エネを高めることができるか。豊田章男社長と頭は全く同じだと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/IPzcfJ6Q-AE

(以上)