大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和元年12月17日(火)9:47 ~ 10:25 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず、今日は、マドリードで開催されたCOP25、これに参加をして、所感というか、思いを改めて述べたいと思います。昨日、帰国をしました。今回のCOPには二つの大きな目的を持って臨みました。第1に、国際社会に必ずしも正しく理解をされていない日本の優れた取組や行動をしっかりとアピールすること、そして第2に、日本が重視する市場メカニズムの実施ルール交渉に積極的に貢献すること、この二つであります。第1の目的、発信につきましては、政府代表ステートメント、内外記者会見、各種のサイドイベント、各国大臣とのバイ会談やステークホルダーとの面会など、あらゆる機会を最大限活用し、温室効果ガス排出量を5年連続で削減したこと、これはG7の中でイギリスと日本だけであります。2050年までにネット・ゼロを宣言した自治体が28の数に上り、人口では4500万人となりまして、これはカリフォルニアを超え、そして、開催国のスペイン、4600万人ぐらいでありますけれども、そのスペインに迫るということ、そして、日本のTCFDの賛同企業、機関は212に上がり、これは世界1位であること、そして、SBTの設定企業もアメリカと1社違いということで、あと2社あれば世界一になること、また、RE100、この加盟企業の数も世界で3位、そして、TCFD、SBT、RE100、これら全てアジア1位であること、こういったこともしっかりと発信することもできましたし、経団連が脱炭素、チャレンジ・ゼロ、これを表明をしたこと、この経団連のサイドイベントにも出席し、こういったことも、ともに発信をすることができました。つまり、今、日本は国としてカーボンニュートラル、これを表明していて、また、企業もゼロカーボン、そして自治体もゼロカーボン、そして、経団連という産業界もゼロカーボン、こういった形で、脱炭素という流れ、これが進んでいるということも、私はしっかり伝わったのではないかと思っております。更に、我が国のリーダーシップによるイニシアチブとして、フルオロカーボンイニシアチブ、これは、フルオロカーボンというのは日本ではフロンと言われますが、海外ではフルオロカーボンです。フルオロカーボンのライフサイクル全体にわたる排出抑制対策を国際的に展開していく、このイニシアチブを立ち上げたとともに、G20でまとめた海洋プラスチックごみに対する大阪ブルー・オーシャン・ビジョンをG20以外の国々とも共有したことは、今後に向けて大変意義のあることだと思います。ちなみに、フルオロカーボンにつきましては、今回、日本が化石賞ということもありましたけれども、フルオロカーボンについては日本が海外にフルオロカーボン賞をあげてもいいぐらい、世界でフルオロカーボンについて何らの目標、ターゲットも設定していない、そういった設定がない国が100カ国以上でありますから、今後、私はこの重要性が年々大きくなっていくと思います。1秒間で10台のエアコンが今後30年にわたって売られていく、それとともに大気中にHFCが放出されていく、そういったことを考えたら、これは本当に重要性が年々高まっていく取組ではないでしょうか。そして、私が大臣就任直後に参加表明をした炭素中立性連合、このイベントが今回開催されて、ニュージーランド、そしてマーシャル諸島、そういった脱炭素化をけん引する野心の高い閣僚たちとともに出席することができたのも大きなことでしたし、これは関係のメンバー国からも、日本が参加してくれたことに対する感謝、そして評価、これが寄せられたところでもあります。また、先月に北九州で開催された日中韓三カ国大臣会合で、私からこれらの国々に対しても炭素中立性連合への参加を呼び掛けたところ、これに韓国の趙明来(チョ・ミョンレ)長官も応じてくださいまして、今回の炭素中立性連合のイベントに、韓国の、この長官も参加をされたと。そのことを炭素中立性連合の中心のプレーヤーであるトゥビアナさんからは、日本が、「Recruiting a friend」という表現をしていましたけれども、友達を誘って、この炭素中立性連合を更に広げてくれたことに対する心からの感謝がありまして、そしてまた、この取組は素晴らしいと、これからみんなで、まさに他のメンバーもリクルートを日本のようにやっていこうと、そういった発言もありました。また、この呼び掛けに対しては、韓国の趙明来長官から私に対する感謝の意も発言をしていただいたということを、私が退席した後に伺いました。このように、脱炭素に向けた仲間の輪を日本自身が広げていると、そういったことが私は今回の国際社会に対しても伝わったプラスの面だと思います。
 第2の目的であります交渉への貢献については、160件超のプロジェクト実績がある2国間クレジット制度、これはJCMといいます。JCMの経験を生かし、市場メカニズムの実施ルールに関する交渉を主導しました。私自身、交渉の妥結に向けて、会合終盤に各国の大臣や国連事務総長、そして条約事務局長との協議を何度も繰り返しました。会合期間中に、議長を務めるチリのシュミット大臣とは6回、そして12の国およびEUの大臣や代表と延べ23回、そしてグテーレス国連事務総長と3回、エスピノサ条約事務局長と2回、30回を超えるバイ会談を行いました。特に、交渉の鍵を握っていたブラジルのサレス大臣とは、多分数えると相当な数だと思いますが、2人だけで何度も腹を割って協議を繰り返しました。その結果、日本の主張、これは相当調整、ダブルカウント防止などを含む実施指針の案を作成することができました。もしも日本の、この交渉の中での調整の努力、貢献がなければ、会合終盤の議長や各閣僚間の粘り強い調整は行われなかったと断言できますし、実際、最後の閉会をする会合では、多くの国から日本への謝意を示されました。また、私も最後、閉会の会合では発言をさせていただきましたが、その後に温かい拍手を会場からいただいたことも、私は日本の交渉団の努力に対する評価の表れだと思います。また、何度も腹を割ってお話をさせていただいたブラジルのサレス大臣からは、終了後に、心からの率直な議論ができてよかったと、温かいメッセージをいただきました。来年のCOP26、これはグラスゴーで行われる予定ですが、交渉を継続することになりました。今回、各国の大臣と膝詰めで議論をして、お互いの立場や主張の理解が進みました。今回構築した人間関係、そして、この調整の中で得た議論の積み上げというのが、必ず来年のCOP26で合意に至る上で生きると私は確信をしています。最後になりますけれども、この交渉を豊富な知見、そして、緻密なデータ、これをもって全力で支えてくれた環境省をはじめ、経産省、外務省、農水省、国交省、この日本の交渉団の貢献、献身的な御尽力に私は心から感謝をしています。この交渉団、日本の努力は、私は日本の宝ですと、心から胸を張って世界に対して誇れる仲間だなと今回思いました。そういう一団とともに国際社会に対して日本が発信すべきこと、交渉の中での貢献、これをともに闘うことができたこと、これは私にとっても最大の財産の一つだなと、一生忘れることのない濃密な、充実した、そんなCOPだったと私なりに振り返っても感謝をしています。私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)幹事社のTBSの守川です。COPの成果について、今、大臣からお話をいただき、大変よく分かりました。厳しい話で恐縮ですが、課題についてお伺いしたいと思います。パリ協定の実施ルールづくりの合意を断念したという全体の課題もありましたし、来年に再提出する排出削減目標の水準引き上げも義務化というところまでは至りませんでした。大きな意味での課題も目についた会議であったと思うのですが、この課題についてどのように受け止められておられるのか、解決に向けてどのように取り組まれるのか、というのが1点で、もう1点が、大臣が現地で、石炭火力の対応の問題について、あえて批判の渦中に飛び込んで、これだけ批判されているんだということを日本に伝えることが大事なことだと思うという発言をされました。世界の現実について、あえて厳しいこともショック療法的に日本全体に伝えて、解決に向けていくんだというメッセージだと思うのですが、この件について、日本に帰ってこられて、大臣の狙い通り伝わっているか、どのように感じておられるかということについてお伺いしたいと思います。
(大臣)まず、後段のところについては、まさに私、COPに、昨日までいて帰ってきたばかりなので、国内の報道というのをほとんど知りません。ただ、相当、この石炭について、そしてまた化石賞については報道があったというふうに聞いています。そういったことを考えれば、まず石炭について、ここまで報じられること自体が、私は今の日本が置かれている状況や、今後、日本が気候変動対策についてどのように向き合っていくべきかということを国民全体で理解し、共有していくという面では、大変大きいことだと思っています。こんなに石炭は大きなファクターになっているのというのが、率直に日本の中ではあるんじゃないでしょうか。私は、そこの部分も含めて意義があると思いますし、また同時に、化石賞に対しては、より正確な理解を広げるスタートにしたいと思いますね。これはまず、毎日表彰されます。そして、今回、あまり日本では報道がそこまでなかったんじゃないかと思いますが、アメリカは総なめでしたね。こういうことの表彰の仕方があるんだと思ったのは、ある1日は、1、2、3位、全部アメリカという、そんなことがあるのと。多分、日本は、そういったことまで、総なめまでなかったんですよ。2回受賞したけれども。一方で、私は、世界の国で100カ国以上が、日本が既にやっているようなフロン対策、フルオロカーボン、これをやっていないんですよ。そのことに対しては言われない。私、これはおかしいと思うので、だから、現地でもぶら下がりで、じゃ、今後は、日本は化石賞を取った切り返しで、フルオロカーボン賞を差し上げましょうということをやったら、もっといいんじゃないのというふうに言ったんですけれども、本当に将来はそうなる可能性もあるんじゃないですか。だから、化石賞に対しては、より正確に私は伝えていきたいと思いますし、日本はなかなかそういうことをやらないじゃないですか。私はやってもいいと思う。それぐらいしないと伝わらないと思いますよ。交渉についてと、あとCOPの受け止め、それについては、我が日本政府が誇る今回のチーフネゴシエーターの環境省の瀬川さん、そして、隣に座っている小圷さんは、私は今回何度も各国に対して、我が国の誇るミスター6条だと、誰よりもミスター6条、もう体の神髄から染み込んでいる、そういう形で各国に対しても、大変評価を浴びているお二人なので、ちょっと一言、今回の評価もあれば、瀬川さんと小圷さんからも触れていただければと思います。
(事務方/瀨川審議官)どうもありがとうございます。プレスの方々も現地に来ていただきまして本当にありがとうございました。なかなか時間がなく、日本の立ち位置、あるいは実際に実施していること、あるいは小泉大臣にしていただいたことをうまく発信できたかどうか少し不安ではございますけれども、いずれにしろ、本当にプレスの方々には支えていただきましてありがとうございました。今回のCOPは、パリ協定がオペレーショナルな段階に至る2020年の直前、最後のCOPでございましたので、できれば、もっと変節をするというところをしっかり出していければよかったCOPだったんだけどなという反省はございます。海洋や、あるいはSDGsとの連結といった変節を見るべきCOPだったのかもしれませんが、なかなか、野心の引き上げは来年2月の提出、また、ファイナンスについては来年のCOPで取り扱う、長期気候資金という意味ですけれども。という中、6条という非常に難しい、技術的にも、それから資金的にも関係のある難しい案件があったというのが、今回のCOP、なかなか難しいCOPだったんだなというふうに思っております。ただ、今回のCOPでは、小泉大臣の非常に尽力を受け、各国、日本に対して6条交渉、あるいは全体に対しての推進役としての期待が非常に高まった、今まで以上にも高まったCOPだったとも言えます。なので、次のCOPはイギリスに決まっておりますけれども、引き続きイギリスとの連携、また、国連事務総長、それから気候変動枠組条約の事務局長とも、大臣との信頼関係が非常に強まったというふうに思っておりますので、これら様々な機関、イギリス、あるいは今回の6条交渉で大臣のステートメントに対して各国からの多大な感謝を述べられた国、例えばEU、スイス、そしてセネガル・アフリカ代表、それからエジプト・アラブ代表などからも、感謝、それから期待が述べられております。世界中と今後連携をして、イギリスで開催されますCOP26に向けて検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
(事務方/小圷)小圷と申します。6条を今回担当いたしまして、6条については、ダブルカウントを防止するアカウンティングルール、これは6条2項なんですけれども、これについては、ほぼ合意がされていた状況であります。あとは、もう一つ、非市場アプローチという6条8項、これも、もうクリーンテキストで、できておりました。最後にやはり詰めが必要だったのが6条4項の国連の管理型のメカニズムでして、これは京都メカニズムの移行のところで、やはりもう少し調整が必要だったというふうに思います。そこのところで、日本としては具体的な数値をしっかりと提供いたしまして、更に、やはり議長を支える形で様々な国の調整を大臣自ら、バイ会談の、先ほども数が30回以上を超えるということがありましたけれども、そこを最後、精力的にやることで、半ば、やはり議長国を支え、かつ、皆さんなかなか意見の隔たりがある中、そこを本当に腹を割って調整したというところで、本当に日本の貢献が目に見える形であったのかなと思います。6条は、この間3年ほど、パリ協定のCOP21からやっているんですけれども、本当にあともう少しですので、その礎を今回のCOPで築けたかというふうに思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
(記者)会議の課題についての大臣御自身の受け止めを。
(大臣)今回、私自身もCOP、初めてでしたけれども、改めて浮き彫りになった難しさ、これというのは、197カ国、この全ての国々とコンセンサスを得るという根本的な枠組みの意思決定の在り方に対する難しさ、これが国際状況の変化によって、政治情勢の変化によって、更にその困難度が増している、これは間違いない。基本的な、この枠組みに対する難しさは感じました。一方で、私は日本の存在感の発揮のしどころというのも、むしろ可能性を感じました。今、瀬川さん、小圷さんからもコメントがありましたが、私は今回の滞在中に一つのブレークスルーだったなと振り返る、その瞬間というのは、日本が特にブラジル、そしてまたEU、そして国連事務総長の方にも何度もいったんですけれども、あの目まぐるしく調整をした流れを生んだきっかけは、他の国が持っていないデータを数字で日本が内々に提供したことにありました。今まで文言と印象で、そしてまた各国の中に渦巻く感情、利害、こういったものの中で議論されていて、どん詰まっていたところに、実際に計算をした上でのデータというものが、そこに日本から出されたことによって空気が変わったんです。あれがなければ、今回、史上最長の延長という、そこまで粘っても、何とかして今まで積み上げたことをゼロにしてCOP26に渡すのではなく、合意までできずとも、この積み上げたものを無にしてはいけないという各国の調整に対する評価、これを生んだのは、私は、日本ならではの交渉における緻密さ、そして日本の生真面目さが、時にはマイナスに出ることもあるんですけれども、今回はその部分がすごくプラスに出た。私は、そこはすごく感じています。ですので、もちろん課題はありますが、私はCOP26において、このCOP25の経験が必ずより大きなプレゼンスとして日本が発揮できる礎を築いたと評価しています。

(記者)読売新聞の飯塚と申します。今回、私はCOP25での大臣の発信力に非常に注目しておりました。おっしゃるように目標の一つが発信力だったと思うのですけれども、ステートメントの中で、日本の石炭政策によっていろいろ影響を受けてしまったんだけれども、マドリードで日本に対するパーセプションを変えるためにやってきたんだという言葉がありました。国内・国外、両方に課題があると思うのですけれども、私は大臣の発言の中で、国内調整が間に合わなかったというのは、ちょっと内向きだったのではないかと感じています。外から見ると、何かちょっと力のない大臣なのかなというふうに思われてしまうというか、その辺の対外的な発信力という意味で、特にNGO、それから外国メディア、外国プレスに対する働き掛けが、御自身でどうだったのかということと、第2点として、マドリードにパーセプションを変えるためにやってきたということで、大臣なりの今回の発信力の採点を、100点満点で何点だったかというのをお尋ねしたいと思います。
(大臣)よく点数については、記者の皆さん、聞くのが好きなんですけれども、それは自分自身が言うことじゃないなと思います。ただ、最初に言われたところは、私の評価は逆です。むしろ、今回誠実に、批判を正面から受け止めて、グテーレス事務総長の石炭中毒という、そういった表現をあえて使い、表現をした上で、日本の評価されるべき取組をしっかりと伝えたことに対して、私もいろんな方からそれに対する評価を聞きましたが、既にあのコミュニティーはよく状況を分かっているので、その上で、よくここまで正直に言ったと、だからこそ今後も見たいと。私は日本に対する期待をつないだと思いますね。そして、国内調整の難しさに触れたことを飯塚さんはマイナスに思われていますけれども、これは、飯塚さんが環境大臣になったら分かりますけれども、世界の中でめちゃくちゃ共感されます。なぜかというと、世界のすべての環境大臣が同じことを共感できるからなんです。政府の中での環境省、環境大臣という立ち位置の様々な置かれ方、他の省との力関係、こういったことをみんな共有しているので、あまり、今までの一緒に過ごした時間が短くとも、一気に同士のように、お互い分かるよなということも含めて理解が深まるんです。ですので、これは、国内調整の難しさは、むしろ、こういった関係の中では、率直に触れたときに理解が深まることにもつながります。私は、そういった意味でも、今回の発信というのは、限られた制約、そして現実の中で、いかに日本の伝えたいことを今後伝えていけるような環境をつくっていけるかという点において、これは環境省の皆さんとも、関係省庁とも、数えきれないほどのドラフトの見直しをやりましたが、私はそれが生かされたと思っていますし、現に交渉の過程になって日本に対する評価の声の方が圧倒的に多い、そういったことも含めて、石炭の批判によって、他の日本の魅力、いいところがかき消されてしまうという現状を変える一端になったと私は思っていますし、これからも、更に、今回足りないところ、反省も含めて、また、COP26に、今回のことをもっとこうやれば生かせるなと思うこともいっぱいあるので、またチームみんなで今回の振り返りをしっかりやって、次につなげたいと思っています。
(記者)閣議でこの話は報告されたと思うのですけれども、安倍首相から、この点について何か言葉はありましたでしょうか。
(大臣)今日は、あくまでも帰国をしましたということの報告なので、総理には改めて帰朝報告を、今回行った期間中にどういうことがあったのか、現地の生の声も含めて、私から報告をしたいと思っています。

(記者)時事通信の木田です。話題が変わって恐縮ですが、先日、今年の漢字に令和の「令」が選ばれた。大臣にとって、今年の漢字を選ぶとしたら何でしょうか。
(大臣)いろいろ浮かぶんですけれども、今、COPが終わったばかりなので、「十」という漢字は一つあるかもしれないですね。それはどういうことかというと、今年、私は初めて当選してから10年目です。そしてCOPも、こういうCOPになったのが、コペンハーゲン、あれから10年ぶり、そういったことも事務方から聞きました。そして、私にとって初めてCOPという国際交渉の場に臨んで、なかなか、どう表現したらいいか分かりませんが、こんなことが起きるんだなというような、全く予想できないような出来事もいろいろありました。そういった中で、私からすると、こんなに糧となることの多い経験というのはなかったなと。恐らくきっと、これから政治人生を積み重ねる中で間違いない、あれがあったから今があると思える、そういう経験を今回いただいたなと思っています。その感想が全く同じなのが、10年前の、初めての選挙の厳しさでしたね。野党になって、そして批判も浴びて、世襲の批判、自民党の批判、本当に苦しい選挙でした。でも、あの選挙があって、あの厳しさがあるから今があると今でも思います。今回のCOPは間違いなく、そういう自分の中での位置付けになったということも考えると、10年、この「十」、これは一つ重いなと思いますね。

(記者)朝日新聞の菊地です。COPに戻るのが、大臣が発信されたいということで、伝ったこと、伝わらなかったこと、いろいろあると思うのですけれども、どうしてもCOPでの議論は世界的に脱石炭火力に集中すると思うのですが、日本がどうしても理解されない部分があると思いますけれども、石炭火力の議論にどうしても集中してしまう現状について、率直にどう思われるかということが1点。もう1点、本格的な国際交渉でいろいろな経験をされたと思うのですけれども、一方で、先ほどもありましたが、国内調整の難しさも同様にあると思います。出発前に関係省庁、官邸ともいろいろ協議されたと思いますが、御自身で、やはりなかなか今の立場で難しいと、環境大臣としての難しさであったり政治家としてのキャリアであったり、その感じた難しさについて、もし御披露いただけるところがあればお願いします。
(大臣)まず、石炭火力の国際社会に対する批判は、これは石炭火力にはとどまらないもので、むしろ、化石燃料全体という、そういったところにも今及んでいることですから、これを考えたときに、日本というのは、今、脱化石燃料というのは現実的には無理です。そして、脱石炭というのも、今の時点で現実的には無理です。私は何度も言っていますが、私が言っていることは、ゼロ石炭とは言っていません。そして、そういった中でも、日本は福島の原発事故も踏まえて、原発も減らす、石炭も減らす、再エネは主力電源化をする、省エネはしっかりやる、イノベーションもしっかりやっていく。こういった中で、いかに日本が、今置かれている国内の状況と、そして国際社会の気候変動の議論の中で、日本の置かれている状況や、やろうとしていることに対する理解を広げるかということを考えていたら、今のままでいいわけはないと。その一つの焦点が、石炭の輸出における公的信用の付与、この要件が四つあるわけです。この4要件に対して、今のままじゃなくたって、もう少し国際社会に対して前向きなメッセージを届けることで、このままでいいと思っていないんだ、ということを国際社会に発する中での日本独自の発信の強化、これが合わされば、より日本が評価される。そして、石炭火力の批判によって、その他のいい取組がかき消されるという現状から脱するきっかけになるというのは、今も私は、その思いは変わりません。これからも、二つ目の質問につながりますけれども、国内調整、これは必要な部分もありますが、これはさっきの飯塚さんの質問にも関係しますが、国内調整の難しさは万国共通です。その中で、そこを誠実に向き合う中で、弱いところこそ、率直さ、誠実さ、そういったところを明らかにせず、いいところだけ言っても、私は全く伝わらないと思いますので、少なくとも私の下に届いているのは、日本の状況を、プロがCOP25に集まっていますから、そのプロから見たときに、私はむしろ、ステートメントに対する評価の方が高かったと私は思っています。

(記者)産経新聞の奥原と申します。今の話に関連するのですけれども、小泉大臣として、石炭火力の海外へ向けた輸出について、どういうお考えをされているのかということ、地元の磯子発電所などでは…
(大臣)地元は横須賀です。
(記者)地元・神奈川の磯子ということで、すみません。発電効率の高い超々臨界型を採用されたりとか、石炭ガス化複合発電なども採用されていて、非常に高効率で、アメリカ、中国、インドという三大CO2排出国に、石炭火力の日本の磯子版を導入したら、日本の二酸化炭素排出量がゼロになる、同じぐらい減るというような話もありまして、そのような日の丸技術についてどのようにお考えか教えてください。
(大臣)まず、そのことに対する問題意識は、COPの内外記者会見でかなり具体的に触れています。ぜひ奥原さんをはじめ皆さんには、その内外記者会見を、それは日本語で全部やっていますから、そういったことも全部目を通していただきたいというふうに思います。その上で、今、日本の石炭火力に対して、要は価格競争力の問題、そしてまた海外に対して石炭火力を輸出することで、その相手国のエネルギー政策をロックインしてしまうという課題、そしてまた、各国との技術力の優位性が低下しているという課題、そういったことということは正直あります。ですので、今、奥原さんから超々臨界、USCの話もありましたが、超々臨界をやっているのは日本だけではありません。しかし、日本しか持っていない、例えばIGCCとか、そして将来はCCUS、こういったイノベーションにも取り組んでいるわけです。こういったものを、吉野さんがノーベル賞を受賞されたリチウムイオン電池、これのように、EVとかスマホとかパソコンとか、そういったことのような、まさに社会実装されるイノベーションまで持っていけるかどうかと、今後の日本の石炭火力の政策というのも密接な関わり合いを見せることですので、そういったことについても理解を得るために、まず、日本として前向きな取組を進められる調整が可能だというふうに私は今でも思っているし、その調整の継続というものになったのが、まさに今回の公的信用の関係だったということですから、今回のCOP25には間に合わなかった部分の調整ですけれども、調整は終わりではないので、今後も引き続き調整に汗をかいていきたいと思います。

(記者)NHKの杉田です。COPの中で、グテーレス事務総長から、温暖化対策としてカーボンプライシングについての言及もありました。改めて、カーボンプライシングの必要性についてどう思われているか教えていただけますか。
(大臣)議論は必要だと思います。そして、日本の中では、カーボンプライシングといっても、多分一般的には何のことだかさっぱり分からないというのが今現状ではないでしょうか。そういった中で、今、国際社会の中では、このカーボンプライシングを、排出量取引なのか、炭素税なのか、そしてまた使い道はどうするのか、様々な中で、導入を日本と比べたら、はるかに先にやっているところもあるし、カーボンプライシングの導入している額、それからすれば、日本の今導入している水準と比べたら圧倒的に高い、そういった国があることも事実です。ただ、私は、政治家として感じていることは、税というのは社会的にものすごく拒否感が強いですよね。これは各国そうかもしれません。そして日本の場合は、10月に消費増税があったばかりです。そういった中で、このカーボンプライシングの一つである炭素税、この炭素税という名前を聞いただけで、恐らく、また増税かよというような印象を持たれてしまい、なぜそういう議論が起きるのかというところの理解まで行き着かなくなることが、私としてはもったいないなと思います。ですので、私は今の時点で、ものすごく大事だと思っていることは、まず、これは、産業界は前から反対と言っています。これは変わらない部分もあるかもしれませんが、緊密に意見交換をして、議論を、また、理解をお互い深めていくことはやるべきだと思いますし、実際に使い道とか、そういったこと次第で理解の得られ方というのはまた変わると思います。もう一方は、やはり国民全体に、世界はこれだけ今、気候変動に対して危機感を持って取り組んでいるんだということを理解してもらう一つとして、これは、カーボンプライシングに対してスタンスを、様々あると思いますが、まずは国民的な議論をしてもらうことの重要性は、私は感じています。ですので、これから私はいろんな場で、このカーボンプライシングという、そういったことについても、国際社会の中では非常に大きなポイントになっているということは、様々私としても訴えて、伝えていきたいなと思いますし、議論をすることに対する理解、これは、私は自民党の中においてもあると思いますので、引き続き、これも大きなポイントだと、そういった認識の下、取り組んでいきたいと思います。

(以上)

会見動画は以下にございます

https://www.youtube.com/watch?v=cWKxzuGVuDE