大臣談話・大臣記者会見要旨

佐藤副大臣記者会見録(令和元年11月28日( 木 ) 11:00~11:21 於:中央合同庁舎第5号館25階会見室)

1.発言要旨

 本日は、「気候変動×デジタル」というプロジェクトについて、第1弾の検討の方向性が定まりましたので、まず皆様方に御報告させていただきたいと思っております。結果につきましては、来春をめどに取りまとめまして、できれば令和3年度の予算要求や来年6月の成長戦略に環境省として盛り込んで参りたいと思いますので、それを前提に検討を進めているところでございます。資料をお配りさせていただいておりますので、そちらを御覧いただきながら、御説明をさせていただきたいと思います。まず、この「気候変動×デジタル」のプロジェクトでございますけれども、脱炭素社会を実現するに当たって、ビジネス主導の非連続的なイノベーションを通じて、「環境と成長の好循環」を実現することが急務であるという認識でございます。この「環境と成長の好循環」の実現ですけれども、これまでは環境対策というのは誰かがやるものと、私はやらなくてもいいと、そういう認識が多かったと思います。ただ、その認識が続く以上は、環境が成長まで至らないということだと思います。ですので、環境と成長を上手く好循環としてつなげていくには、これまでの誰かがやるものというフリーライドの精神を脱却して、私もやるという全員参加型の環境対応に意識転換を図っていかなければいけないというふうに考えているところでございます。そうした中で、ブロックチェーン技術というものに着目をするわけでありますけれども、端的に申しますと、ブロックチェーン技術というのは全員をつなぎうるICTの技術でありますから、まさに私も参加するという全員参加型になりうる技術だということで期待をするわけであります。そういう中で、このブロックチェーン技術、IoTを使って、ブロックチェーン技術ですと、すでに暗号資産(仮想通貨)などの取引管理を始めとして、様々な分野で活用や実証が進められているところでありますけれども、そういった利用例を活用しながら、このプロジェクトにおいても、デジタル技術を気候変動分野に応用して、非連続的なイノベーションを生み出す。そのことによって、温室効果ガスの排出削減活動や環境価値の取引、我々がやる環境対策や設備投資が、環境価値としてしっかりと認められて取引できるような、飛躍的にこの認識を拡大させる検討を行っていくというものでございます。まず第1弾として今申し上げておりますのは、J-クレジット制度について、このブロックチェーン技術やIoTというデジタル技術を活用するというプロジェクトでございます。これは中小企業や家庭も含んで、オールジャパンで、かつブロックチェーン技術を使ってリアルタイムで、オールジャパン×リアルタイムで、全員参加型の取組を促進できるという意味で、非常に期待をするところでありますけれども、こうした取組を通じてJ-クレジット制度を拡充することで、更なる温室効果ガスの排出削減活動に向けた意識の向上と実際のアクションの促進を目指していきたいというふうに考えております。実際に今のJ-クレジット制度において、いくつかの課題が見えて参りました。例えばJ-クレジット、温室効果ガスの設備導入をして、排出削減をしたその差分について、クレジットを受け取るということにおいて、中小企業が導入できているかといいますと、やはり中小企業は人手が少ない。J-クレジット制度を使うに当たって、各種申請手続きが今書面で行われている部分もございます。そうしますと、人手を介した手続きを1回1回行うということが、とても中小企業に負担であるということもございますし、ましてや家庭にとっても、これは時間がかかる、手間暇がかかるということで、敬遠されがちである。あるいは周知できていないという問題があります。また、同時に自らの削減活動においても、クレジットの発行量が小さい、例えば家庭などですと、単位が少ないということになりますと、単独でJ-クレジットマーケットに参加するのが難しいという場合もございます。ですので、こういった課題を踏まえて、一昨日、実際にブロックチェーンを使うとどうなるかということも含めて、埼玉県のさいたま市にあります浦和美園スマート街区を視察して参りました。ここはブロックチェーンの技術の気候変動対策への活用事例、実証をしているところでありまして、実際のところ、ブロックチェーンのマザーボードも見ましたけれども、非常にこれが、情報、データのリアルタイムでの伝達という意味では、有効なツールになりうるということを確認して参ったところでございます。私自身といたしまして、こうした実証の状況も参考にしながら、今後はブロックチェーン技術とIoTを使って、J-クレジットマーケットを中小企業や各家庭も巻き込んで、オールジャパンで参加を促進していく。そして、例えば、個人が持っているスマートフォンのアプリなどで身近にJ-クレジットマーケットにアクセスできる、売り買いできるというようなイメージでございますけれども、もしこれが技術的に可能になれば、飛躍的に参加者がオールジャパンになっていくであろうというふうに見込めるわけであります。あるいは、クレジットの発行や、実際にどのぐらい排出削減しているかというモニタリング、これらの諸手続をブロックチェーン技術などを導入してスマート化していくということで、J-クレジットの利用者にとって手間暇を削減し、より身近な仕組みに変えていくということでございます。リアルタイムでIoTの機器が自動でモニタリングの結果をレポートするような形で人を介さない自動化ができれば、よりリアルタイムのクレジットの取引も可能になってくるということで、そういった道筋について検討をして参りたいと考えております。先ほど冒頭で申しましたけれども、「環境と成長の好循環」、これを実現していくためにはやはり環境対策というのは誰かがやっているもの、自分はフリーライドという姿勢ではなくて、我々、私たちも、みんなが参加をするという全員参加型の意識の大転換が必要であるということでありますけれども、そういう意味で広く産業界や国民、家庭、中小企業、こういった国民の皆様が、温室効果ガスの排出削減を行うインセンティブとして、設備を導入して、努力をすれば、ある程度の金銭対価で報われるということをしっかりと紐づけていく意味でのJ-クレジットマーケットの拡充、これを検討して参りたいというふうに考えております。本プロジェクトにつきましては、まずは第1弾がこのJ-クレジットマーケットへのデジタル技術の導入、ブロックチェーンを中心としたデジタル技術の導入というものがこの第1弾でございますけれども、今後も「気候変動×デジタル」又は「循環経済×デジタル」において、他の分野でも政策の効果が高まると見込める部分があれば、プロジェクト第2弾、第3弾と増やして検討を加えて参りたいというふうに考えております。いずれにしましても、私も以前、通信の分野、IoT、ICTを担当しておりましたけれども、特に5Gがこれから始まりますし、ブロックチェーン技術、こういったICT技術というのは、使い方によってはそれぞれ一人ひとりをこの技術でつなぎ合わせていくことができるICT技術でありますから、これまで誰かがやるべきものという環境対策を、各人ができる、アクセスできる対策へとより身近なものに変えていく技術にもなりうるということで大変期待をするところでございます。私からの報告は以上でございます。

2.質疑応答

(記者)朝日新聞の松尾と申します。今の「気候変動×デジタル」のプロジェクトで、第1弾がJ-クレジットにブロックチェーン技術を使うということなのですが、不勉強で大変恐縮なのですが、そもそものポイントとして、ブロックチェーンを使うことによって、個人まで巻き込んでというお話だったかと思うのですが、ブロックチェーンを使う必要があるような金融商品の取引というのは儲からないとそもそもあまり使うこともないかと思いますし、あと中小企業でどれだけのニーズや、J-クレジットを取引する必要があるのかなど、技術そのものとJ-クレジット制度のつながりが今一つよくわからなかったので、できれば教えていただきたいということと、あと常に進化していく技術を導入するということは、それだけメンテ費用などが膨大になってきますし、地球温暖化の側面から考えると巨大なサーバーなど、仮にクラウドを使うにしてもどこかにサーバーがあったり、必ずしも地球温暖化にはよい影響を及ぼさない可能性もあろうかと思うのですが、その辺りの整理というのは今後なされていくという考えでよろしいでしょうか。
(副大臣)まず、ICT技術ですけれども、当然、今、人工知能やブロックチェーン、様々出てきておりますけれども、多大なサーバーを使えば、空冷の必要が出てきたり、温暖化に対する対策はどうなのかという議論が当然上がっていることと思います。ただ、今後やはり期待したいのはそういった人工知能やブロックチェーンなど、多数のサーバーを使った、又はクラウドサービスを利用したデジタル技術の使用に当たって、より空冷ができるような、熱を発しないようなタイプの機器類の開発などにも当然同時進行で期待をかけるわけでありますので、今後の技術の開発状況というものを見守って参りたいというふうに思っております。ブロックチェーンそのものの導入は、確かに規模によって設備コストは、多少はかかる可能性もありますけれども、ただ、私どもの方でも聞き取りをしておりますと、中小企業の中でも、熱を排出しているような工場で、環境投資をして環境性能のよい設備に更新投資をする際に、やはりJ-クレジットマーケットを使いたいというようなお声も聞いているのも確かでございます。ですから、今、マーケットに接続できていない、やり方がわからない、あるいは人海戦術で非常にやりたいけれども、使えないというような声がある中で、中小企業、家庭まで含めると、特に中小企業ですけれども、J-クレジットマーケットに対する潜在需要というのは、一定程度あるのではないかという感触は得ております。

(記者)日刊工業新聞社の松木といいます。今の質問に追加なのですけれども、中小企業にニーズがあるということですけれども、中小企業はJ-クレジットだとクレジットを売る側だと思うのですけれども、ブロックチェーンを使うことによって、中小企業が一生懸命設備投資をして、クレジットを売ろうというふうに働く、プラス、中小企業もクレジットを買ってこようという意欲がわいてくるのか、つまり売る側と買う側両方効果があるのかという質問が一つと、あと技術的なところなのですが、現状J-クレジットの認証機関が減っていて審査機関が2機関だったと思うのですけれども、ブロックチェーンが使われてくれば、ますます認証機関の活用というのがなくなってくるとかと思うのですが、将来的には認証機関を通さずに、流通していくような仕組みを目指されているのでしょうか。
(副大臣)一つは、J-クレジットの買う側・売る側の話だと思います。中小企業も排出の熱量が大きいような工場を持っているような中小企業の方々は、当然設備を切り換えて、環境対応しているような設備に切り替えることによって、そのクレジットを売る側に行きたいという需要を示している中小企業の方々というのは私も何回か聞いたことがあります。同時に企業戦略によって、これからは、大企業もそうでしょうけれども、グリーン化戦略などを掲げていらっしゃる企業経営において、J-クレジットを買う需要というのもこれから出てくるでしょうし、もうすでにあるとおりですけれども、ですからそこは企業経営における自主的な判断で、それぞれやりくりをしていただくということにおいて、市場としての受け皿というものをきっちりと用意をしていくということだと思います。
(記者)J-クレジットの排出量をカウントする機関について。今まで1年くらい審査がかかっていて、審査をする機関自体も少なくなってきています。ブロックチェーンにするとその審査がなくなるということでしょうか。
(副大臣)当然、オールジャパン×リアルタイムを目指していくということでありますから、まずはその審査期間を短縮することに、一助としてデジタル技術でデータベースをきちっと構築し、それを拡充しながら、より短時間で審査ができるような体制に持ち込んでいく。追々はそれがよりリアルタイムに近いものになっていくであろうという期待はしております。
(記者)逆に中小企業とか家庭から出るクレジットだけではなくて、大規模なクレジットについてもブロックチェーンを適用していけば、審査・手間というものがなくなるし、コストもなくなるということでしょうか。
(副大臣)そうですね。今現在は書面で、郵送で出しているような部分も一部あると聞いておりますし、ですからそういったことも含めてデジタル化をしていくと、相当事務コストと時間の短縮には効率化につながると思いますし、それが市場参加者の拡大にもつながっていくというふうに思います。

(記者)NHKの杉田です。今の関連です。人を介さないというのは、例えばいつくらいまで目指しているとかあるのでしょうか。
(副大臣)それはこれから今検討の方向性がこういった形で定まったところですので、これからもう少し深く検討して、実際には成長戦略あるいは予算要求を考えるときに、ある程度どのぐらいのスパンでという具体的なものは、見えてくるのではないかなと思います。
(記者)実際にクレジットの取引を活発にしようと思ったときに、価格を上げていかないといけないと思うのですが。
(副大臣)それはやはり市場性を大事にして、売り手が多い場合と、買い手が多いときとによって、値下がりし、あるいは値上がりし、という自由な価格形成を促していくということが大事だと思います。そういう意味ではできるだけ市場参加者を増やして柔軟な価格形成ができるような市場性というものを担保していくということが大事ではないかと思います。
(記者)佐藤ゆかり副大臣就任から2ヶ月半くらい過ぎて、改めて副大臣として、そして国会議員として、政治家としての信念、そしてまた、失礼ながら力量を試させていただく質問をこれからします。心してお答えください。今週の月曜日に環境省内で第2回温暖化推進会議がありまして、議長が進次郎大臣、副議長は佐藤ゆかり副大臣ですけれども、この推進会議に初めて防衛省の幹部、次官候補の島田官房長が本気度を示しました。こういうふうに防衛省が参加したことはどう受け止めているのかというのが第1点。第2点が防衛省としても、また政府全体としても、防衛省が地球温暖化対策にまで参加するということで、防衛省は自衛隊のイメージアップにもつながり、そしてこれが憲法改正につながる国民理解の増進に役立つかどうかということについて、佐藤副大臣に憲法改正に対する考え方も含めて信念をお聞かせください。
(副大臣)先日、私も出席をいたしましたときに、防衛省に初めて加わっていただいたわけであります。防衛省とはこれまでも気象災害において、災害廃棄物の処理において大変連携をして、協力いただいているところでございますけれども、先日の気候変動適応推進会議で、今後も更に気候変動の面において連携を進めていくということになりましたので、これは大変喜ばしい展開というふうに受けとめております。気候変動も今様々な分野に多面的にその影響が及んできているものですから、そういう意味ではまさに防衛省のエリアも関わる部分がありますし、入っていただいて、これは適切ではないかなというふうに考えるわけであります。それと憲法改正については、ちょっと話が異なるかと思いますので、今日はあくまで環境分野でのお話ということで控えさせていただきます。
(記者)この話は環境分野でありまして、鎌形事務次官とか、それから正田官房長に聞いても、憲法改正に貢献するかどうかなんて話は、鎌形事務次官だって正田官房長だって答えられないですよ。だから政務三役ってやつがあるわけです。政治家としての立場を踏まえて、副大臣として答える、それを聞いているんです。そうでなかったら政務三役の意味なんてありません。あなたは憲法改正に貢献するかどうか、また憲法改正が必要であるかどうか、この2点を明確にお答えください。
(副大臣)今、私は環境副大臣の立場で会見をさせていただいていますので、その点については控えさせていただきます。