大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和5年12月19日(火)11:20~11:42 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 おはようございます。本日、4件冒頭発言ございます。
 まず、本日の閣議において、動物愛護管理法施行令の一部を改正する政令を決定いたしました。動物愛護管理法の規定に基づく、犬及び猫のマイクロチップ情報の登録等に係る手数料について、その事務に要する実費を勘案し、手数料の額を引き上げるものでございます。
 二つ目でございます。クマ類の保護及び管理に関する検討会でございます。クマ類保護及び管理に関する検討会についてお知らせいたしますが、この検討会は、今年度のクマ類による深刻な被害の発生状況を踏まえ、専門家の意見を伺いながら、科学的知見に基づき、人身被害防止等に向けた総合的な対策を取りまとめることを目的として開催するものでございます。来週26日火曜日に第1回検討会を開催し、計3回の議論を経て、来年の2月末までに、取りまとめのお願いをしたいと考えてございます。環境省としては、検討会の取りまとめ結果を踏まえ、指定管理鳥獣への指定の必要性も含め、必要な対策を速やかに実行に移し、国民の安全・安心につないでいきたいというふうに考えております。
 次に、フィリピンとの環境協力覚書の署名についてでございます。一昨日、岸田総理とフィリピン共和国のマルコス大統領立会いのもと、ロイザガ環境・天然資源大臣と、環境保護分野における協力覚書に署名をいたしました。日本ASEAN友好協力50周年の機会に、成長が著しいフィリピンとの環境協力を確認できたことは、大変意義深いものだと感じております。今後、世界的に取組の強化が求められております気候変動、プラスチック汚染、生物多様性、大気質管理、水質管理、化学物質管理といった幅広い環境問題について、両国で包括的に協力して取り組んでまいります。
 それから次に、くらしの10年ロードマップ案のパブリックコメントについてでございます。今般、新しい国民運動、デコ活の一環として、くらしの10年ロードマップ案を作成いたしました。本日から1か月間かけて、国民の皆さんの御意見を募集してまいります。 このロードマップは、国民・消費者の行動変容・ライフスタイルの転換を促進し、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしと、我が国の温室効果ガス削減目標を実現するために必要な方策・道筋を示すものでございます。1,000を超える企業、自治体、団体等が参画する官民連携協議会、デコ活応援団で議論を重ねてきました。このロードマップは、初めて国民の皆様の生活全般にわたる行動変容の課題、それからまた対策を整理したものでございまして、今後デコ活予算などを通じて、豊かな暮らしづくりを後押ししてまいりたいと思います。以上が冒頭発言でございます。
 

2.質疑応答

(記者)幹事社の朝日新聞、市野です。COP28のことでお伺いいたします。COP28では、この10年で対策を加速して、化石燃料からの脱却を図ることなどが決まりました。この合意文書について大臣は、現地でも、我が国の方針と整合的なものだというふうな趣旨を答えておられます。一方で政府は、2030年度のエネルギーミックスにおいても、化石燃料は4割残していて、足元ではガソリン補助金の延長ということも続けています。こうした部分も含めて整合しているというふうにお考えなのか、お聞かせください。
(大臣)私が参画をしておりましたCOP28でございますけれども、このグローバル・ストックテイクに関する決定文書では、2050年のネットゼロを実現するために、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行を、この10年で加速化するという世界の取組に貢献していくという旨が合意されたもの、これは成果文書に盛りこまれております。
 我が国は、2050年温室効果ガス、ネットゼロの実現及び2030年度46%削減という国際公約を掲げ、化石燃料への過度な依存からの脱却を目指し、徹底した省エネ、再エネの最大限導入に向けた取組を推進しております。この観点から、このCOPでの決定は、我が国の方針と整合的であるというふうに考えております。引き続きGX推進戦略等で示された方針に基づき、再エネの主力電源化、これを徹底した上で、石炭等の化石燃料による火力発電については、その比率をできる限り引き下げ、化石燃料への過度な依存からの脱却を進めてまいります。
(記者)整合しているというのは、大臣のお考えでは、これ以上今の対策を加速する必要というのがあるのかないのか。今のままでいいのか、今よりもさらに加速しないといけないというふうに認識されているのか、その辺りはいかがでしょうか。
(大臣)もちろん、なるだけ加速していく必要があると思います。この間、世界の状況、また科学技術の進歩、いろんな要素があると思いますけれども、あらゆる方法、あらゆる状況を勘案しながら、加速化を進めてまいりたいと、そのように思います。
 
(記者)時事通信の鴨川です。2点お伺いさせていただきます。まず1点目が、COP28に関連しまして、採択された合意文書では、化石燃料について言及されていまして、歴史的な合意となっているかと思います。合意文書では、transitioning awayと英語で書かれていたものを、報道機関では、化石燃料からの脱却と解釈しています。一方、経済産業省を中心に、政府内では前例踏襲的に化石燃料からの移行と訳している場合が多いかと思います。先週の金曜日の会見でも、大臣は「移行」という言葉をお使いになられたかと思います。化石燃料の段階的廃止が主要焦点となった今回のCOPですけれども、経緯を踏まえたり、採択後のUNFCCCのサイモン・スティル事務局長の「化石燃料の終わりの始まりだ」という発言を踏まえると、ニュアンスとしては移行というよりも、脱却のほうが近いように思えております。気候変動対策を所管する環境省として、国民に脱炭素の機運を醸成するためにも、より前向きなメッセージを打ち出すべきだと思いますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
(大臣)ありがとうございます。御指摘の点については、過去のG7コミュニケの仮約で、transition awayを移行と既に訳している。このことを踏まえて、化石燃料からの移行と説明しております。ただおっしゃられたように、重要なことは、今回のCOPの合意を受けて、パリ協定の1.5度目標の実現に向けた行動を実際に加速していくことだろうと思います。
 我が国は、エネルギー基本計画の下、徹底した省エネの推進、再エネの最大限活用、安定供給を前提とした、できる限りの化石燃料比率の引下げを行っていく方針でございます。 さらにGX推進戦略に基づいて、化石燃料中心の産業構造をクリーンエネルギー中心へ転換する取組を推進してまいります。
 これらの取組を通じて、化石燃料への過度な依存からの脱却を進め、2030年度温室効果ガス46%、できれば50%の高みに向けてさらに挑戦してまいりたいと思いますし、その先の2050年ネットゼロに向けて前進していくつもりでございます。
(記者)ありがとうございます。もう一点ですけれども、自民党の政治資金問題に関連しまして、先ほど安部派、二階派の事務所に強制捜査が入りましたが、自民党の派閥に捜査が及ぶことをどう認識されていらっしゃるでしょうか。
(大臣)政治家として、また国民として、法律にのっとってしっかり活動することは大事だと思います。具体的な事例については今お聞きしたことなので、それ以上のことは申し上げられません。いずれにしても、法律を守って政治を行うこと、誠実を守って行動することは、政治家としても国民としても非常に重要なことだというふうに考えております。
 
(記者)共同通信の矢野です。よろしくお願いします。COP28についてお伺いします。今大臣おっしゃったように、対策をなるべく加速させる必要があるとおっしゃいました。経産省の担当者は、COPの合意後のレクで、GSTについては第6期の、現状のエネ基をしっかりやっていくことは大事だけれども、それ以上が必要になる条文ではないというような発言をしていました。一方で今の大臣のお話を伺うと、やっぱり今おっしゃったように、対策は今まで以上に必要であるという、そういう理解でいいでしょうか。確認させていただければ。
(大臣)経産省の役人の方の発言についてのコメントは差し控えたいと思いますけども、環境省としては1.5度の目標を達するために必要な、環境省としてできることを最大限やっていくと、それを加速化していくという、そういう考えでございます。
 
(記者)NHKの林と申します。先ほどのCOP28関連の大臣の発言の中でも、化石燃料からの脱却という言葉を自らも使われていると思うのですけれども、それは先ほど説明いただいた移行との使い分けみたいなのは、役所として、しているのかというのと、改めて、別にこれは変な意図をもって言っているわけではないのですが、例えば、海外に化石燃料の取扱いを、日本の立場を発信するときに、脱却という言葉は、英語で何と表現するというふうにお考えなのでしょうか。
(大臣)先ほど私が申し上げたのは、「過度な依存からの脱却」と申し上げたのです。「化石燃料からの脱却」とは申し上げていません。ですから、化石燃料から直につなげる場合は、仮訳どおり移行も使い続けます。ただ、過度な依存から脱却しなければならないと。その基本方針に基づき、日本以外の海外の方にも説明してまいりたいと、そういう意味です。そのtransition awayを英語訳でどう訳すかというのは、いろいろ説があると思いますけれども、一応G7で示された訳を継承しているというのが基本的なスタンスです。
 
(記者)河北新報の馬場と申します。クマについてなんですけれども、大臣は5日の衆議院の環境委員会で、クマを指定管理鳥獣に追加することの可否について、年度内にも結論を出したいという形でおっしゃられていましたけれども、その方針というのは変わりはないのかということを確認のために聞かせていただきたいです。
(大臣)先ほどのところでも少し申し上げましたけれども、検討会では、専門家の意見を伺いながら、全国におけるクマ類の生息状況、出没状況、被害状況等、最新の科学的知見を整理するとともに、都道府県、捕獲事業者、自然保護団体等からヒアリングを行ってまいります。
 その上で、今年度のクマ類の大量出没や人身被害の発生要因を分析して、今御質問があった指定管理鳥獣への指定の必要性を含め、来年度以降の人身被害防止等に向けた総合的な対策について、まずこの検討会では来年の2月末までに取りまとめをお願いしたいと考えております。ただ、この取りまとめが終わったらすぐ結論が出せるというものではありません。この後、諸般のヒアリングや関係省庁との連携もありますし、具体的には命令の改正というものも必要だと思います。
 私の思いとしては、最近クマが冬眠しないこともあるというような説もありますけども、クマが冬眠を明けるぐらいまでには、決定したいと思っていますけれども、正直言って私の意思だけでぽんとなるものではありませんので、しかるべき手続なり、国民のお気持ちや科学的知見を整理した上で、できれば私が思っているぐらいのところで、クマが冬眠を明けるまでには決定したいなと私は思っていますが、そういう意志でございます。
 
(記者)テレビ朝日の中尾です。政治資金の関連ですけれども、一連の、特に安倍派に関する報道などを受け、捜査を受けて、特に環境省といろんな分野で関係が深い経済産業省、大臣が辞任するなどしています。ただ一方で、特に環境省の政策というのは長期的に取り組む政策が非常に多いと思いますけれども、カウンターパートである経産省の大臣が辞任するなどといった事案は今、環境省の政策に影響などは感じておりますでしょうか。
(大臣)環境問題というのは、ある意味では政治状況と関連するんですけれども、いや応なく襲ってきます。地球温暖化についても、プラスチック汚染についても。ですから、これはそういう影響を受けないように、しっかり必要な環境政策をスピードアップというか、加速化して行いたいと思っております。
(記者)ありがとうございます。続いてなんですけれども、経産省については理解しました。ただ一方で現在、岸田政権、非常に支持率が低いとされて、一部では支持率が2割を切っているという調査結果も出ています。こうした非常に信任率が低い中で環境問題を進めていくという難しさを感じていたり、あるいは岸田総理から今回の閣議などで何らか指示などは出ていますでしょうか。
(大臣)前段のお答えと似ているのですけれども、どういう政治状況にあっても、環境問題は日本の国民の皆さんに、もっと言えばCOP28で認識されたように、地球全体の人間、あるいは生態系に影響を及ぼす、待ったなしの課題だと思います。ですから、私としては私が任にある限り、環境大臣としてその職責を果たしたいと思いますし、いろいろな政治状況によって必要な環境政策が、遅滞があってはいけないというふうに考えております。
 
(記者)日刊工業新聞の松木です。繰り返しの質問になって恐縮ですけれども、移行か脱却かの話ですけれども、大臣の中で同じ意味で捉えていて、ただ使い分けがあって、成果文書ですとかGSTの話をするときは移行、それ以外のときは脱却というふうに使い分けているという認識をしたんですけども、それで合っていますでしょうか。
(大臣)そうではなくて、成果文書は移行でありますけど、さっき申し上げたのは、過度な依存からの脱却ということです。過度な依存からの脱却であって、化石燃料からの脱却という、直にはつなげておりません。私は。
(記者)過度がつく場合は脱却。
(大臣)そうです。過度な依存から脱却。
(記者)国民にもそのように説明されるのでしょうか。
(大臣)常にそういうふうに話しています、私は。
 
(記者)毎日新聞の宮城と申します。動物愛護についてちょっとお伺いします。弊紙の本日の報道ですけれども、環境省が先月全国の自治体に依頼して、犬猫のブリーダーだったり、オークション会場に、一斉に立入検査をしたというふうに報じたのですけども、取材では立入検査の理由として、動物愛護管理法で定めている8週齢規制、これにちょっと違反しているのではないか、そういう疑いがあって、今、実態解明のために調べているということが取材で分かっているんですけども、ちょっと1点、こうした全国一斉の立入検査の実施についての事実関係を教えていただきたいのと、もし仮に事実だった場合、こういった8週齢規制のほう、全国一斉の調査というのは前例がないのかなと思うのですけれど、それについて調査に至ったことに対する大臣の受け止めをお願いします。
(大臣)犬、また猫を扱っているペットオークション業者、またブリーダーについて、動物愛護管理法の遵守状況を確認するべく、環境省から、動物愛護管理法に基づく事務を担っております都道府県及び政令指定都市に対して、一斉調査を依頼しました。現在、自治体からの回答を確認しているところでございます。
 個別事業者による法令の遵守状況を確認するための調査であって、自治体による個別事業者への指導等に支障が生じる懸念、これがありますので、詳細については、それ以上は現段階ではお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
(記者)これは8週齢規制かどうかというところはお答えできないということですか。調査の目的は。
(大臣)これは、目的は複数あると思いますけれども、平たく言えば個別事業者による法令の遵守状況を確認するために実施されたものであって、まだ公表を前提としたものではありませんけれども、今後、調査結果を精査した上で必要な対応をしてまいりたいと、このように思います。
(記者)もう一点ですけれども、今回の事業者に対する対象というのは、数としてはどのくらいあるのかということと、集計した結果、公表はするというおつもりなんでしょうか。もし調査で例えば悪質なケースが見られた場合というのは、動愛法では各自治体が行政処分するという判断だと思うんですけども、環境省としてはどのような対応を取るかどうかについてもお聞かせください。
(大臣)御下問でございますけど、現在調査を実施している、また調査結果を精査している途中というか、その段階でありますので、現時点で詳細なお答えは控えさせていただきたいと思います。
 
(記者)北海道新聞の内山と申します。クマ類の関係でお尋ねします。生息数調査というのは、国のほうで改めて調査をするのかなと思っていたのですが、先ほどの発言から伺うと、今回、この検討会の中で示されるような専門家の生息状況といった調査をもとに、その指定管理鳥獣の指定を決めてしまう、決定できるという意味合いでよろしいでしょうか。
(大臣)調査の手法自体について、今ちょっとつまびらかに私が説明する能力はありませんけれども、私が知っている範囲で申し上げれば、多分環境省に日本全国のクマの生息状況の詳細を調査する人手なり、フレームワークは、十分にないだろうというふうには私は認識しております。ですから、そういう専門家の御意見や、あるいは都道府県のデータなども総合的に勘案して、判断していくという筋道だというふうに認識しております。
(記者)そうすると、もう既にやってある調査をもとに判断されるということでしょうか。
(大臣)今年、非常に人身被害があるわけですから、そういう最新のデータも含めてやっていくということになると思います。
(記者)もう一点。北海道ではヒグマが、地域個体群に指定されていて、保護対象になっているんですけれども、こちらの解除というか、それも同時に行うということでよろしいでしょうか。ツキノワグマもそうですけれども。
(大臣)それは指定管理鳥獣に指定するかどうかとも関連しますので、現時点でそのことをどうするかというと、ちょっとお答えしづらいと思います。
 

会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=ogiJabgo6l8&list=PL9Gx55DGS7x7KxcngqArvF_NxEuXney24&index=2


(以上)