大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和5年11月14日(火)09:30~09:49 於:環境省第一会議室)

1.質疑応答

(記者)幹事社の時事通信、鴨川です。クマ対策についてお伺いします。昨日、大臣は北海道知事、岩手県知事と面会し、クマ対策について緊急要望を受けたと思います。特に指定管理鳥獣への指定や、クマの捕獲に対する国民の理解醸成について要望がありましたが、大臣として、このような自治体の声にどのように答えていくのか教えてください。
(大臣)ありがとうございます。昨日、指定管理鳥獣への指定の御要望をいただきました。大変重く受け止めております。昨日、事務方に具体的な検討を指示したところでございます。指定管理鳥獣への指定はクマ類の保護管理上、大きな転換となります。このために、結論ありきではなく、クマ類の最新の生息状況とエビデンスを整理して、専門家の意見をお聞きし、科学的知見に基づき、遅くならない時期に判断することが重要だというふうに考えております。
クマ類の保護管理、そして人身被害防止のために、クマ類を人の生活圏に侵入させない対策が重要であると考えております。その一環として、状況に応じてクマ類を捕殺・駆除することは必要な判断であると考えてございます。
自治体やハンターの皆様には、人とクマ類の距離を確保し、人身被害を防止するために、真摯に取り組んでいただいております。こうした方々の活動に対して、心から敬意を表するところであり、このことをクマ類が生息していない地域の方々にも、ぜひ御理解いただければありがたいと思います。

(記者)北海道新聞の大能と申します。ただいまの指定管理鳥獣についてお伺いしたいのですけれども、遅くならないうちに御判断をなさるとお伺いしましたが、現状では非常に被害が増え続けている中で、早めの決断というのを求められているかと思うんですけれども、めどというのはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
(大臣)確かにクマ被害が最近頻発しているわけでありますけども、やはりこれは大きな判断でございますので、先ほど申し上げたように、やはりエビデンスを整理しなければなりませんし、専門家の御意見も聞かなければなりません。それから、単に個体数だけではなくて生息状況もよく把握する必要がありますので、現時点で、いつという具体的な日時を示すことは困難であろうと思います。
(記者)後段で、クマが生息しない地域の方にも御理解いただきたいということで、もう少し具体的に伺いたいのですけれども、クマを殺すなという苦情が相次いでいる現状についてどういうふうに捉えていらっしゃいますか。
(大臣)先ほども申し上げたように、自治体、ハンターの皆様には、人身被害を防止するために真摯に取り組んでいただいている、このことをまず、ぜひ御理解いただきたいわけでございます。
 環境省にも、クマ類の対策に対して、10月10日以降、約200件の電話によるお問合せをいただいております。ここは、実は様々な意見がありまして、もちろん、クマを捕殺することに反対だという意見もありますけれども、それ以外の意見もございます。
 それから、クマ類の生息状況をよく見ないと、一現象面とか写真のイメージだけでなかなか判断をするというのは適当でないと思いますので、そういうお電話に対しても、環境省の職員はできる限り丁寧に対応しておりますけれども、よくその辺も皆様に御理解いただくように、環境省としても必要な情報発信をしてまいりたいと、そのように思います。
 
(記者)NHKの林と申します。今のクマの関係で、環境省への問合せというか、電話に関して、把握している範囲でということなんですけど、いわゆる自治体の方が求めていたような、非難というのが、200件のうちどれぐらいあるのかというのと、例えば、クマを殺すな以外にも、これは明らかに、むちゃを言っているだろみたいな、そういうような文言というのは把握されていたりというのはするのでしょうか。
(大臣)私自身が全部受けているわけではないので、詳細について言及できないと思いますけれども、ざっくりと、報告によると、やはり7割ぐらいは捕殺に対して御反対だという意見だろうと思います。それで2割ぐらいは、やっぱりクマの生息に関して、山の中にもう少し食べるものを置いたらいいのではないかというような類いの御意見もあるようです。それから1割ぐらいは、やはりこれだけ人身被害が広がっているので、捕殺、駆除処分をすべきだという意見もございます。ざっくりですけどね。もっと幅広くいろんな意見があると思いますけど、ざっくり言うとそんな感じだという報告は受けております。
 
(記者)朝日新聞の市野です。クマの指定管理鳥獣への追加について、重なるかもしれないのですけれども、今後、結論は決めずにということなのですが、例えばこの追加に当たっては、クマはそもそも生息域に偏りが、地域的に偏りがあるということであったりとか、都道県によってはその管理の在り方が違うということなど様々論点があると思うのですが、今後の議論のポイントをどう見ているか、あるいはどのようなことに気をつけて議論をしていきたいと考えているか、その点を教えてください。
(大臣)もともと指定管理鳥獣というのは、全国的に個体数といいますか、繁殖が多過ぎて、その結果、人身被害や農作物の被害が甚大であるということが1つの流れになっていて、その関係で現在のところ、イノシシとシカが指定されているわけでございます。クマの場合は、最近、北海道、東北地方で多くの被害があるわけでございますけれども、他方、四国等では逆に非常に個体数が減って保護の対象になったという経緯もあるわけでございますね。ですから、そういうこともあるわけでございますので、エビデンス、それから専門家の意見、科学的知見、そういったものをやっぱり総合的に考えて判断をしてまいりたいということでございます。現在のところまだ結論が出ているわけではございません。
 
(記者)熊本日日新聞の髙宗です。昨日、発表があった水俣病の原因企業チッソの決算についてちょっとお尋ねしたいのですけれども、チッソの水俣病の患者補償に関する様々な債務を税金で肩代わりして負っていて、今、2,000億超の借金があるわけですが、そこの借金の返済をここに充てる子会社のJNCの経常利益の通期見通しについて発表されています。通期の見通しでいくと、単体の経常利益14億円ということで、政府が閣議了解している抜本の支援策が求める利益を40億円ぐらい下回ると。もう1点、チッソは、今、業績改善計画というのを進めているのですが、そこで掲げている売上高と経常利益の目標も大きく下回るという通期見通しになっているのですが、この点について、まず大臣の評価をお願いします。
(大臣)御指摘のように、まず前提として、チッソが水俣病の原因企業として、その責任を果たし、継続して水俣病患者補償の完遂と地域経済振興を行っていくためには、チッソ株式会社及びJNC株式会社における早期の業績回復が必要であるというふうにまず認識しております。そして、今回、そのような数字が出たわけでございます。
 チッソ株式会社には、一層の経営努力を求めるとともに、関係省庁及び熊本県による連絡会議の場を通じて、業績改善計画の進捗、評価を行い、計画の確実な遂行を求めてまいりたいと思います。
 それから、子会社のほうの関連で申し上げますと、今、質問が直接なかったんですけど、多分、御興味があると思って申し上げると、チッソ株式会社によるJNC株式会社の株式譲渡については、水俣病特措法では、救済の終了及び市況の好転まで暫時凍結するということになっております。いまだに多くの方が公健法による申請をされ、あるいは訴訟を提起されている、この現状においてですね、水俣病特措法に定める救済の終了とは言い難いわけでございまして、したがって、現時点でJNC株式会社の株式譲渡について、環境大臣として承認できる状況にはないというふうに考えてございます。
(記者)ありがとうございます。大変厳しい数字が出ていて、恐らくこのままいけば、来年も公的債務の返済を猶予するという形になろうかと思います。そういう中でチッソ株式会社は次期中期計画を策定していくということで、昨日、取締役から説明がありました。 環境省としては、次期計画に対してどのようなことを求めていくのか、考えを教えてください。
(大臣)次期計画が具体的に出た段階で関係省庁と協議して、適切に対応してもらいたいと思います。現時点で、まだこうだという段階ではないと思います。
(記者)では最後に確認ですけれども、現状、JNCの経常利益は10億円という単位でしか利益が出ていないのですが、全体では2,000億円の借金があると。これは到底返せる額と思えないのですが、まあ100年とか200年とかかかるような数字だと思うんですね。 そうした場合、借金の棒引きというのをする可能性があるのかどうか、そこをちょっとお尋ねしたいのですけれども。
(大臣)それは現時点で環境大臣としてちょっとお答えし難い御質問だと思います。
(記者)分かりました。ありがとうございます。
 
(記者)日刊工業新聞の松木です。先週あった内閣府の世論調査について質問させてください。世論調査では、気候変動対策に関心がある国民が大体9割ぐらいいて、高い水準かと思ったのですけれども、世代別に見ると若い世代のほうが関心が低い傾向があったかと思います。
 また、取り組みたい対策として、温暖化対策に取り組む企業の商品、サービスを購入したいと答えた国民が26%ということで、前回2年前の調査からも3ポイント下がっていて、そのほかに省エネ製品を買いたいという回答も2割台ということで、あまり高い水準ではなかったかなというふうに思っています。企業の商品とかサービスが売れることによって、環境と経済の好循環が生まれてくるのだと思いますけれども、今回の世論調査の結果について大臣はどのように受け止めてらっしゃるか教えてください。
(大臣)おっしゃられたとおりで、まず9割の方が気候変動問題に関心が高いと、これは大変結構なことだと思います。
 ただ、御指摘のように若年層の関心が低い傾向にあると。それから、脱炭素社会の実現に取り組みたくない回答の理由として、どれだけ効果があるか分からないというのが上位になっております。
 ということでございますので、環境省として、若年層への効果的な情報発信や、関心をいかに行動につなげられるか、これが課題というふうに考えてございます。2050年温室効果ガスの排出実質ゼロや、2030年度46%削減目標の実現・達成には、国民一人一人の皆様の行動変容、ライフスタイルの転換が必要でございます。そのために環境省で進めております新しい国民運動であるデコ活において、脱炭素で豊かな暮らしにつながる商品、サービスに関する情報など、もう少し分かりやすく、積極的に発信して、そのことが国民の具体的な行動につながるように努力してまいりたいと、そういうふうに考えます。
 
(記者)毎日新聞の岡田です。イギリスのインフルエンス・マップというシンクタンクが、日本のGX政策はIPCCが示す1.5℃目標と乖離しているという報告書を公表したんですけれども、特にカーボンプライシングの本格導入の遅さとか、価格水準の低さ、あと、石炭火力を水素、アンモニアを利用しながら使っていくという方針については、1.5℃目標の経路から乖離が大きいと指摘されているわけですけど、こういった日本のGX政策について、1.5℃目標に不整合だというその指摘についての受け止めをお聞かせください。
(大臣)報告書は、実は先ほど公表されたものだというふうに承知しておりまして、まだ実際に私は目を通しておりませんので、そのことに対する詳細なコメントは差し控えたいと思いますが、我が国は、パリ協定の1.5℃目標と整合的な形で、2050年温室効果ガス排出実質ゼロ、2030年度の46%削減目標を掲げております。この目標の達成に向けては、GX政策を含め、地球温暖化対策計画に基づく対策・施策を総合的に実施しております。
 GX政策は、今後10年間で150兆円を超える官民投資や、成長志向型のカーボンプライシングを通じて、我が国の目標達成の蓋然性を高めるものと認識してございます。
 GX政策がまだ緒に就いたばかりでございますけども、2050年ネットゼロが実現されるように、環境省としても力を尽くしてまいりたいと思います。
(記者)カーボンプライシングの導入の遅さとか、価格水準の低さについてはどういうふうに受け止めていますか。
(大臣)これは1つの報告書で、実際、読んでいないので、その詳細なコメントは差し控えますけれども、世の中にいろいろな意見やシンクタンクがございますので、そういう意見もそれぞれ拝聴しながら、ちゃんと結果が出るように環境施策を進めてまいりたい、そういうように思います。
 
(記者)お世話になります。秋田県の秋田魁新報の伊藤と申します。すみません。前後になって、クマの件で2つ確認させてください。
 1つは、昨日、指定管理鳥獣への検討について指示を出したというふうに先ほどおっしゃっていましたけれども、もう1回確認で、昨日付でよろしかったかというのが1点。
 それからもう1つ、昨日、環境省の事務方の皆さんに対して指示を出したタイミングとして、昨日になった理由、いろいろ国会でも質問があったかと思うのですけれども、それを踏まえたものなのか、何か大臣としても感じるところがあって昨日になったのか、その辺りを教えてください。
(大臣)この問題に対する認識はもちろん、少し前から持っておりました。まず昨日でございます。昨日、やはり2知事、1副知事から、北海道東北知事会として頂いたということは非常に重いことでございますし、それから、その中で、具体的な被害状況、あるいは地域のつぶさな状況などもお聞きして、やはり、これは具体的に強く指示する必要があるという認識を持って、昨日、指示したということでございます。
(記者)要望を受けてという認識でよろしいですか。
(大臣)そうでございますね。もちろん、その話題というか、そのことについては、もう以前から、環境省内で議論はしておりますけれども、具体的にというのは昨日ということです。
(記者)分かりました。ありがとうございました。
 

会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=IQ_hhix-Bw4&list=PL9Gx55DGS7x7KxcngqArvF_NxEuXney24&index=1
 
 
(以上)