大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年3月23日(金)8:42 ~9:03  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず、面的除染完了について御報告いたします。先日、福島県から、3月19日に県内の面的除染の作業が終了した旨の発表がありました。これにより、帰還困難区域を除き、国直轄・市町村合わせて8県100市町村における全ての面的除染が完了したこととなります。全ての関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。環境省としては、引き続き、関係自治体と連携しながら、被災地の環境再生に全力を尽くしてまいります。
 次に、本日、神戸製鋼所の石炭火力発電所設置計画について、環境影響評価法に基づく環境大臣意見を経済産業大臣に提出いたしましたので御報告いたします。意見の概要は御手元の資料を御覧いただければと思います。これまでと同様に、CO2排出削減の具体的な道筋が示されないまま容認されるべきものではない等の厳しい意見を述べております。加えて、大気環境への影響等に関する地元兵庫県や神戸市からの意見も踏まえ、神戸市との環境保全協定を、実態に即して積極的に見直すとともに、地域住民等の理解・納得が得られるよう、誠意を持って丁寧かつ十分な説明を行うことを求めております。また、売電先の関西電力においても、引き続き、エネルギー供給構造高度化法の遵守及び自主的枠組み全体の目標達成に取り組むことを通じて確実にCO2排出削減に取り組む必要があることを述べております。環境省として、事業者である神戸製鋼所の今後の計画的な取組等について、継続的にフォローしていきます。なお、神戸製鋼所につきましては、昨年10月に製品検査データの改ざん問題が発覚しました。検証を行った範囲では、アセス手続に関する不適切な処理は確認されませんでしたが、同社は、事態の重大性に鑑み、正確な情報提供と誠意ある説明に努めていただく必要がある旨も述べております。
 次に、電気事業分野からのCO2排出削減に向けては、電力業界全体での取組も必要であります。平成28年2月の環境・経済産業両大臣の合意に基づき、今年度の電気事業分野の地球温暖化対策の進捗状況の評価、いわゆる電力レビューを行いました。今年度の評価結果の内容は御手元の資料を御覧いただきたいと思います。ポイントといたしましては、電気事業者による自主的な協議会では、今年度初めて会員企業の取組状況の評価を実施いたしましたが、会員が相互に競争関係にある中、協議会として各社に取組を促していくという実効性の観点で課題があること。また、省エネ法ベンチマーク指標につきましては、石炭にバイオマスを混焼することで計算上の発電効率が改善する一方、実際のCO2削減には十分ではないことが明らかになったこと。こういった点を指摘しています。取組の進捗が見られない場合に目標の達成が困難になることがないよう、関係省庁が連携して施策の見直しを含めて検討すべきであり、地球温暖化対策を担う環境省としても積極的に取り組む必要があると考えております。

2.質疑応答

(問)日本テレビの中村と申します。今、三つ紹介があったうちの三つ目の電力レビューについて伺いたいと思います。まず、結局、電力会社が自主的に自主行動計画のチェックをしたのだけれども、自主的枠組みでは実効性に疑問ということですけれども、もう少しそこについて詳しく伺いたいのと、例えば、つまり自主的ではだめ駄目だと、どういった枠組みが必要になるかということを、何かお考えがあれば聞かせてください。
(答)レビューの評価結果では、正に自主的取組の主体であります協議会のPDCAについて、会員企業が相互に競争関係にある、会員企業は皆、電力事業ということで競争関係にあるわけですから、そういった中でやはり定量的な取組目標の設定を含めて具体的な評価基準を明確にしなければ実効性には疑問があると、そういうふうに指摘しております。これも踏まえて、今回のアセスの環境大臣意見でも述べているわけでございますけれども、経済産業省に対して、電力レビューの評価結果において疑問を呈している2030年度の目標達成に向けた協議会のPDCAの実効性を確保するため、PDCAの評価基準を明確化させるように求めております。要するに、定量的にちゃんと目標に向かっているのか、中身をしっかり見ていかなければならないということを指摘しているということでございます。
(問)もう1問。神戸製鋼の件にも関わるのですけれども、電力事業者の対策となると、まず火力発電の問題があると思うのですけれども、今回の電力レビューの中で、特に何が駄目かという一例として、石炭火力でバイオマスを混焼すると、その分発電効率が良くなったように算出される。これはこれまでも決まっていた話なのですけれども、実際に出る二酸化炭素の量は減っていないではないかという、結構そもそも論について言及されていると思うのですけれども、その上で、達成が困難になるときは施策の見直しを含めて検討すべきというような総括されていますけれども、施策の見直しを含めて検討すべきとは、具体的にどういうことを見直さなくてはいけないのではないかと意味されているのでしょうか。
(答)まず、石炭火力にバイオマスを混焼するということになりますと、これは省エネ法上の火力発電効率というのは44.3%という目標値があるわけですから、これは混焼しますと、石炭火力だけだと発電効率が40%なのですけれども、例えば2割混焼しますと、発電効率という意味では50%に上がるということでありますけれども、今度はCO2の方の目標は、排出係数が0.37kgCO2/kwhという目標があるわけですけれども、そこには到底達成しないのですね。それから、発電効率は上がるけれどもCO2の削減は十分に行われないと、こういうことでありますので、こういったことも含めて地球温暖化対策ということを考えましたら、もっと具体的な検討を進めていかなければならないということであります。 ただ、この具体的な取組の検討というのは、具体的に今ここで何か案があってそれをお示ししているというわけではございません。今後の取組の進捗等を踏まえて検討していく必要があるということでございます。環境省の方では、例えば「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」の取りまとめでは、電力部門の対策の喫緊性が指摘されたところなのですけれども、こういったことも含めて、引き続きの検討というようにしていきたいというふうに思っております。

(問)日経新聞の草塩です。2点伺いたいと思いまして、一つはちょっと別の話でして、原子力防災の方のお話なのですけれども、先日、2017年度の玄海原発の原子力総合防災訓練の結果を公表されました。これについて大臣の御所感を伺えればと思います。
(答)まず、玄海地域の緊急時対応につきまして、平成29年度原子力総合防災訓練を行いました。その教訓事項等を踏まえて、より一層の具体化、充実化を図るための検討を進めております。原子力防災訓練の結果と、それから官邸を中心とした総合防災訓練と、こういうふうに一応分かれて、報告書が既に取りまとめられておりまして、まず当該訓練の実施成果報告書におきましては、主な良好事例として、良かったこととして、一つは、複合災害時の対応として、地震との複合災害時には地震からの安全確保を優先した上で防護措置を実施すること。それから離島においては、波浪により海路避難が困難な場合には、海路避難が可能となるまで屋内退避を実施すること。こういったことが確認できたということが挙げられております。それと、国の職員の緊急派遣においては、緊急時対応に記載している佐賀空港ではなく福岡空港に急きょ変更したわけでございますけれども、適切に対応できたことなどが挙げられております。また、参加自治体からの意見として、自家用船舶の活用の可能性も含めた離島からの海路避難の充実方策なども検討事項として挙げられているところでございます。原子力総合防災訓練では、今般、その結果を実施成果報告書として取りまとめたわけですが、そちらの報告書におきましては、例えば、地震との複合災害時や波浪により海路避難が困難な場合の対応として、人命リスクを踏まえ、安全確保を優先することや、各拠点の初動体制の確立及びテレビ会議システム等を活用した情報共有、意思決定に係る基本的手順を確認できたことなどの成果があったということを言っております。一方、無用な放射線被ばくを防止するための屋内退避を重視した訓練を行うことの必要性など、課題についても指摘されております。今後、この報告書を踏まえ、玄海地域の緊急時対応の更なる充実強化に取り組むとともに、原子力総合防災訓練の更なる改善に取り組んでまいりたいと考えております。
(問)もう1点、ベンチマークのお話にちょっと戻りたいのですけれども、様々な課題が指摘された中で、やはり今後どのように対応というか、検討されるかというのが興味がありまして、まだ具体的な案は示されていないところですけれども、例えばPDCAの定量化というところですとか、あるいはバイオマス混焼をどうするかというところですね、時期でいえば、どのくらいで経産省側と、遅くとも話し合いを始めなければいけないというのがございましたら伺いたいと思います。また1年後にベンチマークが出てくる中で、それに例えば間に合わせるのかとかですね。
(答)具体的な検討を現時点で進めているわけではございませんで、今後の取組の進捗等を踏まえて検討していく必要があるという、現段階はそういう状況でございます。先ほど申し上げました石炭火力にバイオマス混焼設備を設け、2割程度の混焼を行えば、今申し上げましたが、省エネ法上の火力発電効率は上がると。しかしCO2の排出は、ほんの多少は良くなるわけですけれども、目標の排出係数に届かないということでございます。これはあくまで、ちょっと例示として申し上げたわけですけれども、こういった形で省エネ法上の発電効率をクリアすれば、あるいはそちらの方の目標に向かって発電効率を上げればいいと、こういうことではなくて、やはりCO2の排出係数、0.37という排出係数の目標がありますので、これに向かってしっかりと改善を図っていただかなければなりません。そういう意味で、いろいろな、これから工夫をしていただかなければならないということを、今の段階では申し上げているということであります。

(問)NHKの金澤と申します。1点だけなのですけれども、神戸製鋼所の火力発電所の、今回、新設計画ということですけれど、これまでも意見の提出は行っていると思うのですけれど、改めて、今回新設ということで、大臣としてこれまでの経緯も踏まえて、地球温暖化対策に向けてどういう考えで、現時点でもそうですけれども、過去の話も踏まえてどういう考えで取り組んでいくのか、改めてお考えを聞かせてください。
(答)御指摘のように、これまでも武豊火力、三隅火力に対する環境大臣意見を申し上げてきたわけです。基本的にはそれと同様なのでありますけれども、今回の意見の中でも求めております再検討というのは、もう一度一から考え直すということで、あらゆる選択肢の中には事業計画の中止や撤回も含まれるわけであります。非常に厳しい意見を申し上げたという認識であります。基本的な考え方として、目標達成に向けた具体的な道筋が明確でないままの石炭火力発電所の新増設は容認されるべきではなく、神戸製鋼所は目標達成に向けた具体的な方策や行程を明確にし、CO2削減に向けた不断の努力を講ずることが必要不可欠だということでございます。それと、関西電力ですね、売電先の関西電力の方の対応についても言及をしておりまして、これは初めてのことだというふうに思っております。