大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年2月16日(金)9:05 ~9:25 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について御報告いたします。本日、環境省が厚生労働省及び経済産業省と共同請議を行った「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。この政令は、昨年の通常国会で成立した「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律」に基づき、審査特例制度における国内総量上限となる環境排出量の数量を規定し、昨年のストックホルム条約第8回締約国会議において新たに廃絶することとなった化学物質を第一種特定化学物質に指定し、必要な措置をとることを内容とするものでございます。これらの措置によって、より適切に化学物質による環境汚染を防止できると考えております。
 次に、私の週末の福島出張についてお知らせいたします。18日日曜日に福島県を訪問し、福島復興再生特別措置法に基づく自治体との法定協議会である「原子力災害からの福島復興再生協議会」に出席いたしまして、関係自治体の首長等と意見交換をさせていただきます。
 次に、奄美大島等の海岸に油状の物が漂着している事案に関する環境省の対応状況について御報告いたします。14日にとかしき副大臣が鹿児島県に赴き、三反園鹿児島県知事と面会し、意見交換を行いました。意見交換の場では、知事から、国としてしっかり対応してほしいと御要望いただき、とかしき副大臣からは、現状の取組を説明しつつ、環境省を挙げて環境回復に取り組むことを知事に説明したとの報告を受けております。また、知事との面会後、奄美大島の現地調査を行い、油状の物の漂着状況を把握し、回収作業を行いました。その中で、海岸によって漂着量などの状況が様々であること、油状の物の状態によって回収の効率が低下したり、難度が高くなること等を確認するとともに、回収の加速化に向け、県や市町村等との連携による回収支援体制の更なる充実の必要性、回収作業に関する技術面からの支援の重要性を確認したとの報告を受けました。環境省としては、今回の現地調査を踏まえ、引き続き漂着物の回収処理の加速化に向け、地元自治体への技術面も含めた支援を鋭意実施してまいります。なお、18日には奄美市においてボランティアの方々も含めた回収作業が実施されると承知しております。環境省の職員もその取組に参加するなど、油状の物の回収に取り組んでまいります。また、漂着地域における野生生物や生態系への影響調査についても引き続き取り組みます。環境への影響調査に関しては、SANCHI号の事故に伴い流出した油や、奄美大島等に漂着した油状のものに関して、国立環境研究所と環境省による検討チームを立ち上げたところでございまして、今後、同チームにおいて環境への影響に関する検討を行うこととしております。このSANCHI号からの流出油等に関する環境影響検討チーム、このチーム長は鈴木国立環境研究所環境リスク・健康研究センター長でございます。環境省としては、これらの取組を通じて、漂着地域での野生生物等の保全、海岸環境の保全、良好な景観の確保等に最大限取り組んでまいります。

2.質疑応答

(問)産経新聞の鵜野です。奄美大島の油の件ですけれども、野生生物への影響について、先日アオウミガメが死んでいるという写真も公開がありましたけれども、現時点で野生生物にどんな影響が確認されているかという情報があれば教えてください。
 あともう1点。今、国立環境研究所と検討チームをつくるというお話がありましたが、具体的にどのような点について検討されるのかということを、もう少し詳しく教えていただければと思います。
(答)まず、野生生物に対する被害、影響の状況でございますけれども、2月13日、鹿児島県奄美市知名瀬の海岸で油の付着したオオミズナギドリの死亡個体1羽が確認されました。この死亡個体は鹿児島県が回収し、外見上は漂着油による死亡である可能性は低いと聞いておりますけれども、同日夜、獣医師による死因確認のための解剖が行われ、死亡は油が原因であることが完全に否定できないとの所感が出されたため、病理検査を実施する方向で調整中ということでございます。既に鳥とかカメとかイルカとか、死亡個体が発見されておりますが、現在のところ、2月6日に発見されましたアオウミガメ、これは鹿児島県奄美市知名瀬でありますが、この死亡個体につきましては油による窒息が死亡原因と考えられるという獣医師の所見がございまして、漂着油による可能性が高いというふうに思われます。その他、2月3日のイソヒヨドリ、それから2月7日のイルカ、そして2月13日にアオウミガメ、そして同じ13日に今申し上げましたオオミズナギドリ、それから2月15日にもササゴイが死亡個体として発見されておりますけれども、これらはいずれも漂着油による影響の可能性は無いか低いかという判断でございます。これからもこうした野生生物への影響の把握を、地元の自治体と連携して行ってまいりたいと考えております。それから、国立環境研究所と環境省による環境影響検討チームでございますけれども、これは海洋の油汚染等に知見を有する専門家や関係機関へのヒアリング等により情報収集も行いながら、収集した情報と環境省や関係省庁が行っている調査結果の分析等を通じて、海洋の水質の影響、油の漂着した海岸地域における水・大気環境への影響及び野生生物・生態系への影響に関する検討を行う予定でございます。

(問)日経新聞の草塩です。原子力防災に関してなのですけれども、昨日15日に水戸市が、広域避難計画の策定を進める水戸市が、広域避難に関する協定を、前橋市など群馬県の自治体と結んだというニュースが出ておりまして、自主的な自治体による協定の取組なのですけれども、これに対して中川大臣の御所感と見方を教えていただければと思います。
(答)水戸市は茨城県内の市町のほか、群馬県を含む近隣4県の市町にも避難することとしております。水戸市は、独自の判断で既に茨城県内の9市町との協定を締結しておりましたが、今般、群馬県内の8市町との協定を締結しました。これは、原子力防災担当大臣といたしましては、こうした動きが進んでいるということは大変心強く思います。内閣府原子力防災としては、関係自治体とともに地域の原子力防災体制の充実・強化に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

(問)熊本日日新聞の内田といいます。昨日、チッソに対する新たな支援策が決まりました。地元の水俣病の被害者団体などからは、加害企業に対して優遇し過ぎではないかといった声も上がっておりますが、大臣としてこういった声に対してどのようにお考えでしょうか。
(答)今般の支援策というのは、原因企業であるチッソに患者補償の完遂や公的債務の返済など、水俣病の原因企業としての責任を全うしていただくことが目的でございます。チッソ株式会社を単に救済するということが目的の措置ではなくて、あくまで水俣病の原因企業のチッソ株式会社が、しっかりと患者さんのための補償、あるいは公的債務を返済して、水俣病の解決、患者の補償、あるいはそういった原因者としての責務を果たしていただく、そのために国としても支援をするということでございます。
(問)関連でもう1点なのですが、今回この支援を行うに当たって、チッソ側に大臣として何らかの要請なりをするお考えはあるのでしょうか。
(答)当然、チッソがこうした支援を受けて、そしてチッソの責務を遂行していただかなければならないわけですから、経営上のいろいろな課題を乗り越えて、経営体としてもしっかり頑張っていただきたいと、こういうことでございます。

(問)共同通信の丸田です。今のチッソの関連で追加でお尋ねします。昨日、過去の経緯から御説明いただきましたけども、今回の新たに発生する償還の支払い猶予ということも、見方によっては単なる先送りというような捉え方もできると思います。これまでも支払いの4年間の猶予とか、そういった経緯もありますけども、そういったものを踏まえて、こういう先送りにも捉えられかねない状況を打破するには、これまでも言われいますけれども、チッソの自助努力ですとか、どういったことが重要になってくるとお考えでしょうか。
(答)チッソが持っております公的債務、これは、あくまでチッソが返済をするというのが原則でございます。ですから、先送りというよりか、チッソの返済能力の範囲でなければ現実問題として返済できないわけですから、チッソの返済能力を考えて猶予しているということで、これは必ず最終的にはチッソが返済をしていかなければ困ると、こういうものでございます。あくまで原因企業が支払うべきものだという原則は、しっかりと維持していく必要がございます。そのために、既にチッソ自体いろいろ自己努力、経営上の努力はしておられるわけですけれども、一層そうした努力を積み重ねて、そして患者さんへの補償、また公的債務の返済というものをしっかり果たしていただくということを要請しております。
(問)追加で1点だけ。今回は支払いの無利子猶予ということですけれども、過去の経緯ですと、いわゆる平成7年の政治解決のときには、国の負担分の270億、利子を含めると300億余りですけれども、返済免除ということを判断されたこともあったと思います。いわゆる債務放棄、支払い免除ということの是非について、国民の理解が得られるのかとか、今、大臣がおっしゃった、チッソ自体が必ず返済するというお話がありましたけれども、今後の支払い免除ということを判断する可能性について、検討状況、あればお願いします。
(答)今のスキームは返済の猶予ということでありまして、返済の免除ということはその枠組みに入っておりません。利払いを免除するというようなことは、一般的に救済として許される範囲でそういった免除をすることはありますけれども、債務自体の免除ということは現在のこのスキームでは入っていないと。これからも、あくまでチッソが債務は返済をしていただく、こういうことを前提にスキームを決めたということであります。