大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成29年11月2日(木)15:30 ~ 15:59  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私の方からは特にございません。

2.質疑応答

(問)朝日新聞の小坪です。私からは2点お伺いしたいと思います。1点目は、来週から始まるCOP23についてです。本当にすぐそこまで迫っておりますけれども、改めて環境大臣を引き受けられて、この会合に向けてどう臨まれるのか所感をお聞かせいただけますでしょうか。
(答)国会のお許しがいただければ、私はCOP23に日本政府団の代表として是非参加をし、世界の気候変動対策の着実な実施に向けた我が国の立場を発信したいと考えております。パリ協定を着実に実施していくためには、同協定の実施指針を策定することが不可欠でございます。この実施指針につきましては、来年のCOP24までに策定できるよう、これから始まりますCOP23において具体的な進捗を得ることが重要であると考えております。米国も引き続きCOP23を含む国際交渉に参加する意向であると承知しております。パリ協定の気運を維持できるよう、世界各国の首脳・閣僚が明確なメッセージを発信することが重要だと考えております。我が国といたしましても、実施指針策定への道筋がつくように、議論に貢献していくとともに、我が国の取組について積極的に発信をし、世界の気候変動対策におけるリーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。
(問)今一点は復興関連です。先月の28日に中間貯蔵施設も本格稼働したというようなタイミングがございました。被災地の復興はまだ道半ばというようなことでございますけれども、それについて今後どのように取り組んでいくかお聞かせいただけないでしょうか。
(答)昨日、環境大臣、原子力防災担当の特命大臣に再任されまして、福島の復興に向けて更なる努力を続けていかなければならないと改めて決意をしているところでございます。東日本大震災から6年半が経過したわけでございますけれども、引き続き被災地の復興を最優先の課題として取り組んでいかなければならないと考えております。環境省としては、中間貯蔵施設の整備の加速化と、施設への継続的な搬入、放射性物質に汚染された廃棄物の着実な処理、放射線に係る住民の健康管理、健康不安対策など被災された方々に寄り添いながら取組を進めてまいります。また、帰還困難区域における特定復興再生拠点区域の整備についても、しっかりと役割を果たしてまいります。さらに、放射性物質汚染対策を担う組織と、廃棄物リサイクル部門を一元化する等の機構改革を行ったところでございますので、この機構改革の効果がでるように復興再生を加速化してまいりたいと考えております。今後とも被災地の復興に全力で取り組んでまいりたいと重ねて申し上げておきます。

(問)共同通信の深谷と申します。COP23の関係で、先ほど大臣は、アメリカも国際交渉に参加する意向であると言っていましたけれども、トランプ大統領がパリ協定離脱表明以降、日本からは協定残留を求めてきたと思うんですけど、今回のCOPで大臣はアメリカに対してどのようなお話をするのかということと、あとアメリカのEPAのプルイット長官が参加を検討しているという報道がありまして、もしプルイット長官が参加、バイ会談などが行われた場合、プルイット長官にどのようなお話をするつもりかということをお聞かせください。
(答)COP23におきまして、アメリカは引き続きCOP23を含む国際交渉に参加する意向であると聞いているわけであります。ですから私も、COP23におきまして、アメリカの交渉団の代表と直接お目にかかって気候変動対策の着実な実施に向けた我が国の立場というものを申し上げると同時に、アメリカに対しまして、パリ協定の重要性、また気候変動対策を世界が一致協力してとっていくことの必要性というものを、しっかりとお伝えしていきたいと思います。同時に、アメリカに対しまして、やはり世界各国が協調して、そうしたメッセージを発信することが大事だと思っておりますので、できるだけ多くの先進国の代表団と直接お話をして、アメリカに対する働き掛けというものを世界各国が協調していくと。そういった気運といいますか、そういった礎を築くことができるような、そういうバイの会談を積極的に行っていきたいと考えております。

(問)NHKの松田です。先月、10月31日ですかね、国連環境計画UNEPが報告書をまとめて、地球温暖化対策のための、世界各国が掲げる温室効果ガスの削減目標、これを達成できたとしても3℃以上の気温上昇してしまうというような報告書がまとまっています。その中で、この気温上昇を抑えるために、日本や中国などの稼働している石炭火力発電を段階的に廃止すること、段階的な廃止を急ぐことが必要だというふうに指摘をされています。日本ということを名指しされて指摘をされているわけですけれども、これについての受け止めと、大臣の改めての石炭火力への考え方をお伺いしたいと思います。
(答)UNEPの報告書、ギャップレポートが1日に公表されたということでございます。このレポートによれば、今お話がありましたように、気温上昇を2℃に抑える排出経路と比べて、2030年の時点で約110から135億トンのギャップがあるということでありまして、企業や自治体等を含むすべての主体が温暖化対策による経済的・社会的機会の創出に目を向けるべきということが指摘されております。まず我が国としては、パリ協定の目標を、これをまずはしっかりと実現をするということが大事だと思います。そして諸外国にも、まずは、このパリ協定の目標を各国がしっかりと達成をしていただく、そのためのいろいろな実施細目についての協議が始まるわけですけれども、そういったパリ協定の実施指針に関する交渉や途上国支援を通じて、世界の温暖化対策の強化に積極的に貢献したいと思っております。その上で考えますと、このギャップレポートによれば、それでも足りないということでありますので、やはり次のステップが私は必要だろうというふうに思います。ですから、まずはパリ協定の目標を各国がしっかりと達成をしていく、しかし、次のステップがやはり、どうしても必要になるという認識であります。そしてまた、とりわけ石炭火力の問題でございますが、このUNEPの報告書においても、世界各国による石炭火力の段階的な廃止が指摘されているわけでありまして、我が国においては、逆に石炭火力の多数の新増設計画、約40基がございまして、仮にこれらの計画がすべて実行されれば、当然、我が国の削減目標達成は困難になるわけでありまして、この石炭火力の新増設を進めるとういうことは、私は基本的には許されないことだと考えております。石炭火力については、世界の流れからいっても、やはり否定的に考えていかなければならないと思っております。特に経済性の観点のみから石炭火力の新増設を進めるというようなことは、これは絶対に許されないことだというように私自身は考えておりまして、こういった考え方を踏まえて、環境省といたしましては、これから石炭火力発電所計画の環境アセスメントなどの機会を通じて、しっかりと環境大臣としての意見を申し上げていきたいと考えております。
(問)今のお答えに関連してなのですけれども、環境アセスメントを通じて石炭火力に対応していかれたいということでしたが、山本前大臣は再検討を含めて検討するようにという動きも見られましたけれども、中川大臣としてはその路線を引き継ぐのか、更に踏み込む必要があるのか、その辺のお考えはいかがでしょうか
(答)昨年2月の環境・経済産業、両大臣の合意に基づく電気事業分野の地球温暖化対策に関する進捗状況のレビューというものがあるのですけれども、これは当然着実に行いますし、山本大臣の路線というものは当然引き継ぐわけですけれども、私としては、この石炭火力について極めてネガティブなのですね。ですから、もちろん山本大臣も同じ気持ちだったと思いますから、そう意味では引き継ぐという言葉でいいと思いますが、非常にネガティブ、経済性の観点のみからの新増設というものは認めない、許されない。こういう非常に強い気持ちで臨んでいきたいと思っております。
(問)あと1点なのですけれども、温暖化対策の削減に向けて、各国が目標を達成した上で更に次のステップが必要だということをおっしゃられておられましたが、次のステップというのは、具体的に目標の引き上げを指すのだと思うのですけれども、どういった段階でどのようなことを具体的に指していくのでしょうか。
(答)そこのところはまだ全く現状見えてないのですね。ですからまずは、国際的な合意という面におきましてもパリ協定の目標をしっかりと実現していただく、国内的にも、そういった今の段階ではパリ協定ということでありまして、2030年度に26%削減、さらには2050年には80%削減という、そういう目標を今、打ち出しているわけですが、それでもまだ足りないといういろいろなレポートが出ておりますので、これも本当に厳しい話ですが、次のステップというのはまだ現状見えていない、全く見えていない。しかし私は必ず次のステップが必要になるというふうに思っております。そういう認識の下に、環境省として発信をしていきたいと思っております。

(問)毎日新聞の五十嵐です。COPに絡んで1点お尋ねします。パリ協定が発効して、実施の段階に移っていくというステージに入っていますが、今後の取組を進める上では、企業であったり自治体の取組などが不可欠だと思います。この度のCOP23にも、恐らく企業の立場で参加される動きがあるかと思いますが、一方で環境省が検討を進めていますカーボンプライシングを巡っては、企業間、業種間でもこれまでの聞き取りなどを見ても意見が二分しているように思われます。環境省としての基本的な考え方を改めて整理していただくとともに、こういった経済界に対して、どのように必要性などを働きかけていくのか、お考えをお聞かせください。
(答)カーボンプライシングにつきましては、本年6月に「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」を立ち上げて、今、様々な観点から検討していただいているところでございます。そういう検討会でも、経済界の代表の方から御意見をいただき、またいろいろな問題点の指摘をいただいているところであります。それは、私も十分承知をしております。一方で、諸外国の状況を見てみれば、カーボンプライシングというのは、かなりいろいろな国で導入されているわけです。炭素税、CO2税、電気税、気候変動税とか、名称はいろいろありますし、その仕組みも様々でありますし、その使途についてもいろいろな例があるわけでございますが、かなりの国でこういった炭素税と呼ばれるものが導入されていることは事実でありますし、排出量取引制度も、EUにおいては、もう既に導入をされておりますし、また、スイスでも導入されて、それから我が国でも一部自治体でそういう方向で今ずっと進んできているわけであります。韓国でも、また中国でも導入するという、そういう予定だということで今検討が進められているというようなこともございまして、世界の流れはカーボンプライシングの制度を導入して、経済的な手法としてCO2の削減を進めようと、こういうふうになっていくと思います。ですから、我が国もいろいろな問題があることは承知しております。また、経済界の御主張も、それはもっともな点ももちろんあるわけでありますが、それぞれの問題点をどうやったら乗り越えていけるのかという、そういう前向きな検討をしっかりと進めなければならないと思っております。経済界の方も、ただ問題点を指摘するだけではなくて、やはりどういうような制度にすれば、そういった問題が少なくなっていくのか、あるいはそういった課題を乗り越えられるのかという建設的な御議論をいただいて、そしてやはり、とにかく、いろいろなあらゆる方策をとっていかなければ、この地球の危機は守れないと、解消できないと、こう思っておりますので、カーボンプライシングについても前向きに検討を進めていきたいと思っております。

(問)環境新聞の小峰です。今の毎日新聞の質問に関連して、いよいよ11月になりまして、税制改正論議が本格化しますが、来年度の税制改正大綱等に、今、大臣がおっしゃったカーボンプライシングが、何らかの、政官界用語でいう「芽出し」みたいな表現が盛り込まれる、盛り込む意向は大臣はお持ちでしょうか。
(答)自民党の税調の仕組みや、どういう形で議論が進められてどういうふうにまとまっていくのか、私はずっと自民党税調の幹事をしておりまして、その辺のところは十分によく承知をしているわけでございまして、なかなか今の現状で、党税調の中に来年度の税制改正、あるいはそれ以降のもうちょっと中長期的な課題ということであっても、今年の大綱に、今おっしゃった「芽出し」をするというのは、まだ議論が関係省庁で熟していないので、かなり難しいというふうに思います。今、環境省の検討会で議論をしておりまして、やはりこれからその必要性について、関係各省もそうですし、経済界もそうですし、いろいろな団体の方を含めて、国民的にカーボンプライシングについての理解を、必要性に対して、よく分かっていただけるような、そういう環境整備といいますか、土壌をまずはつくっていくということが大事だと思いまして、ちょっと今年の税調では難しいのではないかと思っております。
(問)そうすると、来年の秋が大臣にとっては正念場だというふうな覚悟でございましょうか。
(答)いつも正念場だと思っております。

(問)NHKの金澤と申します。一点だけ、中間貯蔵についてお尋ねしたいのですけれど、先月末に大熊町の方で本格的な稼働が始まりまして、その後の双葉町についてなのですけれど、大臣は先の会見で、なるべく早期に稼働できるようにというお話だったのですけれど、その後双葉町の稼働についての見通しについて何か進展があれば一言お願いします。
(答)双葉町の土壌貯蔵施設につきまして、正に現在、施設の整備を進めているところでございます。報告を受けましたところ、9月に入ってから長雨などがあって、当初の進捗より若干遅れているというような状況であると聞いておりまして、とにかく速やかな運転開始にむけて努力しているところでございますけれども、時期について、今の時点で確たることは申し上げられないということでございます。ただ、速やかな運転開始に向けて努力をしていきたいという状況には変わりはございません。

(問)読売新聞の中根です。先ほど少しお話があったかもしれませんが、パリ協定の発効から11月4日で丸一年が経ちますけれども、日本の政府、民間の取組等について、この約1年間を総括して所感を教えてください。
(答)この1年間というか、もう少し長い期間で見て、日本の取組は、もちろん政府、企業、それから民間のいろいろな関係団体や自治体を含めて、地球温暖化対策に対する取組は、かなり、皆それぞれの立場で努力をしておりまして、それなりの効果はもちろんあがっているというように思います。そして技術開発も、各企業も相当進めておりますし、また、環境省が中心になっていろいろな国民運動もしておりますので、パリ協定の目標達成に向けて気運は一段と高まってきているというふうに思います。ただ一方で、先日お話が出ておりましたが、我が国のCO2排出量当たりのGDP、炭素生産性という言葉でいわれることもありますけれども、これは、もうちょっと長期的にみますと、日本の場合はほとんど変わらない。ところがやはり、他の先進国がどんどん日本を追い抜いていっているということでありまして、そういう面から見ると、その数字ですべてを計るわけではもちろんないのですけれども、環境先進国といって胸をはれる状況なのかどうかということについて、疑問が呈されている。そういう面もあるというわけですね。これは、いろいろな面がありますから一面的に見ることはもちろんできないわけですけれども。ですから、さらに、いろいろな部門で努力を重ねていかなければならない。まだまだ、いろいろな形で努力をしなければならない。そういう面も非常にあるというふうに思います。ですから、進んでいる面もあるけれども、まだまだここで手を緩めては駄目だと。こういう状況ではないかと認識をしています。