大臣談話・大臣記者会見要旨

山本大臣記者会見録(平成29年6月6日(火)9:55~10:08  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私の方から1件御報告をいたしたいと思います。「平成29年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が本日の閣議において決定されました。持続可能な開発目標の採択やパリ協定の発効等、国際社会は持続可能な社会の実現に向けて大きく動き出しています。本年の白書は、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」をテーマとして、SDGsやパリ協定を踏まえた国内外の動向とともに、SDGsやパリ協定の目標達成の鍵となる、環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた我が国の方向性や取組事例等を紹介しております。この白書が、我が国における持続可能な社会の構築に向けた一助となることを期待をいたしております。

2.質疑応答

(問)産経新聞の鵜野です。白書の中のパリ協定の章にある2030年度CO2を26%削減という日本の中期目標についてお聞きします。国内で原発に注目して言うのならば、老朽化が進んでいて新規建設の動きも、とりあえず今はないと。再稼働も審査や裁判で必ずしもスムーズにいっていないという現状がありまして、26%削減という目標が難しいのではないかという声が早くも出ております。大臣のこの目標達成の実現性、また実現するために何が必要かという点についてどのようにお考えでしょうか。
(答)原発のことについてはいつも申し上げてますとおり、3条委員会である原子力規制委員会が環境省の外局として設置をされていることから、原子力発電の将来の稼働状況等についてはコメントは差し控えさせていただきます。その上で、2030年の削減目標26%は容易ではない数字だとは思っておりますけれども、私は不可能ではないと思っております。ありとあらゆる施策を動員して26%削減に向けてこれからもやっていきたいと思っております。容易ではないことは事実であります。
(問)ありとあらゆる施策について少し具体的に教えてください。
(答)例えば再生可能エネルギーの世界も太陽光と風力だけではないということは私もそう思っておりますし、環境省としても研究をしてもらいたいという課題があります。つまり、例えの話ですけれども、水力、小水力、これはポテンシャルは非常に高いと思っております。我が国には御承知のように、かなりの数のいわゆるダムがございます。このダムの落差を利用すれば、かなりの量のエネルギーを作り出すことができます。そのダムの再利用というか、違う目的で、再エネの目的として使用することは十分に可能だと思っております。これは環境省というよりも国土交通省あたりのものの考え方も当然出てまいりますけれども、私はそういう発想をやっていければ、意外と既存のダムを使うことによって、かなりの量は出せるのではないかという期待感もあります。再エネのみならずいろいろな意味でライフスタイルの変革というのも起きてこようと思いますので、そうすると26%は不可能ではないと。非常に厳しいと、容易ではないということだけは私もよく分かっておりますけれども、不可能ではないと思っているような次第でございます。

(問)共同通信の津川です。白書に関連して伺うのですけれども、今回の白書でも、パリ協定について公平かつ実効的な枠組みであると紹介したり、排出抑制と経済成長が同時に達成できるデータを示して、結果的には、この前のトランプさんの離脱表明に反論するような内容になっていると思うのですけれども、改めて、これまでも何度も伺っていますけれども、パリ協定への思いと、離脱表明したアメリカをどう説得するか、お考えをお聞かせください。
(答)前回の記者会見でも申し上げましたけれども、前回、アメリカが京都議定書の世界から離脱したときには、あまり経済という切り口はなかったと思っております。しかしながら今、パリ協定ですべての国が参加するということは、それ自体も画期的なことなのですけれども、いわゆる経済成長と気候変動対策が両立するという考え方の下でパリ協定というものが成立をしていった。私自身も、今日どこかの新聞が書いていたかと思うのですけれども、世界中の企業で、気候変動の対策というのが世界的な潮流になってきている。その潮流に乗り遅れてはいけないといって、企業が今、様々なイノベーションに向かっていると、意欲を示していると。つまり、そういうことが経済成長につながってくるのだと思っております。就任のときにここで御紹介申し上げましたけれども、京都のときには萌芽はあったわけです。それは、いわゆるプリウスに代表されるハイブリッド車、あのときにはまだトヨタのトップが「これは商売にはなりません」とおっしゃったのです。わずか十数年前ですよ。「商売にはなりません」とおっしゃったのが、その後どうなっていったのかは、皆さん方のほうが御承知だろうと思いますけれども、世界を席巻していったわけです。つまり、こういう世界のイノベーションというのは、一度動き出すと世界を席巻するくらいの動きになってくる。我々はそういう経験をしたわけでございますから、今回のトランプさんの決定というよりも、経済成長といわゆる気候変動対策は両立するということは、日本は経験済みの世界ですから。それを、これから世界に広げていくリーダーはやはり日本だろうと。既に日本は経験しているのです、そういう世界を。そういうつもりでこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
(問)改めて、アメリカをどう説得するかという部分をちょっとお聞かせいただければと思いますけれども。
(答)これは容易なことではないと思いますけれども、現実問題のパリ協定からの離脱の仕組みからいくと、少し時間があります。時間がある間に、アメリカに今申し上げたようなことを、私は申し上げていきたいと思うし、ここ3日、4日のいろいろな動きを見ていますと、アメリカの企業のほうが、かなり今回のトランプさんの決定に対して、やはり反発をしている。そして、かなりの動きが出てきている。そういうことに期待をいたしたいと思いますし、カリフォルニア州に代表されるような州単位での動きがあるやに聞いておりますので、ある意味からいったら、そういうアメリカの状況も見極めながら、私は話すことは話していきたいというふうに思っております。

(問)NHKの松田です。今のトランプ政権の関連なのですけれども、トランプさんは脱退の理由としてパリ協定に残るとコストがかかるというようなことを言っていますが、今大臣がおっしゃられたように、世界の潮流が経済界も含め、温暖化対策を進めていくというような潮流ということですけれども、改めてトランプさんが言っているコストがかかるということについて、大臣はどのように反論されますか。どのようにお考えでしょうか。
(答)私の経験からいくと、やっぱりこういう対策というのは当然のごとく、先進国を中心としてコストという問題は考えなくてはいけない。であるならば、トランプさんがおっしゃることも当たっているのだろうとは思います。ただ、パリ協定に至った一つの歴史を振り返っていくときに、責任ある国というのはある程度コストを意識して、コストが少々かかろうとも責任ある態度をとるべきであるということでパリ協定に至ったわけです。アメリカというリーダーとしての資格を持った国であるならば、当然その思いでこの問題に取り組んでいただきたいと私は思っております。ただ短絡的なコストではなくて、全体の話の中での責任という立場においてのコストだということをもう少し意識していただきたいと私は思います。

(問)読売新聞の野崎です。白書の話に戻るのですけれども、今回初めてSDGsを大きく取り上げたと思うのですが、その意義を改めて伺いたいのと、SDGsという概念をどういうふうに広めていきたいとお考えか大臣お願いいたします。
(答)SDGsの実施に向けて、国際社会の関心が高まりを見せているということと、我が国においても、グローバル企業を始めとしてSDGsへの注目が集まっています。こうした中、政府の「SDGs実施指針」が昨年の12月に決定されたことを踏まえまして、SDGsの環境側面を中心に、国内外の最新の動向や、地域や企業の特徴的な取組等について、白書で今回紹介をするわけでございます。皆様方には御紹介したかもしれませんが、愛媛県の宇和島、たった人口8万の町で民間会社の若手の経営者がSDGsの勉強会を開いているのです。こうした地域においてもSDGsという概念が少しずつ理解されようとしている。であるならば、当然のごとく環境省が先頭に立つわけですから、白書の中でそれを取り上げていくのは当然だろうと私は思っております。