大臣談話・大臣記者会見要旨

山本大臣記者会見録(平成29年3月17日(金)9:22~9:41  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私の方から1点御報告いたします。長期低炭素ビジョンについて御報告いたします。昨日、中央環境審議会地球部会において、長期低炭素ビジョンを取りまとめていただきました。かねて申し上げているとおり、パリ協定の下、世界は、今世紀後半に実質排出ゼロにするという長期目標に向かって大きく動き始めており、この潮流はもはや変わらないと考えております。こういう流れを受けて「長期低炭素ビジョン」は、気候変動対策をきっかけにしたイノベーションを連続的に生み出すことで、国内での大幅削減と経済成長や地方創生等を同時に実現するとともに、世界全体の排出削減に最大限貢献する絵姿をお示しいただいたものであります。環境省としては、「長期低炭素ビジョン」を長期大幅削減に向けた基本的な方針とし、取組を進めてまいります。

2.質疑応答

(問)時事通信の今泉です。昨日、中環審の長期低炭素ビジョン小委員会で、ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ教授が講演をされました。大臣もお会いになられたと伺っておりますが、炭素税について日本の場合、温室効果ガス削減と経済成長との両立に非常に適した税だというふうにおっしゃいましたが、大臣の受け止めをお聞かせください。
(答)私どもが進めようとしている対策にとりまして、教授の御発言は非常にありがたく受け止めさせていただきました。力強くこのお言葉を我々は受け止めさせていただいたということでございまして、今回の招待は非常に良いことだったと思います。
(問)炭素価格、カーボンプライシングについて、環境省は4月から有識者検討会で本格的に議論を始めるというふうに伺っておりますけれども、具体的に炭素税か排出量取引かというような舵を切ったというわけではないのでしょうか。
(答)ないです。炭素税という考え方について教授は、経済成長にも資するものだというようなお考えであります。御承知のように、教授はやっぱり経済学者として著名な方でありますから、経済学の立場から炭素税というものを分析していただいたと思っておりまして、そういう意味において私どもの視点が及ばない範囲で、切り口が違った解釈を聞かせていただいてよかったと思っております。
(問)二つ目の質問なのですけれども、福島県浪江町の除染をめぐって、汚染土の取扱いで不適切な事例があったという一部報道がありました。事実関係を含め、概要をお聞かせください。
(答)詳しいことは、また後ほど事務方からお話があろうかと思いますけども、この浪江町の当該除染工事というのは、平成27年6月に安藤間が幹事社であるJVが受注をしております。本事案について放射性物質汚染対処特措法の違反はなかったと承知をいたしております。平成28年4月に受注者からの報告を踏まえまして、同月、環境省において除染の内容が適切であったかを確認し、その結果、一部指示通り施工したものの線量の高いところが残っていたことから、同年5月に追加の除染を指示し、同月線量が下がっていることを確認したという報告を受けております。詳しいことについては是非事務方の方に御確認を願いたいと思います。

(問)共同通信の佐々木です。森友学園の問題について、昨日、籠池理事長の証人喚問をすることが決まりました。国会での証人喚問は2012年4月に年金消失問題をめぐって行われて以来ということなのですけれども、まず決まったことについての御所感をお伺いいたします。
(答)報道ベースでしか事実を知りませんので、基本的にはコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。この事案については国民注視の事案ということに相成るかと思いますので、今この時点においては、先ほど申し上げたように報道ベースでしか事実を知りませんから、私の方からのことさらな所感はないということだけは御理解を願いたいと思います。
(問)昨日、安倍首相からの寄付金が入っているということも言われて、かなり多くの方が驚いたのですが、感想レベルで結構ですので、お伺いできますでしょうか。
(答)これもやっぱり報道でしか知っておりませんので、事実関係等々については私自身が関係をしておりませんから、コメントは控えさせていただきたいと思います。

(問)読売新聞の野崎です。スティグリッツ教授の来日、講演の関係で、昨日大臣は面会されてお話しされたときに、日本への期待というのを直接おっしゃっていて、今後リーダーシップを取っていくということに期待されていましたけれども、そのことに関してどのように受け止められているのかということと、それともう一つ関連して、スティグリッツ氏がそう言ったのはアメリカが環境政策に対しておそらく消極的になるであろうというような反応、予測に基づいておっしゃっていたようですが、実際トランプ政権の予算教書のポイントが発表になってEPA予算がかなり減るということになったのですが、関連してその2点、大臣としてどう受け止めるかお伺いいたします。
(答)スティグリッツさんのお話については、先ほど申し上げたとおりでございまして、著名な経済学者が我々の一番関心の高い炭素税というものに踏み込んだ御示唆をいただきました。大変ありがたかったと思っております。
 それで今、後段おっしゃったアメリカの予算教書のことについては、これはアメリカの内政のことですので、基本的には差し控える話題だろうとは思っておりますが、予算を3割カットされるということは、我が身に、いざ我が国の環境省予算が3割カットされましたといったらどういうことになるのかと想像したときに、おおよそ答えは出てこようかと思うのです。人員も3200人とかいう数字が躍っています。3200人の職員がいなくなったら環境省は消滅だなとさっきも笑っていたのですけども、それぐらいのインパクトのある数字が伝わってきたということは、私にとりましてはやっぱり正直ショックです。

(問)NHKの松田です。今のアメリカの予算に関連して、国内での予算もEPAで削減するということと同時に、国際的な気候変動プログラムへの拠出金に関しても減額するというようなことを打ち出しているのですが、それに関して国際的な気候変動への対応ということにどのような影響が出てくるか、大臣が一番懸念されているのはどういうところでしょうか。
(答)拠出金のことについては、やっぱり具体的にどの分野がどうだということまでは、まだ我々も把握していないし、言われてはいないと思いますけども、いずれにしましても、今回の予算教書を見る限り、非常に厳しい状況が余儀なくされるということは想像はつきます。想像はつきますけども、具体的にどこがどうということがまだ表に出てきていないので、そしてまたこれは希望的観測ですけども、いろいろ聞く中で、いつも言いますように、アメリカの州であったり企業であったりという単位の方々の今までの行動を見ておりますと、なかなか予算教書通りの動きになってくるかどうか、これも予測がつきませんので、ちょっと今、現時点においては、我々の答えは難しいなと思っております。
(問)アメリカ国内では、いろんな州や企業の動きがあるかと思いますが、国際的にやはり同じアンブレラグループの中でもアメリカの存在感というのは大きかったと思うのですが、その辺りでアメリカの政策が弱まることで、日本としてはどういう姿勢をこれから取っていかなければいけないと大臣お考えでしょうか。
(答)これもいつも申し上げます通り、アメリカという国が今後どういう環境政策を取ろうとも、日本は日本の役割を果たしていく、これに尽きるのだと思っておりまして、日本が今まで果たしてきた国際舞台の中での仕事を、これからも日本は真面目に取り組んでいきたいと思っております。

(問)愛媛新聞の山本です。大臣の地元の四国電力が仙台市に火力発電所を建設するという発表をしていますが、以前から石炭火力の発電に対して非常に厳しい見解をお持ちなのですが、どういうふうに受け止めているのでしょうか。
(答)もうこれは多分ご存じの通り、私は大規模であろうが小規模であろうが、石炭火力というものに対しては非常に懐疑的に見ております。とりわけ、今回、四国電力、地元の電力会社ですが、仙台でバイオマス混燃でおやりになるということも聞いておりますけれども、この前の事例が仙台ではありますので、よほど自主的な環境アセスをきっちりやってもらいたいと同時に、住民に対する説明を丁寧にやってもらいたいなと思っています。ただ、前段申し上げたように、石炭火力は私は大規模であろうが小規模であろうが、やっぱりこれはちょっといかがなものかという考えは持っております。

(問)共同通信の井口です。今回まとまった長期ビジョンについてですが、これは経産省でも並行して長期戦略の下地になるような案の検討が進んでいると思いますが、現時点で二省の間の距離感はどれほどあるのかというのをどういうふうにご覧になっているかということが一つと、いずれこれは政府の戦略案として一つにしていかなきゃいけないと思うのですが、いつもお聞きしていることではありますが、いつごろそういう検討を始めるべきかというところをお聞かせください。
(答)経済産業省の報告書はまだ出ていないと承知をいたしております。ただ、環境省としてはビジョンに示す社会の絵姿の実現のために、内外の動向等を踏まえた具体的な道筋について、議論をこれからも深めていくことが必要だろうと思っております。
 具体的な議論の進め方については、事務方に検討を指示したところでございまして、いつごろと言われますとなかなか、ただ十分にという言葉が伊勢志摩のときにあったと思うのですが、あの十分という言葉を昨日から自分なりに考えているのですけども、ただ拙速だけは避けたいと思いますので、政府内で十分に議論を進めていきたいと思います。ただ、環境省としては、このように考えていますという考え方をお示ししたのだと私は思っておりますから、この時期に環境省が長期低炭素ビジョンを出したということは、私はタイムリーであったと思っているのです。

(問)環境新聞の小峰です。昨日来られたスティグリッツ教授は、去年の今頃も来られています。そして、大型炭素税を導入した場合、三つほど効果があって、その中で歳入の増加ということも言っております。この歳入増加に関して使い道なのですけれども、別に環境対策だけではなくて、社会保障財源だとかこういうことも検討してこそ、大型間接税が国民に受け入れられるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
(答)御指摘の通り、もう既に先行している国において、税の使い道ということはそれぞれの国がそれぞれ工夫をされていらっしゃいます。この工夫をされているということは国民の支持を得るために多分されているのだろうと思っております。多分、スティグリッツさんもその辺りを、世界の潮流をご覧になって、炭素税というものをいわゆる歳入も含めての経済効果というものを分析していらっしゃると思うのです。そういう意味において、我が国が、さっき御指摘されましたカーボンプライシング、どの方向に行くかも我々の今後の検討課題と思っておりますけれども、一つの示唆であるということは間違いない。歳入というものの考え方が、この環境の中に入ってきたと、それはやっぱりいつも言うのですけれども、ここ二、三年、カーボンプライシングという言葉が表で躍るということはほとんどなかった。水面下ではあったけども、それがやっと表で躍るような時代になってきたという僕自身は感覚を持っておりますので、今後のいろんな検討課題があるのですけれども、検討課題の一つがやっぱり今回の教授の御示唆だったと思うのです。
(問)大臣のその御発言に関連して、思い起こされるのは、だいぶ古い話ですけれども1994年の細川政権時に当時の消費税を3%から7%に上げることに関連して国民福祉税構想というのを出しました。夜中の記者会見で、なぜ7%かと聞かれたら、腰だめで、銃を撃つのと同じようなものだと、それで7%と言ったということでした。準備不足でこれは壊れてしまい、それが結局、細川政権の消滅にもつながった大きな原因になりましたけれども、こういうところで、今度は国民福祉税というよりも、今環境ということに関して環境福祉税構想なんというのも大臣の頭の中には入っているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
(答)私自身は頭に入っているわけではございませんけども、いわゆる排出権取引ではなくて炭素税ということで物事を進めようと思ったときには、当然使い道というのを国民の皆さん方に理解してもらうという方向性だけは、これはきっちりしなければいけないと思います。いずれにしましても、今、細川さんのことをおっしゃいましたけども、やっぱり準備不足という言葉を使われましたけど、このカーボンプライシングはやっと皆さん方の議論の対象になってきた。この段階ですから、拙速だけは避けなければいけない。だから、準備を万端整えて進めていく話だと思います。僕の気持ちからいきますと、やっとカーボンプライシングという言葉を皆さん方の世界でも、紙面に躍るような時代がやっとやってきたという感覚を持っておりますので、それだけに丁寧に進めていかなければいけないというふうに思っているのです。
(問)それを丁寧に、細川政権のときの失敗のようなことにならないように、カーボンプライシングの検討会で検討していくということだと思うますが、それに関連して、このビルの確か12階に山本大臣の隣の選挙区、愛媛1区の方で塩崎恭久厚労相がいらっしゃるのですが、その辺のところは水面下でお話しされたこともあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(答)いや、隣じゃありません、隣の隣。
(問)塩崎さんは1区ですよね。
(答)僕は4区、隣の隣で、間に松前町とかが入りますので。それはいいのですが、塩崎さんとそのようなことを話したことはありません。最近はたばこの話ばかりです。