大臣談話・大臣記者会見要旨

山本大臣記者会見録(平成28年12月20日(火)11:18~11:46  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私の方から2件ご報告差し上げます。本日の閣議において、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」が閣議決定されました。この基本指針では、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくための必要な対策がまとめられております。環境省の関係では、「除染及び中間貯蔵施設の整備並びに放射性物質に汚染された廃棄物の処理は極めて重要であり、引き続き政府一丸となって全力で取り組むべき課題である」とされております。また、帰還困難区域における特定復興拠点の整備については、環境省として、福島復興再生特措法など所要の法整備がなされた上で、関係省庁と協力し、必要な役割を果たしてまいりたいと考えております。引き続き、この新しい基本指針に基づき、福島の復興に向けて誠心誠意取り組んでまいります。なお、除染特措法に基づく除染等の費用の詳細については、この後事務方から御説明させていただきます。
 もう一点ですが、12月4日から17日までメキシコ・カンクンで生物多様性条約第13回締約国会議が開催され、「とりわけ農林水産業及び観光業における各種セクターへの生物多様性の保全及び持続可能な利用の組み込み」を主要テーマとして、生物多様性の主流化を含む広範な分野について議論され、37の決定が採択されました。これに先立つ閣僚級会合は、2日及び3日に開催され、我が国からは関副大臣が出席し、カンクン宣言が採択されました。

2.質疑応答

(問)日本経済新聞の川口です。先週、環境省地球環境局の審議官がアメリカに訪問されて、温暖化のシンクタンクの方で調査されたと思いますが、この中でアメリカとしては民主党になろうと、共和党になろうと、やはり石炭火力の新設は国内では無理だというようなことを調査してきたとお聞きしたのですが、改めて大臣として、石炭、これは日本国内でも無理ではないかと思うのですが、その辺の所感をお伺いいたします。
(答)そう断定的に石炭火力は無理だという報告はなかったわけですけども、いろいろ勘案してみると、もう既にアメリカにおいても石炭火力というのはビジネスとして基本的に成り立たないということが根底にはあるのではないかというニュアンスに取れたとの報告は受けております。従いまして、今回、アメリカに森下審議官以下を派遣して、非常に有益な情報を収集してきてくれたと私は思っております。
 その上で、アメリカが今後どうなっていくかは予断を持つべきではないとは思いますけども、ひと頃個人的に感じておりました絶望に近いような気持ちは多少なりとも和らいだかなというのが率直な感想です。
(問)来年、年明けるとおそらく環境省として長期戦略というのを策定すると思うのですけれども、その中でやはり石炭の規制というのもきちんと盛り込むつもりでいらっしゃいますでしょうか。
(答)私の考えはそのような考えを持っておりますけども、あくまでも作業チームがどういう環境省なりのビジョンを出してきてくれるのか、いろいろ言われておりますけども、環境省と経済産業省が別々に作業を進めているということに対するご意見もあるやに聞いておりますけども、私はやっぱり環境省は環境省なりのビジョンを出すべきだと思っておりますので、環境省らしいビジョンができ上がってくるものだと思っております。

(問)共同通信の角です。先ほど発表のあった、福島復興の基本指針についていくつかお尋ねいたします。先般、報道等されていますけれども、帰還困難区域の復興拠点の除染について、従来の東京電力に求償するということから、国民負担、国費の投入になったという理解でよろしいでしょうか。
(答)国費ということははっきり今日決まっております。
(問)そのことについてなのですが、これまでも実際は環境省で除染はしていて、費用も最初に付けていて、後から東電に求償するというスキームなので、例えば東電の資金繰りが滞ったから除染になかなか手が付けられませんという状況でもなかったと思いますけれども、こういうふうにスキームを変えることで一体どんなメリットが誰にあるのでしょうか。
(答)帰還困難区域の除染という話でございますので、今までやってきた除染とは当然性質が異なってくるのだろうと思っております。帰還困難区域のことについては、基本的に地元の方々の強い帰還の要望という声を尊重した結果だと思います。それを受けて与党内で議論が行われて今のスキームができ上がっている。それを受けて国の方で今日の閣議決定に至ったと思っておりまして、一義的には地元の方々、帰還困難区域に住まわれていた方々が今避難されている、その方々の思いを強く受け止めた結果が与党の議論につながっていったと思っております。それを受けての国の今回の決定だとご理解をいただきたいと思います。
(問)おっしゃっていることは分かるのですけれども、帰還困難区域に帰りたいという強い思いを抱いていらっしゃる方がいるというのは間違いなく事実だと思いますが、一方で、復興庁がされているアンケートで、かなり大部分の方が既に帰還を諦めているような状況もあります。そういう中で、帰還困難区域の除染をされるのはいいと思いますが、従来の除染と性質が違うというのはどういうこなのでしょうか。
(答)従来の除染はご存じのように、いわゆる一時避難という地域だったと思っております。そういうところの除染を中心に行ってきたと、そして今回、帰還困難区域の取扱いについて与党の議論があったと、それを受けての国の決定だと思いますので、従来の除染とはちょっと性質が違うのではないかということを申し述べたわけでございます。
(問)ですからそれがよく分からなくて、基本指針を見ても、帰還困難区域については長期間住民が帰れないことを前提に東電が賠償しているからという理由が書いてありますけれども、別に帰還困難区域以外でも賠償はしているし、帰還困難区域であろうとそれ以外の区域であろうと、除染作業そのものは変わらないと思うのですけれども、東電への求償をやめて、国民に新たな負担をお願いする形になると思いますが、国民負担を受け入れるだけのどのようなメリットがあるのかよく分からないのですけれども。
(答)費用を社会的にどう負担していくかについては、帰還困難区域の復興拠点整備というわが省の考え方、それは除染特措法ではなくて、福島復興再生特措法に基づいて実施するものであること、そしてまた復興のステージに応じた新たなまちづくりとして実施するものであること、除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に実施するものであることといったさまざまな事情を勘案した上で、与党でのご議論を踏まえてこのような方針になったと私は考えております。
(問)非常に抽象的な説明でよく分からないというのが出発点なのですけれども、こういうスキームに変えることによって復興が加速するのであれば、それはそれで大きなメリットだと思うのですけれども、私はあまりそうことは思わないし、要するに助かるのは東電だけではないですか。こういうふうにスキームを変えることで得する人は東電以外に誰かいらっしゃいますか。
(答)損得の話で議論をしたくないのですけど。
(問)損得の話というか、国民は明らかに新たな国民負担が生じるので、それは損ですよ。それを上回る納得感のある理由があるならいいと思いますけれども、この話だけを見ていると、これは明らかな東電救済には何か理由があるのですか、それを明確に説明できますかという話なのですけれども。
(答)東電救済とは違うと思うのですけども。
(問)誰が得するかといったら、それは費用負担をすべき東電が免責されて、その費用を国民が負担するという話ですよね。
(答)先ほどから申し上げています通り、地元のために私どもは作業を進めていると思っておりますので。
(問)いやいや、これまでも環境省は地元のためにずっとされてきたと思うのですけれども、環境省は帰還困難区域以外の除染を地元のために、いろいろ批判もされながら、厳しい言葉をかけられながら、石にかじり付いてずっと努力されて、それこそこれまでだって前面に立ってやってこられたと私は思っていますけれども、ここでやり方を変える理由がよく分からないのですが。
(事務方)この帰還困難区域の復興拠点整備につきましては、今後、福島特措法を改正して、その中でどういうふうな形のものにするかというのを地元とよく相談をして決めていくということになります。その中で、大臣の言葉にありましたけれども、復興のステージに応じた新しいまちづくり、このことと、それから除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に実施する、これがキーワードなのですけれども、実際にその計画に基づいて行われる事業というのは今後具体的に決まっていくことになりますけれども、そのときに復興の加速度という観点からすると、この除染とインフラ整備が一体的であることが望ましいと。そういう観点から今回の閣議決定で、この社会的な費用負担、分担も含めて考えられたものだというふうに考えてございます。
(問)今の説明に納得したわけでは全くありませんが、長くなるのでもう1点、基本指針には帰還困難区域全体についても、時間がかかっても将来的には元に戻すんだという心意気みたいな話だけですけれども、書いてあったと思うのですが、そうすると、今回、復興拠点をどんどん広げるとか帰還困難区域全体を除染しましょうといった場合に、それは東電求償ではなくて国民負担ということになるのか。
(事務方)当面、今回の方針で拠点を決めてそこから整備を行っていくという考え方が出ております。全面を拠点にということは今想定をしておりませんので、そうしたことというのは今のところ、まず5年間できるところを拠点として整備していくという方針が今回出たものというふうに理解をしております。
(問)最後にもう一点なのですが、当然、これまで汚染者負担の原則ということで東電に求償されていたと思います。その除染については放射性物質汚染対処特措法でそのように位置付けられてきたと思うのですけれども、今回別の法律に改正したり、汚染者負担の原則はある意味ねじ曲げる形になると思いますが、政府全体の決定なので環境省としてなかなか言いにくいとは思うのですが、環境行政そのものに対してあまりいい影響があるように思いませんが、そこは大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)基本的には基本法に書いている通り、汚染者負担原則は私は守っていきたいと思っております。さはさりながらという話が今回の話なのだろうと思います。

(問)NHKの橋本です。先ほどの質問に関連してなのですが、大熊、双葉では既に先行して帰還困難区域で除染しているところもあります。これについては東電に、汚染対処特措法に基づく求償はなさるのでしょうか。
(事務方)今行われている帰還困での除染については、除染特措法に基づいて行っている措置でございますので、求償していくという方針で今後整理したいというふうに考えております。
(問)新たに改正する福島の復興再生特措法の下では、インフラ整備とかを一体として除染をやることから国費負担になるという説明だったと思うのですけれども、これまで先行してやっている区域については、インフラ整備とかあるいは新しいまちづくりということは行わないのでしょうか。
(事務方)今後どの場所を拠点にしていくかというところは地元と相談しながら決めていくことになります。それで、そのエリアが先行除染があった場所かどうかということにかかわらず、おそらくその必要性を判断していくということになると思います。ですから、そういったところも含めて、今後、拠点に入ってくる可能性はあると理解をしております。
(問)なかなか先行して除染をやるところとこれからやるところで、いずれにしても、除染をした後はまちづくりなりインフラ整備をやると思うのですけれども、この違いがどうしても理解できないのですが、それについて先ほどのいろいろなご説明でもなかなか分からないのですが、これは汚染者負担の原則を転換するという理解でいいのでしょうか。
(答)先ほども申し上げましたように、基本的には私どもは汚染者負担という原則は守っていきたいと思っております。しかしながらという話が今回の話なんだろうと思います。何度も申し上げましたように、今回はさまざまな事情を勘案した上で、与党での議論を踏まえてこのような方針になってきたということをぜひご理解いただきたいなと思います。
(問)今後、国費負担でやる中で、インフラ整備と一体化してやる除染の中の除染相当分を、そこだけ切り分けて費用として請求するということもできなくはないと思うのですけれども、これについての可能性は検討されないのですか。
(事務方)、今回、帰還困難区域の拠点での事業については国費でという方針が示されておりますので、今後、福島復興特措法をどのように整備するかということによるんですけれども、今回決まった方針に従って国費で事業を実施するというのが基本線になると思っております。
(問)求償はしないということの理解でいいでしょうか。
(事務方)はい。

(問)テレビ朝日の吉野です。私は、実は経産担当をやっているときに5兆円の枠が9兆円に拡大するさまを見ていまして、それからわずか2年しか経たない段階で、今21.5兆円になると。倍以上になっていますよね。そのうちのどれくらいを東電が自分たちで負担するのか、15兆なのか16兆なのか知りませんけれども、あっという間に国民への負担が拡大する勢いの中で、この除染まで国費でやらなきゃいけないのかということに対して、国民にどのように説明されるのでしょうか。
(答)東電の責任というのは、私はどこまでたっても責任はあるのだと思っております。東京電力という会社が存続する限りにおいては、やっぱり東電は求償というものに対して、応えていく必要はあるのだろうと思っております。そういうことを前提においての今回の決定だろうというふうに私は理解をいたしております。これでもって東京電力が責任を逃れることができたなどという話には全くつながらないと思っておりますので、東京電力が存続する限りにおいては東京電力は責任を果たしていくべきだと私は思っております。
(問)最後にしますけれども、今のご説明で、その志は大変よろしいと思うのですけれども、しかし帰還困難区域における除染を国費で負担しなければならないという、この理論付けとどうしても相反するように見えます。そこの理論付けがなっていないから、みんな訳が分からないので、もしそれを決めたのが環境省じゃない別の省庁であるとか政府であるのであれば、もうちょっと理論付けを、理論武装をしていただけないかなと。だから、また改めてこういう質問をするチャンスがあるときには、もうちょっと分かりやすい言葉で説明していただけると助かる。これは感想です。よろしくお願いします。
(答)ありがとうございました。勉強させていただきたいと思います。

(問)朝日新聞の小堀です。石炭火力発電についてまたお伺いしたいのですが、国内の石炭火力発電で、仙台港の石炭火力発電計画がありまして、11万キロワットと出力は小さいのですが、アセス法の対象外ということで、事業者が自主的なアセスも住民への説明会も求められているにもかかわらず、これをしていないという状況があって、地元から批判が出ているという状況があります。これについては大臣、いかがお考えでしょうか。
(答)報道を読ませていただきまして、びっくりしているのが率直な感想でございます。家1軒、住宅を新築するときにも、隣近所にはまずごあいさつに行って家を建ててまいります。こういう石炭火力発電所を造ろうとするのに、住民に説明会も開いていないということにまず驚きました。非常に残念でございますし、事業主体を聞いてみますと、名のある企業さんであるようでございます。今回の仙台における事案は、私自身、非常に残念に思っておりますし、事業者の方々に猛省を促したいと思います。
(問)猛省を促すということですけれども、具体的に説明会を開くべきであるとか、環境省が現行のアセス法対象外に火力発電所の計画については、自主的なアセスの指針というのをお作りになってますけれども、そういったことに基づいての説明会を開くですとか、アセスをやっていくべきではないか、そういうお考えはないのでしょうか。
(答)アセス逃れと言っては言葉に語弊があろうかと思いますけれども、非常に盲点を突いてきた事業であると思っておりまして、非常に憤慨をいたしております。さっき、冒頭申し上げたように、個人の住宅を建てるときでも隣近所には説明するのです。それがこの国のいいところなのです。ましてや、石炭火力を造ろうというのに住民説明会も開いていないということは、私の立場から、法的に何ができるという話ではありませんが非常に残念に思うということに尽きるわけです。
(問)最後1点、石炭火力、アセス法対象外のものではなくて、昨日、千葉市で100万キロワットと少し大きな出力を持っている石炭火力について、国へアセス書の提出がありました。大臣は常々、石炭火力についても懐疑的な見方を示されてますが、また新設の計画があることについてはどのようにお考えでしょうか。
(答)さっき、冒頭のアメリカの報告もあったと思いますけれども、やっぱりアメリカなりEUなり、非常に石炭火力発電に対しては厳しい目が相変わらず注がれているということ、これは事実なんです。にもかかわらず、日本において石炭火力発電所が未だに計画をされているということに対して、私の立場からは非常に残念に思っております。
いつも申し上げますように、ビジネスとしておやりになるのであるならば、先のリスクというものを当然お考えになってのことなのだろうと思いますけども、アメリカなりEUなりの潮流を見ておりますと、石炭火力というものは、もう言ってみればビジネスとして成り立たないというような感覚で一つの流れができている、そういう報告も受けたりいたしておりますので、当然日本でおやりになる方は覚悟を持っておやりになっているのだろうと思いますが、ビジネスとして成り立っていくかどうか、その覚悟を持っておやりになっているのかどうか、非常にかねがね疑問に思っておりましたので、未だにこういった動きがあるということに対して非常に残念に思っております。

(問)共同通信の井口です。名古屋議定書、生物多様性条約のことですけれども、締結しないまま生物多様性のCOPが終わった形になったと思います。もともと15年までに国内措置をというようなことで、目標、既に遅れているわけですけれども、一部には年度内に国内措置の詳細を示すというようなこともありましたが、スケジュールについてできるだけ具体的に教えていただけたらと思います。
(答)名古屋議定書の国内措置については、環境省が中心となって関係省庁と国内措置の検討を進めているところでございまして、公表の時期そのものは決定をいたしておりませんけれども、引き続き検討を進めて、できるだけ早期に締結を目指したいと思っております。
(問)国内措置の詳細を示すのは年度内にできそうなのでしょうか。
(答)決定はいたしておりませんけれども、引き続き鋭意に検討を進めております。とにかく、私もずっと思っておりましたけれども、名古屋と冠した議定書の締結が、わが国において遅れているということは非常に遺憾に存じておりましたので、できるだけ早期に締結を目指していきたいと思います。

(問)日本経済新聞の川口です。帰還困難の話に戻りますが、先ほど大臣は、汚染者負担の原則はあくまでも守っていくというお話なのですが、ということは、今回の復興拠点に関してはあくまでも例外だという位置付けでよろしいですか。
(答)例外とは思わないのですけども、あまりにもスケールが大きい今回の話になっていると思います。当然のごとく被災地の現状を見ながら、汚染者負担の原則だけは曲げずに、やっぱりその他の力で復興・復旧になせることがあるならば、やっていくこともやぶさかではないと私は思っております。
(問)今後、例えば、原発事故がいつどこで起きるか分かりませんが、それは分からないですよね。それは誰にも分からないと思うのですけれども、その際でも、やはり汚染者負担の原則というのは厳守していくということでよろしいですか。
(答)私はそうだと思います。