大臣談話・大臣記者会見要旨

丸川大臣記者会見録(平成28年5月13日(金)9:04~9:26  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日の閣議におきまして、「地球温暖化対策計画」及び「政府実行計画」を決定いたしました。地球温暖化対策計画では、パリ協定を踏まえて、長期的目標として2050年までに温室効果ガスの80%削減を目指すことを明記するとともに、2030年度26%削減の達成に向けて、事業者、国民などの各主体が何を、どこまでやるのかということを明らかにしました。この計画を我が国の地球温暖化対策の新たなスタートとして、着実に対策を前進させてまいります。政府実行計画では、政府全体として、2030年度までに40%、2020年度までに10%削減することを目標として、LED照明の導入をはじめとする対策に率先して取り組んでいくことにいたしました。政府が先頭に立って国民全体の取組をけん引する重要な役割を果たす所存でございます。閣議では、各府省に対して両計画に基づいて対策を進めていただくようお願い申し上げるとともに、地球温暖化対策計画を踏まえ、環境省としても26%削減に向けて排出削減対策や普及啓発を強化すること、長期大幅削減に向けたビジョンの検討に着手をしたいと考えていることなどについて発言をいたしました。
 明後日15日からG7富山環境大臣会合を開催をいたします。今回の会合のテーマですが、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や「パリ協定」等、環境政策に関する昨年の重要な成果を受けた最初のG7、まさに「行動元年・実施元年」として、各議題の取組を推進する力強いメッセージを世界に発信したいと考えております。持続可能な社会に向けたG7各国、あるいは各国間で協調した取組を更に促進できるよう、会合の成功のために全力を尽くしてまいります。また、先ほど申し上げました「地球温暖化対策計画」についても、我が国の地球温暖化対策に取り組む姿勢を示すものとして紹介をしたいと思います。
 続いては地震関連でございます。今般の熊本地震について、一昨日、井上副大臣に熊本県をご訪問いただきまして、環境省がまとめた災害廃棄物処理に係る全体方針について蒲島熊本県知事にお示しをして、意見交換をさせていただきました。熊本県知事からは、環境省の示した方向に沿って検討したいという回答をいただいております。今後も、本省と現地支援チームが一体となって、熊本県と緊密に連携をして、災害廃棄物の処理が滞りなく円滑に行われるよう全力で支援してまいります。
 続いてJCMクレジットについてご報告です。本日、二国間クレジット制度(JCM)を開始してから初めてとなるクレジットが発行をされました。クレジット発行量は、インドネシアで実施されている冷凍設備等の2件の省エネルギープロジェクトから発行されるクレジットの40トンです。これが半年分です。環境省ではこれまでに、本日クレジットが発行されたプロジェクトを含む58件の排出削減・吸収プロジェクトを実施しており、これらの事業からの削減量は年間およそ30万トンと見込まれます。今後もJCMをより一層推進して、優れた低炭素技術による世界全体の排出削減に向けて、取り組んでまいりたいと思います。
 もう1点こちらから申し上げます。昨日、クウェート国の民生庁と都市廃棄物分野について協力覚書を締結いたしましたので、ご報告をいたします。この覚書は、クウェート国との間で、都市廃棄物管理政策に関して、情報交換や経験共有、研修、研究、ワークショップの開催等を行うこととするものです。我が国の廃棄物管理制度やその知見、民間企業が有する先進的な技術によって、クウェートにおける廃棄物管理制度の構築に貢献するとともに、我が国の循環産業の国際展開にもつなげてまいりたいと考えております。

2.質疑応答

(問)読売新聞の野崎です。2点あります。まず1点目は、「地球温暖化対策計画」についてなのですけれども、2030年度目標、長期目標を達成するために、改めて大臣の意気込みをお聞かせ願いますでしょうか。
(答)「パリ協定」の合意に昨年立ち会うことができました。そのために我が国が様々な提案をし、貢献をし、世界の全ての国が参加する枠組みが出来たその翌年に私たちがきちんと我々はどうするのかということを「地球温暖化対策計画」に書き込んで、国民にお示しすることができることは大変嬉しいことであります。それと同時に、決まったからにはしっかりこれを実行していくということが重要でありまして、身が引き締まる思いです。この計画に沿って着実に取組を進めていきたいと思います。
(問)2点目なのですが、明後日からのG7富山環境大臣会合についてなのですが、今2030アジェンダ、気候変動の関係について発言がございましたけれども、もし他に重要だと思うことがあれば、少しお伺いしたいというのと、改めて会合に臨む決意を少しお伺いします。
(答)2030アジェンダの件とそしてパリ協定の件は、G7各国にとって大変大きなテーマであると思いますし、我々G7が協調して行動していくことが重要だということは是非、この会議の場で言っていきたいと思います。加えて、資源循環ということに関して、私どもも関心を持っておりますけれども、G7の中にも関心の高い国がございます。我が国の得意とする分野でもありますし、今後、国際的にも我々がリードできる分野でありますので、しっかり取り組んでまいります。

(問)朝日新聞の小坪です。温対計画の件で、先ほど大臣がおっしゃられた、決まったからにはしっかり実行していくことが重要だということですが、しっかりということは具体的にはどういうことで実現していこうということなのかということと、それから見直しに関する表現が入っていますけれども、うまくいかない場合にどのように対策を取っていくか、その辺りお聞かせください。
(答)しっかりやっていくということの意味は、進捗管理をしっかりすることだと思います。毎年、毎年、進捗状況を確認するということと同時に、他の府省に幅広くわたることでございますので、私どもが、ある時は引っ張り、ある時は後ろから背中を押し、というような形で政府全体でこの取組が進んでいくように調整しリードする役が私たちの役目だと思っております。進捗状況を管理しつつ、どうにもうまく進まないようだというところは、早め早めにどのような新しい見通しを持つべきなのかということを議論させていただきたいと思っています。
(問)それに付け加えて1点具体的にお願いしたいのですが、排出権の取引であるとか、そういった新しい手法を次の一手として導入する可能性、そういったことについてはどのようにお考えでしょうか。
(答)この週末のG7富山環境大臣会合でも、できる限りエルマウサミットを受ける形で議論させていただければと思いますが、やはり長期的なビジョンに取り組んだ中で、既に戦略懇談会のアドバイスもあるところでございますけれども、より具体的に2050年までの道筋を描く中で、私たちがどのような手法を取るべきなのかという議論の中で、カーボンプライシングについても議論できればと思っています。

(問)時事通信の今泉です。温対計画の関係についてなんですけれども、今回の計画では、家庭や企業にも排出削減の努力を求めているわけで、特に家庭は4割削減ということでLEDの導入ですとか、省エネ住宅とかいろいろあると思うんですけれども、どうしても多額の費用負担を求めることになると思うんですけれども、今後確か温対計画で国民運動というのを展開すると聞いているんですけれども、どのような運動を展開されるのかお考えをお聞かせください。
(答)最終的に環境に配慮した製品を活用していただくことで、エネルギーコストをご家庭でも下げていただける、それがどの時点で釣り合うものになるかというのをより具体的に見える化をしていきたいと思っています。今まで既に、例えば家電の売場等でそうしたものをお示しいただいておりますけれども、ネット等を通じて、身近な購入の場面でこうしたものが見ていただけるような工夫をしていきたいと思っております。家庭で4割削減していただく分の26%は排出係数の改善でございますから、その点もよく頭において、消費者の皆様がよりクリーンな電力を選んでいただけるような後押しをしていきたいと思います。

(問)共同通信の川口です。温対計画の件で1点、週末のG7環境大臣会合の件で1点、お伺いできればと思います。温対計画の方ですが、関連してパリ協定では低炭素の長期戦略を作ることになっていて、これはまた温対計画とはまた別途作ることになるのかと思うのですが、そういう理解で良いのかというのと、今後、環境省として、そちらの作成にはどういうふうに、いつ頃作っていこうと考えていらっしゃるのかというのが1点、G7の環境大臣会合の関係ですが、今日、一部報道で代替フロンの生産規制をのせることで合意するという報道記事がありましたけれども、この事実関係について教えてください。
(答)低炭素社会に向けた長期的なビジョンということについてですが、この地球温暖化対策計画が具体的な行動の積み重ねとして、既に国際的に約束草案として出した目標を達成するための、より子細な行動の計画であるというものに対して、我々が今から手を付けようとしている長期低炭素ビジョンというのは、正に大目標に向かっているいくつかの道筋をイメージとして、示していくというようなものだとご理解いただければ良いと思います。これを環境省として示すことで、さらに今後、それを具体的な計画に向けてどのように道を描いていくというのかというのは、その先にまたある話だと思いますので、まず2050年に向けて、2050年の絵姿がよく分からないという状況が、今、あると思いますので、2050年の姿を示す中で、どのような道筋があり得るかという、大まかなイメージを示すビジョンということで、これから我々が取り組むということで、ご理解をいただければと思います。それを時期としていつまでにというのは、今はまだ具体的に申し上げられない状況であります。
 ハイド・フルオロ・カーボンについては、我が国としてもモントリオール議定書の対象にHFCを追加するという改正の支持をいたします。その上で、よくご存じだと思いますけれども、整備、解決するには国内においても様々な課題があるので、引き続き、この課題解決に向けた議論に貢献をしていきたいと考えているところでありまして、今後また議論をさせていただく中で、今、報道に出ているようなことになるかどうかということについては、この週末にまた議論させていただいてからと思っております。

(問)NHKの橋本です。総務省によるアスベストに関する勧告についてお伺いをしたいのですけれども、建物を解体する際のアスベスト飛散防止のための事前調査が不十分だとか、あるいは自治体によっては災害に備えての事前の準備が不十分だといったケースが指摘されまして、環境省と厚労省に対して改善の勧告がなされたわけですが、これに対する受け止めと今後の対応について教えてください。
(答)総務省からいただいたアスベストについての指摘ですが、特に自治体による改善確認といって、一度、指摘をした後に改善されたかどうかというフォローアップの確認が不十分であるというご指摘をいただいたという理解をしております。加えて、事前の法令の周知というのは当然ですけれども、そしてこれは対策として自治体の皆さま方に、しっかりと周知を徹底することと、対策を強化していただくということが重要と考えておりますので、私どもとしては勧告の内容に沿った対応として、自治体への周知、また自治体の担当者の会議の開催をしたいと考えております。加えて、災害時の対応マニュアルについて、それぞれの自治体で徹底していただいて、防災計画等に事前にきちんとアスベスト対策を、いざというときのために盛り込んでいただくための努力を丁寧にやっていこうと思っています。
(問)自治体でもなかなかどこにアスベストを含む建材があるか把握しきれていないような現状があると思うのですが、周知徹底とか会議での情報共有とか、より前に進めて具体的に進めていく、もう一手とか何かあれば教えてください。
(事務方)今のご指摘の点ですが、自治体の中には、このアスベストの調査に関しまして、見つけにくいところ、どういったところに注意したらいいのか、先進的な取組をしているところがありますので、この自治体の担当者会議等において、先進的な取組をしている好事例などをご紹介することで、これが全国の自治体で情報共有をしていただくと、そういうことを進めていきたいと考えております。

(問)産経新聞の緒形です。G7の会合について1点、お伺いしたいのですが、議長国としては、震災からの復興、それから除染の状況についてメッセージを発信するということだと思うのですが、環境大臣としてどのようなメッセージを強く発信されたいか、教えてください。
(答)冒頭でそのお話をさせていただきたいと思っています。私自身、現実をよく見ていただけるようにということで、事実として何が起きていて、今どれだけ環境の回復が進んでいるか、あるいはどのような課題が残されているのかということを具体的に見える形でお伝えをしたいと思っています。同時に福島県の一体どれだけが今、汚染をされた状況になっていて、逆に風評被害対策という点から、今流通している商品については徹底したチェックを受けたものであるということについて、ご理解をいただける努力をしたいと思います。

(問)インターネットメディアIWJの高橋と申します。一昨日、行われた敦賀市長の申入れについてお尋ねします。今回、原子力防災対策の充実強化ということで、申入れがあったかと思うのですが、その中で、避難道路の整備などの要請がありました。大臣ご自身は、命を守るためにいろんな選択できることは重要とおっしゃいました。改めて、原発のある自治体の避難計画、避難ルート、万全だとお考えでしょうか。あえて課題などがあれば、教えていただけますでしょうか。
(答)これまでも緊急時対応を作成させていただくときには、複数の避難経路を用意をして、そしてなおかつ、一つだめでも必ず他に代替があって、バックアップができる状況、つまり自治体が自分たちができる選択として避難経路をきちんと選んで行けるような状況を作っていけるということに力を注いでまいりました。加えて、これは原子力災害のみならず、自然災害においても必要なことでありますので、自然災害への対応としっかりと綿密に協調しながら複合災害を前提にして作ってきたものであります。
 こうしたものは、いつも言っていることですけれども、私たちは燃料炉がそこにある限り、稼働していようがしていまいが、備えをするべきものと考えておりますし、それから常に向上させていくもの、どんどん上を目指していくもの、一定の水準をクリアすることは需要なことですが、その上、もっと上という形で、訓練を重ね、またそうした訓練を通じて得られた成果を必ず次に反映をしていくこと、具体的に現実的に反映していくことが重要だと思っています。
 先般、全国原子力発電所所在地市町村協議会から申入れをいただいた研修の機会やその施設についても、今も既に緊急時対応を作るときには、相当丁寧に自治体と関係各所が集まって会議しますけれども、更にコミュニケーションを取りながら実際にその場面を想定した訓練等、あるいは学び等を一緒に行っていただくことによって、より対応能力が向上していくという、更に上を目指すための努力だと思っています。
(問)すみません、もう1点。今回、熊本、大分で大きな地震が起きて、空港が一時封鎖されました。新幹線が止まりました。高速道路が寸断されました。いろいろなルートを考えていくということですが、自然を前にしたらどんなにたくさんの選択肢を考えようと自然に克つということができないということが今回の地震で証明されたと思うのですが、そういう意味で、今回の地震を受けて私たち自身ですね、川内原発、玄海原発、伊方原発の避難ルートを実際に車で運転して、また愛媛県の三崎港から大分県の佐賀関港までフェリーに乗ってみたのですが、フェリーもたまたま私たちが乗り合わせた船が悪天候によって欠航しました。事故が起きるときというのは、晴れとは限りません。台風が来ているかもしれません、夜かもしれません。そういう意味で100%万全な避難計画、避難ルートの確保というのは無理だと思うのですが、いかがでしょうか。
(答)我々の緊急時対応はそれらを全て想定をして、用意させていただいております。そして実際に民間の事業者の皆さまに担っていただけない部分は、自衛隊、警察、消防等の実働部隊が、必ずそこをカバーするような仕組みになっておりまして、そういう意味で言いますと、実際に行っていただいたこと、大変ありがたいこと、それは私たちにとっても貴重な学びになるかもしれませんけれども、同時に私たちは実働部隊の皆さまが最後の一人までしっかりとフォローするという体制を組むことによって、この緊急時対応を原子力防災会議で了承しているところです。