大臣談話・大臣記者会見要旨

丸川大臣記者会見録(平成28年3月11日(金)9:21~9:34  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」を閣議決定いたしました。この政令は、低レベル放射性廃棄物について運搬時の防護区分が決定されたことから、一定の要件を満たした場合に、核燃料物質の運搬に関する国の事前確認を要しないものとするものです。
 また、本日の閣議において、「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」を決定いたしました。この基本方針では、平成28年度以降5年間の「復興・創生期間」において、重点的に取り組む事項をまとめております。この新しい基本方針に基づいて、「復興・創生期間」においても、被災地の復興を最優先の課題として、取り組んでまいります。
 今日は、東日本大震災の発生からちょうど5年でございますので、私から一言申し上げさせていただきます。5年が経ちまして、改めて、震災で亡くなられた方々に心より哀悼の意を表したいと思います。福島県でもおよそ10万人、東北全体でも17万4千人もの方々が現在も避難生活をされていることに大変心が痛みます。震災発生以降、環境省においては、地震・津波により発生した膨大な災害廃棄物の処理に始まって、除染、中間貯蔵施設の整備、指定廃棄物の処理、原発事故による放射線に係る住民の健康管理などに、省を挙げて取り組んでまいりました。今後も、これらの課題に対し全力を尽くしてまいりますが、その前提として、被災地やそこから避難されている全ての皆様の立場に立って考え、寄り添い、対応していくことが何よりも大切に考え取り組んでまいります。原子力防災については、事故から得た重い教訓を常に胸に置きながら、地域と一体となって取組を進めてまいりました。今朝開催された原子力関係閣僚会議でも、地域の防災を担う自治体の声に応えるための対応方針を確認いたしました。今後とも、自治体の方々と手を携えて、地域防災体制の更なる充実・強化に取り組んでまいります。平成28年度からは、被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現する「復興・創生期間」に入ります。被災地の一日も早い復興に向けて、引き続き総力を挙げて取り組んでいきます。

2.質疑応答

(問)日本経済新聞の川口です。幹事社から2点お伺いいたします。今朝の読売新聞の記事に載っているのですが、帰還困難区域も除染ということなんですけど、記事中に16年度中に改定する福島復興再生基本方針には、同区域を除染によって縮小する「区域見直し」を明記すると書いてあるのですが、事実ですか。
(答)まだ何も決まっておりません。総理がお話になった、今年の夏までに政府全体として帰還困難区域の取扱いを明確にすべく、議論をするというところまででございまして、中身はまだ決まっておりません。
(問)原子力発電の話になるのですが、高浜原発で3号機、4号機が運転差止の仮処分が出ました。この中で、裁判長が「国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要」というふうに指摘しています。今、避難計画はないと思いますけれども、今後、国として裁判所の要求に応えるつもりはありますか。
(答)よくご承知かもしれませんが、我々が地域防災計画や避難計画を作るときには、もちろん一義的には自治体が策定するのが適切ですが、実際のところ計画を作る当初から国が全面的に関わって、きめ細やかに自治体の要望を聞きながら、国が前面に立ってこの計画を作っています。ですので、実態的には自治体だけではなくて、国の関係機関が大きい役割を果たさなければ実効性のある計画ができませんので、これまでもそうしてきております。ですので、これからもきちんとやっていくということと同時に、その計画を作った後で資機材を提供し、また体制を整える上においてもしっかりと国がそれを支援し、前面に立ってリーダーシップを取ってやっていくということは、これからも変わらないということを申し上げたいと思います。実際、避難計画・地域防災計画は、具体的かつ合理的なものを確認した上で、総理を含む全閣僚がメンバーになっている原子力防災会議で国が了承しますので、これは国としてやっているということだと我々は思っております。
(問)ただ、裁判所は「国家主導で」のその前に前段があるんです。地域、地方自治体、個々にお任せするんではなくて、国家主導でというふうに言っています。やっぱり、認識のずれがありませんか。
(答)そう思います。自治体に任せているという認識は我々にはなくて、自治体の方からも、自分たちが作ったものを国からチェックを受けるというやり方ではなくて、一緒に作ってもらいたいと言われて、実際にそうやって計画の当初の段階から国の各関係機関が一緒に会議の中に入って、細かく積み重ねをやっていますので、実態的には国が前面に立ってやっています。
(問)裁判所の決定を読むと、真意はおそらく規制基準にその部分を入れてくれというふうに読めなくもないのですが、その辺はどういうふうにお考えですか。
(答)防災計画を作るに当たっては、一方では、自治体が実情に合ってやるということと、それを実態的に担保するものとセットでやらなければならないので、少なくとも政府の方針としては、国が前面に立つ形でこの防災計画を立てていくというやり方がふさわしいと思って今やっているという前提です。

(問)日本テレビの杜です。先ほどの幹事社質問と、一昨日も大臣に伺ったことなのですが、高浜の裁判所の決定なのですが、決定の中で第一原発の原因究明がまだ不十分だという記述もあります。大臣は閣僚として国会議員として、福島第一原発の事故の原因というのはどこにあるというご認識でいらっしゃいますでしょうか。
(答)私の認識というよりは、政府事故調あるいは国会事故調等で明らかになったのは、もちろんオンサイトでの課題もありますが、特に私の所管でいうと、オフサイトについて十分な備えがなされていなかったということが、この事故の被害を大きくした大きな要因であると思っております。ですので、その反省を活かして、30キロ圏外に避難をするところまできちんと計画を持って、しかもそれが実効性を持つように、いったいどれだけの人が避難をしなくてはいけなくて、手段は何で、ルートは複数用意して、なおかつその人達が受け入れてもらえる施設をどう手配するのか、あるいは事前手配している自治体もありますけれども、そういうきめ細やかな避難計画をきちんと立てて、訓練をやって、繰り返し繰り返し、それを見直していくという仕組みを作り上げたわけです。
(問)オンサイトでいうと国会事故調と政府事故調ではまた少し意見が違う、人災だったりとか、原因が津波なのかというところもあるのですが、その辺りは大臣はいかがでしょうか。
(事務方)今、大臣がお話になりましたように国会事故調や政府事故調でそういったところも検討がなされ、さらに原子力規制委員会の設置法の中で、更に原因究明については役割を果たすということで、規制委員会の方で進められているという、その取組を環境省としては見守っていくということかと思います。
(問)そうしたら、先ほど大臣がおっしゃられたオフサイトの方の話なのですけれども、先ほどの質問でも少し出ていたのですけれども、避難計画をどう作るのかというのはいろいろな意見があるのは承知しておりまして、国が主導してやるのか、あるいは国と自治体が協力してやるのかというのは考え方が国際的にもいろいろとあると思います。今回の決定文では、いわゆる第一原発の事故を経験した日本にとっては、そういった基準を規制基準に組み込むべきじゃないかという指摘が、信義則上の義務が国にはあるという言い方をしているのですが、先ほどのやり取りを聞いていると、特に、現段階では基準に組み込む考えは特段ないという認識でよろしいでしょうか。
(答)避難の計画を実効性あるものにするために、何が必要かということを考えますと、単に計画を作るだけではなくて、それを担保する措置とセットで考え併せて進めていかなければいけないものだと思っております。加えて、複合災害を念頭に置くということを、今ずっと緊急時対応の中でやっていますけれども、これは正直いろいろな省庁にまたがってやっているのはご承知のことと思います。国土交通省の方でも随分、一般防災の範囲の中で、複合災害になった場合にも備えるということを念頭に置いて、ご協力をいただいているわけですので、こういうものとセットで計画が積み上げられていくということが非常に重要だと思っております。
(問)そうすると先ほど大臣がおっしゃった、実効性があるものにするために担保する措置として、逆にいえば地方裁判所の決定文は規制基準にこれを盛り込むことが、これを担保する措置なんじゃないかというふうに読めるわけなんですが、そうはお考えにはならないですか。
(事務方)その点につきましても、原子力規制がどうあるべきかということになると思いますので、そこは規制委員会が所管する炉規法の考え方がどうあるべきかという、一言で言うと環境省はそういうことについては所管外だということでコメントはなかなか難しいかと考えております。
(問)大臣もそういう認識でしょうか。
(答)判決について、何か私が判断するということは控えたいと思いますけれども、実態として防災を担当している身としては、中身を詰めていくときに相当丁寧にやり取りをしていますし、それを担保するためにどうするのかという努力を日夜やっておりますので、そういう思いを持っています。
(問)防災の備えに完璧はないけれども、今現在の在り方ではもうある程度合格点に達しているというふうに思われてるということですか。
(答)仕組みとしては合格点だと思います。中身は随時更新して改善していくものだと思います。