大臣談話・大臣記者会見要旨

井上副大臣記者会見録(平成25年5月8日(水)15:51~16:13 於:合同庁舎5号館25階会見室)

1.発言要旨

(副大臣)まず私の方から1点報告がございます。
 4月26日から5月3日まで、チェルノブイリ原子力発電所、ハンフォード施設等を訪問して、放射線健康管理、除染等について、要人との意見交換及び視察を行ってまいりました。私と秋野政務官、それから事務方数名と出張してまいりました。
 チェルノブイリ原子力発電所視察におきましては、立入禁止区域管理庁副長官に同行いただいて、事故があった4号炉の石棺や新シェルターの建設状況、廃墟となった近隣都市を視察したほか、当時の除染についての取組や発生した廃棄物及び土壌処理等の状況について説明を受けました。
 環境天然資源大臣、立入禁止区域管理庁長官との会談、また、コロステン市長との意見交換では、事故後27年を経過したウクライナにおける現在の課題等を含めた経験を共有し、両国間で、引き続き、連携を強化していくことを確認をいたしました。また、立入禁止区域の管理方法、除染に対する考え方、健康管理やモニタリングに関する経験等について意見交換を行いました。
 ハンフォード施設では、除染等により発生した汚染土壌等が埋め立てられた最終処分場や放射性廃棄物の保管施設等を視察しました。また、アメリカエネルギー省や環境保護庁等の行政関係者や専門家と、除染土壌等の管理方法や政策の立案プロセス、セシウムの環境中挙動等に関する最新の科学的知見等について意見交換を行いました。
 詳細につきましては、別途お配りしている報告概要を参照して頂きたいと思います。今回の意見交換及び視察の知見を、今後の除染や健康管理等の施策の参考にしたいと考えております。以上です。

2.質疑応答

(問)今月幹事社の共同通信社の渡邉です。よろしくお願いします。まず今の報告ございましたチェルノブイリなどの視察ということで、除染や健康管理、参考にしたいということですけれども、何か具体的に今後こうして反映していけるとかの点が何かございましたら、お願いします。
(副大臣)おかげさまで、かなりハードでありましたけれども、大変充実した視察になったと思います。参考になるべき点も多々ありました。ただ、他方で、例えば面積が非常に広かったり、人口密度が少なかったり、それからチェルノブイリにおいては当時は旧ソ連で共産主義体制であったとか、いろいろと日本と状況が違う面もありますので、そういう意味ではそれが直接そのまま適用はできないとは思いますけれども、いろんな課題、除染、どこまでどの程度まで行っていくかであるとか、あるいは中間貯蔵も今我々のほうで進めておりますけれども、その進め方についてとか、それから健康管理もこれまたどこまでどの程度行う必要があるのかとか、そういった点についていろいろと参考になる情報を頂いたと思ってます。
(問)それともう1件、院内の動きなのでコメントがちょっと難しいところもあるかもしれませんが、参院の川口委員長の解任を求める決議案が明日本会議のほうで採決ということなので、ここまでの経緯だとか、どのように御覧になってるかとか、もしコメントがあればお願いします。
(副大臣)これは難しいですね。御承知のように川口先生は環境大臣経験者でもあり、環境問題に大変知見が豊富な方ですので、そういう意味では、委員長の解任決議が出されたということは、大変残念に考えております。しかし立法府のことですから、副大臣という立場でコメントすることは差し控えたいと思ってます。

(問)テレビ朝日ですが、今の御報告の中で中間貯蔵という言葉も出てきましたが、今後日本に取り入れることのできるヒントがあったというふうな受け止めなのでしょうか。
(副大臣)そうですね。いろいろ有益なヒントがあったというふうに思ってます。ただ先ほど申し上げたようにあくまでもヒントであって、やはりいろいろ状況の違いがありますから、それをどういうふうに、いわばアレンジして、そして参考にできるのかなということを、これからしっかり考えていきたいという感じです。
(問)比較的速やかに取り入れられるようなものがあるという、手応えというのは感じている部分というのはお有りですか。
(副大臣)そうですね。例えばこれから中間貯蔵を本格的に進めるにあたって、どうやって地元の方々に説明をし、あるいは御理解を頂くかと、これが大変難しいと思っておりますけれども、それについてやはり彼らは言わば経験者ですから、彼らの経験を伺って、そのときにどういったところを苦労したとか、問題になったかとか、あるいはこうした方がいいんじゃないかという具体的なアドバイスも頂いたものですから、そういったものは非常に参考になったと思っています。

(問)共同通信なんですけれども、その具体的なアドバイス、これは良いなと思ったものがあれば是非いくつか具体的にいただきたいのですけれども。こういうアドバイスは是非活かしたいとか。
(副大臣)例えば、ハンフォードなどは、それぞれ地元の住民代表とか、あるいは各業界利益団体の代表者といった方々を委員に任命をして、いわば諮問委員会、そういったものを作って、そして積極的に議論をしているという話がありました。そうなると彼らも何か否定的な意見だけではなくて、非常に前向きな意見を出して、自らの代表者としての責任をもって、取り組むことが出来たということで、例えば諮問委員会を日本でも作ったらどうだというようなアドバイスがあったのでこれは傾聴に値するご意見かなと、例えばそんなことです。
(問)あと1点。報告を見させていただくと森林除染についてかなり消極的な反応だったように見受けられるのですが、これについては日本と森林に対する考え方とか役割が違うのでしょうけれども、受け止めとしてはどうだったのでしょうか。
(副大臣)私の印象としては、確かにチェルノブイリにおいては内部被曝に対する対策というのがかなりほとんどなんですね。外部被曝よりもやはり内部被曝の方が影響が大きいという考え方のもとから。ですからそういう中で森林除染あるいは農地の除染も含めて費用対効果を考えて、ほとんどやらなかったというようなお話でした。ただ日本と状況が違うのは、半径30キロ圏内は立ち入り禁止区域にして、人が居住できないようにしているわけですので、ですからそういう中で人が居住しない森林だから費用対効果を考えて除染しなかったということですけれども、日本の場合はそうではないので、ちょっとそこは直接は取り入れることはできないと思いますけれども、そういう考えもあるなと。それからもう1つ、彼らが非常に気にしていたのは国土が乾燥しているということがあるのだと思うのですけれども、森林除染をしないけれども、山火事のおそれがあるのでそれに対する対策は万全に取っていると。山火事が起きるとそのときに放射能が拡散するから、というような話がかなりあったので、これも日本でどこまで対策する必要があるのかありますけれども、そういう考え方なのだと。あまり日本では聞いたことのない観点だったので、参考に聞かせていただきました。

(問)読売の吉良と申しますが、コロステンへ行かれたということで、記憶のことで申し訳ないですけど、コロステンで問題になっているのは、ベリーとかきのことかを採って食べると、それで内部被曝すると、その後ろには実は食料を買うお金も無いということで皆山に入って採っているんだと、そういうことを聞いたことがあるのですけれども、そうすると日本であまり、福島で実際そうなのかというと、また状況が違うと思いますし、先ほど井上副大臣が仰ったように外部被曝というのはあまり大きく捉えてないと考えると、日本で活かせる低線量被曝の知見としてはどういうことがあったということになりますか。
(副大臣)確かにですね、今のきのこやベリーの話もちょっと日本とは状況が違いますよね。ですから、直接はなかなか生かすことはできないと思いますけれども、チェルノブイリでも低線量被曝に対して、かなり基準も低くというのか高くというのか、結構5ミリとか1ミリとかそういう基準で切って、規制をかけているということですから、そういう意味では割と日本と似ているかなと思いましたね。ですからそれはそれで、日本のやり方についてもこちらの方で紹介をし、評価も頂いていたので、少し細かい部分で何か参考にできることはないかなと思います。
(政務官)コロステンはジトーミルの広域診断センターとかあるいはコロステンの社会心理的リハビリテーションセンターというところにも行かせていただきまして、27年間の健康調査を続けてきた行政であればこその知見というものも、私たちはすごく参考になったと思っています。そういった意味では27年たてばこそ心理的に回復してきている住民も多くなってきて町が復興しつつあるというコメントも頂いたところですから、そういう意味ではそういった観点でも支援を行っていく、そういった検討も必要ではないかと考えています。福島健康調査においてそういう心理的なフォローが行われているということも、私どもは応援を頂いたと思っています。
(副大臣)率直に言いますとやはり27年経っているということもあってですね、周囲の線量なんかも、思ってたより下がってました。確かに石棺の付近は、近づけない位のまだ高い線量ですけれども、そのすぐ近くまで行けますし、立ち入り禁止区域というからかなり今でも高いのかなと思いましたけれども、それも本当にそうでもないレベルでした。ただそうはいっても、我々が通るような道路の付近は、綿密に除染をしたんだと、あるいはちょっと福島と違ってプルトニウムがだいぶ放出されているものですから、それはその線量だけでは測れない危険性があるとか、そういった要因もありましたけれども、他方でやはり27年経って、大分線量が下がっている、それから健康管理についても、彼らはしっかりやっていたこともあって、非常に上手くいっているというような状況でしたので、私は福島の復興に関してある意味明るい希望というかこれはきちんとやっていけば、必ずや克服できると、そういうようないわば明るい希望をもって受け止めたと思っています。

(問)すみません、ちょっと先ほどの話に戻るのですけれども、中間貯蔵施設のことに関してハンフォードの方で住民の代表として諮問委員会を作ったから非常によかったというようなお話だったのですけれども、これはそういったものに類するようなものを取り入れられないか検討するということなのですか。
(副大臣)そこまで考えていませんけど、そういうやり方もあるのだなということで、非常に興味深く聞いてきました。
(問)あくまで興味深く聞いたと。
(副大臣)これからですよね。やはりまだ聞いたばかりですから、ただ本当状況の違いはあるのですけれども、やり方がいろいろやはり違う点もあるので、これはなんだか我々日本で机の上で頭ひねっても、やはり出てくるアイディアは限られてくるので他の国の先行事例を参考にするというのは大事な事だと思います。
(政務官)コミュニティーの代表を集めるというのが難しいというのであれば、市町村長の皆さまに集まってもらうのも良いのではないかということは御発言を頂きました。指定廃棄物の選定においては今やらせて頂いているところと。

(問)朝日新聞中村と申します。ハンフォードの方で追加の空間の被ばく線量が3から5でも十分であるような話が意見交換であったとありますが、あくまで1ミリというところを目標にしているなかで、こういう御意見は今後の計画の見直しとかに反映していくのでしょうか。
(副大臣)それもこれからですね。まだ、現段階では一応各国の状況を伺ったという段階ですから。
(問)これは向こうは何か根拠を持って数字を示しているのでしょうか。
(政務官)空間線量と実効線量との考え方との整理をしていかなくてはならないという議論の中での話だと思います。
(問)住民自らが考えて基準を決定するというのは、日本でこういうことがなかなかできるのかどうか、すごく意見はあっても、なかなか実現は難しいのではないかという気はしますけど、その辺りは、そういう御意見をどのように満たしていくか。
(副大臣)それは私も同じような印象を持っております。先ほども言いましたが、日本でこのような趣旨の会議をやるとなかなかうまくいかないですよね。前向きに考えにくいものですから。だけど、彼らは非常にそこに自信をもっていました。何度もその話をしていました。
(問)そこが、日本人としてなのか理解できなくて、住民が自ら決めるということは町によって違ったりとか、そういうイメージなのか思ってしまったのですけれど、そこがどうなるのか、うまくいくのかどうか。おもしろいと思います。
(副大臣)町によって違うというのも有りなんだと思います。一定の基準、最低限の基準みたいなものは国が定めて、それ以上のところを自治体が諮問委員会を活用して決めていくみたいな、そんなイメージでした。

(問)先ほど副大臣は明るい希望をもって帰りますと仰られていましたが、報告を見ていると、広大な国土を持っているアメリカとかウクライナとか、だからこそ、ある程度うまくいったという部分があると思うのですが、その両国を見られて厳しいなと思った部分はあるのでしょうか。
(副大臣)それは圧倒的に状況が違います。見渡すばかり砂漠ですからね。これと福島の状況は残念ながら全く違います。中間貯蔵施設の参考になるところがアメリカのハンフォードにあるんですね、除染の汚染土壌を入れるところが。ものすごい大きな穴を掘っていましたが、周りに何もないですからね。その違いはすごくあると思います。

(問)時事通信の新部です。アメリカの方なんですけれども、除染や原子力施設の立地で、賠償や補償の事例が無いとあるんですけれども、地域振興策が行われているとの指摘があったと、最後の方にあるのですが、具体的にどんな振興策が行われているのか、日本にも活かせる部分がありましたでしょうか。
(副大臣)例えば道路があるというふうに言っていました。ただ道路と言っても搬入路なんかの道路のイメージで言っていましたけれども、総じてあんまりそういうことをやっていないというようなお話でした。少しその住民が居住しているところと、実際のサイトのところが先ほど言ったようにものすごい広大なので、ちょっと離れているような条件はあるのだと思いますけれども、だから私なんかにしてみれば、それでそういう要望が出ないのかなと思いましたけれども、むしろそういうことを言っている日本の方が、なんでそんなことを言うの、みたいな感じで聞いていましたね。ちょっとそこの感覚が違うのだと思います。