報道発表資料
・地球温暖化への取組状況に関する国別報告書(通報)の作成等現行条約上の義務の履 行に関するアジア太平洋地域各国の現状及び一層の取組促進のための方策
・同地域における地球温暖化に関する更なる地域協力のあり方であった。
4日間の討議の結果、「京都に向けた決断の時」と題し、
{1}途上国を含む世界各国の既存の義務の履行が気候変動枠組条約の究極的な目的の達成のために極めて重要であること、
{2}このためには、途上国における対処能力を向上させることが国際協力の第一の重点となるべきこと、
{3}具体的な協力手段として、重層的、多元的な情報ネットワークづくりや協力案件についてのクリアリングハウス機能の強化等が必要であること、などを内容とする議長サマリーを取りまとめた。
地球温暖化を防ぐ世界的な取組の向上のための一方の鍵は途上国が握っているが、環境庁としては、今回のセミナーを通じ、これら諸国が持つ取組強化に向けた意欲と他方で抱えている問題点とに関し、生の声が明らかになったと考えており、これらを踏まえた議長サマリーでの今後の取組方策の提案は、本年12月に京都で開かれる地球温暖化防止京都会議(COP3)において、先進国、途上国双方の間に建設的な協力関係を作る上で極めて有用であると評価している。
環境庁では、この議長サマリーを7月末日からの第7回ベルリンマンデート交渉会議等に提出し、世界各国に周知するとともに、我が国としての今後の環境協力に活かしていくこととしている。なお、今回会合では、COP3のホスト国である我が国のなお一層のイニシアテイブを求める声が強かった。
また、本会議の成果を地域の取組に活かすための行事として、環境庁、山梨県及び富士吉田市の主催により、10日(木)の午後に、途上国での生活環境の悪化などを含む地球温暖化問題と私たちの暮らしとの関係を理解し、地球温暖化防止のために先進国市民が果たすことのできる役割について考える「地球温暖化防止シンポジウム」を開いた。400名以上の参加者を得て、活発な議論が行われた。
1.開催趣旨
アジア太平洋地域では、気候変動問題に対処するために、これまでに多大の努力がなされてきた。環境庁でも、これまでに本セミナーを6回開催し、アジア太平洋地域の各国行政官と国際社会との対話を進め、当地域における気候変動問題への取組の強化を支援してきた。当地域は、世界の成長センターであり、当地域の取組のなお一層の向上は世界的意義があり、関心を集めている。
今回のセミナーは、特に、本年12月に京都で開かれる地球温暖化防止京都会議(気候変動枠組条約第3回締約国会議)において、先進国と途上国との協調の下で国際的対策を強化するとの合意が円滑に得られるよう、アジア太平洋地域における地球温暖化問題への取組状況報告を取りまとめる上で必要な最新情報を得るとともに、同地域における地球温暖化対策に係る地域協力の強化に向けた具体的な提言をまとめることなどを目的に開催された。具体的には、
・非附属書[1]締約国(途上国)の通報への取組状況及びその促進方策について意見交換をすることにより、域内諸国の通報の作成プロセスを促進する、
・共同実施活動の進展のような、アジア太平洋地域の共通的関心事項について意見交換を行う、
・最新の科学、技術、研究、行政、制度に関する情報へのアクセスを促進するための情報ネットワークを含め、気候変動に関するアジア太平洋諸国間の情報、意見交換を促進するための地域協力のメカニズムについて討議する、ことを主なテーマとしていた。
2.開催日時及び開催場所
開催日時 : 平成9年7月7日(月)から10日(木)
開催場所 : 山梨県富士吉田市 ホテルハイランドリゾート
3.開催主体
主 催: 環境庁、山梨県、富士吉田市、ESCAP
後援/協力: 外務省、通商産業省、
気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)、
国連大学(UNU)
4.参加者
海外及び国際機関等からの参加者25名
中国、フィジー、インドネシア、キリバス、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、パプア・ニューギニア、フィリピン、韓国、スリランカ、タイ、ツバル、ウズベキスタン、ベトナム、米国、ESCAP、地球環境ファシリティ(GEF)、海外経済協力機関(OECD)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画国際環境技術センター(UNEP/IETC)、国連環境計画アジア太平洋事務局(UNEP/ROAP)、UNFCCC、国連大学(UNU)、国連大学(UNU/IAS)
国内からの参加者12名
環境庁、山梨県及び富士吉田市の環境部局他(その他国内自治体等からの傍聴者多数)
5.会議の概要
石井環境庁長官、天野山梨県知事、栗原富士吉田市長、ESCAP カリム課長による主催者挨拶の後、加藤久和名古屋大学法学部教授を議長に、アチャ・スガンデイ氏(インドネシア)及びマレイ・ウォード氏(ニュージーランド)を副議長に、クリスティン・ズムケラー女史を書記に選出し、以下のとおり討議を進めた。
○キーノート・スピーチ「通報作成等インドネシアにおける条約の実施状況」
アチャ・スガンディ氏(インドネシア環境省副大臣)より、インドネシアを例にとって、途上国の持つ意欲や困難、そして国際社会への期待が詳細に報告された。具体的には、{1}同国では、エネルギーや産業、林業、農業、運輸等の各セクターの取組や先進国との協力による共同実施活動を盛り込み、現在策定の最終段階にある国家行動計画を基に国別報告を作成することとしており、本セミナーで各国と情報や経験を交流できるものと期待していること、また、{2}島嶼を多く含む国であり、気候変動により、海面上昇の影響や食料の維持に影響が生じることが予想されるが、資金的、技術的な能力が不足しており、途上国がその約束を果たすよう、先進国が十分な支援を行うことが重要であること、{3}先進国と受け入れ途上国とが具体的な対策プロジェクトに関し協力する共同実施活動に積極的に取り組んでおり、エネルギー効率向上や再生可能エネルギーの利用、林業及び農業の改善について共同実施活動を行うための共同文書を豪州、E7(G7国の電力会社の集まり)と交わしている。将来的には日本や米国とも交わしたいこと、{4}本セミナーが、地球を救うとの精神のもと、特に途上国の条約上の義務の達成や、アジア太平洋地域な協力を示す具体的な行動の促進を円滑にすることを期待していることなどの旨のキーノート・スピーチを行った。
○第1セッション「通報の作成等の促進」
気候変動枠組条約では、全締約国の義務として、温室効果ガスの排出目録の作成、国家行動計画の策定及び取組状況についての国別報告書の提出等を行うことが定められ、特に、条約の批准後3年以内に提出する国別報告書の策定等が多くの途上国にとって緊急の課題となっている。このため、これらに係る途上国の取組や途上国への多国間、二国間の支援の状況についてレビューした後、途上国のキャパシティビルディング(対処能力の向上)を進めるための先進国や国際機関の協力の具体策等に関し、討議を行った。
○第2セッション「共同実施活動の促進」
共同実施活動(AIJ)は、途上国で行われる対策プロジェクトにおいて先進国の資金や技術などを活用するものであり、途上国側でもインドネシアを始めとしていくつかの国では国内の体制が整備され、具体的なプロジェクトの進展が見られている。一方、ネパールや南太平洋諸国などでは、プロジェクトを実施する意思はあるものの具体的な案件が未だ行われていない。このような各国の状況や国際的な議論の進捗を踏まえつつ、AIJプロジェクトの進め方や案件の形成に向けたドナー国(援助国)とホスト国(被援助国)との協力に係る課題等について討議を行った。
○第3セッション「気候変動対策に関する地域協力」
地球規模では、気候変動枠組条約事務局が様々な活動を行っているほか、アジア太平洋地域では、ESCAP、ADB(アジア開発銀行)、UNEP(国連環境計画)アジア太平洋地域事務所、APEC、APN(アジア太平洋の環境研究のネットワーク)やSPREP(南太平洋地域環境計画)等が多様な活動を行っている。前回セミナーで提案された地域ネットワークの形成等を中心に地域協力のあり方について討議を行った。また、山梨県、富士吉田市等の地球温暖化問題への取組状況の発表を踏まえ、地方公共団体が地球温暖化防止のために果たす役割と国際協力について討議した。今後の地域協力のあり方や今後の本セミナーのあり方等について多数の提案がなされ、討議を行い、今後の地域協力のための具体的な取組案を取りまとめた。
6.プログラム(別添1参照)、7.議長サマリー(別添2参照)
添付資料
- 連絡先
- 環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
直通:03(3581)7244
課長:小林光
補佐:石飛博之(内線6737)
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課地球温暖化対策推進室
室長:鈴木克徳
補佐:米谷仁(内線6758)
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課地球温暖化対策推進本部
上席:森秀行