報道発表資料
環境庁においては、現時点での内分泌攪乱化学物質問題についての基本的な考え方 、それに基づき今後進めて行くべき具体的な対応方針及び本対応方針を定めるに当た って判断根拠とした科学的知見の概要をとりまとめた。
環境庁としては、本対応方針に基づき各種の調査・研究を進め、行政的な措置のあ り方について検討していくとともに、国民の本問題への正しい理解を助けるため、今 後得られる新たな科学的知見や情報を適宜・的確に提供していくこととしている。
また、諸外国及び関係する国際機関に対しては、本方針を「Strategic Programs on Environmental Endocrine Disruptors '98 / Japan Environment Agency」 (SPEED'98/JEA)の名称で提示し、国際的な連携を進める際の基礎とする。
1.経緯
人や野生生物の内分泌作用を攪乱し、生殖機能阻害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性の ある外因性内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)について環境庁においては、1
997年3月に「外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究班」(座長:鈴木継美元国 立環境研究所所長)を設置し、これまでの内外の文献及び我が国における環境モニタリン
グ調査の結果等に基づき、現状における科学的な知見を整理するとともに、今後重点的に 進めるべき調査・研究課題などについて検討を行い、同年7月に中間報告書をとりまとめ
て公表している。
環境庁においては、本中間報告書を踏まえ1998年度以降の総合的な調査・研究を進 めるべく検討を進めてきたが、現時点での内分泌攪乱化学物質問題についての基本的な考
え方、それに基づき今後進めて行くべき具体的な対応方針及び本対応方針を定めるに当た って判断根拠とした科学的知見の概要を取りまとめた。
2.内分泌攪乱化学物質問題について
(1)内分泌攪乱化学物質問題
「外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)」とは、「動物の生体内に取り込まれた 場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物
質」を意味する。
近年、専門家より環境中に存在するいくつかの化学物質が、動物の体内のホルモン作用 を攪乱することを通じて、生殖機能を阻害したり、悪性腫瘍を引き起こすなどの悪影響を
及ぼしている可能性が指摘されており、環境保全行政上の新たで重要な課題の一つとなっ ている。
(2)科学的な知見の不十分性
本問題に関しては、人や野生動物への影響を示唆する科学的報告が多くなされているものの、報告された異常と原因物質との因果関係、そうした異常な状況が発生するメカニズ
ム等に関してはいまだ十分には明らかにされていない。しかしながら、環境中には、人及び動物のホルモン作用を攪乱しうる化学物質がいくつか存在することはかなり確実である
。
今後は、
- 指摘されている人や野生動物の異常を検証するために報告の例数を増やすこと、統計的な解析を深めること、
- 環境汚染状況及び人や野生動物への摂取量の把握、
- 影響が発現する作用メカニズムの解明等のための調査・研究を一層深めていくこと、
- これまで内分泌攪乱作用が疑われている約70物質を含めてより幅広い範囲の化学物質について内分泌攪乱作用を有するか否か、どの程度の作用力を持つものであるか等を明 らかにすること
が必要である。
また、そのためのスクリーニング試験方法を国際的に協力しつつ早期に確立していくことが重要となっている。
(3)人や野生動物への影響を検討するに当たって考慮すべき事項
内分泌攪乱化学物質による人や野生動物への影響の発生可能性及びその防止対策を検討するに当たっては、環境媒体の汚染を通じて人や野生動物が当該化学物質に曝露する可能
性、内分泌攪乱作用の強さを考慮した環境リスク評価を進め、それに基づく的確な環境リスク管理を行うことが重要である。また野生動物への影響を防止すること自体が環境保全
上の重要な目的であるとの観点から本問題への取組を進める必要がある。この場合、本問題の特徴を踏まえ、以下の点に留意することが必要である。
- 脊椎動物のホルモン作用の共通性等に留意して、野生生物の影響が人にどの程度当てはまるかを検討すること
- 影響が観察されている主な生物は水生生物であることから、水域の汚染状況に着目したリスク評価等を行うこと
- 環境中で化学的に変化して内分泌攪乱化学物質になることもあることから、環境中での挙動に留意すること
- 内分泌攪乱化学物質の作用のメカニズム、その作用の強さを明らかにする努力を重ねつつ、リスク評価を進めること
- ホルモンは体内でかなり低い濃度で作用を及ぼすことから環境中の内分泌攪乱化学物質が難分解性、食物連鎖を通じた蓄積性等の性質を有する場合には、環境リスク管理上特
に留意すること
- 胎児や乳幼児への影響等世代を越えた長期的な影響の発生を未然に防止する観点から、リスク評価等のあり方を検討すること
3.本問題に対する環境庁の対応方針について
(1)基本的な考え方
内分泌攪乱化学物質問題については、科学研究の分野においてはいまだ緒についたばかりであり、科学的には不明な点が多々残されている。しかし、これまでの科学的知見が指
し示すように、人の健康及び生態系に取り返しのつかない重大な影響を及ぼす危険性をはらんだ問題である。
このため、学際的なフォーラムの下で科学的研究を加速的に推進しつつ、行政部局においては、今後急速に増すであろう新しい科学的知見に基づいて、行政的手段を遅滞なく講
じうる体制を早期に準備することが必要となる。
本問題の特質を考慮すれば、
- 行政機関―学術研究機関―民間団体の連携の下に調査・研究を推進すること、
- 国際的な調査研究協力及び情報ネットワークを強化すること、
- 化学物質による汚染の防止対策の再点検を進めること、
- 関係する行政分野との密接な連携を確保すること、
が特に重要な考え方となる。
(2)具体的な対応方針
{1} | 環境汚染の状況、野生動物等への影響に係る実態調査の推進
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{2} |
試験研究及び技術開発の推進 国立環境研究所において関連研究施設の整備を含めた研究体制の充実を図り、また、環境庁の一括計上研究費等を通じて、試験研究及び技術開発、研究機関の研究活動への支援 を進め、得られた成果を、行政的な取組に活用する。 |
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{3} | 環境リスク評価、環境リスク管理及び情報提供の推進
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{4} | 国際的なネットワーク強化のための努力
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4.今後の予定
(1)早急に本方針の実施体制について地方公共団体環境部局と協議・調整を図る。
(2)5月中に環境汚染の状況、野生動物等への影響に係る実態調査等の推進に際して専門的立場から検討、指導をいただくべく「内分泌攪乱化学物質問題検討会(仮称)」を
設置する。
(3)諸外国及び関係する国際機関に対しては、本方針を「StrategicProgramsonEnvironmentalEndocrineDisruptors
'98/JapanEnvironmentAgency」(SPEED'98/JEA)の名称で提示し、国際的な連携を進める際の基礎とする。
- 連絡先
- 環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課 長 :吉田 徳久(内6350)
専門官 :椎葉 茂樹(内6352)