環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第3章>第4節 地域の特性を生かした低炭素地域づくり

第4節 地域の特性を生かした低炭素地域づくり

1 都市の規模に応じた先導的な低炭素地域づくりの取組

(1)大都市における取組(福岡県北九州市における効率的なエネルギー利用の取組)

 現在の大都市におけるライフスタイルは、エネルギー資源の大量消費を通じて、環境に大きな負荷を与えています。都市における環境負荷を抑えるためには、エネルギーの効率的で、面的な利用を図ることが重要です。そのためには、低炭素型の街区形成が重要な観点となります。低炭素型の街区形成のためには、効率的なエネルギー基盤の整備がかかせません。

 福岡県北九州市は、工場における生産活動で得られるエネルギーを活用した街区形成が進んでいる街として知られています。市内にある製鉄工場では、製鉄の過程で発生する水素を回収しています。回収された水素の一部は、専用のパイプラインを通じて、近隣の集合住宅、店舗や公共施設の燃料電池、燃料電池自動車等に利用する水素充填ステーションに供給されています。さらに、工場屋根や公共空間等の未利用スペースを有効利用して大規模な太陽光発電事業を展開しています。これらのエネルギーを効果的に活用するため、高度なエネルギーマネジメントシステムの整備を進めています。


北九州市のスマートコミュニティの概念図

 再生可能エネルギーを面的に大量導入するためには、スマートグリッドの整備が重要であることから、北九州市における取組は、再生可能エネルギーを街区全体で整備し、地区のエネルギーを賢く使いこなすためのモデル的取組であると考えられます。

(2)小規模市町村都市における取組(北海道下川町)

 近年、中山間地域では、過疎化による地域の活力の低下が問題となっている一方で、森林資源や水資源など都市では得難い自然資源が豊富にあることが特徴です。地域の自然資源を有効に活用し、バイオマス、中小水力、太陽光、風力等の再生可能エネルギーを積極的に活用することで、市町村のエネルギ-の自給自足を目指す取組が多くみられます。

 国内でも有名な林業地域である北海道下川町では、町のアクションプランに基づき、主に持続可能な森林経営とゼロ・エミッションの木材加工、それに伴うバイオマス資源の有効利用について、行政と林業・林産業関係者をはじめとする地域住民が一体となり取り組んでいます。


下川町でのバイオマス資源を活用した取組

 積雪寒冷地である下川町では暖房に使用する化石燃料に依存する傾向が強いことから、バイオマス資源の活用による熱利用を積極的に行うことで二酸化炭素の削減に取り組んでいます。例えば、間伐材や端材を町役場に併設した木質ボイラーで燃やし、できた熱を周辺の複数の公共施設に暖房用として供給する地域熱供給施設の導入を行っています。また、住宅での木質ボイラーの導入促進を図るとともに、木質ボイラー燃料などのエネルギー作物として短期間で成長するヤナギの栽培に取り組んでいます。また、間伐事業などから発生する林地残材や河川・林道支障木などを集積し、木質ボイラーに用いられる木くず燃料として製造・供給する施設として、木質原料製造施設を設置し、これまで未利用だった木質バイオマス資源を有効活用しています。

2 電力供給における効率的なネットワークシステム

 太陽光発電や風力発電など、出力が自然条件に左右される再生可能エネルギーが大量導入された場合には、電力の供給を安定化させるためのバックアップ電源や大容量蓄電池等の設置など電力供給側の対策の他に、需要側も取り入れた対策の必要性が指摘されています。この再生可能エネルギーの出力の不安定性を克服するためにITと蓄電池の技術を活用して、エネルギーの供給サイドだけでなく従来コントロールが困難だった需要サイドについても管理を行う技術がスマートグリッドです。このようなスマートグリッド技術を基礎とし、電気だけでなく、熱、交通を含め、エネルギーの効率的利用を面的に拡大したのがスマートコミュニティです。近年、このような電力等の安定供給や効率的利用を実現するため、高度な電力網等の面的な基盤整備が注目されています。


スマートコミュニティの概念図