環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 公害紛争処理等及び環境犯罪対策

第9節 公害紛争処理等及び環境犯罪対策

1 公害紛争処理等

(1)公害紛争処理

公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つがあります。

公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。

ア 公害等調整委員会に係属した事件

2025年度中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は26件で、これに前年から繰り越された36件を加えた計62件(責任裁定事件28件、原因裁定事件30件、調停事件0件、義務履行勧告事件4件)が2025年度中に係属しました。このうち2025年度中に終結した事件は26件で、残り36件が2026年度に繰り越されました。

終結した主な事件としては、「羽島市における工場からの粉じんによる健康被害責任裁定申請事件」があります。この事件は、建材等製造販売会社(被申請人)の操業する工場の近隣に所在した就業先である作業所において、紋紙作成等の業務に従事していた者が、工場から飛散したアスベスト粉じんにばく露したことにより、悪性胸膜中皮腫に罹患し死亡するに至ったとして、その者の相続人である岐阜県羽島市の申請人らが、被申請人に対して損害賠償を求めたものです。公害等調整委員会は、本件について、直ちに裁定委員会を設け、3回の審問期日を開催するなど、手続を進めた結果、2025年9月、当該業務に従事していた者の悪性胸膜中皮腫の罹患と被申請人工場からのアスベスト粉じんの飛散との間の因果関係を認め、本件申請をおおむね認容する裁定を行い、本事件は終結しました。

イ 都道府県公害審査会等に係属した事件

2025年度中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は41件で、これに前年から繰り越された44件を加えた計85件が2025年度中に係属しました。このうち2025年度中に終結した事件は37件でした。

ウ 公害紛争処理に関する連絡協議

公害紛争処理制度の利用の促進を図るため、都道府県・市区町村、裁判所及び弁護士会に向けて制度周知のための広報を行いました。また、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、都道府県公害審査会等との相互の情報交換、連絡協議に努めました。

(2)公害苦情処理
ア 公害苦情処理制度

公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものと規定され、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。

イ 公害苦情の受付状況

2024年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は6万6,931件で、前年度に比べ2,222件減少しました(対前年度比3.2%減)。

このうち、典型7公害(環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項において定義されている

「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤沈下」及び「悪臭」)の苦情件数は4万7,622件で、前年度に比べ悪臭が587件減少するなど、全体でも1,347件減少しました(対前年度比2.8%減)。

また、典型7公害以外の苦情件数は1万9,309件で、前年度に比べ廃棄物投棄が372件減少するなど、全体でも875件減少しました(対前年度比4.3%減)。

ウ 公害苦情の処理状況

2024年度の典型7公害の直接処理件数(苦情が解消したと認められる状況に至るまで地方公共団体において措置を講じた件数)4万2,899件のうち、2万7,343件(63.7%)が、苦情を受け付けた地方公共団体により、1週間以内に処理されました。

エ 公害苦情処理に関する指導等

地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談員等ブロック会議等を実施しました。

2 環境犯罪対策

(1)環境事犯の取締り

環境事犯について、特に産業廃棄物の不法投棄事犯等、国民生活を脅かす悪質な事犯に重点を置いた取締りを推進しました。2025年中の環境事犯の検挙事件数は5,290事件(2024年中は5,443事件)でした。

(2)廃棄物事犯の取締り

2025年中の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)違反に係る廃棄物事犯の検挙事件数は4,578事件(2024年中は4,719事件)でした。このうち不法投棄事犯が50.4%(2024年中は51.4%)、また、産業廃棄物事犯が13.9%(2024年中は13.5%)を占めています。

(3)水質汚濁事犯の取締り

2025年中の水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)違反に係る水質汚濁事犯の検挙事件数は1事件でした(2024年中はありませんでした)。

(4)検察庁における環境関係法令違反事件の受理・処理状況

2025年中における主な罪名別環境関係法令違反事件の通常受理人員は、廃棄物処理法違反(5,978人)が最も多く、次いで、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律違反(311人)となっています。処理人員は、起訴が3,338人、不起訴が3,255人であり、起訴率は約50.6%です。起訴人員のうち公判請求は184人、略式命令請求は3,154人です。