環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>令和8年度 環境の保全に関する施策 令和8年度 循環型社会の形成に関する施策 令和8年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策>第1章 地球環境の保全>第1節 地球温暖化対策

令和8年度 環境の保全に関する施策
令和8年度 循環型社会の形成に関する施策
令和8年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 地球環境の保全

第1節 地球温暖化対策

1 研究の推進、監視・観測体制の強化による科学的知見の充実

気候変動問題の解決には、最新の科学的知見に基づいて対策を実施することが必要不可欠です。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の各種報告書が提供する科学的知見は、世界全体の気候変動対策に大きく貢献しています。この活動を拠出金等により支援するとともに、国内の科学者の研究を支援することにより、我が国の科学的知見を同報告書に反映させていきます。

また、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)、その後継機となる「いぶき2号」(GOSAT-2)や、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)による全球の温室効果ガス濃度の継続的な観測を行うとともに、後継機の検討を進めます。加えて、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)等を活用した気候変動に伴う地球環境変化の衛星観測を行います。さらに、航空機・船舶・地上観測等による観測・監視、観測データの蓄積・利活用、気候変動予測、影響評価、調査研究の推進等により気候変動に係る科学的知見を充実させます。加えて、パリ協定に基づき各国が作成・公表する温室効果ガスインベントリ報告と、独立性の高いGOSAT観測データに基づく排出量推計値とを比較し、各国排出量報告の透明性の確保を目指すとともに、排出量推計技術の国際標準化の取組を進めていきます。

2 持続可能な社会を目指した脱炭素社会の姿の提示

1.5℃目標の実現に向けた我が国の取組として、地球温暖化対策計画に基づき、2030年度、2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ46%、60%、73%削減することを目指します。この野心的な目標の実現に向けては、徹底した省エネルギーの推進、環境への適正配慮や地域との共生を大前提とした再生可能エネルギーの導入促進を含む、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源の最大限の導入・利用、公共部門や地域の脱炭素化、脱炭素型ライフスタイルへの転換等の需要家側の取組など、あらゆる分野で、でき得る限りの取組を進めます。この際、既に利用可能な技術・設備の導入拡大を加速しつつ、現状の制度や技術にとらわれず、創造的に対策の検討、導入及び実施を進めます。2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路を弛(たゆ)まず着実に歩んでいくことにより、政策の継続性・予見性を高め、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させ、排出削減と経済成長の同時実現に資する地球温暖化対策を推進していきます。

3 グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けて

エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の三つの同時実現を目指す、「グリーントランスフォーメーション」(GX)の実現に向けて、2025年5月に改正された脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)及び同法に基づく「GX2040ビジョン」を踏まえ、GX産業構造の実現に向けたGX戦略地域制度の実施や、2026年度から本格稼働した排出量取引制度の運用を着実に実施するとともに、分野別投資戦略を通じた重点分野でのGX投資を促進するなど、我が国のGXを加速していきます。

4 エネルギー起源CO2の排出削減対策

経済の発展や質の高い国民生活の実現、地域の活性化、自然との共生を図りながら温室効果ガスの排出削減等を推進すべく、徹底した省エネルギーの推進、環境への適正配慮や地域との共生を大前提とした再生可能エネルギーの導入促進を含む、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源の最大限導入・利用、地域の脱炭素化、技術開発の一層の加速化や社会実装、脱炭素型ライフスタイルへの転換等を実行します。

(1)脱炭素でレジリエントかつ快適な地域・くらしの創造

「地域脱炭素ロードマップ」、「地球温暖化対策計画」等に基づき、脱炭素先行地域づくり、重点対策加速化事業を推進するとともに、地域の基盤構築のための積極支援を行います。具体的な施策については、第6章第5節1(2)を参照。

「デコ活」について、2023年度策定の「くらしの10年ロードマップ」に基づき、官民連携で国民の「新しい豊かな暮らし」に向けた脱炭素型製品・サービス等の大規模な需要創出と、行動変容・ライフスタイル転換を持続的かつ強力に促していきます。

脱炭素社会を実現するため、再生可能エネルギーの主力化を着実に進めることが必要です。再生可能エネルギーの最大限の導入に向け、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づく地域脱炭素化促進事業制度等も活用しながら、地域と共生し、環境に配慮した再生可能エネルギーを推進していきます。また、公共施設での再生可能エネルギーの率先導入や、ペロブスカイト太陽電池を含む自家消費型太陽光発電設備の導入、エネルギーの面的利用の拡大、窓・壁等と一体となった太陽光発電設備の導入、エネルギーの地産地消を目指す地域における浮体式洋上風力発電の導入に向けた計画策定支援等、様々な取組を通してCO2排出削減対策を進めていきます。

一度建設されると長期にわたりCO2の排出に影響を与える住宅・建築物分野の脱炭素化を着実に推進するため、ZEH(ゼッチ)・ZEB(ゼブ)及びこれらを上回る水準の省エネルギー性能を有する住宅・建築物の普及を図ります。また、更なる住宅のゼロ・エネルギー化を進める観点から、ZEH(ゼッチ)の定義を見直したところであり、今後この普及を図ります。加えて、国内に多数存在する省エネルギー性能の低い住宅・建築物の脱炭素改修を加速するとともに、省エネルギー性能の高い設備・機器の導入促進や、家庭・ビル・工場のエネルギーマネジメントシステム(HEMS/BEMS/FEMS)の活用や省エネルギー診断等による徹底的なエネルギー管理の実施を図ります。あわせて、ZEB(ゼブ)を新築する際に、建設から解体に至るまでの建築物ライフサイクルを通じて排出されるCO2等(ライフサイクルカーボン)を算定しその削減を目指す取組や低炭素型建材を活用する取組を促進します。

省エネトップランナー制度により、機械器具・建材等の省エネルギー性能の更なる向上を図ります。

電力部門においては、2050年ネット・ゼロに向けて、脱炭素電源を最大限活用することに加え、火力発電については、火力全体で安定供給に必要な発電容量(kW)を維持・確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量(kWh)を減らしていきます。具体的には、トランジション手段としてのLNG火力の確保や、水素・アンモニア、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)等を活用した火力の脱炭素化等を進めていきます。加えて、非効率な石炭火力のフェードアウトを促進します。

(2)バリューチェーン・サプライチェーン全体の脱炭素移行の促進

バリューチェーン全体で民間投資も活用した脱炭素経営の実践、地域・くらしを支える物流・交通、資源循環などサプライチェーン全体の脱炭素移行を促進します。

「経団連カーボンニュートラル行動計画」の着実な実施と評価・検証による産業界における自主的取組を推進していきます。

工場や事業場に対してもDXシステムを用いた省CO2化の促進、省CO2効果の高い設備等の導入への支援や、Scope3削減に取り組む企業が主導し、企業間で連携した取組への支援を行うことで企業の脱炭素化を進めていきます。

脱炭素社会の実現には自社のみならず、バリューチェーン全体の削減取組が重要であり、この取組を進めることは企業の競争力強化につながります。このため、バリューチェーンにおける温室効果ガス排出量算定の環境整備、算定及び削減に向けた支援等を進めます。

(3)地域・くらしの脱炭素化の基盤となる先導技術実証と情報基盤等整備

CO2排出削減技術の高効率化や低コスト化等のための技術的な課題を解決し、優れたCO2排出削減技術を生み出し、実社会に普及させていくことで、将来的な地球温暖化対策の強化につなげることが重要です。このため、民間の自主的な取組だけでは十分に進まないCO2排出削減効果の高い技術の開発・実証を進めます。

革新的な省CO2実現に向けて、窒化ガリウム(GaN)やセルロースナノファイバー(CNF)を用いた製品の社会実装・普及展開の加速化を目指した技術開発・実証を実施します。

廃プラスチックやバイオマス(未利用の稲わら等)といった地域資源の活用・循環と大幅なCO2削減を実現する、革新的で省資源な触媒技術等に係る技術開発・実証を実施します。

次世代エネルギーの社会実装に向け、地域資源を活用して製造した水素を地域で使う地産地消型のサプライチェーンを構築する実証を実施します。

CCUS/カーボンリサイクルの早期社会実装に向け、地域でのCCU事業形成の支援やCCUサプライチェーンを構築する事業モデルの実証、人工光合成の社会実装ロードマップを踏まえた取組方策の検討を行います。また、CO2貯留ポテンシャルが高い浮体式洋上圧入CCS技術や安全・適正なCCS事業に必要なモニタリング技術の確立に向けた検討・実証を実施します。

(4)モビリティの脱炭素化

電動車の導入や車載用蓄電池のリユース、充電・水素充てん設備の整備を促進するなどの取組を進めます。特に燃料電池商用車の導入促進を図る重点地域においては、水素充てん設備に対し集中的に支援を行います。また、2024年12月に策定した「道路分野の脱炭素化政策集Ver.1.0」や、2025年4月に改正された道路法(昭和27年法律第180号)等を踏まえ、再生可能エネルギーの活用、安全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備等による自動車交通量の減少等を通じたCO2排出量の削減、ダブル連結トラックの利用環境の整備や自動物流道路の実現に向けた検討等による低炭素な物流への転換、第六次環境基本計画が指摘していることを踏まえ、いわゆる誘発・転換交通が発生する可能性があることを認識しつつ、渋滞対策等の推進のほか、LEDの道路照明への導入、電動建機の活用、低炭素な材料の導入促進による道路のライフサイクル全体の低炭素化など、道路管理者共働の下で脱炭素の取組を進めます。さらに、ゼロエミッション船等の開発・生産基盤構築・導入、水素燃料電池鉄道車両等の導入推進等、モビリティ全般について次世代技術の開発や性能向上を促しながら普及を促進していきます。港湾については、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニア等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進します。航空分野については、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、航空機環境新技術の導入、空港の再エネの導入等を推進していきます。

また、相対的に低炭素な輸送モードの利活用を促進するため、鉄道を始めとする公共交通の利用促進や、貨物輸送のモーダルシフトの促進に取り組みます。

5 エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの排出削減対策

非エネルギー起源CO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン等の排出削減については、廃棄物処理や低GWP(地球温暖化係数)化製品の普及等の個別施策を推進します。フロン類については、モントリオール議定書キガリ改正も踏まえ、上流から下流までのライフサイクルにわたる包括的な対策により、排出抑制を推進します。

6 森林等の吸収源対策、バイオマス等の活用

森林等の吸収源対策として、再造林等の森林施業の適切な実施、成長等に優れた特定苗木の生産拡大、木造住宅における横架材など国産材比率の低い分野での国産材の利用促進、都市等における非住宅・中高層建築物等の木造化・木質化の促進等、森林資源の循環利用の確立を図るとともに、農地等の適切な管理、都市緑化等を推進します。

また、これらの対策を着実に実施するため、林地残材、稲わら等のバイオマスを燃料やエネルギーとして活用するなど、農山漁村の活性化と一体的に推進します。

さらに、ブルーカーボンを活用した取組については、CO2の吸収・固定、海洋環境や漁業資源の保全、観光、地域経済の発展など、多面的価値を活かしながら推進し、ブルーカーボン生態系(マングローブ林、塩性湿地・干潟、海草藻場・海藻藻場)の保全・再生・創出に向けた取組を推進します。また、CO2吸収源としての期待が大きい沖合のブルーカーボンについても、海藻を生産・育成することで、温室効果ガスを吸収し、深海に貯留・固定し、吸収量として算定・評価する取組の可能性を、IPCCにおける「国家温室効果ガスインベントリのための二酸化炭素除去(CDR)技術・炭素回収利用及び貯留(CCUS)に関する『2027年IPCC方法論報告書』(追加ガイダンス)」の検討状況等を踏まえつつ、関係省庁連携や官民連携による推進体制を構築し、検討していきます。

7 国際的な地球温暖化対策への貢献

COP30の結果を踏まえ、世界の進む道筋が1.5℃目標と整合的となるよう、我が国として最大限貢献していきます。

具体的には、相手国との協働に基づき、我が国の強みである技術力を活かして、戦略策定・制度構築・人材育成等脱炭素が評価される市場の創出に向けて更なる環境整備を進めるとともに、パリ協定に沿って実施する二国間クレジット制度(JCM)等を農業等も含む幅広いセクターに活用して環境性能の高い技術・製品等のビジネス主導による国際展開を促進し、世界の排出削減と持続可能な発展に最大限貢献していきます。また、ASEANなどを中心に、脱炭素政策形成支援を実施します。さらに、大気汚染物質や水質汚濁物質と温室効果ガスの両面にシナジー効果をもたらすJCM、都市間連携事業等を活用して、途上国等の脱炭素化に向けた取組に協力していきます。

土地利用変化による温室効果ガスの排出量は、世界の総排出量の2割を占め、その排出を削減することが地球温暖化対策を進める上で重要な課題となっていることから、特に途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等(REDD+)や植林を積極的に推進し、森林分野における排出の削減及び吸収の確保に貢献します。適応分野においても各国の適応活動の促進のため、アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)において科学的情報・知見の基盤整備や支援ツールの整備、能力強化・人材育成等を実施し、その活動を広報していきます。

8 横断的施策

我が国の産業競争力の強みであるバリューチェーン(VC)を構成する中堅・中小企業の脱炭素化を推進するため、各地域の自治体、金融機関、経済団体等が連携して地域ぐるみで支援する体制を構築し、地域ごとに多様性のある事業者ニーズを踏まえ伴走的な支援を推進します。その結果得られた成果の横展開を図り、「知る」「測る」「減らす」の3ステップに沿った取組を促進します。

地球温暖化対策推進法に定める温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度については、「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」(EEGS)の活用により、利便性の高い形で情報提供を行うことで、情報の活用可能性向上を図るとともに、算定方法等について、制度の見直しの検討をします。さらに、排出量情報に加えて、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減取組等に関する情報の積極的な報告を促し、報告情報の活用可能性向上を図ります。

消費者が脱炭素の実現に貢献する製品やサービスを選択できるようにするため、業界及び地域単位での製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)の算定・表示に向けた取組を一層推進します。さらに、付加価値に転換する観点から、CFPを算定・表示した製品に加えて排出削減量に着目した指標(削減貢献量・削減実績量等)等も活用したGX製品の提供も有効な取組と考えられます。脱炭素価値を有する製品・サービスの価値が消費者に認知され、調達・購入に繋がるよう、価値の見える化に関する検討を行っていきます。「デコ活」においては、気候変動への適応と緩和の一体的な情報発信と行動変容を促すためのコミュニケーションを強化することで、国民一人ひとりの気候変動対策に対する意識の醸成や実践を促進します。また、生活者による様々な脱炭素に資する行動のCO2排出削減効果データベースの活用を通じ、脱炭素に資する行動の社会実装に取り組むプロジェクト「The POSITIVE ACTION Initiative」の取組も引き続き進めていきます。

地球温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガスの排出削減等のために事業者が講ずべき措置を取りまとめた温室効果ガス排出削減等指針について、技術の進歩やその他の事業活動を取り巻く状況の変化に応じた対策メニューの拡充を検討するとともに、その利便性の向上や周知を図ることで、活用を促進します。

J-クレジット制度については、国内の多様な主体による省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用、水稲作の水管理等による排出削減対策及び適切な森林管理や工学的プロセスによるネガティブエミッション技術等による吸収源対策を引き続き積極的に推進していくため、制度の更なる活性化を図ります。

9 公的機関における取組

(1)政府実行計画

政府は、2025年2月に閣議決定した「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」に基づき、2013年度を基準として、政府全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに50%、2035年度までに65%、2040年度までに79%削減することを目標とし、太陽光発電の最大限の導入、庁舎等における省エネの徹底、新築建築物のZEB(ゼブ)化、電動車の導入、LED照明の導入、再生可能エネルギー等の脱炭素電源由来の電力調達、フロン類の排出抑制、GX製品の調達等の取組を率先実行していきます。

(2)地方公共団体実行計画

地球温暖化対策推進法に基づき、全ての地方公共団体は、自らの事務・事業に伴い発生する温室効果ガスの排出削減等に関する地方公共団体実行計画(事務事業編)の策定が義務付けられています。また、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出量削減等を推進するための総合的な計画として、都道府県、指定都市、中核市及び施行時特例市(以下「都道府県等」という。)は、地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられているとともに、都道府県等以外の市町村においても同計画の策定に努めることとされています。具体的な取組の方向性については、第6章第5節1(2)を参照。