「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の達成や「生物多様性国家戦略2023-2030」の推進を目指し、産官学民の連携・協力による生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取組を推進するため設立された、「2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)」において、2023年に取りまとめた「J-GBFネイチャーポジティブ行動計画」に基づき、J-GBFの構成団体が取り組んだ内容を共有するとともに、企業、自治体、団体等に向けて、ネイチャーポジティブの実現に向けた行動の第一歩として「ネイチャーポジティブ宣言」の発出の呼び掛けを進めました。2026年4月時点で1,100を上回る企業・団体が宣言を発出又は賛同しており、これらの宣言は、ネイチャーポジティブ宣言のポータルサイトで公表しています。
生物多様性基本法(平成20年法律第58号)において、都道府県及び市町村は生物多様性地域戦略の策定に努めることとされており、2026年1月1日時点で47都道府県、187市区町村で生物多様性地域戦略が策定されています。
生物多様性の保全や回復、持続可能な利用を進めるには、地域に根付いた現場での活動を自ら実施し、また住民や関係団体の活動を支援する地方公共団体の役割は極めて重要なため、「生物多様性自治体ネットワーク」が設立されており、2026年4月時点で202自治体が参画しています。
地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(令和6年法律第18号。以下「地域生物多様性増進法」という。)は、ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向け、企業等による地域における生物多様性の増進のための活動を促進するため、主務大臣による基本方針の策定、当該活動に係る計画の認定制度の創設、認定を受けた活動に係る手続のワンストップ化・規制の特例等の措置等を講ずる法律で、2025年4月に施行されました。同法に基づき、367か所の増進活動実施計画等を認定するとともに、地域生物多様性増進活動支援センターの設置運営等の支援を行い、26地域が同センターを設置しました。
ナショナル・トラスト活動については、税制支援措置等を継続するとともに、非課税措置に係る申請時の留意事項等を追記した改訂版のナショナル・トラストの手引きの配布等を行いました。
また、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(平成26年法律第85号。以下「地域自然資産法」という。)の運用を進めました。2026年3月時点で、地域自然資産法に基づく地域計画が沖縄県竹富町と新潟県妙高市で作成されており、両地域において同計画に基づく入域料の収受等の取組が進められています。
毎年5月22日は国連が定めた「国際生物多様性の日」であり、2025年のテーマは「“Harmony with nature and sustainable development”(自然との共生、持続可能な未来へ!)」でした。国内では、J-GBF関係団体等が国際生物多様性の日を中心に生物多様性を感じ、学び行動するイベントを全国各地で開催しました。また、「こども霞が関見学デー」、「GTFグリーンチャレンジデー」等、様々な活動とのタイアップによる広報活動等生物多様性に配慮した事業活動や消費活動の促進に向けた活動を進めています。
自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることに資する経済(ネイチャーポジティブ経済)への移行に向けて、2025年7月に国の施策を主軸として「いつまでに、何をすべきか」の全体像を「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ」として取りまとめました。その上で同ロードマップの具現化に向けた各施策を実施しました。具体的には、「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」や、企業による自然関連課題の分析に活用できる「優先対象分野別自然関連リスク・機会ロングリスト及びバリューチェーンマップ」の制作を行いました。また、ネイチャーポジティブな地域づくりで企業と地域の価値向上を図るべく、企業による取組を、マルチステークホルダーとの連携により、地域課題の解決や地方創生等へと発展させること等を狙い、モデル事業も全国3か所にて実施しました。
経済界を中心に自発的な組織として設立された「経団連自然保護協議会」との連携・協力を継続しており、経団連自然保護協議会と協力してネイチャーポジティブに関するビジネス機会の創出を目指し、2025年12月にはビジネスマッチングイベントを開催しました。
2023年4月のG7環境・気候変動・エネルギー関係大臣会合において、ネイチャーポジティブに資する具体的な活動や提供しているソリューション等に関する情報共有やネットワーキングを目的として設立したG7ネイチャーポジティブ経済アライアンス(G7ANPE)は、加盟企業・団体が26団体まで増加し、G7各国と連携して引き続き国際ワークショップを開催予定です。加えて、ネイチャーポジティブの実現のための民間資源動員拡大に向けた手段の一つとして生物多様性クレジット等の経済的手法が国際的に進みつつあります。そのため、生物多様性の保全に対する価値取引等も見据え、我が国の自然の特徴を踏まえた生物多様性・自然資本の定量的な価値評価のあり方について検討を開始し、「生物多様性の価値評価手法の検討に当たっての基本的な考え方」を2026年3月に作成しました。
民間レベルでの国際的な動きとしては、生物多様性・自然資本に関する情報開示の枠組を2023年に公表した自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のほか定量的なインパクト評価や目標設定の手法を定めるScience Based Targets for Nature(SBTs for Nature)等において、生物多様性を企業経営に組み込んでいく仕組みづくりが加速しています。こうした国際的イニシアティブによる開示や目標設定等の促進、ESG投融資の促進等の動きを踏まえ、環境省ではネイチャーポジティブ経済研究会を継続して開催し、専門家・関係機関とともに課題の分析、必要な施策の検討を行いました。TNFDについては、アダプター企業数は我が国が219社(2026年3月時点)と世界最多であり、2024年度からは、TNFDへ2年間で約50万ドル相当の拠出(直接・間接支援の合算)を行い、ネイチャーデータパブリックファシリティ(NDPF)の立ち上げに向けたパイロットテストの支援等を実施しました。テストは2025年10月に完了し、同年11月にTNFDより恒久的なNDPFの設置を含むデータバリューチェーンに係る勧告が発出されました。さらに、事業者向けにTNFDやネイチャーポジティブ経営等に係るワークショップの開催や、自然関連財務情報開示を含む統合的取組実装モデル支援事業等を通じ、企業の情報開示の実施・高度化を支援・促進しました。
事業者による取組を促進するためには、消費者の行動を生物多様性に配慮したものに転換していくことも重要です。そのための仕組みの一例として、生物多様性の保全にも配慮した持続可能な生物資源の管理と、それに基づく商品等の流通を促進するための民間主導の認証制度があります。こうした社会経済的な取組を奨励し、多くの人々が生物多様性の保全と持続可能な利用に関わることのできる仕組みを拡大していくことが重要です。
環境に配慮した商品やサービスに付与される環境認証制度のほか、生物多様性に配慮した持続可能な調達基準を策定する事業者の情報等について環境省のウェブサイト等で情報提供しています。また、農林水産省では、農産物の生産段階における温室効果ガス削減や生物多様性保全に貢献する取組を星の数で分かりやすくラベル表示する「見える化」を推進しています。あわせて、環境負荷低減の取組の「見える化」を行った農産物等、有機農業により生産された農産物等及び環境負荷低減に寄与する持続可能な農業生産工程管理(GAP)から生産されたことが第三者によって確認された農産物等について、国等の機関の食堂において使用することを、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)に基づく基本方針に位置付けました。また、木材・木材製品については、グリーン購入法により、政府調達の対象とするものは合法性、持続可能性が証明されたものとされており、各事業者において自主的に証明し、説明責任を果たすために、証明に取り組むに当たって留意すべき事項や証明方法等については、国が定める「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」に準拠することとしています。加えて、合法伐採木材等の利用を促進することを目的として、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(平成28年法律第48号。以下「クリーンウッド法」という。)が2017年5月に施行されました。2025年4月には、取組の強化を目的として改正クリーンウッド法が施行されており、国内市場で最初に木材等の譲受け等をする木材関連事業者に対して合法性確認等が義務付けられるとともに、合法性の確認等の情報が消費者まで伝わるよう小売事業者が木材関連事業者に追加されています。木材関連事業者による取組を支援するため、説明会の開催や林野庁情報提供サイト「クリーンウッド・ナビ」を通じた情報発信等を行いました。
2016年3月に政府が公表した「明日の日本を支える観光ビジョン」に掲げられた10の柱施策の一つとして、国立公園満喫プロジェクトがスタートしました。本プロジェクトでは、美しい日本の国立公園の自然を守りつつ、そのブランド力を高め、国内外の誘客を促進することにより、国立公園の所在する地域の活性化を図り、自然環境の「保護と利用の好循環」を実現することを目的としています(図2-2-1)。先行して取組を進めてきた阿寒摩周、十和田八幡平、日光、伊勢志摩、大山隠岐、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、慶良間諸島の8つの国立公園をはじめ、13公園において実行計画となる「ステップアッププログラム」を策定して集中的に取り組んでいるほか、全国の国立公園において利用推進の取組を進めています。2026年3月には「国立公園満喫プロジェクト2026年以降の取組方針」の策定を行うとともに、各公園でさらに充実した取組を進めていくために13公園において「ステップアッププログラム」の改訂を進めました。

特に、国立公園の美しい自然の中での感動体験を柱とした滞在型・高付加価値観光を推進するため、「宿舎事業を中心とした国立公園利用拠点の面的魅力向上に向けた取組方針」(2023年6月)に基づき、国立公園における滞在体験の魅力向上のための「先端モデル事業」を十和田八幡平(十和田湖地域)、中部山岳(南部地域)、大山隠岐(大山蒜山地域)、やんばるの4つの国立公園で進めています。2025年度は地域の関係者と連携し、民間提案を取り入れつつ、国立公園の利用の高付加価値化に向けた基本構想の策定や、特に集中的に取り組む利用拠点の選定、利用拠点におけるマスタープランの策定等を進めました。このほか、同取組方針に基づき、国立公園ならではの感動体験の拠点となる宿泊施設についての検討を実施しており、2026年3月に「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)」を公表したところです。
また、地域の関係者と丁寧な合意形成を図った上で入域料を収受施設の維持管理に充てたり、ツアー料金等の一部を自然環境の保全に充てたりする利用者負担の取組を進めています。2026年3月時点では、国立公園における入域料の事例は20件であり、それ以外の利用者負担の仕組みの件数は119件となっています。
加えて、国立公園の優れた自然や文化を活用して、高付加価値な観光の推進を図る「国立公園における感動体験・アドベンチャートラベル創出事業」を実施し、11の国立公園(釧路湿原、三陸復興、磐梯朝日、上信越高原、秩父多摩甲斐、中部山岳、伊勢志摩、瀬戸内海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、やんばる)の13の地域において、自然体験ツアー等の企画・試行・自走化・受入体制整備を実施しました。
さらに、国立公園オフィシャルパートナーシップを18社と新規締結し、2026年3月末時点で、合計153社・団体となったほか、ビジターセンターや歩道等の整備、多言語解説やツアー・プログラムの数の充実と質の確保・向上に向けた検討、ガイド人材等の育成支援、三陸復興、尾瀬、吉野熊野、阿蘇くじゅう、やんばる国立公園におけるストーリーを紡いだ聞き書き集「国立公園ものがたり」の制作、国内外へのプロモーション等を行いました。
長距離自然歩道の第一号である東海自然歩道について、「東海自然歩道の活性化の方向性」に基づき、沿線自治体関係者や民間事業者を対象としたワークショップを開催しました。また、2025年7月に豊かな自然と歴史に彩られた道をむすび、飛弾山脈をまたいで松本・高山間を繋ぐ「信飛トレイル」が開通し、2025年4月には十和田八幡平国立公園と三陸復興国立公園・みちのく潮風トレイルとを結ぶ新たなロングトレイル「八戸十和田トレイル」が試験開通しました(写真2-2-1)。みちのく潮風トレイルにおいては、トレイルの利活用推進を進めるためウォーキングイベント等を開催し、関係者との連携強化や、同トレイルの更なる盛り上げを図りました。

また、環境省では、2024年6月に公表された「石川県創造的復興プラン」に貢献するため、能登の豊かな自然や風土に触れ魅力を体験することができるロングトレイルの構想策定に向けた調査や地域関係者との勉強会の開催、能登半島国定公園の公園区域及び公園計画の見直しのため、土地利用状況及び利用施設の情報収集等を行い、能登半島の豊かな自然資源を活かしたツーリズムと地域づくりの推進を支援しました。
みどりの月間(4月15日~5月14日)等を通じて、自然観察会など自然とふれあうための各種活動や、サンゴ礁や干潟の生き物観察など、こどもたちが国立公園等の優れた自然地域を知り、自然環境の大切さを学ぶ機会を提供しました。国立公園等の利用の適正化のため、自然公園指導員の委嘱やパークボランティアの連絡調整会議等を実施し、利用者指導の充実を図りました。
また、2020年度より継続して、国立公園の周遊促進を目的としたアプリを用いた「日本の国立公園めぐりスタンプラリー」の運営を行いました。
国営公園においては、ボランティア等による自然ガイドツアー等の開催、プロジェクト・ワイルド等を活用した指導者の育成等、多様な環境教育プログラムを提供しました。
国立公園の安全で快適な利用を図るため、保護上及び利用上重要な地域の公園施設について、国の直轄事業により整備・改修を進めるとともに、公園施設を安全にかつ長期間使用できるようインフラの長寿命化、多様な利用者が国立公園の魅力にふれられるよう多言語化や施設のユニバーサルデザイン化の推進等に取り組みました。2025年度には、中部山岳国立公園の乗鞍高原におけるトイレの新築や日高山脈襟裳十勝国立公園のエントランス標識の新設のほか、尾瀬国立公園における木道の再整備等を実施しました。また、地方公共団体が実施する国立・国定公園及び長距離自然歩道等に対して、自然環境整備交付金等を交付し、47都道府県の事業を支援しました。現在、長距離自然歩道の計画総延長は約2.8万kmに及んでいます。さらに、令和6年能登半島地震により、能登半島国定公園内及び越前加賀海岸国定公園内において石川県等が整備した園地、歩道等の利用施設が多数被災したことから、石川県等に対して、国定公園施設災害復旧事業費補助金により利用施設の復旧の支援を行いました。
旧皇室苑地として広く親しまれている国民公園(皇居外苑、京都御苑、新宿御苑)及び千鳥ケ淵戦没者墓苑では、施設の改修、芝生・樹木の手入れ等を行いました。
保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図るための整備を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備に対し助成しました。また、森林環境教育の場となる森林・施設の整備等への支援策を講じました。国有林野においては、森林教室等を通じて、森林・林業への理解を深めるための「森林ふれあい推進事業」等を実施するとともに、国民による自主的な森林(もり)づくりの活動の場である「ふれあいの森」等の設定・活用を図り、国民参加の森林(もり)づくりを推進しました。また、「レクリエーションの森」の中でも特に優れた景観を有するなど、地域の観光資源として潜在能力の高い箇所として選定をした「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」において、重点的に観光資源の魅力の向上、外国人も含む旅行者に向けた情報発信等に取り組み、更なる活用を推進しました。
温泉の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正な利用を図ることを目的とした温泉法(昭和23年法律第125号)に基づき、温泉の掘削・採取、浴用又は飲用利用等を行う場合には、都道府県知事や保健所設置市長等の許可等を受ける必要があります。2024年度には、温泉掘削許可135件、増掘許可6件、動力装置許可101件、採取許可42件、濃度確認90件、浴用又は飲用許可1,768件が行われました。
環境大臣が、温泉の公共的利用増進のため、温泉法に基づき地域を指定する国民保養温泉地については2026年3月末時点で79か所を指定しています。
2018年5月から現代のライフスタイルに合った温泉地の楽しみ方として「新・湯治」を推進するためのネットワークである「チーム新・湯治」を立ち上げ、2025年度は3回のセミナーを実施しました。2026年3月末時点で477団体等が参加しています。
また、温泉地全体での療養効果を科学的に把握し、その結果を全国的な視点に立って発信する「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」について、客観的なエビデンス収集・分析や、モデル調査を実施しました。
さらに、2026年3月に、我が国の「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産への登録に向けた提案書をユネスコ事務局に提出しました。
農泊の推進による所得向上等を実現するため、農泊をビジネスとして実施するための体制整備や、地域資源を魅力ある観光コンテンツとして磨き上げるための専門家活用等の取組、古民家等を活用した滞在施設等の整備の一体的な支援を行うとともに、農泊地域の情報発信など戦略的な国内外へのプロモーションを行いました。
また、農山漁村が有する教育的効果に着目し、農山漁村を教育の場として活用するため、関係府省が連携し、子供の農山漁村における体験等を推進するとともに、農山漁村を都市部の住民との交流の場等として活用する取組を支援しました。