世界で資源の獲得競争が激化する中、我が国では、国内で発生するリサイクル可能な資源の多くが海外流出、焼却・埋立てされている現状があります。そこには、公正な競争環境が未整備である、リサイクル技術が未成熟である、資源循環ビジネスの事業性が未確立であるといった課題、ボトルネックが存在します。出口戦略を見据えつつ、今こそ政策リソースを集中投下して循環経済への移行を加速し、我が国の「勝ち筋」とすべきです。
我が国基幹産業が必要とする質と量の再生材を安定供給するための「再生資源供給サプライチェーンの強靱化」は、政府が進める危機管理投資、成長投資そのものであり、その実現が急務です。現状、欧米に比べて、日本の静脈産業の企業規模は相対的に小さく、その成長のためには、原材料たる再生資源の回収・分別の取組の強化や再生材使用製品の市場拡大も必要です。民間に予見性を示しつつ官民で投資を大胆に進めること、併せて関連制度の見直し、社会構造の改革を進めることが、強く豊かな国づくりに不可欠です。その際、俯瞰的なマクロアプローチ、緊要度・時間軸を意識したミクロアプローチの両輪が重要です。世界情勢を踏まえつつ、スピード感や現場感を持ち、事業者にも寄り添いながら循環経済を実現することが、日本経済復活への道です。
こうした観点に立って、2026年4月の循環経済に関する関係閣僚会議(第4回)の場において、「循環経済行動計画」が取りまとめられました。重要鉱物、金属資源等のリサイクル、再生材の活用等を通じた循環経済への移行は、もはや環境保全にとどまらない、経済安全保障のための喫緊の課題です。産業競争力の確保を前提とした上で、迅速かつ有効な対策を講じていく必要があります。かかる認識の下、本行動計画に沿って、事業者のみならず、地方公共団体や国民も巻き込み、点から線へ、更に面的、立体的に、循環経済を国家戦略として取組を断行していくこととしています。
本章においては、循環経済行動計画の概略について紹介します。
資源循環を通じた我が国の自律性・不可欠性の向上に向けた取組として、重要鉱物や金属資源等について、いわゆる都市鉱山の有効活用や、高度な再資源化等の技術開発は、重要な要素です。このため、「マクロアプローチ」と「ミクロアプローチ」を柱とする「メタルリサイクル推進戦略」を推進していきます。
マクロアプローチとしては、世界的な資源獲得競争の中でサプライチェーンを強靭(じん)化すべく、我が国産業の国際競争力の確保を大前提として、今後、我が国として再生材確保に注力すべき重要鉱物、金属資源等を抽出し、2030年までの再生材供給の目標(目指す姿、需要に占める再生材の割合等)を設定し、戦略的に取り組みます。
また、鉄(グリーン鉄)、アルミ、銅、永久磁石等のベースメタル・重要物資については、我が国の自律性・不可欠性向上の観点から重要であり、それぞれの具体的目標を以下のとおり設定します。それ以外の重要鉱物等についても、再生材供給の拡大可能性に関する調査、推計を行います。
さらに、再生資源を使用し生産される製品の付加価値について、世界市場の獲得を見据えつつ、我が国が主体的に国際標準づくりに向けて取り組みます。
マクロアプローチとあわせて、都市鉱山等からの資源回収、再資源化等の強化についてなどミクロアプローチの視点でも、可能なものから取組に着手します。その際、時間軸を意識し、不適正スクラップヤード対策等の導入等といったような短期的対応に該当するもの、e-waste(電気・電子機器廃棄物)等について同志国連携を強化し、解体・選別後のe-scrap(電子スクラップ)等を日本へ循環させる流れを構築するといったような中長期的対応に該当するものを整理します。
我が国の鉄鋼業は、高強度・高加工性などユーザーの求める機能を実現する高級鋼材を中心に競争力を有しており、製造業の国際競争力強化に貢献しています。グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向け、生産時のCO2を抑えたグリーン鉄の市場は2050年に約5億トンまで拡大するポテンシャルがあり、欧州を中心に素材製造プロセスの脱炭素化要請が高まる中で、状況の変化に柔軟に対応しつつ、グリーン鉄の原料である高品位鉄スクラップに関する技術開発を促進するとともに必要な設備投資を進め、世界に先駆けたグリーン鉄の国内生産・技術基盤を構築することが急務です。とりわけ、現在国内で建設中の革新的大型電炉に高品位鉄スクラップを投入することで高品質鋼材を生産可能となります。大量の高品位鉄スクラップが新たに必要となるため、低品位鉄スクラップを選別処理して高品位鉄スクラップに転換する能力の確保が戦略的に重要です。あわせて、環境対策にコストをかけずに高値で資源を買い集め、公正な競争環境を阻害している不適正スクラップヤード対策、不適正輸出への対策も重要です。
[目標]2030年時点で、鉄スクラップを高品位化する処理能力約200万トン/年を目安とし、追加的に国内で確保します。
軽量・易加工性を活かし、自動車や建材等に幅広く利用されています。我が国は、原料となる新地金を100%海外からの輸入に依存しており、輸入依存度の低減やCO2排出量の削減を期待できるリサイクルの推進が重要です。鋳造品用合金には再生アルミ原料が多く用いられていますが、今後は、再生アルミ原料の使用が困難とされるアルミ展伸材(板・棒製品)についても再生アルミの利用率を高めることが重要であり、そのためには、合金種ごとの選別や不純物の除去に関する技術開発が求められます。
[目標]2030年時点で、再生アルミ原料の使用が一般に難しいとされるアルミ展伸材について、国内生産量の約4割を目安とし再生アルミ原料由来とします。
電気分解により製造される純度の高い銅地金(電解銅)は、電気自動車やAI関連分野、データセンターの拡大により将来的な需要の増加が見込まれており、デジタルトランスフォーメーション(DX)やGXを支える基盤素材として重要性が高まっています。原料となる銅精鉱を100%海外から輸入している我が国においては、輸入依存度の低減や製錬事業の基盤強化に向けて、鉱山権益の確保に加え、e-scrapや銅スクラップ等の銅を含む再生資源の処理量を増やすための技術基盤の確立や国内外からのe-scrapや銅スクラップの調達拡大が急務です。また、e-scrapや銅スクラップを処理するに当たっては、そもそも銅製錬事業の維持・強化が不可欠であるところ、近年、不公正な政策や慣行を受け、銅製錬委託費が極めて低水準となり、世界各地で銅製錬事業の撤退や生産縮小の動きが見られます。このため、国際連携による適正な銅製錬委託費の実現により、持続可能な銅製錬事業の実現にも取り組む必要があります。
[目標]2030年時点で、国内で生産される銅(電解銅)の約3割を、e-scrapや銅スクラップ等の再生資源由来とします。
レアアースを用いた永久磁石は、自動車や産業機械等の基幹産業の生産活動に不可欠です。我が国は高性能磁石の製造技術で優位性を持つ一方、原材料である重要鉱物を特定国に大きく依存しています。電動車の普及等に伴い、永久磁石の世界需要の増加が見込まれ、生産能力確保が課題となっています。特定国の輸出管理強化で供給が不安定となる中、リサイクルによって原材料の国内自給率を高めることによって、自律性・不可欠性を高めることが急務です。
[目標]2030年時点で、国内で供給される永久磁石の原材料の約3割をリサイクルによって賄います。
再生資源供給サプライチェーンの強靱化に当たっては、使用済製品等の収集、分別、保管、素材ごとの選別、前処理、高品質化といった製造業の原料製造プロセスを担う、静脈側(資源循環産業)への投資が重要です。一方で、我が国の資源循環産業は、地域ごとに小規模分散化しており、高度リサイクルへの投資も進んでいません。そのため、再生材の供給において、製造業と長期・大口契約を結べるような、競争力のある事業者が少なく、製造業が使いこなせる、質・量・コストを満たした再生材を製造できる事業者が育っていません。また、高度リサイクルを可能とする設備投資について、計画段階では製造業からの調達が確約されるケースは少なく、投資回収までのリードタイムも長いため、民間金融機関の融資が受けにくい状況にあります。再生材の原料となる循環資源について、経済合理性により、リサイクルよりも海外へ流出、焼却・埋立されるケースも存在します。こうした課題に対応するため、再生資源供給サプライチェーンの強靱化、重要鉱物、金属資源等の再生材確保に向け、投資促進のための多角的な経済的支援スキーム(予算・金銭面等)の構築について制度的措置を含め講じ、初期投資への支援と、脱炭素化支援機構(JICN)等の官民ファンドの活用、中小企業支援も含めた、効果的な融資やリスクマネー供給等を実施・検討します。こうした経済的支援スキームによる支援等により、民間の投資を国として大胆に後押しすることを含め、2030年までに官民で約1兆円の投資を目指します。
2025年11月に全面施行された資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(令和6年法律第41号)に基づく3種類の大臣認定制度は、周辺生活環境保全を前提に、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づく許可手続き等を不要とする特例制度を有しています。これにより、製造業と資源循環産業とが連携して実施する高度な再資源化事業等の創出を進めます。廃棄物処理事業者等への全国説明会の実施、意見交換等を重ねることで、本認定制度の周知・機運醸成を図るとともに、高度な再資源化事業を検討する事業者への技術的・財政的な後押し施策を通じ、3年で100件以上の事業認定を目指します。
再生プラスチック等の需要拡大に向けた支援事業・ルール整備としては、例えば、容器包装を由来とした高品質な再生プラスチック供給に向けた動静脈連携取組等を促進します。再生プラスチック分野については、各国の施策強化の影響を受け、国際的な競争が激化する一方、国内では、技術課題や経済合理性等の課題に直面しています。マテリアルリサイクルにおける高品質製品製造やケミカルリサイクルにおける食品用途も見据えた石油由来プラスチックと同等品質の製品製造に向けた技術開発や投資支援等が必要です。また、ユーザーである製造業では石油由来プラスチックに比べ現状高価な再生プラスチックの積極的使用に向け支援も必要となります。そのため、早急に需要と供給の両面で、プラスチック製容器包装等を由来として供給される再生プラスチックの資源循環の仕組みを確立すべく、集中的な支援・実証を行うとともに、関連法令との整合性を取りながら、必要な制度的措置を検討することとしています。
自動車等向け再生プラスチック市場の構築に向けては、自動車等ものづくり産業向けに安定した量と質の再生プラスチック(再プラ)を供給する再プラ集約拠点の構築のため、ビジネスモデルの検討、集約拠点に必要となる技術の体系化・実証、及び設備導入支援を行います。また、自動車等ものづくり産業における再プラ利用促進のため、需要喚起策と認証スキームの在り方を検討し、運用を見据えた実証等を行います。
スクラップヤードにおける雑品スクラップ等の不適正な処理に起因する生活環境保全上の支障に対し、条例の創設により対応している自治体もありますが、事業場を移転し規制から逃れる事業者の存在も聞いており、全国的な問題に波及するおそれがあります。このことから、100以上の都道府県等が国レベルの法制度による規制を望んでおり、法制度による不適正スクラップヤード対策が急務となっています。あわせて、使用済鉛蓄電池については、鉛くずの輸出増加や不適正輸出事例の発生を踏まえ、国内及び輸出先における生活環境保全上の支障の発生を防止するため、適正処理の確保と不適正輸出防止のための実効性のある法的措置を早期に一体的に講ずる必要があります(表4-1-1、写真4-1-1)。

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環境省においては、こうした観点から、中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会での審議も踏まえ、廃棄物処理法等の制度改正について検討を進めました(図4-1-1)。

このほか、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号。以下「バーゼル法」という。)において規制対象物である金属資源を含む雑品スクラップ等の一部が手続を経ないまま輸出されようとした不法事案が、税関の開披検査によって発覚しており、加えて、発覚した案件は氷山の一角であるとの指摘もされていることも踏まえ、金属資源の不法な国外流出を防止し、国内資源循環を促進するため、関係機関と連携した対策を講じます。具体的には、再生資源の不適正な輸出の傾向分析、金属資源を含むスクラップを中心にバーゼル法における対象物の範囲と該否判断基準の明確化、不適正な輸出に対する水際対策の強化等に取り組みます。さらに、諸外国が講じている循環資源の海外流出抑制策も参照しながら、更なる措置の検討を行います。
環境負荷の低減に資する物品等の国等の公的部門による調達等の推進を通じて、環境物品等への需要の転換を促進するため、2000年に国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)が制定されました。
2030年度までにグリーン購入法基本方針に位置付けられる全ての特定調達品目に原則として再生プラスチック利用率等の循環性基準を導入します(2024年度から取組を開始)。また、2025年6月に改正した資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)における認定製品等の取扱いについて2026年度に検討を行います。また、調達者の選択容易性の観点から、エコマーク等の第三者機関による環境ラベルを活用します。グリーン購入法で循環性の高い製品やサービスを適切に評価し、エコマーク等の第三者機関による環境ラベルの更なる普及啓発を図ることにより、地方公共団体や民間部門を含めた需要拡大につなげます。
使用済太陽光パネルは、現行の廃棄物処理法に基づき適正処理が義務付けられており、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号)に基づくFIT/FIP制度における事業用太陽光発電設備(10kW以上)には、廃棄等費用の積立制度が措置されています。
一方、2030年代後半以降、太陽光パネルの排出量が顕著に増加し、年間最大50万トン程度となり、最終処分場の残余容量を圧迫し、廃棄物処理全体に支障が生ずるおそれがあることから、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図るため、廃棄の抑制及びリサイクルの推進を図ることが重要です(図4-1-2)。

太陽光パネルの廃棄の抑制を図るためには、環境に配慮した設計がされた太陽光パネルの使用や、リユース等を推進することが重要です。
また、太陽光パネルのリサイクルについては、<1>現時点では埋立処分費用とリサイクル費用との差額が大きいこと、<2>全国的な処理体制が構築途上であることが課題です。このため、予算措置等も活用し、これらの課題への対応を図りながら、まずは費用効率的にリサイクルが実施可能な多量に廃棄をしようとする太陽光発電事業者等からリサイクルの規制を段階的に強化し、将来の大量廃棄時までに、住宅用を含めた幅広い太陽光パネルが経済合理的にリサイクルできる環境整備が重要です(写真4-1-2)。

環境省及び経済産業省においては、こうした観点から、中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会と産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループの合同会議での審議も踏まえ、新たな法制度案の検討を進めました(図4-1-3)。

リチウムイオン電池に起因する火災事故も増加の一途を辿っています。こうした問題も含め議論を行うため、2025年10月に「リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議」(消費者庁、総務省消防庁、経済産業省、国土交通省、環境省)が設置されました。政府では、当該連絡会議が同年12月に決定した「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」に基づき、取組が進められています。本パッケージは、リチウムイオン電池に起因する火災の防止やリサイクルの促進のため、国民や事業者の皆様に協力をお願いするものです。製造から廃棄・処理にいたる各段階で、関係省庁が必要な取組を総動員していきます。
環境省の新たな取組としては、他のごみへの混入を防止するための廃棄物処理法に基づく制度的対応、民間の廃棄物処理施設において、処理工程に混入したリチウムイオン電池を検知する設備等の導入支援等が盛り込まれています。また、リチウムイオン電池を扱う際に国民や事業者の皆様に心がけていただきたい行動を「3つのC」として、継続的に発信しています。1つ目は「賢く選ぶ(Cool choice)」、2つ目は「丁寧に使う(Careful use)」、3つ目は「正しく捨てる、そして資源循環(Correct disposal with better recycling)」です。2030年までに、リチウムイオン電池に起因する重大火災事故ゼロを目指して、取組を進めます(図4-1-4)。
