環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第7節 環境影響評価

第7節 環境影響評価

1 環境影響評価制度の在り方に関する検討

(1)再エネ海域利用法に基づき実施される洋上風力発電に係る環境影響評価制度の在り方

再生可能エネルギーのうち、風力発電については、今後も更なる導入拡大が期待されている一方で、地域によっては、環境影響等への懸念が高まっている状況にあります。こうした状況に鑑み、2023年9月、環境大臣から中央環境審議会に対し、風力発電に係る環境影響評価の在り方について諮問がなされました。

その後、「中央環境審議会風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会」における審議を経て、2024年3月、「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(一次答申)」が取りまとめられ、まずは、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)(平成30年法律第89号)に基づき実施される洋上風力発電事業に関し、より適正に環境配慮を確保する観点から、国が海洋環境等に関する調査を行った上で促進区域等を指定するとともに、これに相当する事業者の環境影響評価手続の一部を適用除外とする仕組みの必要性などが示されました。この結論を踏まえ、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を2025年3月に閣議決定し、第217回国会に提出しました。

(2)陸上風力発電に係る環境影響評価制度を含む今後の環境影響評価制度全体の在り方

環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、2011年に法改正がなされ、2013年に改正法が完全施行されていますが、改正法の附則において、「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律による改正後の環境影響評価法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」こととされており、改正法の施行から10年以上が経過したことから、当該附則に基づく検討が必要な時期を迎えている状況にあります。こうした状況に鑑み、2024年10月、環境大臣から中央環境審議会に対し、今後の環境影響評価制度の在り方について諮問がなされました。また、上記の「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(一次答申)」においては、風力発電全体に係る環境影響評価制度の在り方について結論を出すため、残された課題として、陸上風力発電に関しても、効果的かつ効率的に環境配慮を確保するための仕組みについて検討を進める必要性があるとの指摘がなされています。

こうした経緯を踏まえ、陸上風力発電に係る環境影響評価制度を含む今後の環境影響評価制度全体の在り方に対する結論を得るため、中央環境審議会「風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会」及び「環境影響評価制度小委員会」における審議を経て、2025年3月、「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(二次答申)」と「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)」が取りまとめられ、陸上風力発電を含む、工作物の建替事業に係る配慮書手続の見直しや、環境影響評価図書の制度的な継続公開などの必要性が示されました。この結論を踏まえ、「環境影響評価法の一部を改正する法律案」を2025年3月に閣議決定し、第217回国会に提出しました。

2 質の高い適切な環境影響評価制度の施行に資する取組の展開

(1)環境影響評価法の対象事業に係る環境影響審査の実施

環境影響評価法では、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。環境影響評価法に基づき、2025年3月末までに計879件の事業について手続が実施されました。このうち、2024年度においては、新たに25件の手続が開始され、また、14件の評価書手続が完了し、環境配慮の確保が図られました。

近年、特に審査件数の多い風力発電所については、環境影響の程度は事業規模よりも立地に依拠する特徴があり、陸上の風力発電所に係る立地選定において適正な配慮がなされていないと判断される事業に対しては、事業計画の見直し等の厳しい環境大臣意見を述べました。洋上の風力発電所については、これまで国内における導入実績が少なく、運転開始後の環境影響に係る知見が十分に得られていないことから、最新の知見、専門家の助言等を踏まえ、適切に調査、予測及び評価を実施することなどを求める環境大臣意見を述べました。太陽光発電所については、ゴルフ場跡地等の既に開発済みの土地で行われる事業に対して、廃棄物等の適正な処理や水生生物への影響を回避又は低減することや廃棄物等の適正な処理を求めた環境大臣意見を述べました。

火力発電所については、国内外の情勢を踏まえ、温室効果ガスの排出削減に向けた取組の道筋が1.5℃目標と整合する形で描けない場合には、事業の休廃止も含めあらゆる選択肢を勘案して検討するよう求めるなど、厳しい環境大臣意見を述べました。

(2)環境影響評価に係る不確実性への対応と環境情報基盤の整備

「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(一次答申)」において、洋上風力発電事業の環境影響に係る不確実性に対応する観点から、工事中及び稼働中における環境影響を的確に把握するためのモニタリングが重要とされたことを踏まえ、事業者向けの具体的なガイドラインの策定に向けて、経済産業省と環境省が共同事務局となり、「洋上風力発電におけるモニタリング等に関する検討会」を2024年7月に設置し、検討を進めました。また、2023年12月に公表した「洋上風力発電所に係る環境影響評価手法の技術ガイド」の活用に向けて、関係団体等への周知や普及啓発を行い、洋上風力発電の環境影響評価に関する理解促進を進めたほか、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース“EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。

(3)環境影響評価図書の継続公開に係る取組

情報アクセスの利便性を向上させ、国民と事業者の情報交流の拡充及び事業者における環境影響の予測・評価技術の向上を図るため、環境影響評価法に基づき事業者が縦覧・公表する環境影響評価図書について、法定の縦覧・公表期間を過ぎた場合においても図書の閲覧ができるよう、事業者の任意の協力を得て、環境省ホームページにおいて環境影響評価図書を掲載する取組を進めました。