脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の構築や、安全確保に資する研究開発等を実施します。加えて、国際的なニーズである環境収容力や国内や地域での需要側の暮らしのニーズを把握した上で、将来及び現在の国民の本質的なニーズを踏まえたイノベーションの創出を目指し、環境・経済・社会の統合的向上の具体化、ネット・ゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブの各分野及び複数領域に関連する統合的な研究・技術開発や、安全・安心等に資する研究・技術開発、自然科学のみならず人文社会科学も含めた総合知の活用に資する研究・技術開発を実施します。
その際、特に以下のような研究・技術開発に重点的に取り組み、その成果を社会に適用します。
ネット・ゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブを目指す中長期の社会像がどうあるべきかを不断に追究するため、環境と経済・社会の観点を踏まえた、統合的政策研究を推進します。
また、そのような社会の実現のために、国内外において新たな取組が求められている環境問題の諸課題について、「脱炭素」や「資源循環」、「自然共生」、「安全・安心」及びそれらを横断する観点から環境と経済の相互関係に関する研究、環境の価値の経済的な評価手法、規制や規制緩和、経済的手法の導入等による政策の経済学的な評価手法等を推進し、客観的な証拠に基づく政策の企画・立案・推進を行うための基盤を提供します。なお、この政策研究の成果を政策の企画立案等に反映するプロセスにおいては、各段階における関係研究者の参画を得て、政策形成にも携わる研究者人材の養成を進めます。
また、ネット・ゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブといった複数の課題に同時に取り組むWin-Win型の技術開発や、複数の課題の同時解決の実現を妨げるような課題間のトレードオフを解決するための技術開発等、複数の領域にまたがる課題及び全領域に共通する課題も、コスト縮減や、研究開発成果の爆発的な社会への普及の観点から、重点を置いて推進します。また、AI、IoT等のデジタル技術、量子等の先端的な科学技術、先端材料技術やモニタリング技術、DX関連技術、経済安全保障に資する技術、分野横断的に必要とされる要素技術等については、技術自体を発展させるとともに、個別の研究開発への活用を積極的に促進します。
研究開発を確実かつ効果的に実施するため、以下の方策に沿った取組を実施します。
技術パッケージや経済社会システムの全体最適化を図っていくため、複数の研究技術開発領域にまたがるような研究開発を進めていくだけでなく、一領域の個別の研究開発についても、常に国内外の他の研究開発の動向を把握し、その研究開発がどのように社会に反映されるかを意識する必要があります。
このため、研究開発の各主体については、産学官、府省間、国と地方等の更なる連携や、同種のみならず異種の学問領域や業界・業種の間の連携等を推進し、また、アジア太平洋等との連携・国際的な枠組みづくりにも取り組みます。その際、国や地方公共団体は、関係研究機関を含め、自ら研究開発を行うだけでなく、研究機関の連携支援や、環境技術開発に取り組む民間企業や大学等の研究機関にインセンティブを与えるような研究開発支援を充実させます。
研究開発の成果である優れた環境技術を社会実証・実装し、普及させていくために、新たな規制や規制緩和、経済的手法、自主的取組手法、特区の活用、シームレスな環境スタートアップ等の支援によるイノベーションの促進等、あらゆる政策手法を組み合わせ、環境負荷による社会的コスト(外部不経済)の内部化や、予防的見地から資源制約・環境制約等の将来的なリスクへの対応を促すことにより、現在及び将来の国民の本質的なニーズに基づいた研究開発を進めるとともに、環境技術に対する需要をも喚起します。また、技術評価の導入や信用の付与等、技術のシーズをひろい上げ、個別の技術の普及を支援するような取組を実施します。
研究開発の成果が分かりやすくオープンに提供されることは、政策決定に関わる関係者にとって、環境問題の解決に資する政策形成の基礎となります。そのためには、「なぜその研究が必要だったのか」、「その成果がどうだったのか」、「どのように環境問題の解決に資するのか」に遡って分かりやすい情報発信を実施します。また、研究成果について、ウェブサイト、シンポジウム、広報誌、見学会等を積極的に活用しつつ、広く国民に発信したり関係者と対話したりすることを通じて成果の理解促進を更に強化し、市民の環境政策への参画や持続可能なライフスタイルの実現に向けた意識変革・行動変容を実現します。
研究開発における評価においては、PDCAサイクルを確立し、政策、施策等の達成目標、計画、実施体制等を明確に設定した上で、その推進を図るとともに、研究開発の進捗状況や研究成果がどれだけ政策・施策に反映されたかについて、事前、中間、事後そして追跡評価等の適切な組合せを通じて適時、適切にフォローアップを行い、実績を踏まえた計画・政策等の見直しや資源配分、さらには新たな政策等の企画立案を行っていきます。
データを基盤とするプラットフォームビジネスについては、データの質と量がその価値や競争優位性に直結し得ることから、環境ビジネスにおいても製造・輸送等のサプライチェーンの各段階で生まれる価値あるデータを最大限に活用するため、企業や業種の垣根を越えて国内の関係者がデータを連携し、流通させる仕組みを構築します。そして、利用者のニーズに対応し、事業者の市場アクセスや消費者の便益向上に貢献します。
我が国が強みを有する環境技術の活用・普及等のため、国際的な枠組みへの貢献や多国間・二国間協力等を通じて、環境課題に関する国際連携を推進します。
我が国の国際競争力強化に当たっては、知的財産に係る技術情報のオープン・クローズ戦略に留意します。とりわけ、我が国が強みを有する環境技術が活用され、普及していくためには、単に技術情報をオープンにするのみならず、技術を外部に打ち出して革新を起こすアウトバウンド型のオープンイノベーションを実現する手法としての標準化が重要です。環境技術に関連する国際標準化や国際的なルール形成の推進のためには、諸外国との協調が不可欠であり、科学的知見やデータの共有や政策対話等を通じて相手国・組織に応じた戦略的な連携や協力を行うとともに、途上国を始めとする各国の環境関連の条約の実施に貢献します。
監視・観測等については、個別法等に基づき、着実な実施を図ります。また、広域的・全球的な監視・観測等については、国際的な連携を図りながら実施します。このため、監視・観測等に係る科学技術の高度化に努めるとともに、実施体制の整備を行います。また、民間における調査・測定等の適正実施、信頼性向上のため、情報提供の充実や技術士(環境部門等)等の資格制度の活用等を進めます。
新しい技術の開発や利用に伴う環境への影響のおそれが予見される場合には、環境に及ぼす影響について、技術開発の段階から十分検討し、未然防止の観点から必要な配慮がなされるよう、適切な施策を実施します。また、科学的知見の充実に伴って、環境に対する新たなリスクが明らかになった場合には、科学的根拠が不十分または不確実な場合においても、その時点で利用可能な最良の科学的知見に基づいて、未然防止原則や予防的取組の観点から必要な配慮がなされるよう、適切な施策を実施します。