環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第5章 包括的な化学物質対策に関する取組>第1節 ライフサイクル全体を通じた化学物質管理のための法的枠組み、制度的メカニズム及び能力構築

第5章 包括的な化学物質対策に関する取組

化学物質のライフサイクル全体を通じた環境リスクの最小化を目指すため、2023年9月に採択された「化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)─化学物質や廃棄物の有害な影響から解放された世界へ」において合意された戦略的目的に沿って、国際的な観点に立った環境分野の化学物質管理を推進します。

第1節 ライフサイクル全体を通じた化学物質管理のための法的枠組み、制度的メカニズム及び能力構築

GFCの戦略目標Aでは、ライフサイクル全体を通じた化学物質管理のための法的枠組み、制度的メカニズム及び能力構築に取り組むことが掲げられています。この目標の達成のため、化学物質の製造から使用、循環利用、廃棄に至るライフサイクル全体を通じた環境リスクの最小化に向け、関係する法的枠組みや制度的メカニズムの構築に努めます。

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「化学物質審査規制法」という。)に基づく一般化学物質等のスクリーニング評価及び優先評価化学物質のリスク評価を引き続き円滑に実施するとともに、関係省の合同審議会において、進捗状況の確認及び進行管理を適切に行います。

特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号)に基づく化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)及び安全データシート制度(SDS制度)については、最新の科学的知見や国内外の動向を踏まえた見直し及び適切な運用を通じて、事業者による化学物質の自主的管理の改善を促進し、環境の保全上の支障の未然防止を図ります。

水銀に関する水俣条約に関して、国内では水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成27年法律第42号)に基づく措置を講じるとともに、条約の決議や法施行後5年を経て実施した法施行状況点検結果を踏まえた見直しを行います。また、途上国支援等を通じて条約の実施に貢献します。

農薬については、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき、生活環境動植物の被害防止及び水質汚濁に係る農薬登録基準の設定等を適切に実施します。また、既登録農薬の再評価について、円滑に評価を行うための事前相談に対応しつつ、国内使用量が多い農薬から順次評価を進めます。加えて、農薬登録制度における生態影響評価の充実を図るため、長期ばく露による影響を対象としたリスク評価の導入に向けた検討を行います。さらに、生態リスクが高いと考えられる農薬の河川水モニタリングを着実に進めます。

非意図的に生成されるダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)に基づく対策を引き続き適切に推進します。

事故等に関し、有害物質の排出・流出等により環境汚染等が生じないよう、有害物質に関する情報共有や、排出・流出時の監視・拡散防止等を的確に行うための各種施策を推進します。

あわせて、これらの諸制度を着実に実施し適正な化学物質管理を推進するための体制・能力構築のため、事業者への制度周知、化学物質アドバイザーを活用した人材育成支援、化管法の排出・移動量報告支援ツール提供等に取り組みます。