国、地方公共団体、森林所有者等の役割を明確化しつつ、地域が主導的役割を発揮でき、現場で使いやすく実効性の高い森林計画制度の定着を図りました。所有者の自助努力等では適正な整備が見込めない森林について、針広混交林化等公的な関与による整備を促進しました。多様な主体による森林づくり活動の促進に向け、企業・NPO等に対する森林づくり活動の普及啓発に取り組みました。
第2章第6節1(1)を参照。
国土から得られる豊かな恵みを将来の世代へと受け継いでいくための多様な主体による国土の国民的経営の実践に向けた普及や検討として、市町村管理構想・地域管理構想の全国展開などに取り組んでいます。また、持続可能な開発のための教育(ESD)の理念に基づいた環境教育等の教育を通じて、国民が国土管理について自発的に考え、実践する社会を構築するための意識啓発や参画を促進しました。
森林づくり活動のフィールドや情報の提供等を通じて多様な主体による「国民参加の森林づくり」を促進するとともに、身近な自然環境である里山林等を活用した森林体験活動等の機会提供、地域の森林資源の循環利用を通じた森林の適切な整備・保全につながる「木づかい運動」等を推進しました。
公園、緑地等のオープンスペースは、良好な景観や環境、にぎわいの創出など、潤いのある豊かな都市をつくる上で欠かせないものです。また、災害時の避難地としての役割も担っています。都市内の農地も、近年、住民が身近に自然に親しめる空間として評価が高まっています。
このように、様々な役割を担っている都市の緑空間を、民間の知恵や活力をできる限り活かしながら保全・活用していくため、2017年5月に都市緑地法等の一部を改正する法律(平成29年法律第26号)が公布され、必要な施策を総合的に講じました。
東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、地域主導のローカルなネットワーク構築が危機管理・地域活性化の両面から有効との見方が拡大しています。また、中長期的な地球温暖化対策や、気候変動による影響等への適応策、資源ひっ迫への対処を適切に実施するためには、地域特性に応じた脱炭素化や地域循環共生圏の構築、生物多様性の確保への取組等を通じ、持続可能な地域づくりを進めることが不可欠です。
2023年度においては、地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定や再エネ促進区域の設定に向けたゾーニング等を補助する「地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業」や地域防災計画に災害時の避難施設等として位置付けられた公共施設、又は業務継続計画により災害など発生時に業務を維持するべき公共施設に、平時の温室効果ガス排出削減に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能発揮を可能とする再生可能エネルギー設備等の導入を補助する「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」等を実施しました。さらに、「株式会社脱炭素化支援機構」による地域資源を活用した脱炭素プロジェクト等への資金供給、その他グリーンボンド発行・投資の促進等を行いました。
「第五次環境基本計画」において目指すべき持続可能な社会の姿として掲げられた循環共生型の社会である「環境・生命文明社会」を実現するためには、ライフスタイルのイノベーションを創出し、パートナーシップを強化していくことが重要です。このため、国民一人一人が自らのライフスタイルを見直す契機とすることを目的として、企業、団体、個人等の幅広い主体による「環境と社会によい暮らし」を支える地道で優れた取組を募集し、表彰するとともに、その取組を広く国民に対して情報発信する「グッドライフアワード」を、2013年度から実施しています。2023年度は、応募があった202の取組の中から、最優秀賞1、優秀賞3、各部門賞6、計10の取組を環境大臣賞として表彰しました。
特別な助成を行う防災・省エネまちづくり緊急促進事業により、省エネルギー性能の向上に資する質の高い施設建築物を整備する市街地再開発事業等に対し支援を行いました。
地域循環共生圏づくりに取り組む28の活動団体を選定し、地域の総合的な取組となる構想策定及びその構想を踏まえた事業計画の策定、地域の核となるステークホルダーの組織化等の環境整備を実施しました。また、2019年度より運用を開始している「地域循環共生圏づくりプラットフォーム」では、各実証地域の取組から得られた知見を取りまとめ、地域の実情に応じた支援の在り方や効果を測る指標等の検討を実践的に行ったほか、オンラインにて「地域循環共生圏フォーラム2023」(主催:環境省)を開催し、民間企業や団体、地方公共団体関係者を中心に、400名以上が参加しました。このフォーラムでは脱炭素分野や資源循環など、様々なテーマの分科会を開き、地域循環共生圏づくりに取り組んでいる民間企業等や地域の双方向の活発な議論が行われ、「学び」や「出会い・交流」の場となりました。
持続可能な地域づくりのためには、SDGsの達成を目指して、業種や分野を超えた人々の連携・協働が必要とされます。パートナーシップによるプラットフォームを形成し、環境・経済・社会課題の同時解決を目指すためには、多様なビジョンを持ち、主体的に地域課題解決に取り組む人材が期待されることから、地域の次世代リーダーを育成することを目的として、「地域循環共生圏創造を担うローカルSDGsリーダー研修」を全国2か所を対象地として開催しました。
資源循環分野については、第3章第3節を参照。
中大規模建築物等の木造化、住宅や公共建築物等への地域材の利活用、木質バイオマス資源の活用等による環境負荷の少ないまちづくりを推進しました。
人材育成に関しては、地域の森林・林業を牽引する森林総合監理士(フォレスター)、持続的な経営プランを立て、循環型林業を目指し実践する森林経営プランナー、施業集約化に向けた合意形成を図る森林施業プランナー、伐採や再造林、路網作設等を適切に行える現場技能者を育成しました。
東日本大震災で被災した海岸防災林の復旧・再生や豪雨や地震等により被災した荒廃山地の復旧・予防対策、流木による被害を防止・軽減するための効果的な治山対策など、災害に強い森林づくりの推進により、地域の自然環境等を活用した生活環境の保全や社会資本の維持に貢献しました。
景観の保全に関しては、自然公園法(昭和32年法律第161号)によって優れた自然の風景地を保護しているほか、景観法(平成16年法律第110号)に基づき、2023年3月末時点で655団体において景観計画が定められています。また、文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づき、2024年3月末時点で重要文化的景観として72地域が選定されています(第2章第3節3(1)の表2-3-1を参照)。
2023年度中に史跡名勝天然記念物の新指定12件を行うとともに、2023年度は5都市の歴史的風致維持向上計画を新規認定し、文化財の保護と一体となった歴史的風致の維持及び向上のための取組を行いました。
地域の行政・専門家・住民や各省庁の地方支分部局等と協働しながら、地域における脱炭素の取組支援、資源循環政策の推進、気候変動適応等の環境対策、国立公園保護管理等の自然環境の保全整備、希少種保護や外来種防除等の野生生物の保護管理、また東日本大震災からの被災地の復興・再生について、地域の実情に応じた環境保全施策を展開しました。
環境省では、環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号。以下「環境教育等促進法」という。)に基づく、「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」という。)について、環境教育等推進専門家会議及び環境教育等推進会議等での検討を踏まえ、令和6年5月に改定しました。
環境教育等促進法及び基本方針に基づき、環境教育のための人材認定等事業の登録制度(環境教育等促進法第11条第1項)、環境教育等支援団体の指定制度(同法第10条の2第1項)、体験の機会の場の認定制度(同法第20条)の運用等を通じ、環境教育等の指導者等の育成や体験学習の場の確保等に努めました。
また、発達段階に応じ、学校、家庭、職場、地域等において自発的な環境教育等の取組が促進されるよう、文部科学省との連携による教職員、地方公共団体職員、企業や団体職員向けの研修を行ったほか、学校や民間団体等が実施する環境教育や環境活動に役立つ情報を、ウェブサイト(環境学習ステーション)にて提供しました。
加えて、「体験の機会の場」研究機構との間で締結された環境教育等促進法に基づく協定(同法第21条の4第1項)の趣旨を踏まえ、同機構と連携して若年層を対象とした動画プレゼンテーションコンクール「Green Blue Education Forumコンクール2023」を実施するなど、体験の機会の場の利用及び認定促進に向けた取組を進めました。
各地方公共団体において設置された地域環境保全基金により、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援、セミナーや自然観察会等のイベントの開催、ポスター等の啓発資料の作成等が行われました。
文部科学省では、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備に対し、関係省庁と連携してエコスクールパイロットモデル事業を実施し、1997年度から2016年度までに1,663校認定しました。2017年度からは「エコスクール・プラス」に改称し、エコスクールとして整備する学校を2023年度までに262校認定しました。
ESDについては、「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」という2020年から2030年までの新たな国際的実施枠組みが2019年11月に第40回ユネスコ総会で採択され、同年12月には第74回国連総会で承認されました。「ESD for 2030」の理念を踏まえ、関係省庁が連携し、2021年5月、「第2期ESD国内実施計画」を策定し、同日に「ESD推進の手引」も更新しました。また、学習指導要領では、小・中・高等学校の各段階において、児童生徒が「持続可能な社会の創り手」となることが期待されることを明記しており、引き続き、ESDの提唱国として、持続可能な社会の創り手を育成するESDを推進していきます。
文部科学省では、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校であり、ユネスコが認定する学校)をESDの推進拠点として位置付けています。ユネスコスクール全国大会の開催等を通じて、ESDの実践例の共有や議論等を行いESDの活動の振興を図るほか、補助金事業を通じて、持続可能な社会の創り手育成の推進につながる教員養成、カリキュラム作成及び多様なステークホルダーとの協働による人材育成に取り組んでいます。
環境省では、2023年度から環境教育やESDに取り組む方の負担軽減、ネットワーク化、取組支援を目的に「環境教育・ESD実践動画100選」として、学校教育又は社会教育における幼少期~高校生を対象とした環境教育やESDに関連する実践取組の短編動画の優良事例を発信する取組を始め、同年度には81件の動画を選定、公表しました。
ESD活動に取り組む様々な主体が参画・連携する地域活動の拠点を形成し、地域が必要とする取組支援や情報・経験を共有できるよう、文部科学省や関係団体と連携して、ESD活動支援センター及び地方ESD活動支援センター(全国8か所)を活用したESDに関する情報収集・発信、地域間の連携・ネットワークの構築に努めるとともに、気候変動を切り口としたテーマ別の学び合いプロジェクトを実施しました。このほか、国連大学が実施する世界各地でのESDの地域拠点(RCE)の認定、アジア太平洋地域における高等教育機関のネットワーク(ProsPER.Net)構築等の事業を支援しました。
また、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)における三カ国共同のプロジェクトとして、日中韓環境教育ネットワーク(TEEN)、日中韓環境ユースフォーラム(TEMMユースフォーラム)において、環境教育推進のための意見交換を行いました。
環境カウンセラー登録制度の活用により、事業者、市民、民間団体等による環境保全活動等を促進しました。
独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成やセミナー開催等により、それぞれの活動を振興するための事業を行いました。このうち、2023年度の助成については、289件の助成要望に対し、161件、総額約5.4億円の助成決定が行われました。
環境省、独立行政法人環境再生保全機構、国連大学サステイナビリティ高等研究所の共催により、環境活動を行う全国の高校生に対し、相互交流や実践発表の機会を提供する「全国ユース環境活動発表大会(全国大会)」を2024年2月に開催し、優秀校に対して環境大臣賞等を授与しました。
持続可能な地域づくりのための中間支援機能を発揮する拠点として「環境パートナーシップオフィス(EPO)」を全国8か所に展開しています。各地方環境事務所と各地元のNGO・NPOが協働で運営、環境情報の受発信といった静的なセンター機能だけではなく、地域の環境課題解決への伴走等といった動的な役割を担いました。EPOの結節点として、各EPOの成果の取りまとめや相互参照、ブロックを超えた横展開等、全国EPOネットワーク事業を「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」が行いました。また、GEOCは環境省・国連大学との協働事業として時機に見合った国際情報の発信やシンポジウムの開催等を行いました。
環境教育等促進法に基づく体験の機会の場等の各種認定の状況等を環境省ウェブサイトにおいて発信しました。
事業者、市民、民間団体等のあらゆる主体のパートナーシップによる取組を支援するための情報をGEOC及びEPOを拠点としてウェブサイトやメールマガジンを通じて、収集、発信しました。
また、団体が実施する環境保全活動を支援するデータベース「環境らしんばん」により、イベント情報等の広報のための発信支援を行いました。
環境調査研修所においては、国及び地方公共団体等の職員を対象に、行政研修、分析研修及び職員研修の各種研修を実施しています。
2023年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により近年中止していた合宿制による集合研修を一部再開するとともに、集合研修とオンライン配信を組み合わせるなど研修形式の柔軟な検討を行い、各研修を実施しました。
2023年度には、行政研修7コース(7回)(日中韓三カ国合同環境研修の協同実施を含む)、分析研修7コース(8回)及び職員研修8コース(8回)の合計22コース(23回)を実施しました。加えて、分析研修等の研修内容に関連する支援教材の動画配信を希望者に対して行いました。また、地方公共団体等の職員を対象に、環境行政に対する視野の拡大及び環境政策立案等の職務遂行能力の向上を図ることを目的として実施する環境行政実務研修の一環として、「地域脱炭素」をテーマに集合研修を行いました。2023年度の研修修了者は、887名となりました。修了者の研修区分別数は、行政研修(職員研修含む)が779名、分析研修が108名でした。所属機関別の修了者の割合は、国が50%、地方公共団体が43%、独立行政法人等が6%となっています。