「インフラシステム海外展開戦略2025」の重点戦略の柱の一つである「脱炭素社会に向けたトランジションの加速」の実現に向けて、相手国のニーズも踏まえ、実質的な排出削減につながる「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進しています。2021年6月には、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進するため、「脱炭素インフライニシアティブ」を策定しました(資金の多様化による加速化を通じて、官民連携で事業規模最大1兆円程度)。2021年10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」においては、JCMにより、官民連携で2030年度までの累計で、1億トンCO2程度の国際的な排出削減・吸収量を確保するという目標が示されています。さらに、環境インフラの海外展開を積極的に取り組む民間企業等の活動を後押しする枠組みとして、2020年9月に環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)を立ち上げました。本プラットフォームには現在480の団体(設立当初は277団体)が会員として参加しています。JPRSIでは、セミナー・メールマガジン等を通じた現地情報へのアクセス支援、日本企業が有する環境技術等の会員情報の海外発信、タスクフォース・相談窓口の運営等を通じた個別案件形成・受注獲得支援を行いました。
また、2021年度から、再エネ水素の国際的なサプライチェーン構築を促進するため、再エネが豊富な第三国と協力し、再エネ由来水素の製造、島嶼(しょ)国等への輸送・利活用の実証事業を実施しています。また、2023年度には、これまでJCMを通じた事業化の実績のない先進的な技術導入を目的とした実証事業を新たに開始しました。
アジアの4か国及び4都市を対象として、脱炭素社会に向けて効果的な技術・政策を定量的に検討するために、国立環境研究所等が開発した、GHG排出量の予測や対策、影響を評価するための統合評価モデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM)」を用いたシナリオ作成支援や人材育成を行いました。
国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクト等、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。
例えば、課題別研修「気候変動への適応」、「脱炭素で持続可能な都市・地域開発のための自治体能力強化」等、地球環境保全に資する講義等の協力を行いました。
地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。
(ア)国連や国際機関を通じた取組
○ SDGs等における取組
2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。SDGsは、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等の多くの環境関連の目標を含む、17の目標と169のターゲットで構成され、毎年開催される「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、SDGsの達成状況についてフォローアップとレビューが行われます。
2023年7月にはHLPF、同年9月には4年ぶりにSDGサミットが開催されました。環境省からは、柳本顕環境大臣政務官(当時)がHLPF公式サイドイベントとして開催された「第4回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」等に参加し、パリ協定の目標とSDGsの様々な目標の同時達成につながる相乗効果のある行動を加速化すべく、日本での好事例を紹介し、世界へ発信しました。
○ UNEPにおける取組
我が国は、UNEPの環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。
大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに、関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。また、UNEP/IETCは、2019年度から民間企業の協力も得て、持続可能な社会を目指す新たな取組である「UNEPサステナビリティアクション」の展開を開始しており、環境省としても支援しています。
UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築したGAN及びアジア太平洋地域の活動を担うAPANへの拠出金等により、脆(ぜい)弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。その活動の一環として、APANは2023年7月韓国・松島にて、アジア太平洋地域の適応関連の最大規模のイベントである第8回APANフォーラムを開催しました。
○ 経済協力開発機構(OECD)における取組
OECDは経済・社会分野において、調査、分析や政策提言を行う「世界最大のシンクタンク」で、環境分野においても質の高いスタンダードを形成し、先進的課題のルールづくりを先取りしています。我が国は、2010年より環境政策委員会のビューローを務めるなどして、積極的にその活動に貢献しています。なお、2023年4月には、我が国が議長国を務めた「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」にOECD事務次長が参加し、会合の成功に必要な貢献を行うなど、いわゆる「環境外交」における我が国の国際的なプレゼンスにも貢献しています。
○ 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組
我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より2018年まで理事国に選出、2019年のアジア太平洋地域の理事国を務め、2020年は代替国に就任しました。具体的には、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、特に島嶼(しょ)国における人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、2024年3月には、IRENA及びGCFとの共催により、オンラインで国際ワークショップを実施しました。
(イ)アジア太平洋地域における取組
○ 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)
2023年11月に第24回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM24)が愛知県名古屋市において4年ぶりに対面で開催されました。TEMM24では、TEMM22で採択された三カ国共同行動計画(2021-2025年)の進捗状況について評価するとともに、各国の主要な環境政策、地球及び地球規模の環境課題について意見交換を行いました。
○ 日ASEAN環境協力イニシアティブ
2023年8月の日ASEAN環境気候変動閣僚級対話において、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)が発足しました。SPACEは、我が国が気候変動、汚染、生物多様性の損失という3つの世界的危機にASEANと協力して対処していくためのイニシアティブです。2017年に安倍元総理が提唱した「日ASEAN環境協力イニシアティブ」、2021年に岸田総理が提唱した「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0」等、既存の首脳級イニシアティブの下で行ってきた協力関係を、日ASEAN友好協力50周年を契機に更に強化するものです。
SPACEに基づく主要な協力分野は以下のとおりです:(i)気候変動(温室効果ガス排出量算定・報告にかかわる透明性の向上、緩和、適応)、(ii)汚染(プラスチック汚染、電気・電子機器廃棄物及び重要鉱物に関するパートナーシップ、水・大気汚染等)、および(iii)生物多様性の損失(生物多様性日本基金(JBF)を通じた生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAP)策定支援、SATOYAMAイニシアティブの促進等)
特に、気候変動の透明性については、我が国が設立した透明性パートナーシップ(PaSTI)に基づき、ASEAN加盟国における企業等の温室効果ガス排出量の透明性向上の制度構築に向けた技術的助言や、透明性向上に係るインセンティブに関する調査や発信等を実施しました。
(ウ)アジア太平洋地域における分野別の協力
自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年から様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。
気候変動については第1章第1節7、資源循環・3Rについては第3章第7節1、汚水処理については第3章第7節2、水分野については第4章第3節、大気については第4章第7節3(3)を参照。
(ア)先進国との連携
○ 米国
2022年9月、西村明宏環境大臣(当時)とマイケル・リーガン米国環境保護庁長官は、日米環境政策対話を行い、日米共通の重要課題である気候変動と脱炭素、海洋ごみと循環経済、化学物質管理、環境教育と若者の分野における日米の協力強化や連携について、意見交換を行いました。本対話の成果として「日米環境政策対話共同声明」を発表しました。2023年4月、山田美樹環境副大臣(当時)は、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合に出席のため来日したマッケイブ米国環境保護庁副長官と会談し、環境分野における日米の連携について意見交換を行い、政策対話を継続していくことを確認しました。
○ EU
2021年5月、菅義偉内閣総理大臣(当時)とシャルル・ミシェル欧州理事会議長及びウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長はテレビ会議形式で会談を行い、「日EUグリーン・アライアンス」の立ち上げを発表しました。これは、グリーン成長と2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するため、気候中立で、生物多様性に配慮した、かつ、資源循環型の経済の実現を目指すものであり、日EUで、[1]エネルギー移行、[2]環境保護、[3]民間部門支援、[4]研究開発、[5]持続可能な金融、[6]第三国における協力、[7]公平な気候変動対策の分野での協力を定めております。
○ カナダ
2023年7月、西村明宏環境大臣(当時)とカナダのスティーブン・ギルボー環境・気候変動大臣は、気候・環境に関する日加環境政策対話を実施しました。2023年12月、伊藤信太郎環境大臣は、COP28に出席のため訪問したドバイ(UAE)で、ギルボー大臣と会談を行い、気候変動、プラスチック汚染、資源循環、生物多様性等の重要課題について意見交換しました。
(イ)開発途上国との連携
○ 中国
対中国政府開発援助(ODA)が2021年度末に終了し、今後は、日中両国に裨益がある形で二国間の環境協力を発展させるため、ODAに代わって官民連携が主体となる日中環境協力の新段階においては、両国企業の連携による環境ビジネスを通じた脱炭素で環境汚染の少ない社会の構築への貢献を促していくことが望まれます。一方、優れた技術を有するものの、経営資源の制約により十分なビジネス展開ができない日本の中小企業にとっては、単独で中国市場に進出するのは困難です。そのようなことから、環境ビジネス市場に係る情報提供や官公庁との関係構築、中国企業との連携促進等を支援するため、日中友好環境保全センターが設立した国家生態環境科学技術成果実用化総合サービスプラットフォーム(CEETT)を介して、中国における日本企業と中国企業とのビジネスマッチングを進める体制を整備してきました。また、「日中植林・植樹国際連帯事業」を通じ、中国政府・関係機関の若手職員を2024年1月末から2月初旬にかけて日本に招聘し、環境及び防災意識の啓発を図ることなどを目的に交流する事業を行いました。
海洋プラスチックごみについては、2022年11月に第14回日中高級事務レベル海洋協議において合意された、第4回日中海洋ごみ協力専門家対話プラットフォーム会合及び第4回日中海洋ごみワークショップを2023年6月に日本主催で開催しました。両国の行政官及び専門家出席の下、海洋ごみの分布特性や将来予測、デジタルを活用した実態把握研究、汚染対策における官民連携の事例や取組等について議論を行い、協力を継続していくことで一致しました。
○ インドネシア
2019年6月に署名された海洋担当調整大臣との共同声明に基づき、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、研修を行いました。
2022年8月には、環境林業省との間で環境協力に関する新たな協力覚書を締結し、また、海洋投資調整府との間で、日インドネシア包括環境協力パッケージに合意・署名し、インドネシアが重視する優先課題に関して、脱炭素移行、生物多様性保全、循環経済の同時推進を目指した包括的な協力を進め、官民投資の促進を図っています。2023年7月に環境林業省及び海洋投資調整府、各々と進捗状況を確認し、今後の協力に関する協議を行いました。
また、2017年の日尼首脳会談を契機に、環境省、JICA、IFCが共同でPPP方式による大型廃棄物発電の案件形成を支援しています。環境省では制度構築(焼却灰規制等)支援を行い、2023年7月に日本コンソーシアムが落札者に選定されました。
○ インド
2018年10月にインド環境・森林・気候変動省と署名した環境分野における包括的な協力覚書に基づき、「第1回日本・インド環境政策対話」を2021年9月に開催しました。本政策対話では気候変動分野の二国間協力等について議論するとともに、JCMに関する政府間協議の実施等、今後両省の協力を一層推進していくことに合意しました。2023年1月に日・インド環境ウィークを開催し、気候変動や廃棄物管理、大気汚染対策などに関するセミナーや両国企業による展示・ビジネスマッチ等、複数のイベントを一体的に開催し、官民における二国間環境協力を推進しました。また、2023年3月にはJCM構築に向けた意向を確認する、エイド・メモワールに署名しました。
○ モンゴル
2022年5月のバトウルジー・バトエルデネモンゴル国自然環境観光大臣来訪時に行われた協力の進捗に係るハイレベル意見交換時に更新されたモンゴル自然環境・観光省との環境協力に関する協力覚書に基づき、「第15回日本・モンゴル環境政策対話」を2023年6月にウランバートルで開催し、大気汚染対策、気候変動対策(GOSATシリーズ、JCM)、生物多様性等について、意見交換を行いました。
特に、GOSATシリーズについては、モンゴル国の温室効果ガスインベントリに計上された二酸化炭素の排出量と、GOSATの観測データ等より推計した排出量が高い精度で一致することを確認しました。モンゴル政府は、2023年11月に、この結果を自国の隔年更新報告書の一部として、日本政府への謝辞とともに国連に提出しました。
○ フィリピン
2023年10月には、2015年よりフィリピン環境天然資源省と開催している廃棄物分野に関する環境対話(第8回)を実施しました。また2023年12月には、フィリピン環境天然資源省と「環境保護分野における協力覚書」に署名し、廃棄物管理から協力範囲を広げ、気候変動やプラスチック汚染、生物多様性といった分野を始めとする包括的な環境協力を進めていくことに合意しました。
○ シンガポール
2017年6月に更新されたシンガポール環境水資源省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2023年2月に持続可能性・環境省と「第7回日本・シンガポール環境政策対話」を東京で開催し、循環経済・廃棄物管理、気候変動、大気汚染、プラスチック汚染等について意見交換を行いました。また、2023年8月に閣僚級政策対話を実施しその成果として今後の二国間及びASEAN地域における環境協力に関する共同声明を発出しました。
○ タイ
2018年5月にタイ王国天然資源環境省と署名した「環境協力に関する協力覚書」に基づき、「第2回日本・タイ環境政策対話」を2022年5月にオンラインで開催し、気候変動、大気環境、海洋プラスチックごみ・廃棄物管理、水質管理の分野において日タイの二国間環境協力を一層推進することに合意しました。また、2022年4月に環境省環境再生・資源循環局とタイ王国工業省工業局(DIW)で締結した産業廃棄物管理に関する協力覚書に基づき、産業廃棄物の適正管理に関する知見の共有等を進めるとともに、2022年8月に環境省環境再生・資源循環局とタイ王国内務省地方自治振興局(DLA)で締結した都市廃棄物管理に関する協力覚書に基づき、一般廃棄物の適正管理に関する知見の共有等を進めたほか、廃棄物管理に係るオンライン研修を実施し、タイ政府のキャパビル向上に貢献しました。2023年10月には、タイとのJCM第5回合同委員会を開催し、新たなJCMの協力覚書内容について協議し、署名に向けた国内手続きを進めることに同意しました。
○ ベトナム
ベトナム天然資源環境省と2013年12月に「環境分野に関する協力覚書」を締結し、以来同国と緊密な協力関係を築いています。2024年1月にハノイにて第8回日本・ベトナム環境政策対話を開催するとともに、同覚書を再更新しました。また同月には、ベトナムの2050年までのカーボンニュートラル目標の実現のため、2021年11月に両大臣により署名された「2050年までのカーボンニュートラルに向けた気候変動に関する共同協力計画」に基づく第3回合同作業部会を開催し、本共同協力計画に基づく気候変動分野などの協力を議論しました。また、海洋プラスチックごみについては、これまで、2019年度以来、研究者及び政府担当者の人材育成のための研修を行い、2020年度には海洋ごみモニタリングの分野における協力に関する基本合意書を締結していたところですが、同合意書の終期に伴い、協力を更に進展させるため、2023年8月、ベトナム天然資源環境省との間で、海洋ごみの管理等に関する協力に係る基本合意書を締結しました。これも踏まえ、2023年度には、ベトナム周辺で海洋ごみ共同パイロットモニタリング調査・研究の実施、モニタリングや処理を含む、海洋ごみ(廃棄物)管理に関する人材育成研修の実施、海洋ごみ(廃棄物)管理に関する知見共有、マニュアル等の策定支援等を行いました。また、第5回日越政策対話(2018年)において設置が合意された廃棄物管理に関する合同委員会では、ベトナムにおける廃棄物管理や3R、公衆衛生の向上等を目的に、廃棄物処理基準やガイドライン等の制度設計支援、廃棄物発電の案件形成、重点取組自治体への支援等を促進したほか、廃棄物管理に係る研修を実施し、ベトナム政府のキャパビル向上に貢献しました。
○ UAE
2022年11月にアラブ首長国連邦気候変動・環境省と署名した「日本国環境省とアラブ首長国連邦気候変動・環境省との間の環境協力に関する協力覚書」に基づき、2023年9月、「日・UAE政策交流会」をオンラインで開催し、循環型経済、グリーンファイナンス、大気環境政策についての取組を紹介するとともに、今後の協力に向け意見交換を行いました。
○ ブラジル
2022年7月に、環境省とブラジル連邦共和国環境省との間で、気候変動対策を中心とする二国間環境協力を進めるため、「日本国環境省及びブラジル連邦共和国環境省との宣言書」に署名をしました。
○ ウズベキスタン
2022年10月にJCMの構築に係る協力覚書に署名しました。2022年12月に環境省とウズベキスタン共和国国家生態系・環境保護委員会との間で環境保護分野における協力覚書に署名しました。セミナーの開催も含めて具体的な協力活動に向けた準備を進めています。
海外に向けた情報発信の充実を図るため、英語での報道発表、環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版等、海外広報資料の作成・配布や環境省ウェブサイト・SNS等を通じた海外広報を行いました。
我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2023年6月に閣議決定した新たな「開発協力大綱」において複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導を重点政策の一つとして位置付けるとともに、地球環境の保全は地球の未来に対する我々の責任であると認識し、生物多様性の主流化やプラスチック汚染対策を含む海洋環境・森林・水資源の保護等の自然環境保全の取組を強化していくことが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。
(ア)無償資金協力
居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において、無償資金協力を実施しています。
草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を実施しています。
(イ)有償資金協力
下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の各分野において、有償資金協力(円借款・海外投融資)を実施しています。
(ウ)国際機関を通じた協力
我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、アジア開発銀行、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。
地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組み、環境条約の実施を行うために、無償資金等を提供する多国間基金です。我が国はGEFトップドナーの一つとして意思決定機関である評議会の場を通じ、GEFの活動・運営に係る決定に積極的に参画しています。第8次GEF増資期間(2022年7月-2026年6月)の増資規模は53.3億ドルであり、このうち我が国から6.38億ドルの拠出を表明しています。増資交渉で我が国はプログラムの優先事項の特定及び政策方針等の作成に貢献し、2023年8月に開催された第7回GEF総会において、GEFの更なる効果的・効率的な成果への期待を表明しました。
開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)については、初期拠出の15億ドルと第1次増資ハイレベル・プレッジング会合の15億ドルの拠出に続いて、2023年10月の第2次増資ハイレベル・プレッジング会合において、我が国から最大1,650億円の拠出表明を行い、2023年12月までに我が国を含む31か国が総額約128億ドルの拠出を表明しました。また、2023年12月までに129か国における243件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国は基金への最大級のドナーとして資金面での貢献に加え、GCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2023年度に約36.5万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。
脱炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方公共団体等の協力の下、アジア等各国の都市との間で、都市間連携を活用し、脱炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた脱炭素技術の普及支援を実施しました。2023年度は、北海道札幌市、富山県富山市、神奈川県川崎市、神奈川県横浜市、東京都、埼玉県さいたま市、滋賀県、大阪府大阪市、大阪府堺市、福岡県、福岡県北九州市、愛媛県、沖縄県浦添市による23件の取組を支援しました。
独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、プラットフォーム助成制度に基づいて、国内の環境NGO・NPOが国内又は開発途上地域において他のNGO・NPO等との横断的な協働・連携の下で実施する環境保全活動に対する支援を行いました。
2023年4月、我が国が議長国を務めたG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合では、経済成長とエネルギー安全保障を確保し、ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現に向けたグリーントランスフォーメーションを行う重要性を確認しました。また、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの目標年より10年早い2040年までに、追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることに合意したほか、7つの附属文書(G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス、循環経済及び資源効率性原則、質の高い炭素市場の原則、G7気候災害対策支援インベントリ、地方の気候行動に関するG7ラウンドテーブル、産業脱炭素化アジェンダに関する結論、重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン)及び侵略的外来種に関するG7ワークショップ等の4つのイニシアティブをまとめました。
2023年5月のG7広島サミットでは、気候変動について、1.5℃目標と整合していない全ての締約国(特に主要経済国)に対し、2025年までの世界全体の温室効果ガス排出量のピークアウト、全ての部門・全ての温室効果ガスを対象とした総量削減目標の策定を呼びかけるとともに、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトの加速、化石燃料への依存の低下、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設終了に向けて取り組んでいくことなどを表明しました。また、生物多様性については、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の実施、ネイチャーポジティブ経済への移行の推進を確認しました。循環経済等については、企業による循環経済や資源効率性に関する自主行動を促進する「循環経済及び資源効率性原則」の支持、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を共有しました。
2023年7月にインド・チェンナイで開催されたG20環境・気候大臣会合では、気候変動、生物多様性、プラスチック汚染等の各分野に関する成果文書及び議長総括が取りまとめられました。2023年9月のG20ニューデリー・サミットにおいて、気候変動については、1.5℃目標のためには2025年までに世界全体の温室効果ガス排出量のピークアウトが必要であるというIPCCの予測への留意、全ての部門・全ての温室効果ガスを対象とした排出削減目標を策定することの奨励、2030年までに世界全体の再生可能エネルギー発電容量を3倍とすること、「持続可能な開発のためのライフスタイル(LiFE:ライフ)」を主流化することなどに合意しました。また、生物多様性については、G20各国が、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の完全な実施にコミットし、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させるための行動を奨励しました。循環経済や汚染の防止については、資源効率性と循環経済の推進は気候変動、生物多様性の損失、汚染等に対する取組に大きく貢献することや産業界が重要な役割を果たし得ることを認識し、G20資源効率性対話(G20RED)へのコミットメントや2030年までに廃棄物の発生を大幅に削減するというコミットメントを再確認しました。プラスチック汚染対策については、プラスチック汚染を終わらせる決意を固め、2024年末までにプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を策定するための政府間交渉委員会(INC)の協議に建設的に関与することにコミットしました。
なお、宇宙空間のごみ(スペースデブリ)が、新たな国際的な課題となっており、国際社会が協力してスペースデブリ対策に取り組む必要があることから、我が国では、JAXAにおいて、2019年4月から、大型デブリの除去技術獲得及び民間による事業化を目指して、商業デブリ除去技術実証プロジェクトを進めています。
また、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に基づき報告された国・機関等の海洋プラスチックごみ対策を、2023年のG20議長国だったインドが我が国支援の下、「第5次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」として取りまとめました。第5次報告書では、34か国と10の国際機関・NGOの優良事例や課題が共有されました。
また、2023年8月に日ASEAN環境気候変動閣僚級対話において発足した、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)において、気候変動対策に加え、2019年に設立された海洋プラスチックごみ地域ナレッジ・センター(RKC-MPD)の活用を含むプラスチック汚染に関する日ASEAN協力アクション・アジェンダ、及び、電気電子機器廃棄物(E-waste)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップ(ARCPEC)を立ち上げました。
パリ協定6条(市場メカニズム)の実施により、脱炭素市場や民間投資が活性化され、世界全体の温室効果ガスが更に削減されるとともに、経済成長にも寄与することが期待されている一方、パリ協定6条を実施するための体制整備や知見の共有等が課題とされています。国際的な連携の下、6条ルールの理解促進や研修の実施等、各国の能力構築を支援するため、我が国は、2022年11月、COP27において「パリ協定6条実施パートナーシップ」(2023年12月31日現在、74か国、118機関が参加)を立ち上げ、COP28にて、各国の実施体制の構築等に向けた「6条実施支援パッケージ」を公表しました。今後も我が国が主導して、パートナーシップ参加国、国際機関等と連携しつつ、各国の6条実施に向けた支援を加速し、パリ協定6条に沿った市場メカニズムを世界的に拡大し、世界の温室効果ガスの更なる削減に貢献していきます。