除去土壌等の最終処分については、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成15年法律第44号)において、中間貯蔵に関する国の責務として、福島県内除去土壌等の中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることが規定されています。県外最終処分の実現に向けては、2016年4月に取りまとめた「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」及び「工程表」に沿って取組を進めています(図4-2-1)。
これらに沿って、福島県飯舘村長泥地区における実証事業について、順次栽培試験等を実施し、2020年度、2021年度に栽培した作物の放射能濃度は一般食品の基準値を大きく下回りました(写真4-2-1)。農地造成については2021年4月に着手した除去土壌を用いた盛土が、2022年度末までに概ね完了しました。2023年度は水田試験等を実施し、水田等に求められる機能をおおむね満たすことを確認しました(図4-2-2)。これまでに実証事業で得られたモニタリング結果からは、施工前後の空間線量率に変化がないこと、農地造成エリアからの浸透水の放射性セシウム濃度はおおむね検出下限値(1ベクレル/ℓ)未満であることなどの知見が得られています。
また、道路整備での再生利用について検討するため、2022年10月に着工した中間貯蔵施設内における道路盛土の実証事業については、2023年10月に工事を完了しました。モニタリング結果からは、施工前後の空間線量率に変化がないこと、作業者の追加被ばく線量が1ミリシーベルト/年以下であることなどの知見が得られています。こうした福島県内の実証事業で得られた知見から、再生利用を安全に実施できることを確認しています。
減容等技術の開発に関しては、2023年度も、福島県大熊町の中間貯蔵施設内に整備している技術実証フィールドにおいて、中間貯蔵施設内の除去土壌等も活用した技術実証を行いました。また、2023年度は福島県双葉町の中間貯蔵施設内において、2022年度に引き続き、仮設灰処理施設で生じる飛灰の洗浄技術・安定化技術に係る基盤技術の実証試験を実施しています。
また、福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向け、減容・再生利用の必要性・安全性等に関する全国での理解醸成活動の取組の一つとして、2021年度から全国各地で開催してきた対話フォーラムについて、第9回を東京都内で開催しました(写真4-2-2)。
さらに、2023年度も引き続き、一般の方向けに、飯舘村長泥地区の現地見学会を開催しています。このほか、大学生等への環境再生事業に関する講義、現地見学会等を実施するなど、次世代に対する理解醸成活動も実施しました。
また、中間貯蔵施設に搬入して分別した土壌の表面を土で覆い、観葉植物を植えた鉢植えを、2020年3月以降、総理官邸、環境大臣室、新宿御苑、地方環境事務所等の環境省関連施設や関係省庁等に設置しています。鉢植えを設置した前後の空間線量率はいずれも変化はなく、設置以降1週間~1か月に1回実施している放射線のモニタリングでも、鉢植えの設置前後の空間線量率に変化は見られていません(写真4-2-3)。今後とも、除去土壌の再生利用の推進に関する理解醸成の取組を進めていきます。
コラム:除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)専門家会合
環境省は国際原子力機関(IAEA)に要請を行い、2023年度に5月、10月、2月の計3回、除去土壌の再生利用等に関するIAEA専門家会合が開催されました。
この専門家会合は、福島県内の除染で発生した除去土壌等の県外最終処分の実現に向けて、除去土壌の再生利用及び最終処分に係る取組等について、国際社会と共有し、科学的かつ客観的な見地からの国際的な評価や助言等をいただくことを目的にIAEAが実施したものです。
専門家会合では、飯舘村長泥地区や中間貯蔵施設等、福島県内の現地視察を実施したほか、除去土壌の再生利用と最終処分に関する安全性や基準の考え方や、住民等とのコミュニケーションの在り方、国際的な情報発信の在り方等について、専門家等により議論が行われました。
環境省は、専門家会合を通じて得た科学的かつ客観的な見地からの国際的な評価・助言を活かしながら、県外最終処分・再生利用に係る全国的な理解醸成に取り組んでいきます。