環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第3章 持続可能な地域と暮らしの実現>第1節 地域循環共生圏の更なる進展

第3章 持続可能な地域と暮らしの実現

私たちの暮らしは、森里川海からもたらされる自然の恵み(生態系サービス)に支えられています。

かつて我が国では、自然から得られる資源とエネルギーが地域の衣・食・住を支え、資源は循環して利用されていました。それぞれの地域では、地形や気候、歴史や文化を反映し、多様で個性豊かな風土が形成されてきました。そして、地域の暮らしが持続可能であるために、森里川海を利用しながら管理する知恵や技術が地域で受け継がれ、自然と共生する暮らしが営まれてきました。しかし、戦後のエネルギー革命、工業化の進展、流通のグローバル化により、地域の自然の恵みにあまり頼らなくても済む暮らしに変化していく中で、私たちの暮らしは物質的な豊かさと便利さを手に入れ、生活水準が向上した一方で、人口の都市部への集中、開発や環境汚染、里地里山の管理不足による荒廃、海洋プラスチックごみ、気候変動問題等の形で持続可能性を失ってしまいました。そして、今日の経済社会は、新型コロナウイルス感染症に対しても脆(ぜい)弱であることが明らかとなりました。

物質的豊かさの追求に重きを置くこれまでの考え方、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直し、適量生産・適量購入・循環利用へとライフスタイルを転換し、多くの人がサステナブルな製品・サービスを選択することで、暮らしを豊かにしながら、需要側から持続可能な社会の実現を牽引することが重要です。また、豊かな恵みをもたらす一方で、時として荒々しい脅威となる自然と対立するのではなく、自然に対する畏敬の念を持ち、自然に順応し、自然と共生する知恵や自然観を培ってきた伝統も踏まえながら、情報通信技術(ICT)等の科学技術も最大限に活用することも重要です。そして、経済成長を続けつつ、環境への負荷を最小限にとどめることにより、健全な物質・生命の「循環」を実現するとともに、健全な生態系を維持・回復し、自然と人間との「共生」や地域間の「共生」を図り、これらの取組を含め「脱炭素」をも実現する循環共生型の社会(環境・生命文明社会)を目指すことが重要です。我が国全体が持続可能な経済社会となるためには、国を構成しているそれぞれの地域が変革に向けたグランドデザインを描き、実行していく必要があります。それぞれの地域が自立し誇りを持ちながら、他の地域と有機的につながることで互いに支えあい、自立した地域のネットワークが広がっていくことで、国土の隅々まで活性化された未来社会が作られていきます。

第3章では、地域やそこに住んでいる人々の暮らしを、環境をきっかけとして豊かさやwell-beingにもつなげ得る取組をご紹介します。

第1節 地域循環共生圏の更なる進展

1 持続可能な社会の実現に向けた地域の重要性

我が国の環境政策においては、炭素中立(カーボンニュートラル)に加え、循環経済(サーキュラーエコノミー)、自然再興(ネイチャーポジティブ)の同時達成により、将来にわたって質の高い生活をもたらす持続可能な新たな成長につなげていくことを目指しており、これらの施策の関係性を踏まえた「統合」が重要です。それぞれの施策間でトレードオフを回避しつつ、相乗効果が出るよう統合的に推進することにより、持続可能性を巡る社会課題の解決と経済成長の同時実現を図ることが重要です。

我が国全体を持続可能な社会に変革していくにあたり、各地域がその特性を生かした強みを発揮しながら、地域同士が支え合う自立・分散型の社会を形成していく必要があります。これらの考え方を踏まえ、第五次環境基本計画で提唱した自立・分散型社会の考え方である「地域循環共生圏」をさらに発展させるとともに、全国規模に広げる必要があります。

そのためには、地域の人材や地上資源をはじめとする「地域資源」の持続的な活用により、炭素中立・循環経済・自然再興をはじめとする個別の環境行政の統合、環境政策と他の政策との統合を実践することが重要です。特に地上資源、すなわち地上に存在する一度使用した地下資源の持続的な活用や、再生産可能な資源の活用を促進することは、化石燃料や鉱物資源への依存度を下げ、地下資源を再生産可能な自然資源に転換することであり、炭素中立、循環経済、自然再興の3つのビジョンの同時実現につながります。また、他国の自然資源への依存度を下げ、地球規模で生物多様性への影響の軽減につながるとともに、我が国の生存基盤を確保する観点から、安全保障にも資すると言えます。その際、私たちの暮らしは森里川海のつながりからもたらされる自然資源が活用できる範疇でのみ成り立つため、それらを持続可能な形で活用していくとともに、自然環境を維持・回復していくことが前提となります。

2 地域循環共生圏

地域循環共生圏は、地域資源を活用して環境・経済・社会を良くしていく事業(ローカルSDGs事業)を生み出し続けることで地域課題を解決し続け、自立した地域をつくるとともに、地域の個性を活かして地域同士が支え合うネットワークを形成する「自立・分散型社会」を示す考え方です。地域の主体性を基本として、パートナーシップのもとで、地域が抱える環境・社会・経済課題を統合的に解決していくことから、ローカルSDGsとも言います(図3-1-1)。

図3-1-1 地域循環共生圏の概念
(1)地域循環共生圏づくりプラットフォーム

地域循環共生圏を創造していくためには、地域のステークホルダーが有機的に連携し、環境・社会・経済の統合的向上を実現する事業を生み出し続ける必要があります。環境省は2019年度より、「環境で地域を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」を行い、ステークホルダーの組織化を支援する「環境整備」と、事業の構想作成を支援する「事業化支援」を行っています。さらにこの事業の中で、地域循環共生圏に係るポータルサイトの運用も行っており、「しる」「まなぶ」「つくる」「つながる」機会等を提供することで、全国各地におけるローカルSDGsの実践を一層加速させています。

事例:"持続可能な宮古島市"の実現に向けたアイデアや想いを市民が発表し、参加や協働を広く投げかけるせんねんプラットフォーム(沖縄県宮古島市)

宮古島市は、「エコアイランド宮古島」を宣言し、環境保全、資源循環、産業振興を三本柱に持続可能な地域づくりを目指して取組を進めています。推進にあたっては、市民・事業者・行政の協働が重要であることから、具体的なプロジェクトを共創する「せんねんプラットフォーム」を立ち上げました。

せんねんプラットフォームは、市民が「持続可能な宮古」や未来について考え、その主体的なアクションを促すため、いくつかの場を設けています。持続可能性について考えるきっかけの場としての「せんねんシネマ」、宮古の課題を知るための場としての「せんねんラジオ」「せんねんトーク」、具体的なアクションを生み出す場として「せんねんミーティング」、アクションを市民と共に一歩踏み出す場として「せんねん祭」を開催するなど、コミュニケーションの場の創出と市民への積極的な情報発信を図っています。

せんねん祭集合写真

その中でも、「せんねん祭」は、宮古の持続可能な未来の実現に向けたアイデアや想いを市民が発表し、賛同や協力を得ながら、そのアイデアをローカルSDGs事業へと具体化させていく事業です。増加する観光客数など、社会環境の急激な変化の中で、持続可能な島づくりを進めていくためには、環境のみならず、経済や社会も含めた「暮らし」の視点にたってビジョンを描く必要があると考え、将来的には、指標の研究といったシンクタンク機能を持った法人の設立に取り組み、地域循環共生圏の創出を目指します。

事例:徳之島三町が協働したエコツアーガイド育成・コンテンツ形成支援体制の仕組み作り(鹿児島県大島郡)

豊かな自然が色濃く残る徳之島は、2021年7月に世界自然遺産に登録されました。

この機に、徳之島の自然や文化の魅力を発信・体感してもらうために、徳之島では三町(徳之島町、天城町、伊仙町)共同で徳之島世界自然遺産保全・活用検討協議会を発足させ、“徳之島ファン”づくりにつながるような体験コンテンツを提供できるエコツアーガイドの育成を始めました。この際、特別天然記念物であり絶滅危惧種でもあるアマミノクロウサギをはじめとした島の貴重な生態系などの自然環境の保全につながるエコツアーを、経済的にも持続可能な形で実施できるように、様々な研修やコンテンツ形成支援体制の仕組み作りを進めています。

実践的なエコツアーガイド育成

このような取組を通じて、徳之島の貴重な自然環境・文化を発信して関係人口を増やしていくと同時に、地域経済も活性化していくことを目指します。

事例:リボーンアート・フェスティバル「アート」「音楽」「食」の総合芸術祭を通じて地域の内外がつながる(宮城県石巻市)

リボーンアート・フェスティバルは東日本大震災の復興支援を機に構想され、2017年に本祭がスタートしました。石巻・牡鹿半島 を中心とした豊かな自然を舞台に、「アート」「音楽」「食」を楽しむことのできる新しい総合芸術祭として、2年に一度、約2か月の期間で開催されています。国内外の現代アーティストが訪れ、地域とふれあいながらアート作品を作ったり、様々なスタイルの音楽イベントを行ったり、日本各地から集まった有名シェフたちが地元の人・食材と出会い、ここでしか味わえない食を提供したりと、たくさんの「出会い」を生み出す場となっています。

RAF作品 White Deer (Oshika)

これらの「出会い」から地域内外の人とのつながりを生み出し、これまで活用されなかった資源や地域の魅力を改めて見直すことで新たなプロジェクトの創出にも取り組んでいます。例えば、石巻市の基幹産業である水産業は、食卓に乗らない小魚まで漁獲してしまうという課題がありました。本祭では、生産者・料理人などが様々な切り口から「持続可能な食」を考えるシンポジウムを実施し、日常からサステナブルを考えるきっかけを提供しました。その結果、これまで活用されてこなかった食材を活用した商品開発やサステナブルツーリズムなどのプロジェクトが生まれました。

RAFのフードプログラム food adventure

今後は、このようなプロジェクトを通じて日常的に様々な人が集まり、地方と都市、伝統と新しさ、自然と人、多様なつながりから新たな循環を生み出す持続可能な地域づくりに取り組み続けます。

事例:「PaperLab」を活用して、地域の資源を循環させ、人をつなぎ、地域活性化に貢献する(セイコーエプソン/エプソン販売)

セイコーエプソン/エプソン販売は、ほとんど水を使わずに、使用済みの紙から新たな紙を生み出す「乾式オフィス製紙機PaperLab(ペーパーラボ)」により、資源のアップサイクルと持続可能な社会づくりに貢献しています。

長野県塩尻市では、庁舎内の古紙から住民票等の申請用紙を再生しています。PaperLab自体を市民の目に触れやすい市役所等に設置し、小中学校の社会科見学コースにするなど環境教育へと展開しています。また、障がい者にPaperLabに関する業務を委託することにより、新たな雇用を創出しています。古紙回収と再生紙の配布を通じて市職員と新たな交流が生まれ、今まで以上にやりがいを感じることにも発展しています。

愛媛県松山市でボイラをはじめとする事業を手掛ける三浦工業では、社内文書のリサイクルや機密保持のほか、障がい者雇用を目的にPaperLabを導入し、名刺やノベルティなどのアップサイクル品を作成しています。また、社内にとどまらず循環型社会の実現を目指し、地元の中学生が使った古紙から、学校で使う連絡帳などをアップサイクルする「紙ンバックプロジェクト®」を、地元印刷会社やJリーグ運営会社と合同で実施し、産学官連携により地域活性化に貢献しています。

社会科での環境教育風景(長野県塩尻市)、紙ンバックプロジェクトのイメージ図(三浦工業)
(2)グッドライフアワード

環境省が主催するグッドライフアワードは、日本各地で実践されている「環境と社会によい暮らし」に関わる活動や取組を募集し、表彰することによって、活動を応援するとともに、優れた取組を発信するプロジェクトです。国内の企業・学校・NPO・地方公共団体・地域・個人を対象に公募し、有識者の選考によって「環境大臣賞」「実行委員会特別賞」が決定されます。受賞取組を様々な場面で発信、団体間等のパートナーシップを強化することで、地域循環共生圏の創造につなげていきます。

コラム:懐かしい未来を里山からつくる「里の家」~風の子、海の子、里山体験~(一般社団法人 里の家)

229件の応募から第10回グッドライフアワードで環境大臣賞最優秀賞に輝いたのは、一般社団法人 里の家です。2005年から静岡県において親子の里山体験を実施しています。循環型のミニモデルをつくり体験するコンセプトをベースに自然体験・農林業体験・環境教育・環境保全の4つを活動の軸とした年間120回を超えるプログラムやイベントを開催してきました。また、里山の恵みを活かす樹木系精油を中心とするアロマ事業を立ち上げたほか、薬草ハーブ、藍染など里山の暮らしを伝える活動も行っています。

里山の暮らしを伝える活動の様子

コラム:静岡県SDGsビジネスアワード(静岡県)

静岡県では、2021年度から、環境ビジネスの振興やESG金融の活用促進に向け、環境課題の解決につながる優良なビジネスプランを発掘・育成・表彰する「静岡県SDGsビジネスアワード~未来をつくる環境ビジネスを表彰します~」を開催しています。

県内をフィールドとし、「脱炭素」、「自然共生」、「資源循環」など環境課題の解決に資する事業アイデアを、業界・業種を問わず幅広く募集し、審査を通過した団体を対象とし、環境や経営等の専門家によるメンタリング(伴走支援)を行い、事業アイデアのブラッシュアップを支援します。

また、金融機関(県内全ての地方銀行・信用金庫)をはじめ、多くの団体、企業の皆様に協力パートナーが参画し、ビジネスネットワークを構築する等、アワードを通じ環境ビジネスの事業成長を支援することを特徴としています。

3か月のメンタリング期間終了後、成果発表と合わせて知事賞・優秀賞等の表彰を行うとともに、県や関係団体の様々な支援制度等も紹介します。

こうした官民連携体制や一体感を持った支援スキームが評価され、2023年2月に内閣府主催「第2回地方創生SDGs金融表彰」を受賞しました。

今後も表彰される事業アイデア等を広く発信し、静岡県の環境ビジネスの裾野を拡大し、環境と経済の好循環につなげていきます。

2022年度キックオフミーティングの様子(採択団体、メンター、協力パートナーの皆さん)

事例:「百年の森林構想」に基づく脱炭素先行地域づくり(岡山県西粟倉村)

2030年度までにカーボンニュートラル実現を目指す脱炭素先行地域においても、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。例えば、岡山県西粟倉村では、樹齢百年の美しい森林に囲まれた「上質な田舎」を実現するためのビジョンである「百年の森林構想」に基づき、林業の六次産業化を推進する中で、森林整備に伴い木材土場で発生する廃棄物であるバークを活用したボイラーを導入するとともに、木質バイオマス発電/熱供給等により村内で生産された電力・エネルギーを地域内へ供給します。また、新電力事業関連や環境・森林利用関連のローカルベンチャー企業数を増やすことで雇用や地域ビジネスの創出を促し、地域経済の多様化と拡大を推進させることで持続可能な地域のロールモデルを目指します。

集約化による安定的な森林整備

コラム:「Jリーグのクラブ×再エネ スタート」

環境省とJクラブは、2021年6月、お互いが持つ知見や地域に根ざしたネットワークを共有しながら、地域の活力を最大限発揮できるよう、協働していくことで合意し、連携協定を締結しました。

2022年7月に実施された1周年記念イベントでは、Jリーグが「世界一、クリーンなリーグ」を目指し、全公式戦でのカーボンオフセットを行うことが宣言されるなど、着実な取組が行われています。環境省ではJリーグとともに、各Jクラブによる再生可能エネルギーの導入促進に向けて、セミナーの開催や各地方環境事務所による各Jクラブへのサポートなど、連携した活動を進めています。

例えば、清水エスパルスは、2021年11月に「ゼロカーボン プロスポーツクラブ宣言」を表明するとともに、地域事業者と連携してホームスタジアムにソーラーカーポートを設置するなど、再生可能エネルギーの導入促進を実施しています。

その他にも地域新電力が利益の一部をJクラブが行う地域活動資金として提供、プラスチックごみ削減に向けたリサイクルやごみ拾い活動など幅広い分野での活動が実施されており、再生可能エネルギーとJクラブの好循環が生まれつつあります。

環境省×Jリーグ連携協定締結1周年記念イベントの様子(左から、山口壯環境大臣(当時)、Jリーグ・野々村芳和チェアマン)、ソーラーカーポートとサポーターの様子

事例:環境教育における事例(地方ESD活動支援センター)

全国8か所にある地方ESD活動支援センターでは、現場のESDを支援・推進する組織・団体等である地域ESD活動推進拠点(地域ESD拠点)と連携して、学びあいプロジェクトを展開しています。東北地方ESD活動支援センターでは、地域ESD拠点である一般社団法人あきた地球環境会議(CEEA)、一般社団法人日本キリバス協会と連携して、秋田県の大仙市立大曲南中学校におけるキリバス共和国とのオンライン交流型授業やワークショップ等を組み合わせた探究型授業の確立に取り組みました。また、近畿地方ESD活動支援センターでは、公益財団法人淡海環境保全財団と連携して、滋賀県の比叡山高等学校における「風呂敷から考える持続可能な未来」をテーマとした家庭科の学習指導案を創出するなど、地域と学校が連携して各地域の発展・地域課題の解決につなげる教育活動を支援しています。

秋田県の大仙市立大曲南中学校とキリバス共和国セントルイス中学校のオンライン交流授業の様子、滋賀県の比叡山高等学校の家庭科における授業実践の様子

事例:大人のための学び舎づくり~「人生の学校」フォルケホイスコーレ~(School for Life Compath)

北海道東川町にあるSchool for Life Compathは、デンマーク発祥の「人生の学校」フォルケホイスコーレをモデルに、大人のための学び舎づくりをしています。フォルケホイスコーレとは、長い人生の中で一定期間の余白を取り、日常生活や社会から離れて、個人・社会・地球にとってのwell-beingを探究するための成人教育機関です。具体的には、東川町の農業従事者と持続可能な里山づくりについて考える授業や、暮らしの中で出てきた問いをもとに自己探究する授業などを行っています。年代も背景もばらばらな人たちが集い、プログラム期間中に共に暮らし、共に学びます。

参加者にとってリフレクションとリフレッシュの機会になるのと同時に、well-beingな社会づくりにも寄与しています。東川という約8,400名の小さな町で、自分ごととして町の未来を語りアクションする人たちの声を聴くことで「ひとりひとりが社会そのものだ」というマインドセットになったり、壮大な自然環境の中で暮らす日々を通じて、人間と地球との距離や共生について考えたりすることができます。これらの積み重ねにより、個人の小さな問いやアクションから社会が変わっていくことを構想しています。

プログラムの様子

3 ESG地域金融

地域の金融機関には、地域資源の持続的な活用による地域経済の活性化を図るとともに、地域課題の解決に向けて中心的な役割を担うことが期待されています。このような環境・経済・社会面における課題を統合的に向上させる取組は、地域循環共生圏の創造につながるものであり、地域金融機関がこの取組の中で果たす役割を「ESG地域金融」として推進することにより、取組を深化させていくことが重要です。

(1)ESG地域金融実践ガイド2.2

2023年3月、ESG地域金融の実務の発展に応じる形で、環境省はESG地域金融実践ガイドを改訂しました。このガイドは、金融機関としてのESG地域金融に取り組むための体制構築や事業性評価の事例をまとめるとともに、事例から抽出された実践上の留意点や課題等について分析したもので、地域金融機関が参照しながら自身の取組を検討・実践する助けとなる資料となっています。

(2)地方銀行、信用金庫、信用組合等との連携

地域金融機関は地域循環共生圏の創造に向けて中心的な役割が期待されることもあり、地域の様々なセクターとの積極的な連携が図られています。地域金融機関との頻繁な意見交換や勉強会の開催のほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示の支援等を含めて各種の事業を通じて実際の案件形成・地域の課題解決をサポートしています。環境省は、2020年12月に一般社団法人第二地方銀行協会と「ローカルSDGsの推進に向けた連携協定」を締結しました。さらに、2022年6月には、一般社団法人全国信用金庫協会及び信金中央金庫と「持続可能な地域経済社会の実現に向けた連携協定書」を締結しました。こうした連携協定等に基づき、地域金融機関との連携の下で、地域脱炭素をはじめとした施策を推進しています。

4 地域循環共生圏の更なる深化

前述のとおり、地域の人々が主体性を発揮し、地域の内外の部署や組織を超えて協働(パートナーシップ)し、地域が抱える環境・社会・経済課題を統合的に解決していくための地域プラットフォームが各地で生まれてきています。地域プラットフォームがローカルSDGs事業を生み出し続けることで、地域が自立し、持続可能な社会に近づいていきます。地域循環共生圏づくりをさらに発展させるとともに、全国規模に広げることで、持続可能性を巡る社会課題の解決と経済成長の同時実現により新しい資本主義に貢献し、将来にわたって質の高い生活をもたらす新たな成長につなげていきます。