環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第6節 復興の新たなステージに向けた未来志向の取組

第6節 復興の新たなステージに向けた未来志向の取組

環境省では、福島県内のニーズに応え、環境再生の取組のみならず、脱炭素、資源循環、自然共生といった環境の視点から地域の強みを創造・再発見する「福島再生・未来志向プロジェクト」を推進しています。

本プロジェクトでは、官民連携によるリサイクル等の環境技術を活かした産業創生、自然公園等の自然資源の活用、脱炭素まちづくりなどを効果的に組み合わせ、福島県や関係自治体と連携しつつ、最先端の取組を進めていきます。また、放射線健康不安に対するリスクコミュニケーションや広報・情報発信を通じて地元に寄り添いつつ、事業を進めることとしています。

官民連携によるリサイクル産業創生への支援の結果、双葉郡大熊町において、特定復興再生拠点区域の整備等で発生するコンクリート等の不燃性廃棄物を再資源化する施設が、2020年10月に竣工を迎えました。本施設の稼働により、復興の加速化と新たな雇用の創出が期待されます。また、2019年4月に福島県と共同策定した「ふくしまグリーン復興構想」を踏まえ、2020年11月に磐梯朝日国立公園等の魅力向上に向けた推進協議会を設立するなど取組の具体化を図っています。さらに、環境、エネルギー、リサイクル分野での新たな産業の定着を目指した実現可能性調査を2018年度から継続して実施し、2020年度は、水素サプライチェーンの構築や、高効率な次世代農業モデル構築など、8件の調査を採択しました。

また、2020年8月には、福島県と「福島の復興に向けた未来志向の環境施策推進に関する連携協力協定」を締結しました。本協定に基づき、広く福島県民や市町村等の積極的な参画を促すため、福島再生・未来志向シンポジウム等の開催や、「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード」という表彰制度を創設するなどの取組を行っています。

写真4-6-1 福島再生・未来志向シンポジウムにおける神谷昇環境大臣政務官の挨拶の様子
写真4-6-2 小泉進次郎環境大臣や著名人も参加した「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』シンポジウム」の様子(2021年3月13日)

2021年2月には、震災10年の節目を迎え、福島県が本格的な復興・再生に向けたステージへ歩みを進めるこの機会に、環境省としてなすべき取組の一つとして「未来志向の新たな環境施策の展開」を打ち出しました。2020年8月に福島県と締結した「福島の復興に向けた未来志向の環境施策推進に関する連携協力協定」も踏まえ、脱炭素・風評対策・風化対策の三つの視点から施策を進めていくこととしています。

さらに、環境省は、2021年3月11日に、書籍「福島環境再生100人の記憶」を発行しました(写真4-6-3)。この10年間、様々な立場で環境再生に関わった方や地域の復興に取り組まれてきた方などのお話を収録しています。東日本大震災や福島第一原発事故、環境再生の経験、思い、教訓といった記憶を子ども達や次世代へと継承し、風化の防止につなげていけるよう、福島の「今」を伝えていきます。

写真4-6-3 書籍「福島環境再生100人の記憶」

事例:大熊・双葉環境まちづくりミーティング

復興を進めていくためには、環境再生や帰還環境の整備はもちろんのこと、まちづくりの軸として求心力のあるビジョンを定め、様々な施策を重ね合わせて、特色あるまちづくりを進めていくことが不可欠です。

環境省、大熊町、双葉町は両町の復興を進めていくため、2020年7月から同年9月までに3回のワークショップ形式のミーティングを共同開催しました。

本ミーティングの目的は、将来を見据えた共感力のあるビジョンの定着に向けた第一歩として、両町において、町にゆかりがある若手世代や最前線で活躍している人々や企業と、「環境」や「持続可能性」をキーワードにまちづくりについて意見交換を行うことです。

合計3回のミーティングを通じて、大熊町と双葉町の2050年を想定して、参加者の自由な発想のもとで住まいや働き方、子育て教育、医療介護、移動・交通等、あらゆる側面から環境まちづくりに必要な269のアイデアが生まれました。また、このアイデアをもとに2023年までに開始できる可能性を探ったビジネスモデルを検討の上、それらをポスターとしてビジュアル化し、最終的に81の環境まちづくりのアイデアがまとめられました。さらに、それらを9つの事業領域に分類し、参加者投票により大熊町、双葉町それぞれに一領域一つのアイデアを選定し、これを一つにまとめた両町の「未来図」が作成されました。

今後とも、環境省は地域の強みを創造・再発見する未来志向の取組を両町や関係省庁と連携し、力強く進めていきます。

大熊・双葉環境まちづくりミーティングの様子、大熊町の未来図、双葉町の未来図