環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第3節 中間貯蔵施設の整備等

第3節 中間貯蔵施設の整備等

1 中間貯蔵施設の概要

放射性物質汚染対処特措法等に基づき、福島県内の除染に伴い発生した放射性物質を含む土壌等及び福島県内に保管されている10万ベクレル/kgを超える指定廃棄物等を最終処分するまでの間、安全に集中的に管理・保管する施設として中間貯蔵施設を整備することとしています(写真4-3-1)。

写真4-3-1 中間貯蔵施設区域の航空写真

環境省では、中間貯蔵施設の整備と継続的な除去土壌等の搬入を進めています。除去土壌等の中間貯蔵施設への搬入に際しては、草木類等の可燃物については可能な限り減容化(可燃物を焼却)した上で輸送を行うこととしており、輸送対象物量(帰還困難区域のものを除く)は約1,400万m3と推計されています。

2 中間貯蔵施設の用地取得の状況

中間貯蔵施設整備に必要な用地は約1,600haを予定しており、予定地内の登記記録人数は2,360人となっています(うち2021年3月末までに地権者の連絡先を把握した面積は約1,590ha、登記記録人数は約2,090人)。2021年3月末までの契約済み面積は約1,235ha(全体の約77%。民有地については、全体約1,270haに対し、約92%に当たる約1,164ha)、1,796人(全体の約76%)の方と契約に至っています。政府では、用地取得については、地権者との信頼関係はもとより、中間貯蔵施設事業への理解が何よりも重要であると考えており、引き続き地権者への丁寧な説明を尽くしながら取り組んでいきます。

3 中間貯蔵施設の整備の状況

2016年11月から受入・分別施設(図4-3-1、写真4-3-2)や土壌貯蔵施設(図4-3-2、写真4-3-3)等の整備を進めています。受入・分別施設では、福島県内各地にある仮置場等から中間貯蔵施設に搬入される除去土壌を受け入れ、搬入車両からの荷下ろし、容器の破袋、可燃物・不燃物等の分別作業を行います。土壌貯蔵施設では、受入・分別施設で分別された土壌を放射能濃度やそのほかの特性に応じて安全に貯蔵します。2017年6月に除去土壌の分別処理を開始し、2017年10月には土壌貯蔵施設への分別した土壌の貯蔵を開始しました。また、2020年3月には、中間貯蔵施設における除去土壌と廃棄物の処理・貯蔵の全工程で運転を開始しました。

図4-3-1 受入・分別施設イメージ
写真4-3-2 受入・分別施設
図4-3-2 土壌貯蔵施設イメージ
写真4-3-3 土壌貯蔵施設

4 中間貯蔵施設への輸送の状況

中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送については、2021年3月末までに累計で約1,055万m3の輸送(輸送対象物量1,400万m3に対して約75%)を実施しました(写真4-3-4、図4-3-3)。

写真4-3-4 中間貯蔵施設への輸送の様子(輸送時は緑色のゼッケンを掲示)
図4-3-3 中間貯蔵施設に係る当面の輸送の状況

また、より安全かつ安定した輸送を目的に、大熊インターチェンジ・常磐双葉インターチェンジからの工事用道路や待避所、高速道路の休憩施設、輸送車両待機場所の整備といった道路交通対策に加え、運転者研修等の交通安全対策、輸送出発時間の調整など特定の時期・時間帯への車両の集中防止・平準化を実施しています。

5 2021年度事業方針の公表

2020年12月に、「令和3年度の中間貯蔵施設事業の方針」を示しました。これは、安全を第一に、地域の理解を得ながら事業を実施することを総論として、

[1]2021年度末までに、県内に仮置きされている除去土壌等(帰還困難区域のものを除く)の概ね搬入完了を目指すとともに、特定復興再生拠点区域において発生した除去土壌等の搬入を進める

[2]施設整備の進捗状況、除去土壌等の発生状況に応じて、必要な用地取得を行う

[3]中間貯蔵施設内の各施設を安全に稼働する

[4]除去土壌等の減容・再生利用に向けた技術開発や実証事業を実施する

[5]環境再生に向けた取組や地元の思いなどを発信するための更なる方策について検討を行う

などを定めており、あわせて、当面の施設整備イメージ図(図4-3-4)を公表しています。

図4-3-4 当面の施設整備イメージ

6 減容・再生利用に向けた取組

福島県内の除去土壌等については、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされており、福島県外における除去土壌等の最終処分に向けては、最終処分量の低減を図ることが重要です。このため、県外最終処分に向けた技術開発等の取組に関する中長期的な方針として、2016年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」及び「工程表」を取りまとめ、2019年3月に見直しを行いました(図4-3-5)。また、2016年6月には、除去土壌等の再生利用を段階的に進めるための指針として、「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」を取りまとめました。

図4-3-5 中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略の概要

これらに沿って、福島県南相馬市及び飯舘村において、除去土壌を再生資材化し、試験盛土の造成等を行うといった再生利用の安全性を確認する実証事業を実施してきました。これまでに実証事業で得られた結果からは、空間線量率等の大きな変動が見られず、盛土の浸透水の放射能濃度は検出下限値未満となっています。

また、2020年度には、飯舘村において農地の盛土等工事の準備を開始し、さらに食用作物の栽培実験も実施しました。これまでに得られた食用作物の放射性セシウム濃度の測定結果は、検出下限値未満とされ得る値となっています(厚生労働省の定める食品中の放射性セシウム検査法では、検出下限値は20ベクレル/kg以下とされています。検出されるまで測定した結果、0.1~2.3ベクレル/kgとなっており、一般食品の放射性物質の基準値である100ベクレル/kgよりも十分低い値となっています。)。

さらに、福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向け、2021年度から、東京を皮切りに全国各地で対話集会を開催するなど、減容・再生利用の必要性・安全性等に関する全国での理解醸成活動を抜本的に強化します。

事例:除染で発生した土壌等の再生利用(福島県飯舘村長泥地区)

福島県飯舘村の南部に位置する長泥地区は、帰還困難区域となっており、現在、「飯舘村特定復興再生拠点区域復興再生計画」(計画期間:2023年5月まで)に沿って避難指示の解除を目指しています。長泥地区では、飯舘村内の除染で発生した土壌のうち、5,000ベクレル/kg以下のものを再生資材化して盛土に活用することで、区画の大きい農地を造成し、効率的な農業を行うことが計画されています。

現在、実証事業として、試験的に造成した農地の安全性の確認や、様々な作物の栽培実験を行っていますが、この実証事業の一環で、長泥地区の住民の協力の下、同地区で震災前に栽培されていたトルコギキョウ等の花の栽培も行っています。これらの花は、環境省を始め、復興庁、法務省、農林水産省、経済産業省等で活用するとともに、国際会議等の場でも展示し、様々な場所に復興の足音を届けています。

飯舘村で住民の方々が育てた花の前で堀内詔子環境副大臣が復興への思いを伺う様子、第21回日中韓3カ国環境大臣会合(TEMM21)における飯舘村のトルコギキョウ