環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第1章>第3節 SDGsを通じた地球環境課題の解決

第3節 SDGsを通じた地球環境課題の解決

1 SDGsの達成に向けた国際社会の取組

(1)国際機関の取組

国連では、SDGsの実施を後押しするため、レビューの実施を始めとする様々な取組を行っています。2016年7月のニューヨークの国連本部における持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)では、ドイツ、フランス、韓国、中国等の22か国が、SDGs達成に向けた自国の取組のレビューを発表しました。また、今後のフォローアップ及びレビューについてまとめた「フォローアップ&レビューに関する決議文」が採択され、今後各国は4年を1サイクルとして、4年間で17ゴール全てのレビューを実施するとともに、実施手段及びゴール17(パートナーシップ)については毎年レビューを実施することになりました。2017年7月のHLPFでは、我が国がレビューの発表を予定しています。

国連環境計画(UNEP)では、SDGsの実施を環境的側面からサポートするため、UNEP国際資源パネルや海洋ごみのグローバルパートナーシップ等の関係機関と連携し、技術ガイドラインや支援を提供するとともに、SDGsに関するインターネットサイトを運営し、SDGsの各ゴールとターゲットの環境との関係を解説するなど、幅広い活動を行っています。

国連開発計画(UNDP)では、貧困の撲滅と不平等と排除の是正を同時に達成することを目指し、持続可能な開発の実現に向けた活動を行っています。2016年7月には、イノベーションによるSDGs達成のためのエコシステム構築を目指すプラットフォームとして、一般社団法人 Japan Innovation Networkと共同で、我が国の民間企業や各国の政府、開発援助機関、金融機関、NGO、留学生コミュニティ、大学、メディア等と共に、「SDGs Holistic Innovation Platform(SHIP)」を設立しました。これまでそれぞれの企業が独自に開発してきた開発途上国におけるビジネスモデルに、「イノベーションを起こす手法」を取り入れ、SHIPエコシステム参加者がそれぞれのノウハウ、知恵、技術を持ち寄り、相互に作用し合うことで、各社だけでは実現できなかった持続可能な社会を実現するビジネスモデルを作り出すことを目指しています。

OECDでは、2016年12月に開催されたOECD理事会において、「SDGsに関するOECD行動計画」を承認しました。行動計画では、OECDがSDGs達成に向けて貢献する内容を具体的に定めており、SDGs達成に向けた各国の進捗の分析、科学的根拠に基づくSDGs達成に必要な施策の提案や、これまでに収集したデータや知見の共有等を挙げています。加えて、今後OECDの戦略、政策ツールにSDGsの視点を適用することも定められています。また、同理事会で、既存の「開発理事会」を改編し、「2030アジェンダに関する理事会」を新設することも承認されました。

(2)各国・地域の取組

各国・地域はSDGsを推進するための第一歩として、SDGsの17のゴールに既存の政策を当てはめる現状分析(マッピング)を実施しています。

EUでは、2016年11月に、17のゴールについて域内の既存の施策がどのように関係しているかを示す対応表を発表しました。例えば、「ゴール12(持続可能な生産・消費)」では、生産・消費の過程を一つの輪とみなし、その輪の中で可能な限り天然資源の再利用を実施する循環経済政策やエコデザイン指令等が関連付けられています。

ドイツでは、持続可能な開発を進めるため、持続可能な開発審議会(RNE)を首相府の下に設置しています。RNEは、企業のCEO、労働組合連合、自然保護団体、環境NGO、市長経験者、大学教授等から構成され、現役の政治家や官僚はメンバーに含まれておらず、中立的な視点から持続可能な開発に向けた発言ができます。メンバーは、RNEとして取り組む課題を設定し、調査やワークショップ、インタビュー等を行った上で政府への提言を取りまとめます。2017年1月、RNEからの提言を踏まえ、ドイツ政府は自国の国家持続可能発展戦略について、SDGsの理念を加えた改訂を実施しました。

中国は2016年10月、持続可能な開発のための2030アジェンダ実行のための国家戦略を発表しました。急激な経済発展を遂げた中国は、貧困者数の削減、大学進学率・識字率の向上、年金対象の拡大等でMDGsのゴールを達成してきましたが、急激な経済発展は、大気汚染を始めとする深刻な環境破壊や富裕層と貧困層の経済格差の拡大等を招き、持続可能な開発という概念の重要性が増してきました。中国は、SDGsをイノベーションを促進するツールと捉え、国家戦略においてSDGsのゴールとターゲットに自国の政策をマッピングし、各政策を精力的に進めるとともに、定期的に進捗を点検することとしています。

(3)グローバル指標策定の動き

国連統計委員会では、SDGsの進捗度を技術的に測定するための、グローバル指標等の策定が進められています。2017年3月の第48回国連統計委員会では、232のグローバル指標が合意されました。グローバル指標は、SDGsの169のターゲットごとに一つ以上設定されており、各国における効率的な検討を図るため、各指標は方法論の有無及びデータの入手可能性により3段階に分類されています。

各国は、グローバル指標のデータの国連への報告を行うこととなっており、その報告メカニズムについては各国の統計制度に応じた体制が取られる予定です。また、各国はこのグローバル指標とは別に、各国の実情に合わせて独自の指標も定めることができます。今後我が国では、SDGsの進捗状況を的確に把握するため、グローバル指標又は我が国独自の指標を用いたフォローアップ・レビューを実施する予定となっています。

2 SDGsの達成に向けた我が国の取組

(1)政府の取組

我が国では、1992年の地球サミットの成果も踏まえ、環境基本法(平成5年法律第91号)及び環境基本計画(1994年12月閣議決定)を制定し、2006年に策定された第三次環境基本計画(2006年12月閣議決定)以降は、環境・経済・社会の統合的な向上を重視すべき環境政策の展開の方向として掲げ、持続可能な社会の構築に向けた取組を進めてきました。こうした考え方は、2015年に合意されたSDGsの考え方と親和性のあるものであり、SDGsで世界が共有するに至った「統合性」という考え方を同計画が早期に取り入れたものと言えます。

我が国においてSDGsを推進するため、2016年5月に、内閣に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されています。内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官、外務大臣を副本部長とし、他の全ての国務大臣を本部員として構成されます。推進本部の下には、行政、NGO、NPO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体等の広範な関係者が意見交換を行う「SDGs推進円卓会議」が設置され、会議での各界の意見も踏まえ、2016年12月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が決定されました。実施指針では、「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことをビジョンとして掲げ、8つの優先課題と具体的施策を定めました(表1-3-1)。これら8つの優先課題を中心とし、同時に公表した進捗把握のための指標を活用して、2019年までをめどに最初のフォローアップを実施する予定です。

表1-3-1 「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」における8つの優先課題と具体的施策

SDGsの環境側面に関しては、①多くの環境関連ゴール・ターゲットが含まれ、②実施に向けて多様な主体が関与しており、③実施に向けた取組は多様であり、先行事例を見つつ、創意工夫が必要であるという特徴があります。このため、率先してSDGsに取り組む企業等の事例を共有することで、先駆的な活動として評価し、他者がSDGsの活動を検討・実施する際に参考にできるものと考えられます。環境省では、先駆的な活動を共有し、認め合う場として、ステークホルダーズ・ミーティングを開催しています。2016年度に3回会合を開催し、のべ約600名の参加者を集め、SDGs実施に取り組む先駆的な企業の事例を共有しました(写真1-3-1)。また、国内外の最新動向の発信や関係者のネットワークの強化等にも取り組んでいます。

写真1-3-1 第2回ステークホルダーズ・ミーティングの様子

また、我が国のSDGs実施指針では、「政府全体及び関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たっては、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、その要素を最大限反映する」とされており、対外的な評価も踏まえつつ、SDGs達成に向けて政府が一層取組を強化することが重要です。我が国の環境の保全に関する基本的な計画である第四次環境基本計画(2012年4月閣議決定)では、目指すべき持続可能な社会を、「人の健康や生態系に対するリスクが十分に低減され、『安全』が確保されることを前提として、『低炭素』・『循環』・『自然共生』の各分野が、各主体の参加の下で、統合的に達成され、健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域にわたって保全される社会」としています。また、我が国の環境政策が目指すべき方向性として「環境、経済、社会の統合的向上」を示しており、SDGsの目指す「経済、社会、環境の三側面をバランスがとれ統合された形で達成する」という考え方と目指す方向性は同一であると言えます。このため中央環境審議会では、今後の環境基本計画の見直しにSDGsの理念や考え方を活用し、持続可能な社会に向けて全ての主体がより積極的に取り組んでいくための方向性を示していくことを検討しています。

コラム:カードゲーム「2030 SDGs」を通じたSDGsの理解の普及

一般社団法人イマココラボが開発した「2030 SDGs(ニイゼロサンゼロエスディージーズ)」は、SDGsの環境・経済・社会の三側面の同時達成を目指し、2030年までの道のりを体験するカードゲームです。チームに割り当てられた目標達成に向けて様々なプロジェクトを実施することで、お金や時間の使い方や実施したプロジェクトが、環境、経済、社会にどのような影響を及ぼすかを体感できます。ゲームを体験すること、そしてその後のふりかえりを通じて「持続可能な開発とは何か」を知ることができるのはもちろん、SDGsを実社会で推進するために必要な要素についても考えることができます。

環境省でも2017年1月に職員勉強会で事務次官以下有志約40人が本ゲームに参加しました、ゲームを終えた後には、「各国(各人)が自国(自分)の利益ばかりを追求していては、環境と社会の状況ばかりが悪化していくため、環境、経済、社会の三社会統合を目指す上では国際協調が重要であることがよく分かった」というものや、「環境、経済、社会の状況が変化し続けるということが、それぞれの状況の改善に向けて大切だという新しい視点を得ることができた」という声が聞かれました。

環境省職員勉強会の様子

SDGsの普及に向けた取組の数は、官民問わず増えてきています。このような取組に積極的に参加し、SDGsへの理解を深めるとともに、さらにそれを広く共有し自身の行動につなげていくことは、SDGsの「ゴール17(パートナーシップ)」の達成にもつながります。

(2)民間企業等の取組

2030アジェンダでは、「民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である」とし、全ての企業に対し、明確に、その創造性及びイノベーションを活用して、持続的発展のための課題を解決するよう求めています。民間企業の活動・投資・イノベーションは、「ゴール9(インフラ)」に直接的に関わるだけでなく、「ゴール8(雇用)」、「ゴール12(持続可能な生産・消費)」にも関係するとともに、結果的に「ゴール1(貧困)」、「ゴール2(飢餓)」に寄与する可能性もあります。我が国のSDGs実施指針でも、「SDGsの達成のためには、公的セクターのみならず、民間セクターが公的課題の解決に貢献することが決定的に重要であり、民間企業(個人事業者も含む)が有する資金や技術を社会課題の解決に効果的に役立てていくことはSDGs達成の鍵でもある」と明記しています。

2016年3月、国連グローバルコンパクト、グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)等が作成したSDG コンパスについて、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が協働で和訳を作成しました。SDG コンパスは、企業がSDGsを経営戦略と整合させ、SDGsへの貢献を測定して管理していく方法に関し、指針を提供することを目的としています。近年、企業のサプライチェーンはグローバルに広がり、企業活動が様々なところで環境や社会に大きな影響を与えます。重要なステークホルダーである民間企業が、自社が環境や社会に与える影響を適切に評価し、SDGsを推進していくことは、SDGs達成に向けて非常に重要です。我が国の企業においても、SDGsに関する理解や取組が着実に増加しており、中でも先進企業では、経営計画への組み込みや事業部門が主体となった取組の実践が見られます。

また、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は東京大会を持続可能性に配慮した大会とするため、SDGsを考慮し、持続可能性に配慮した運営計画を2017年1月に策定し、持続可能性に配慮した調達コードを2017年3月に策定しました。

事例:社員と共に革新的な技術による新たな価値創造を通じたSDGs目標達成に向けた取組(住友化学株式会社)

社員と共に革新的な技術による新たな価値創造を通じたSDGs目標達成に向けた取組(住友化学株式会社)

住友化学株式会社では、持続可能な社会の実現に向けて「サステイナブルツリー」及び「スミカ・サステナブル・ソリューション」プロジェクトに取り組んでいます。「サステイナブルツリー」は、SDGsの17のゴールに対して「社員自らが仕事や生活において何ができるか」を自社専用ウェブサイトに投稿する取組で、2016年6月から10月の100日間実施されました。「将来に希望が持てる社会を実現するために、社員が自ら仕事や生活において何ができるか」といったテーマで、SDGsの17のゴールの中から各人が選んだ目標に関係するものを、国内外を含めた全グループ会社役職員が投稿する仕組みとなっています。この取組により、SDGsそのものの理解が促進されるとともに、社員自身が、その達成に貢献する取組は意義があるものだというモチベーションの向上につながっており、あらゆる主体の関与を目指すSDGsの「ゴール17(パートナーシップ)」の達成に強く貢献していると言えます。

「サスティナブルツリー」のパンフレット

「スミカ・サステナブル・ソリューション」は、温暖化対策、環境負荷低減等に貢献する自社の製品や技術を認定し、その開発や普及を推進することにより、SDGsの達成等、サステナブルな社会構築への積極的な貢献や情報開示を充実させるものです。例えば、リチウムイオン二次電池用セパレータ「ペルヴィオ」は、「ゴール7(エネルギー)」と「ゴール13(気候変動)」に該当する製品として認定されています。世界でSDGsへの関心が高まる中、長年培ってきた幅広い技術基盤を活用し、持続可能な社会構築するためのソリューションを提供することで、SDGsの目標達成を目指しています。

「スミカ・サステナブル・ソリューション」に認定されたセパレータ
(3)SDGsと自治体

SDGsは全世界で普遍的な目標であり、関連性の大小は地域によって異なりますが、人々が生活しコミュニティが存在する地域では、どこでもSDGsの17のゴールと何らかの関わりを持っています。また、SDGsを地域における環境・経済・社会の状況を把握するためのツールとして活用することで、地域の強みや弱みを客観的に把握するとともに、地域の強みで他地域に貢献したり、他地域から弱みを補完してもらうことで、相互協力にもつながります。

我が国では、世界的に進む都市化を見据え、持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想が内閣府によって進められています。全国11都市が選定され、自律的に発展することができる持続可能な価値を創造するモデル都市として、様々な取組を実施しています。この「環境未来都市」の概念は、SDGsの「ゴール11(持続可能な都市)」と通じるものであり、我が国が有する知見が、都市におけるSDGs達成に貢献することが期待されます。また、2017年3月、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構は、自治体のSDGsへの取組を後押しするため、自治体がSDGsに取り組むための方法を取りまとめ、「私たちのまちにとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-」として公表しました。

事例:横浜市のSDGs達成に向けた取組

横浜市のSDGs達成に向けた取組

環境未来都市に選定されている横浜市では、環境負荷の低減等に大きく貢献することが期待されている水素エネルギーの利活用を進め、「水素社会」の実現に向けて取り組んでいます。燃料電池自動車や水素ステーション、エネファーム等の導入・設置に対して支援を行い、普及拡大に努めているほか、環境イベントにおいて公用車として導入した燃料電池自動車の試乗を実施するなど、多くの人が水素エネルギーを身近に感じられる取組を展開しています。さらに、横浜市風力発電所(ハマウィング)の電力により低炭素な水素を製造・貯蔵、運搬し、市内の市場等の燃料電池フォークリフトで利用する水素サプライチェーン構築の実証事業(環境省委託事業「地域連携・低炭素水素技術実証事業」)に参画するなど、先進的な取組にもチャレンジしています。この取組は、SDGsの「ゴール7(エネルギー)」、「ゴール9(インフラ)」、「ゴール11(安全な都市)」、「ゴール13(気候変動)」に関連しています。

燃料電池自動車(横浜市公用車)

事例:北九州市のSDGs達成に向けた取組

北九州市のSDGs達成に向けた取組

環境未来都市に選定されている北九州市は、2016年10月、中国環境保護部の日中友好環境保全センターと、環境保護の分野で連携する覚書を締結しました。覚書では、公害対策や都市環境の改善に向けて、情報交換や人材交流を行うこととしています。北九州市では、日中友好環境保全センターの設立当初から職員を派遣するとともに、2014年度からは中国の6都市と連携し、大気汚染対策として専門家の派遣や、研修生の受入れ、共同研究等を実施しており、この活動が更に活発化することが期待されます。環境未来都市の取組を各国の地域や都市と共有し、世界的により良い環境を作る試みは、SDGsの「ゴール3(健康な生活)」、「ゴール11(都市)」、「ゴール13(気候変動)」、「ゴール17(パートナーシップ)」と強く関連しています。北九州市を始め環境未来都市を中心に積極的に取り組まれてきた都市間連携の試みも、SDGs達成に大きく貢献することが期待されます。

事例:内子町におけるSDGs達成に向けた取組

内子町におけるSDGs達成に向けた取組

愛媛県内子町では、2015年11月に、「ローカルSDGs? in 内子町」が開催されました。このフォーラムでは、SDGsの概要やSDGsが地方にもたらす意義、着地型観光、エコロジータウン構想等、内子町のまちづくりとSDGsについて報告が行われ、これからの我が国や内子町のような地方自治体が取り組むべき課題や方向性について議論が深められました。

「ローカルSDGs? in 内子町」の様子

また、内子町の取組がSDGsのどのゴールと関連するかの照らし合わせ(マッピング)が行われました。例えば、内子町の独自の自治会制度において10年先の未来を描く「地域づくり計画書」を全41自治会が策定し、町の総合計画の基礎としています。この取組は、「ゴール11(安全な都市)」、「ゴール16(法の支配等)」、「ゴール17(パートナーシップ)」に合致していると言えます。このほか、豊富な木質資源を活用した木質ペレットの普及は 「ゴール7(エネルギー)」に合致した取組と言えます。

また、2016年11月には、内子町役場職員を対象としたSDGsの勉強会「持続可能な開発目標(SDGs)を内子町で考える」が開催され、各課より18名が参加し、それぞれの業務とSDGsのゴールとの関連をワークショップで議論しました。

内子町では、「エコロジータウン・内子」をまちづくりのキャッチフレーズに掲げ、 自然にやさしい、生活にやさしい環境政策に取り組んできました。内子町が目指すまちづくりの先には、SDGsが掲げる目標が見えてきます。

コラム:生誕150周年を迎えた南方熊楠に学ぶパートナーシップの重要性

和歌山県に生まれた南方熊楠(1867年~1941年)は、粘菌を研究した生物学者、博物学者、民俗学者として有名です。神社合祀反対運動を通して訴えたのは、森林破壊に端を発して、連帯感(パートナーシップ)が薄れていくことでした。南方を研究した社会学者の鶴見和子は、以下のように指摘しています。

南方熊楠

南方は、植物学者として、神林の濫伐が珍奇な植物を滅亡させることを憂えた。民俗学者として、庶民の信仰を衰えさせることを心配した。また村の寄り合いの場である神社をとりこわすことによって、自村内自治を阻むことを恐れた。森林を消滅させることによって、そこに棲息する鳥類を絶滅させるために、害虫が殖え、農産物に害を与えて農民を苦しめることを心配した。海辺の樹木を伐採することにより、木陰がなくなり、魚が海辺によりつかず、漁民が困窮する有様を嘆いた。産土社を奪われた住民の宗教心が衰え、連帯感がうすらぐことを悲しんだ。そして連帯感がうすらぐことによって、道徳心が衰えることを憂えた。南方は、これらすべてのことを、一つの関連ある全体として捉えたのである。自然を破壊することによって、人間の職業と暮しとを衰微させ、生活を成り立たなくさせることによって、人間性を崩壊させることを、警告したのである。

(鶴見和子著『南方熊楠 地球志向の比較学』講談社 より引用)

南方は、環境破壊によって自然が毀損し、経済的なダメージを受けるだけでなく、人と人のつながりが薄れ、人間の暮らしそのものが危機に瀕することを指摘する先見の明を持っていました。南方の思想は、SDGsで示された環境・経済・社会の統合的向上とつながるものと言えます。