環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

1 健康被害の救済及び予防

(1)公害健康被害の補償・予防等

ア 大気汚染系疾病

(ア)既被認定者に対する補償給付等

 我が国では、昭和30年代以降の高度経済成長により、工業化が進んだ都市を中心に大気汚染の激化が進み、四日市ぜんそくを始めとして、大気汚染の影響による呼吸器系疾患の健康被害が全国で発生しました。これらの健康被害者に対して迅速に補償等を行うため、1973年(昭和48年)、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号。以下「公害健康被害補償法」という。)に基づく公害健康被害補償制度が開始されました。

 平成27年度は、同制度に基づき、被認定者に対し、[1]認定と更新、[2]補償給付(療養の給付及び療養費、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、療養手当、葬祭料)、[3]公害保健福祉事業(リハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業、家庭における療養に必要な用具の支給に関する事業、家庭における療養の指導に関する事業、インフルエンザ予防接種費用助成事業)等を実施しました。平成27年12月末現在の被認定者数は3万5,294人です。なお、昭和63年3月1日をもって第一種地域の指定が解除されたため、旧第一種地域では新たな患者の認定は行われていません(表6-8-1)。


表6-8-1 公害健康被害補償法の被認定者数等

(イ)公害健康被害予防事業の実施

 独立行政法人環境再生保全機構により、以下の公害健康被害予防事業が実施されました。

[1]大気汚染による健康影響に関する総合的研究、局地的大気汚染対策に関する調査等を実施しました。また、喘(ぜん)息等の予防・回復等のためのパンフレットの作成、講演会の実施、及び喘(ぜん)息の専門医による電話相談事業を行いました。さらに、地方公共団体の公害健康被害予防事業従事者に対する研修を行いました。

[2]地方公共団体に対して助成金を交付し、旧第一種地域等を対象として、喘(ぜん)息等に関する健康相談、幼児を対象とする健康診査、喘(ぜん)息患者等を対象とした機能訓練等を推進しました。

イ 水俣病

(ア)水俣病被害の救済

a 水俣病の認定

 水俣病は、熊本県水俣湾周辺において昭和31年5月に、新潟県阿賀野川流域において40年5月に公式に確認されたものであり、四肢末梢(しょう)の感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄(さく)、中枢性聴力障害を主要症状とする中枢神経系疾患です。それぞれチッソ株式会社、昭和電工株式会社の工場から排出されたメチル水銀化合物が魚介類に蓄積し、それを経口摂取することによって起こった中毒性中枢神経系疾患であることが昭和43年に政府の統一見解として発表されました。

 水俣病の認定は、公害健康被害補償法に基づき行われており、平成28年3月末までの被認定者数は、2,985人(熊本県1,787人、鹿児島県493人、新潟県705人)で、このうち生存者は、566人(熊本県292人、鹿児島県114人、新潟県160人)となっています。

b 平成7年の政治解決

 公害健康被害補償法及び平成4年から開始した水俣病総合対策医療事業(一定の症状が認められる者に療養手帳を交付し、医療費の自己負担分等を支給する事業)による対応が行われたものの、水俣病をめぐる紛争と混乱が続いていたため、平成7年9月当時の与党三党により、最終的かつ全面的な解決に向けた解決策が取りまとめられました。

 これを踏まえ、原因企業から一時金が支給されるとともに、水俣病総合対策医療事業において、医療手帳(療養手帳を名称変更)を交付するとともに、医療手帳の対象とならない者であっても、一定の神経症状を有する者に対して保健手帳を交付し、医療費の自己負担分等を支給することになりました。

 これにより、関西訴訟を除いた国家賠償請求訴訟については、原告が訴えを取り下げました。一方、関西訴訟については、平成16年10月に最高裁判所判決が出され、国及び熊本県には、水俣病の発生拡大を防止しなかった責任があるとして、賠償を命じた大阪高等裁判所判決が是認されました(表6-8-2)。


表6-8-2 水俣病関連年表

c 関西訴訟最高裁判所判決を受けた各施策の推進

 政府は、平成18年に水俣病公式確認から50年という節目を迎えるに当たり、平成7年の政治解決や関西訴訟最高裁判所判決も踏まえ、平成17年4月に「今後の水俣病対策について」を発表し、これに基づき以下の施策を行っています。

[1]水俣病総合対策医療事業について、高齢化の進展等を踏まえた拡充を図り、また、保健手帳については、交付申請の受付を平成17年10月に再開。

[2]平成18年9月に発足した水俣病発生地域環境福祉推進室等を活用して、胎児性患者を始めとする水俣病被害者に対する社会活動支援、地域の再生・振興等の地域づくりの対策への取組。

d 水俣病被害者救済特措法

 平成16年の関西訴訟最高裁判所判決後、公害健康被害補償法の認定申請の増加及び、新たな国賠訴訟が6件提起されました。

 このような事態を受け、自民党、公明党、民主党の三党の合意により、平成21年7月に水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(平成21年法律第81号。以下「水俣病被害者救済特措法」という。)が成立し、公布・施行されました。その後、平成22年4月に水俣病被害者救済特措法の救済措置の方針(以下「救済措置の方針」という。)が閣議決定されました。この救済措置の方針に基づき、一定の要件を満たす方に対して関係事業者から一時金が支給されるとともに、水俣病総合対策医療事業により、水俣病被害者手帳を交付し、医療費の自己負担分や療養手当等の支給を行っています。また、これに該当しなかった方であっても、一定の感覚障害を有すると認められる方に対して、水俣病被害者手帳を交付し、医療費の自己負担分等の支給を行っています。

 水俣病被害者救済特措法に基づく救済措置には6万5,151人が申請し、判定結果は3県合計で、一時金等対象該当者は3万2,244人、療養費対象該当者は6,013人となりました(平成26年8月に判定結果を公表。ただし、新潟県のみ暫定値)。

 また、裁判で争っている団体の一部とは和解協議を行い、平成22年3月には熊本地方裁判所から提示された所見を原告及び被告双方が受け入れ、和解の基本的合意が成立しました。これと同様に新潟地方裁判所、大阪地方裁判所、東京地方裁判所でも和解の基本的合意が成立し、これを踏まえて、和解に向けた手続が進められ、平成23年3月に各裁判所において、和解が成立しました。

 なお、認定患者の方々への補償責任を確実に果たしつつ、水俣病被害者救済特措法や和解に基づく一時金の支払いを行うため、平成22年7月に同法に基づいて、チッソ株式会社を特定事業者に指定し、同年12月にはチッソ株式会社の事業再編計画を認可しました。

(イ)水俣病対策をめぐる現状

 公害健康被害補償法に基づく認定申請を棄却された方がその棄却処分の取消しを求めた訴訟2件について、平成25年4月に最高裁判所判決が出され、認定の検討に当たっては総合的な検討が重要であると判示されました。これを受け、総合的検討を行うかを具体化する通知を発出し、現在、関係県・市における認定審査会において同通知に沿った審査がなされています。

 こうした健康被害の補償や救済に加えて、高齢化が進む胎児性患者とその家族の方等、皆さんが安心して住み慣れた地域で暮らしていけるよう、生活の支援や相談体制の強化等の医療・福祉の充実や、慰霊の行事や環境学習等を通じて地域のきずなを修復する再生・融和(もやい直し)、環境に配慮したまちづくりを進めながら地域の活性化を図る地域振興にも取り組んでいます。

(ウ)普及啓発及び国際貢献

 毎年、公害問題の原点、日本の環境行政の原点ともなった水俣病の教訓を伝えるため、教職員や学生等を対象にセミナーを開催するとともに、開発途上国を中心とした国々の行政担当者を招いて研修を行っています。

ウ イタイイタイ病

 富山県神通川流域におけるイタイイタイ病は、昭和30年10月に原因不明の奇病として学会に報告され、43年5月、厚生省(当時)が、「イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化及び栄養としてのカルシウム等の不足等が誘引となって生じたもので、慢性中毒の原因物質としてのカドミウムは、三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の排水以外は見当たらない」とする見解を発表しました。イタイイタイ病の認定は、公害健康被害補償法に基づき行われており、平成28年3月末現在の公害健康被害補償法の現存被認定者数は5人(認定された者の総数200人)です。また、富山県は将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できない者を要観察者として経過を観察することとしていますが、平成28年3月末現在、要観察者は3人となっています。

エ 慢性砒(ひ)素中毒症

 宮崎県土呂久地区及び島根県笹ヶ谷地区における慢性砒(ひ)素中毒症については、平成28年3月末現在の公害健康被害補償法の現存被認定者数は、土呂久地区で49人(認定された者の総数199人)、笹ヶ谷地区で3人(認定された者の総数21人)となっています。

(2)石綿健康被害の救済

 石綿を原因とする中皮腫及び肺がんは、[1]曝(ばく)露から30~40年と長い期間を経て発症することや、石綿そのものが当時広範かつ大量に使用されていたことから、どこで曝(ばく)露したかの特定が困難なこと、[2]予後が悪く、多くの方が発症後1~2年で亡くなること、[3]現在発症している方が石綿に曝(ばく)露したと想定される30~40年前には、重篤な疾患を発症するかもしれないことが一般に知られておらず、自らには非がないにもかかわらず、何の補償も受けられないままに亡くなる方がいることなどの特殊性に鑑み、健康被害を受けた方及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、健康被害の迅速な救済を図る、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号)が平成18年2月10日に成立・公布されました。救済給付に係る申請等については、平成27年度末時点で1万5,220件を受け付け、うち1万985件が認定、2,396件が不認定、1,839件が取下げ又は審議中とされています。

 平成28年1月14日には、同法の施行状況等に関する審議を行うため、中央環境審議会環境保健部会において石綿健康被害救済小委員会が設置されました。

(3)環境保健に関する調査研究

ア 環境保健施策基礎調査等

(ア)大気汚染による呼吸器症状に係る調査研究

 地域人口集団の健康状態と環境汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるため、全国36地域で3歳児、全国37地域で6歳児を対象とした環境保健サーベイランス調査を引き続き実施しました。

 そのほか、独立行政法人環境再生保全機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を行いました。

(イ)環境要因による健康影響に関する調査研究

 熱中症対策については、関係省庁が緊密に連携して取り組んでおり、平成25年度からは特に7月を熱中症予防強化月間と定め、普及啓発を集中的に実施しました。環境省では、イベントの開催やウェブサイト等を活用した暑さ指数(WBGT)の情報提供、「熱中症環境保健マニュアル」等の配布、熱中症対策シンポジウムの実施等による予防・対処法の普及啓発を実施しました。また、夏季に開催される大規模イベント等での熱中症対策について検討を行いました。

 花粉症対策には、発生源対策、花粉飛散量予測・観測、発症の原因究明、予防及び治療の総合的な推進が不可欠なことから、関係省庁が協力して対策に取り組んでいます。環境省では、スギ・ヒノキの花粉総飛散量、飛散開始時期及び終息時期等の予測を実施しました。さらに、「花粉観測システム(はなこさん)」では、全国的に設置した花粉自動測定機による花粉の飛散状況を環境省ウェブサイト(http://kafun.taiki.go.jp/(別ウィンドウ))上でリアルタイムで公開しています。

 黄砂の健康影響については、引き続き情報収集に努めるとともに、疫学調査を実施し、健康影響の評価・検討を行いました。また、「身のまわりの電磁界について」や「紫外線環境保健マニュアル」等を用いて、その他の環境要因による健康影響について普及啓発に努めました。

イ 重金属等の健康影響に関する総合研究

 メチル水銀が人の健康に与える影響に関する調査の手法を開発するに当たり、必要となる課題を推進することを目的とした研究、及びその推進に当たり有用な基礎的知見を得ることを目的とした研究を行い、最新の知見の収集に取り組みました。

 イタイイタイ病の発症の仕組み及びカドミウムの健康影響については、なお未解明な事項もあるため、基礎医学的な研究や富山県神通川流域の住民を対象とした健康調査等を実施し、その究明に努めました。

ウ 石綿による健康被害に関する調査

 一般環境を経由した石綿曝(ばく)露による健康被害の可能性のある者について、効果的・効率的に健康管理を実施するための対応方策等について調査・検討を行うために、大阪府泉南地域等、奈良県、横浜市鶴見区、岐阜県羽島市、兵庫県尼崎市、兵庫県西宮市、兵庫県芦屋市、北九州市門司区、佐賀県鳥栖市において、石綿曝(ばく)露の聴取、石綿曝(ばく)露の評価及び保健指導等を実施しました。また、石綿関連疾患に係る医学的所見や曝(ばく)露状況の解析調査及び諸外国の制度に関する調査等を行いました。

2 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線に係る住民の健康管理・健康不安対策

 福島県民の中長期的な健康管理を可能とするため、国は、福島県が創設した「福島県民健康管理基金」に交付金を拠出するなど全面的に県を支援しています。福島県は、この基金を活用して、全県民を対象に県民健康調査を実施し、行動調査に基づく被ばく線量の把握や健康状態を把握するための健康診査等を行っています。このほかに、個人線量計やホールボディ・カウンタによる被ばく線量の測定等を実施しています。

 さらに、放射線による健康不安に対して適切に対応するため、住民の方と接点が多い地方自治体職員、保健師、教師等を対象とした研修会や住民セミナーの開催のほか、住民を身近で支える相談員の活動を支援する拠点の運営等を行っています。

 また、平成26年12月に取りまとめられた「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の中間取りまとめを踏まえ、27年2月に公表した環境省における当面の施策の方向性に基づき、[1]事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進、[2]福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握、[3]福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実、[4]リスクコミュニケーション事業の継続・充実に取り組んでいます。

 上記取組に関する背景や取組状況等の詳細については、第1部パート2第1章第3節2を参照。

3 公害紛争処理等

(1)公害紛争の処理状況

 公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の四つがあります。

 公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)や広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。

ア 公害等調整委員会に係属した事件

 平成27年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は17件で、これらに前年から繰り越された49件を加えた計66件(責任裁定事件37件、原因裁定事件27件、調停事件2件)が27年中に係属しました。その内訳は、表6-8-3のとおりです。このうち27年中に終結した事件は27件で、残り39件が28年に繰り越されました。


表6-8-3(1) 平成27年中に公害等調整委員会に係属した事件(1)

表6-8-3(2) 平成27年中に公害等調整委員会に係属した事件(2)

 終結した主な事件としては、「中央区におけるビル工事による地盤沈下被害責任裁定申請事件」があります。この事件は、不動産会社(申請人)から、建設会社及び不動産会社を相手方(被申請人)として、被申請人らが施工した既存ビルの解体工事による振動、新築ビル基礎工事のための掘削工事及び地下水くみ上げにより、申請人所有の賃貸ビルに沈下、傾斜等の被害が生じたとして、損害賠償を求めたものです。

 公害等調整委員会は、本件について、2回の審問期日の開催、現地調査の実施等、手続を進めた結果、本件申請を棄却するとの裁定を行い、本事件は終結しました。

イ 都道府県公害審査会等に係属した事件

 平成27年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は42件で、これに前年から繰り越された41件を加えた計83件(調停事件81件、あっせん事件が1件、義務履行勧告申出事件1件)が27年中に係属しました。このうち27年中に終結した事件は43件で、残り40件が28年に繰り越されました。

ウ 公害紛争処理に関する連絡協議

 公害紛争処理制度の利用の促進を図るため、都道府県・市区町村や弁護士会、法テラスと情報・意見交換を行いました。また、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、都道府県公害審査会等との相互の情報交換・連絡協議に努めました。

(2)公害苦情の処理状況

ア 公害苦情処理制度

 公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものと規定され、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。

イ 公害苦情の受付状況

 平成26年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は7万4,785万件で、前年度に比べ2,173件減少しました(対前年度比2.8%減)。

 このうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる典型7公害の苦情件数は5万1,912件で、前年度に比べ1,127件減少しました(対前年度比2.1%減)。

 一方、廃棄物投棄など典型7公害以外の苦情件数は2万2,873件で、前年度に比べて1,046件減少しました(対前年度比4.4%減)。種類別に見ると、廃棄物投棄が1万367件(典型7公害以外の苦情件数の45.3%)で、前年度に比べて434件減少(対前年度比4.0%減)、その他(日照不足、通風妨害、夜間照明等)が1万2,506件で、前年度に比べて612件減少しました(対前年度比4.7%減)。

ウ 公害苦情の処理状況

 平成26年度の典型7公害の苦情処理件数のうち、3万3,163件(68.9%)が、苦情を受け付けた地方公共団体により、1週間以内に処理されました。

エ 公害苦情処理に関する指導等

 地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談員等ブロック会議を開催しました。

4 環境犯罪対策

(1)環境犯罪対策の推進

 環境犯罪について、特に産業廃棄物の不法投棄事犯、暴力団が関与する悪質な事犯等に重点を置いた取締りを推進しました。平成27年中に検挙した環境犯罪の検挙事件数は5,741事件(26年中は5,628事件)で、過去5年間における環境犯罪の法令別検挙事件数の推移は、表6-8-4のとおりです。


表6-8-4 環境犯罪の法令別検挙件数の推移(平成23年~平成27年)

(2)廃棄物事犯の取締り

 平成27年中に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)違反で検挙された4,979事件(26年中は4,909事件)の態様別検挙件数は、表6-8-5のとおりです。このうち不法投棄事犯が49.8%(26年中は51.6%)、また、産業廃棄物事犯が15.0%(26年中は17.1%)を占めています。


表6-8-5 廃棄物処理法違反の態様別検挙件数(平成27年)

(3)水質汚濁事犯の取締り

 平成27年中の水質汚濁防止法違反に係る水質汚濁事犯の検挙事件数は0事件(26年中は2事件)でした。

(4)検察庁における環境関係法令違反事件の受理・処理状況

 平成27年中における罪名別環境関係法令違反事件の通常受理・処理人員は、表6-8-6のとおりです。受理人員は、廃棄物処理法違反の6,684人が最も多く、全体の約81.8%を占め、次いで、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反(370人)となっています。処理人員は、起訴が4,425人、不起訴が3,480人となっており、起訴率は約56.0%となっています。起訴人員のうち公判請求は243人、略式命令請求は4,182人となっています。


表6-8-6 罪名別環境関係法令違反事件通常受理・処理人員(平成27年)

 最近5年間に検察庁で取り扱った環境関係法令違反事件の受理・処理人員の推移は、表6-8-7のとおりです。27年中の通常受理人員は8,170人で、前年より2人減少しています。


表6-8-7 環境関係法令違反事件通常受理・処理人員の推移