環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第7節 環境影響評価等

第7節 環境影響評価等

1 戦略的環境アセスメントの導入

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定されており、上位の計画や政策段階の戦略的環境アセスメントについて我が国での導入に向けた検討を行いました。

2 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響審査の実施等

 環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。同法に基づき、平成28年3月末までに計395件の事業について手続が実施されました。そのうち、27年度においては、新たに40件の手続を開始、また、16件が手続完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-7-1)。


表6-7-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

 環境影響評価の信頼性の確保や評価技術の質の向上に資することを目的として、調査・予測等に係る技術手法の開発を推進するとともに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の情報等を集積し、インターネット等を活用して国民や地方公共団体等への情報支援を行いました。

 特に、石炭火力発電所については「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ(平成25年4月25日)」以降11件の配慮書が提出され、これらについて、同取りまとめを踏まえ、最新鋭の高効率技術の採用の有無や国の目標・計画との整合性等について、環境影響評価手続を通じて審査しました。

(2)環境影響評価の迅速化に関する取組

 風力・地熱発電所の設置や火力発電所のリプレースの事業に係る環境影響評価手続について、三年~四年程度かかるとされる手続期間を、風力・地熱発電所の設置については半減、火力発電所のリプレースについては最短一年強まで短縮させることを目指すこととしています。

 これらについて、自治体の協力を得て、運用上の取組により、対象となった案件の迅速化について、おおむね想定のとおりに国の審査期間の短縮を実現しました。また、風力・地熱発電所については、環境や地元に配慮しつつ、導入をより短期間で、かつ円滑に実現できるよう、風況等から判断し風力発電等の適地と考えられる地域の環境情報(貴重な動植物の生息・生育状況等の情報)等の収集・整理を行い、これらの情報を「環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム」(https://www2.env.go.jp/eiadb/(別ウィンドウ))を通じて公開するとともに、環境影響調査の前倒し実施による期間短縮の方法論を確立するための検討を行いました。さらに、地方公共団体が主導して、事業長期化の要因となっている先行利用者との調整や各種規制手続と一体的に環境配慮の検討を進め、関係者と合意形成を図りながら風力発電の適地を抽出する手法を検討しました。

(3)環境影響評価法における放射性物質に係る対応

 放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律(平成25年法律第60号)による環境影響評価法の改正により、環境影響評価手続の対象に放射性物質による環境への影響を含めることとなりました(平成27年6月1日施行)。これに伴い、平成26年6月27日に、環境影響評価法の規定による主務大臣が定めるべき指針等に関する基本的事項(平成9年環境庁告示第87号)が改正され、これを踏まえ、環境影響評価法の対象事業種ごとの主務省令が改正されました(平成27年6月1日施行)。

(4)環境影響評価に係る国際展開

 アジア地域においては、環境影響評価が適切に行われず、事業実施に伴い環境影響が生じている事例があります。また、アジア各国の環境影響評価は運用面、技術面の課題が共通であることもありますが、情報交流や課題共有等を行うネットワークが現状存在しません。こうした状況下、我が国の事業者がアジアに事業展開するに際し、環境影響に関する問題により、事業実施が円滑に行えない事例も生じています。このため、アジア各国の環境影響評価に係る制度、運用に関して情報の収集・整理を行いました。

3 小規模火力発電等の環境保全

 環境影響評価法の対象規模未満、特に、規模要件を僅かに下回る程度の小規模火力発電所の建設計画が増加しています。このような背景を踏まえ、環境省において、小規模火力発電等の環境保全対策について、様々な観点から総合的に検討を行いました。また、小規模火力発電所を建設しようとする発電事業者に対しては、エネルギーミックスの実現に資する高い発電効率の基準を満たすことを求めていくためには、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)(昭和54年法律第49号)等の措置を講じることとしました。