環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート3第4章>第3節 PCB廃棄物の処理に関する取組の進捗状況

第3節 PCB廃棄物の処理に関する取組の進捗状況

1 高濃度PCB廃棄物の処理進捗状況

 平成26年3月時点でのPCB特措法に基づく高濃度PCB含有機器の届出状況は、表4-3-1のとおりとなっています。


表4-3-1 高濃度PCB使用機器の届出状況

 また、高濃度PCB廃棄物に関し、トランス類及びコンデンサ類については平成16年から、安定器等・汚染物については平成21年からJESCOにおいて処理を開始しており、平成27年3月末時点における処理の進捗状況(処理済み台数・個数/把握済み台数・個数)は、トランス類が約69%、コンデンサ類が約68%、安定器が約23%となっています。

2 高濃度PCB廃棄物の処理促進

 中小企業者等に対する高濃度PCB廃棄物の処理のための支援として、国及び都道府県が協調してPCB廃棄物処理基金を造成し、処分料金の70%を軽減しています。さらに、平成26年4月には処理費用軽減対象者を拡大するとともに、特に処理費用負担能力が脆(ぜい)弱な個人(個人事業主を除く)について、処分料金の95%を軽減することとしています。また、JESCOは、従前まで一括払いとしていた処分料金に関し、中小企業者等に限り分割支払いを可能とする仕組みを平成27年度(北九州事業地域は平成26年度)から導入しました。

 他にも、環境省では、PCB廃棄物の保管事業者の責務に関する理解の増進のためのパンフレット「ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の期限内処理に向けて」を作成し、頒布するとともに、環境省ウェブサイト(http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/full8.pdf(別ウィンドウ))に掲載しています。

3 都道府県及び政令市による掘り起こし調査の実施

 平成26年6月の変更基本計画に基づき、都道府県及びPCB特措法施行令第4条で定める66政令市は国、JESCO等と協力して未処理事業者の掘り起こし調査を実施するとともに、環境省は都道府県及び66政令市に対して、事業者への期限内処理に向けた指導・助言を行う必要がある旨を平成26年7月に通知しました。また、平成26年8月に掘り起こし調査の効率的な調査、事業者への確認及び指導等の基本的な手法等を取りまとめたマニュアルを作成し、各都道府県及び政令市へ周知しました。平成28年3月現在、各都道府県及び政令市においては調査を実施中又は今後調査を実施予定となっており、今後ますます本格化していく予定です。

 さらに、平成27年2月に、JESCO処理施設が設置されている地元の地方公共団体、電気保安関係事業者関係団体、経済産業省及び環境省で構成するPCB廃棄物早期処理関係者連絡会を開催しました。また、JESCOの各事業エリアにおいて、これら関係者に加え経済産業省の各地方保安監督部が参加する地方版のPCB廃棄物早期処理関係者連絡会を開催し、関係機関が連携し効果的・効率的に掘り起こし調査を実施することについて認識を共有しました。

4 PCBを使用した安定器への対応

 公共施設におけるPCB使用安定器(写真4-3-1)については、平成13年度末までにその交換を終えるなどの安全対策を講じるよう、平成12年11月の閣議了解に基づき、同年12月に厚生省から都道府県及び政令市に対し周知を実施しました。しかし、現在でもPCB使用安定器が使用されている事例があります。平成27年には、静岡県内の高等学校でPCBが漏洩(えい)する事故が発生したことから、同年10月、公共施設におけるPCB使用安定器の速やかな交換について改めて注意喚起指導・周知を徹底するよう、環境省から都道府県及び政令市に対して通知しました。


写真4-3-1 業務用・施設用蛍光灯器具の安定器

 また、PCBが封入されているコンデンサ部分のみならず、分解又は解体後の充填(てん)材等についてもPCBに汚染されているものが多いため、分解又は解体作業による高濃度のPCBの漏出・揮散が懸念されます。さらに、こうしたPCB廃棄物を規制の外で流通させることは、PCB汚染の拡大につながる可能性が高いと考えられます。そこで、廃棄物となったPCB使用安定器の分解・解体を原則禁止するために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令等を平成27年11月に公布し、同年12月に施行しました。これにより、コンデンサ外付け型の安定器であって、コンデンサの形状及び性状に変化が生じておらず、かつ一定の要件を満たす場合を除き、PCB使用安定器の分解・解体を行うことが禁止されました。

5 低濃度PCB廃棄物の処理体制の構築

 低濃度PCB廃棄物は、環境大臣が認定する無害化認定事業者又は都道府県知事が許可する特別管理産業廃棄物処理業者において処理が実施されています。平成28年3月末現在、無害化認定事業者数は30事業者、特別管理産業廃棄物処理業者は2業者となっており、今後も増加する見込みです。

 また、環境省において「絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル」及び「低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法」を策定し、従来よりもPCB濃度を短時間にかつ低廉な費用で測定できる方法を提示しています。さらに、環境省及び経済産業省は、使用中の微量PCB汚染廃電気機器等について、使用中の微量PCB含有電気機器の洗浄処理を行う「課電自然循環洗浄法」に関する手順書を平成27年3月に策定し、一定の要件を満たすトランスについての関係法令上の取扱いを明確化しました。今後、同洗浄法の対象範囲の拡大についても、継続して検討を行う予定です。加えて、平成26年度より、絶縁油を抜油した後の筐(きょう)体(容器)等の安全かつ合理的な処理方策の検討も行っています。