環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第1章>第2節 地球温暖化に関する国内対策

第2節 地球温暖化に関する国内対策

 平成25年11月に2020年度(平成32年度)の我が国の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2005年度(平成17年度)比で3.8%減とすることを気候変動枠組条約事務局(以下「事務局」という。)に登録し、この目標を踏まえた対策・施策を盛り込んだ隔年報告書を同年12月に事務局へ提出しました。

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に規定する地球温暖化対策計画が策定されるまでの間、「当面の地球温暖化対策に関する方針」(平成25年3月15日、地球温暖化対策推進本部決定)に基づき、地方公共団体、事業者及び国民には、それぞれの取組状況を踏まえ、京都議定書目標達成計画に掲げられたものと同等以上の取組を推進することとし、政府は、地方公共団体、事業者及び国民による取組を引き続き支援することで取組の加速を図ることとします。また、政府は、新たな地球温暖化対策計画に即した新たな政府実行計画の策定に至るまでの間においても、現行の政府実行計画に掲げられたものと同等以上の取組を推進することとします。

 また、2020年(平成32年)以降の温室効果ガス削減目標案の検討を加速化するため、平成26年10月に、中央環境審議会地球環境部会2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合を立ち上げました。2020年(平成32年)以降の温室効果ガス削減目標案については、各国の動向や将来枠組みに係る議論の状況、エネルギー政策やエネルギーミックスに係る国内の検討状況等を踏まえて、できるだけ早く取りまとめることを目指して、検討を深めていきます。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収、気候変動の影響への適応等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 地球温暖化対策推進法、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)等に基づく低炭素都市づくり関連施策の集中投入、「環境モデル都市」や「環境未来都市」における取組を各府省の連携・協力の下、促進するとともに、「環境未来都市」構想推進協議会等を通じた成果の情報共有等により、施策の効果の最大化を図るなど、低炭素都市づくりを推進します。

 地方公共団体実行計画(区域施策編)と連携するなどの地域の戦略的な再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入等を支援することで、地域の二酸化炭素排出量削減を後押しします。また、引き続き、災害に強く低炭素なまちづくりの推進のためのモデル事業や支援を実施します。

 さらに、再生可能エネルギー等の活用により低炭素な水素の利活用を推進し、水素も活用しながら低炭素社会を実現します。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業分野を中心として、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャルの診断の実施や、環境省におけるL2-Tech(先導的な低炭素技術)の技術開発・実証・導入推進、CO2削減効果の高い設備への更新など多様な施策を展開することで、企業の積極的な地球温暖化対策を促進します。産業界の地球温暖化対策の中心的な取組である自主行動計画についてはこれまで十分に高い成果を上げていると評価されているところ、平成25年度以降の新たな計画である「低炭素社会実行計画」においては、各業種が設備の導入・更新時に利用可能な最先端技術(Best Available Technology)の最大限の導入などを前提として、国内の事業活動における2020年(平成32年)のCO2排出削減目標を立てるとともに、低炭素製品・サービスなどによる業務・運輸・家庭など他部門での削減、技術移転などを通じた国際貢献、革新的技術の開発といった取組についても、「削減ポテンシャル」として可能な限り定量的に示して、世界のCO2排出削減に貢献することを促しています。平成27年3月までに一般社団法人日本経済団体連合会傘下の業種を含め94業種が計画を策定し、平成24年度の国内のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は、産業部門・エネルギー転換部門の約8割、日本全体の約5割に達しています。

 また、2020年(平成32年)以降の我が国の約束草案の決定に先立って、平成26年7月に一般社団法人日本経済団体連合会が2030年(平成42年)を目標年限とする低炭素社会実行計画の策定を宣言し、政府としても各業界の計画策定を慫慂(しょうよう)してきました。平成27年3月までに73業種が計画を策定し、平成24年度の国内のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は、産業部門・エネルギー転換部門の8割、日本全体の4割に達しています。高い成果を上げた自主行動計画のより一段の実効性の向上に向け、政府としても、今後より多くの業種の参加促進や、審議会における事前質問プロセスの導入、開示情報の増強などの改善を通じた評価・検証の強化を図っていきます。

 また、地球温暖化対策への貢献が期待できるセルロースナノファイバー等の次世代素材について、メーカ等と連携し、早期社会実装のための戦略の策定を実施します。

 中小企業等における排出削減対策の強化のため、「J-クレジット制度」の運用に取り組み、国内における排出削減・吸収量の活用を促進します。

 農林水産分野においては、平成19年6月に策定した農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき実施してきたバイオマスの利活用の推進や施設園芸等における地球温暖化防止策、暑さに強い品種の開発や栽培体系の見直し等の地球温暖化適応策、我が国の技術を活用した国際協力を引き続き推進します。さらに、平成20年7月に改定した同戦略に基づき農山漁村地域に賦存する様々な資源やエネルギーの有効活用による低炭素社会実現に向けた農林水産分野の貢献等を実施します。

(イ)業務その他部門の取組

 平成25年4月から施行された改正省エネルギー基準(建築物に係る部分)の内容について周知を行い、円滑な運用を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく低炭素建築物の普及促進、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(以下「CASBEE」という。)や建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の充実・普及、省エネ改修促進税制の活用及び省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援により、建築物の省エネ化・低炭素化を促進します。トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、対象機器の追加を検討するとともに、既に対象となっている機器の基準の見直しについて検討します。また、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、省エネ・低炭素改修や運用改善への支援、CO2削減ポテンシャル診断、エネルギー消費データの利活用等の更なる促進を図ります。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施します。

(ウ)家庭部門の取組

 平成25年10月に施行された改正省エネルギー基準(住宅に係る部分)の内容について周知を行い、円滑な運用を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の普及促進や、平成26年6月に改訂された「日本再興戦略」改訂2014において取りまとめられた、省エネ基準適合義務化等の住宅・建築物の低炭素化に向けた推進方策について、住宅・建築物における対策の強化を図っていきます。また、消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及を行います。さらに、ゼロエネルギー住宅の建設に対する支援等を行うほか、既存住宅に係る特定の改修工事(高断熱窓への取替え等の一定の省エネ改修工事等)をした場合の所得税額の特別控除制度を引き続き実施します。また、製造事業者等による省エネルギー性能の品質表示制度を円滑に実施するとともに、その省エネルギー効果について各種媒体を活用した周知徹底を行うこととし、住宅リフォーム時に導入可能な各種省エネ対策について普及啓発を行います。加えて、家庭における着実な省エネ対策等を実行し、低炭素なライフスタイルへの変革を促すため、家庭エコ診断制度の促進を図るとともに、光熱費の削減以外の便益(Non-Energy Benefit)を用いた省エネルギーの推進に取り組みます。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策のみならず、交通流対策、燃料対策、エコドライブなどの自動車利用の効率化対策等も含めた総合的アプローチを推進します。世界最高水準の自動車単体対策の実現を目指すとともに、燃費性能の優れた自動車やクリーンエネルギー自動車の普及等の対策を推進します。あわせて、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、適切な経路選択に効果的な高度道路交通システム(ITS)等の推進による道路ネットワークを賢く使う交通流対策やLED道路照明灯の整備を推進します。また、利用環境改善促進等事業により、バリアフリー化されたまちづくりの一環として、地域公共交通の利用環境改善を促進するために、より制約の少ない交通システムである次世代型路面電車システム(LRT)の導入等に対して支援します。物流分野に関しては、引き続き、荷主、物流事業者の協働による取組を支援するとともに、自動車輸送から二酸化炭素排出量の少ない内航海運又は鉄道による輸送への転換や、国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備等を推進することにより、物流体系全体のグリーン化を促進します。

 また、船舶からのCO2排出規制に関する国際的枠組み作りと民間事業者等が行う先進的な研究開発の支援を一体的に推進し、国際競争力を強化しつつ、CO2排出の大幅な削減対策を実施するとともに、省エネ船舶の普及促進等により、海運分野の低炭素化を推進します。また、鉄道分野においては、鉄道の更なる省エネ化を図るため、節電、省エネ効果が期待される次世代ハイブリッド車両等の技術開発を推進するとともに、鉄道駅や運転司令所等への再生可能エネルギーを効率的に使用するための省エネ設備の導入等に係る支援(エコレールラインプロジェクト)を実施し、鉄道の省電力化、低炭素化技術の普及を図ります。さらに、航空分野においては、空港における減エネ・CO2削減対策等を推進させ、航空分野におけるCO2排出削減を図ります。

 輸送用燃料については、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)に基づく、非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準(平成22年経済産業省告示第242号)が平成22年11月に施行されたことにより、石油精製業者には平成23年度以降、各年度の持続可能性基準を満たしたバイオ燃料の利用目標が設定され、平成29年度までに50万kℓ(原油換算)の導入を目標とするとされました。こうしたことを踏まえ、バイオ燃料を全国的に供給できる体制を構築するための事業を推進していきます。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 原子力発電に関しては、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、福島の再生に全力を挙げるとともに、事故の原因や原子炉内の状況を踏まえ、このような事故の再発の防止のための努力を続けていかなければなりません。こうした状況を踏まえつつ、原子力政策を含むエネルギー政策全体についての議論が必要です。また、再生可能エネルギーを利用するための設備の設置の促進、電力系統の整備の促進、規則の適切な見直し等、必要な施策を講じます。また、ガスコージェネレーションや燃料電池、ヒートポンプなど、エネルギー効率を高める設備等の更なる普及も推進していきます。さらに、二酸化炭素回収・貯留(以下「CCS」という。)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施します。

 火力発電の増加に対しては、新電力も含む主要事業者が参加する、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む実効性のある枠組みの構築を促します。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化、下水汚泥の燃焼の高度化等を引き続き推進します。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 産業界の計画的な取組の推進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、冷媒として機器に充填(てん)されたHFCの法律に基づく回収等の施策を、引き続き実施します。

 具体的には、事業者の先導的な排出抑制の取組に対する支援、冷凍空調機器や断熱材における温室効果の低いガスを用いた技術開発の早急な推進、代替フロンを含有する製品における「見える化」の推進(二酸化炭素換算表示)、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)によるフロン類の使用の合理化(ノンフロン・低GWP(温室効果)製品の導入促進等)及び管理の適正化(冷媒フロン類の使用時漏えい対策、回収の徹底等)、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)及び使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号)に基づくフロン類回収の徹底、冷凍冷蔵機器、発泡断熱材、エアゾールなどのノンフロン化を更に推進するための普及啓発等に取り組みます。また、代替物質を使用した製品等の技術開発支援及びその利用を促進するための省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入補助等を更に強化します。

 特に、フロン排出抑制法については、フロン類の製造から回収・再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制を目指し、平成25年に法律を改正し、名称を改め、平成27年4月から施行されるもので、政省令等の基準などについて、広く関係者への周知を行うとともに、都道府県等の関係者と連携し、その徹底に努めます。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 森林吸収量(1990年(平成2年)以降に森林経営活動等が行われた森林の吸収量)については、平成25年12月に気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「気候変動枠組条約」という。)に基づき提出された我が国の報告書において、京都議定書第二約束期間の土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)のルールに則して、森林経営による吸収量の算入上限である2013年度(平成25年度)から2020年度(平成32年度)平均で1990年度(平成2年度)総排出量比3.5%(約4,400万CO2トン)(2020年度(平成32年度)における吸収量としては、基準年(2005年度)(平成17年度)総排出量比約2.8%(約3,800万CO2トン)以上)の確保が目標とされています。

 この目標を達成するため、森林・林業基本計画や平成25年5月に改正した、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年法律第32号)等に基づき、年平均52万haの間伐等の森林の適正な整備や保安林等の適切な管理・保全、成長に優れた種苗の確保に向けた生産体制の構築、「国民参加の森林づくり」、木材及び木質バイオマスの利用拡大、「木づかい運動」等の森林吸収源対策を推進します。

 また、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう、国全体としての財源確保を引き続き検討します。

 そのほか、都市における吸収源対策として、引き続き都市公園整備、道路緑化等による新たな緑化空間を創出し、都市緑化等を推進します。

 さらに、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の活用に向けた取組等を実施します。また、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援も行います。

(5)気候変動の影響への適応策の推進

 平成27年3月に中央環境審議会より、「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について」として、意見具申がなされました。本意見具申を踏まえ、平成27年夏頃をめどとした政府全体の適応計画策定に向けて引き続き取り組んでいきます。

 また、気候変動の影響は、気候、地形、社会条件などによってその内容や程度が異なるとともに、適応は地域づくりにもつながることから、地域が主体となって適応に取り組むことが重要であるため、国全体の取組だけでなく、地方公共団体における気候変動影響評価・適応計画策定を支援するなど、地域における適応に関する取組も引き続き支援します。

 さらに、安倍総理が平成26年9月の国連気候サミットにおいて発表した「適応イニシアチブ」に基づき、気候変動に脆(ぜい)弱なアジア太平洋地域等の途上国において、適応計画の策定支援を行うとともに、アジア太平洋適応ネットワーク、世界適応ネットワーク等を通じ、各地域・国の適応計画策定プロセスの優良事例、教訓、ニーズ等を把握しつつ、途上国の適応に関する能力強化を推進します。

2 横断的施策

(1)地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定・実施

 地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画の策定・実施を一層推進するため、同計画の内容の分析を進めるとともに、自治体の温暖化対策の担当者等を対象としたきめ細やかな研修会を実施します。また、「実行計画(区域施策編)策定支援サイト」(http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/(別ウィンドウ))や自治体職員向けの掲示板、自治体メーリングリスト等を活用し、地域の計画推進に役立つ有益な情報を定常的に発信します。

(2)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策推進法に基づき、事業者全体、フランチャイズチェーン全体での事業者による算定・報告が着実かつ適切に実施されるよう、引き続き周知を図るとともに、事業者から報告された排出量等を確実に集計し公表します。

(3)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法第21条に基づく排出抑制等指針について、その他の部門についても検討し、随時策定・公表するとともに、引き続き更なる指針の活用方法等についても検討を行うなど、事業者による温室効果ガスの排出抑制等のための取組を推進していきます。また、既に策定された分野においても、利用可能な最先端の技術(Best Available Technology)の技術動向等を踏まえ、随時見直しを行います。

(4)国民運動の展開

 多様な主体と連携し、気候変動キャンペーン「Fun to Share」のより一層の展開を図ります。「クールアース・デー」、「クールビズ」、「ウォームビズ」などの様々な広報・イベント等により事業者や国民一人一人の低炭素社会づくりについての関心と理解を深め、ライフスタイル・ビジネススタイルの転換を訴えていきます。

(5)「見える化」等の推進

 「カーボンフットプリント制度」については、これまでの試行事業の成果をいかして民間事業としてのカーボンフットプリント(以下「CFP」という。)の自立的な普及・促進を後押しします。具体的には、国際標準化作業への積極的参加やカーボン・オフセット制度との連携を引き続き推進します。また、前述した家庭エコ診断等において、CO2排出量を「見える化」し、家庭の温室効果ガス削減を引き続き進めていく予定です。さらに、事業者に対する削減ポテンシャルの診断や、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の算定とともに、我が国の優れた技術や製品等による削減貢献量の算定を更に推進していく予定です。

(6)税制のグリーン化

 第6章第2節を参照。

(7)国内排出量取引制度

 「地球温暖化対策の主要3施策について」(2010年(平成22年)12月28日地球温暖化問題に関する閣僚委員会)に基づき、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行います。

(8)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

 クレジットを創出する地域社会への資金還流を目的として「環境貢献型の商品開発・販売促進支援事業」を立上げ、クレジットを活用した商品の普及を図ります。

 また、カーボン・オフセットに関する国内・海外の情報収集や、カーボン・オフセット及びカーボン・ニュートラル制度を着実に運営します。創出されたクレジットがカーボン・オフセット等に活用することができる「J-クレジット制度」については、対象となるプロジェクトの拡充や認証プロセスの効率化により、J-クレジット制度の円滑な運営を図るとともに、認証に係る事業者等への支援やクレジットの売り手と買い手のマッチング機会を提供するなど制度活用を促進させるための取組を強化していきます。さらに、「カーボンフットプリントを活用したカーボン・オフセット制度」及びCFPを活用したカーボン・オフセット製品に表示するマーク(どんぐりマーク)に環境配慮製品等と交換可能なポイントを付けて流通させることにより消費者への訴求を図る「どんぐりポイント制度」の更なる普及を図ります。

(9)金融のグリーン化

 地域低炭素投資促進ファンドから低炭素化プロジェクトへの出資事業につき、地域金融機関等と連携することによりサブファンドの組成の拡大を図りつつ、支援を拡大していくほか、低炭素機器のリース料の助成事業等を引き続き実施するなど、金融のグリーン化に向けた取組を引き続き、実施していきます。

 金融のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的政策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を報告します。また、温室効果ガス排出量・吸収量の更なる精度等の向上に向けた算定方法の改善や情報解析等を行います。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止や地球温暖化への適応に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進します。

 また、高効率火力発電(石炭・LNG)について、発電効率の更なる向上を目指します。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を強化します。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、成長が早い新世代林業種苗の作出による森林再生技術、農地土壌等の吸収機能向上技術の開発を推進します。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進します。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進します。

 農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した栽培・飼養管理技術や土着天敵を活用した害虫防除システムの開発を推進します。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進します。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化の実態を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な行政施策を講じるため、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。

 地球温暖化分野の観測に関わる関係府省・機関が参加する連携拠点の運営や、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(第6章第3節を参照)を用いた全球の温室効果ガス濃度の観測等により、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、インドネシア及びモンゴルにおいて効率の良い低炭素システムの設計を推進します。また、平成29年度打ち上げを目指し、平成24年度から着手したGOSATの2号機の開発を引き続き推進します。さらに、3号機の開発に平成29年度をめどに着手し、平成34年度に打ち上げることを目指します。これにより、大都市単位あるいは大規模排出源単位での二酸化炭素等の吸収・排出の把握を行い、気候変動の科学に貢献します。

4 フロン等対策

 フロン類の使用の合理化、管理の適正化の一層の徹底を図るため、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号)の改正(フロン排出抑制法の施行)等に係る周知を行い、都道府県による法施行強化等を推進します。

 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号)に基づき、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に定められたHCFC等のオゾン層破壊物質の生産規制等を着実に実施するとともに、その排出抑制、使用合理化の一層の促進に努めます。また、オゾン量、オゾン層破壊物質の大気中濃度及び太陽紫外線の観測・監視等を実施します。

 開発途上国におけるフロン等対策を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した、オゾン層破壊物質からオゾン層を破壊せずかつ温室効果の低い代替物質への転換支援、研修の受入れ等を引き続き推進するなど、開発途上国への技術協力を行います。さらに、オゾン層保護担当官ネットワーク会合等を活用し、日本の技術・取組等の普及促進による開発途上国における議定書遵守対策の加速化、フロン類の回収・再利用・破壊に係る施策実施の促進を図ります。