環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第2章>第1節 生物多様性を社会に浸透させる取組

第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用~豊かな自然共生社会の実現に向けて~

第1節 生物多様性を社会に浸透させる取組

1 生物多様性に関する広報の推進

 国連が定めた「国際生物多様性の日」である5月22日に、「国際生物多様性の日シンポジウム」を開催します。また、次項で紹介する国連生物多様性の10年日本委員会(以下「UNDB-J」という。)の各種取組のほか、4月29日には「新宿御苑みどりフェスタ」、6月6日、6月7日には「エコライフ・フェア」、12月10日~12月12日には「エコプロダクツ展」等の様々なイベントの開催・出展などを通じ、普及啓発を進めていきます。

2 多様な主体の連携の促進

(1)国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)による取組

 愛知目標の達成に貢献するため、引き続きUNDB-Jを核として、幅広い主体と連携を図ります。

 平成27年は、「国連生物多様性の10年」の折り返しに当たることから、これまでの取組の中間評価を行い、2020年(平成32年)に向けて、各セクター間の連携、広報の強化を図り、生物多様性の主流化に向けた様々な取組を更に推進します。

 生物多様性に関する行動の呼び掛け、認知度向上のための働き掛けとして、国民一人一人が自分の生活の中で生物多様性との関わりを捉えることができる、5つのアクション「MY行動宣言」の呼び掛け、生物多様性アクション大賞への応募、「グリーンウェイブ2015」活動への参加の呼び掛け等を行います。

 また、「地球いきもの応援団」、「生物多様性リーダー」、「生物多様性キャラクター応援団」による広報を行うとともに、生物多様性マガジン「Iki・Tomo(イキトモ)」の発行、Facebook「Iki・Tomoパートナーズ」による情報発信など、様々な主体への働き掛けを行います。

 そして、生物多様性の理解や普及啓発、環境学習にも資するツールとして、子供向け推薦図書(「生物多様性の本箱」~みんなが生きものとつながる100冊~)について、全国の図書館での展示・読み聞かせ会の実施、東北復興支援のための寄贈の呼び掛け等を行います。

 国際自然保護連合日本委員会が行う「にじゅうまるプロジェクト」の登録事業等の中から、「多様な主体の連携」、「取組の重要性」、「取組の広報の効果」などの観点からUNDB-Jが推奨する連携事業を認定します。

 そして、各セクター間の意見・情報交換として、滋賀県において「第5回生物多様性全国ミーティング」を開催して、中間評価の報告を行うほか、2020年(平成32年)に向けてセクター間の連携強化を図るためのフォーラムを開催するなど、積極的に様々な主体への働き掛けを行います。

(2)地域主体の取組の支援

 地域における生物多様性の保全・再生活動を促進するため、「生物多様性保全推進支援事業」を実施し、地域における先行的・効率的な活動を支援します。

 ナショナル・トラスト活動については、その一層の促進のため、引き続き税制優遇措置の適切な運用、普及啓発等を実施します。

3 生物多様性地域戦略の策定と地域に即した取組の促進

 地方公共団体による生物多様性地域戦略の策定については、「生物多様性国家戦略2012-2020」で掲げた目標である「生物多様性地域戦略の策定自治体数:47都道府県(平成32年)」を達成するため、平成25年度に既存事例の紹介を含めて改定した「生物多様性地域戦略策定の手引き」の普及を図ります。

4 生物多様性に配慮した事業者の取組の促進

 生物多様性の保全及び持続可能な利用等、生物多様性条約の実施に関する民間の参画を促進するため、引き続き「生物多様性民間参画ガイドライン」の普及広報を行います。

 また、平成26年度に作成した「生物多様性に関する民間参画に向けた日本の取組」等を活用したシンポジウムを開催するほか、事業者の取組を促進する上で重要な役割を担う事業者団体を対象とした、生物多様性に関する行動指針作成等を促進するためのモデル事業の実施や手引きの作成を行います。

 さらに、経済界を中心とした自発的なプログラムとして設立された「生物多様性民間参画パートナーシップ」や「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」等の事業者間の枠組みと引き続き連携・協力します。

5 生物多様性に関する教育・学習・体験の充実

(1)自然とのふれあい活動

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月1日~10月31日)、平成28年から祝日となる「山の日」(8月11日)等を通じて、自然観察会等、自然とふれあうための各種活動を実施します。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施するとともに、利用者指導の充実を図ります。また、地方環境事務所等においてパークボランティアの養成や活動に対する支援を行います。

 子供達に国立公園等の優れた自然地域を知ってもらうなど、自然環境の大切さ等を学ぶ機会を提供するとともに、様々な自然とのふれあいの場やイベントなどに関する情報について、インターネット等を通じて幅広く提供します。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林・林業への理解を深めるための森林ふれあい推進事業等を実施します。また、学校等による体験学習活動の場である「遊々の森」や、国民による自主的な森林づくり活動の場である「ふれあいの森」などの設定・活用を図り、国民参加の森林づくりを推進します。

 国営公園においては、良好な自然環境や歴史的資源をいかし、自然観察会やプロジェクト・ワイルド等、多様な環境教育プログラムを提供します。

(2)エコツーリズム

 エコツーリズム推進法(平成19年法律第105号)に基づき、エコツーリズムに取り組む地域への支援、全体構想の認定・周知、技術的助言、情報の収集、普及啓発、広報活動等を総合的に実施します。

 また、国立公園等において、自然観光資源を活用したエコツーリズムを推進するため、エコツーリズム推進全体構想の作成、魅力あるプログラムの開発、ガイド等の人材育成など、地域におけるエコツーリズムの活動を支援します。

(3)自然とのふれあいの場の提供

ア 国立・国定公園等における取組

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業を環境省の直轄事業とし、国立公園バリューアップ事業による自然資源を活用した観光の促進と地域の活性化の推進、集団施設地区等における景観再生、多くの利用者が訪れる地区及びフィールドにおける人と自然の共生を目指した整備、関係省庁共同でシカ等による影響を受けた自然生態系を維持回復させるための施設整備等を重点的に進めます。

 地方公共団体が行う国立・国定公園及び長距離自然歩道等の整備については、自然環境整備交付金によりその整備を支援します。

イ 森林における取組

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図るための整備を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備を支援します。また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備等を推進します。さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無に関わらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図ります。

 国有林野においては、自然休養林等のレクリエーションの森において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行います。また、国有林野を活用した森林環境教育の一層の推進を図るため、農山漁村における体験活動とも連携し、フィールドの整備及び学習・体験プログラムの作成を実施します。

 また、農山漁村地域に隣接する国立公園において、良好な自然環境をいかした自然体験活動が行われるよう、魅力あるプログラムの開発を支援します。

(4)都市と農山漁村の交流

 子供の農山漁村宿泊体験活動を一層推進し、子供の豊かな心を育むとともに、自然の恩恵などを理解する機会の促進を図ります。

 地域資源を活用した交流拠点の整備、都市と農村の多様な主体が参加した取組等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図ります。

(5)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉法(昭和23年法律第125号)の施行に当たり、温泉源の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正かつ効率的な利用の増進を図るため都道府県等に対し適切な助言を行います。

6 生物多様性が有する経済的価値の評価の推進

 「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」について分かりやすく紹介するなど、生物多様性や生態系サービスの価値評価の重要性等について普及啓発を進めるとともに、国内の自然保護地域や自然環境保全施策などを対象に、生物多様性の経済価値評価、生物多様性の損失に伴う経済的損失、効果的な保全に要する費用などの評価を推進します。

7 生物多様性に配慮した消費行動への転換

 多くの人々が生物多様性の保全と持続可能な利用に関わることのできる仕組みを拡大していくため、環境に配慮した商品やサービスに付与される環境認証制度のほか、生物多様性に配慮した持続可能な調達基準を策定する事業者の情報などについて、引き続き環境省のウェブサイト等で情報提供していきます。

 また、木材・木材製品については、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)に基づき、引き続き、合法証明の信頼性・透明性の向上や合法証明された製品の消費者への普及を図ります。