ア 大気汚染系疾病
(ア)既被認定者に対する補償給付等
我が国では、昭和30年代以降の高度経済成長により、工業化が進んだ都市を中心に大気汚染の激化が進み、四日市ぜん息を始めとして、大気汚染の影響による呼吸器系疾患の健康被害が全国で発生しました。これらの健康被害者に対して迅速に補償等を行うため、1973年(昭和48年)、「公害健康被害補償法(昭和48年法律第111号。以下「公健法」という。)」に基づく公害健康被害補償制度が開始されました。
平成24年度は、同制度に基づき、被認定者に対し、[1]認定の更新、[2]補償給付(療養の給付及び療養費、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、療養手当、葬祭料)、[3]公害保健福祉事業(リハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業、家庭における療養に必要な用具の支給に関する事業、家庭における療養の指導に関する事業、インフルエンザ予防接種費用助成事業)等を実施しました。平成24年12月末現在の被認定者数は39,171人です。なお、昭和63年3月1日をもって第一種地域の指定が解除されたため、新たな患者の認定は行われていません(表6-8-1)。
(イ)公害健康被害予防事業の実施
独立行政法人環境再生保全機構により、以下の公害健康被害予防事業が実施されました。
[1]大気汚染による健康影響に関する総合的研究、局地的大気汚染対策に関する調査等を実施しました。また、ぜん息等の予防・回復等のためのパンフレットの作成、講演会の実施、及びぜん息の専門医による電話相談事業を行いました。さらに、地方公共団体の公害健康被害予防事業従事者に対する研修を行いました。
[2]地方公共団体に対して助成金を交付し、旧第一種地域等を対象として、ぜん息等に関する健康相談、乳幼児を対象とする健康診査、ぜん息キャンプ、水泳教室等の機能訓練等を推進しました。
イ 水俣病
(ア)水俣病被害の救済
a 水俣病の認定
水俣病は、熊本県水俣湾周辺において昭和31年5月に、新潟県阿賀野川流域において40年5月に公式に確認されたものであり、四肢末梢の感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄、中枢性聴力障害を主要症状とする中枢神経系疾患です。それぞれチッソ株式会社、昭和電工株式会社の工場から排出されたメチル水銀化合物が魚介類に蓄積し、それを経口摂取することによって起こった中毒性中枢神経系疾患であることが昭和43年に政府の統一見解として発表されました。
水俣病の認定は、公健法に基づき行われており、平成25年3月末までの被認定者数は、2,975人(熊本県1,782人、鹿児島県491人、新潟県702人)で、このうち生存者は、653人(熊本県334人、鹿児島県132人、新潟県187人)となっています。
b 平成7年の政治解決
公健法及び平成4年から開始した水俣病総合対策医療事業(水俣病に見られる四肢末梢優位の感覚障害を有すると認められる者に療養手帳を交付し、医療費の自己負担分、療養手当等を支給する事業)による対応が行われる一方で、公健法の認定申請を棄却された者による訴訟の多発などの水俣病をめぐる紛争と混乱が続いていたため、平成7年9月当時の与党三党により、最終的かつ全面的な解決に向けた解決策が取りまとめられました。
これを踏まえ、国及び関係県は、医療事業の申請受付の再開(受付期間 平成8年1月~同年7月)等の施策を実施しました。原因企業から一時金が支給されるとともに、水俣病総合対策医療事業において、医療手帳(療養手帳を名称変更)の交付の対象となった者11,152人、医療手帳の対象とならない者であって、一定の神経症状を有する者1,222人に対して、保健手帳を交付し、医療費の自己負担分等を支給することになりました。
国及び関係県のこのような施策が実行に移されたことを受けて、関西訴訟を除いた国家賠償請求訴訟については、平成8年2月及び5月に原告が訴えを取り下げました。一方、関西訴訟については、16年10月に、最高裁判決が出され、国及び熊本県には、昭和35年1月以降、水質二法・県漁業調整規則の規制権限を行使せず、水俣病の発生拡大を防止しなかった責任があるとして、賠償を命じた大阪高裁判決が是認されました(表6-8-2)。
c 最高裁判決等を受けた各施策の推進
そのため政府は、平成18年に水俣病公式確認から50年という節目を迎えるに当たり、平成7年の政治解決や関西訴訟最高裁判決も踏まえ、平成17年4月に「今後の水俣病対策について」を発表し、これに基づき以下の施策を行うこととしました。
[1]水俣病総合対策医療事業について、高齢化の進展等を踏まえた拡充を図り、また、保健手帳については、交付申請の受付を平成17年10月に再開(受付期間 ~平成22年7月)しました。
[2]平成18年9月に発足した水俣病発生地域環境福祉推進室等を活用して、胎児性患者をはじめとする水俣病被害者に対する社会活動支援、地域の再生・振興等の地域づくりの対策に取り組んでいます。
(イ)水俣病対策をめぐる現状
平成16年の関西訴訟最高裁判決後、最大で8,282人(保健手帳の交付による取り下げ等を除く。)の公健法の認定申請が行われ、また、28,364人に新たに保健手帳(平成22年7月申請受付終了)が交付されています。さらに、新たに国賠訴訟が6件提起されました。
このような新たな救済を求める者の増加を受け、水俣病被害者の新たな救済策の具体化に向けた検討が進められ、自民党、公明党、民主党の三党の合意により、平成21年7月に「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(平成21年法律第81号。以下「水俣病被害者救済特措法」という。)」が成立し、公布・施行されました。その後、平成22年4月に水俣病被害者救済特措法の救済措置の方針(以下「救済措置の方針」という。)を閣議決定しました。この「救済措置の方針」に基づき、四肢末梢優位の感覚障害又は全身性の感覚障害を有すると認められる方に対して、関係事業者から一時金が支給されるとともに、水俣病総合対策医療事業により、水俣病被害者手帳を交付し、医療費の自己負担分や療養手当等の支給を行っています。また、これに該当しなかった方であっても、一定の感覚障害を有すると認められる方に対しても、水俣病被害者手帳を交付し、医療費の自己負担分等の支給を行っています。
同年5月1日、救済措置の方針に基づく給付申請の受付を開始し、平成22年10月には水俣病被害者救済特措法に基づく一時金の支給を開始し、平成24年7月で申請受付を終了しました。
平成24年7月末までの救済措置申請者数は65,151人(熊本県42,961人、鹿児島県20,082人、新潟県2,108人)となっています。
なお、認定患者の方々への補償責任を確実に果たしつつ、同法や和解に基づく一時金の支払いを行うため、同法に基づき、チッソ株式会社を平成22年7月に特定事業者に指定し、同年12月にはチッソ株式会社の事業再編計画を認可しました。
また、裁判で争っている団体の一部とは和解協議を行い、平成22年3月には熊本地方裁判所から提示された所見を、原告及び被告双方が受け入れ、和解の基本的合意が成立しました。これと同様に新潟地方裁判所、大阪地方裁判所、東京地方裁判所でも和解の基本的合意が成立し、これを踏まえて、和解に向けた手続きが進められ、平成23年3月に各裁判所において、和解が成立しました。
さらに、水俣市主催の「みなまた環境まちづくり研究会」に参加、支援するなど、救済措置の方針に基づき、水俣病発生地域の医療・福祉の充実や地域の再生・振興等を推進しています。
水俣病問題の解決には、公健法の認定患者の補償に万全を期し、高齢化が進む胎児性患者とその御家族の方など、みなさんが安心して住み慣れた地域で暮らしていけるよう、医療・福祉施策を進めるとともに、地域の絆の修復、地域の再生・融和(もやい直し)によって、地域の活性化を図ることが必要です。
(ウ)普及啓発及び国際貢献
毎年、公害問題の原点、日本の環境行政の原点ともなった水俣病の教訓を伝えるため、教職員や学生等を対象にセミナーを開催するとともに、開発途上国を中心とした国々の行政担当者を招いて研修を行っています。
水俣のいま
水俣市は、水俣病という世界でも類例のない悲惨な公害を二度と繰り返さないために、その経験と教訓を活かし、未曾有の公害という負の遺産をプラスの資産に価値転換すべく、平成4年に「環境モデル都市づくり宣言」を行い、日本で先駆けて家庭から排出されるごみを市民自らが20種類(現在24種類)に細分化する徹底した分別収集によるリデュース・リユース・リサイクルの推進や、エコタウンへのリサイクル産業の集積など環境に関するさまざまな取組を行ってきました。また、水俣病の経験と教訓を、国内のみならず国外にも積極的に発信するなどして、地域内外の環境人材育成を図るための拠点となっています。このようなさまざまな取組の積み重ねが評価され、NGOなどによる「環境首都コンテスト」において、水俣市は全国総合第1位を過去4回獲得し、平成23年3月に全国で唯一の「日本の環境首都」の称号を獲得しました。
水俣市は、平成22年度から環境を原動力とした地域の振興を更に進めていますが、環境省としても、平成24年度から開始された「環境首都水俣創造事業」等を通じて、全力で支援していくこととしています。
さらに、平成25年1月に政府間交渉委員会第5回会合において条文案が合意された「水銀に関する水俣条約」の採択・署名のための外交会議を同年10月に熊本市及び水俣市で開催することとしています。
ウ イタイイタイ病
富山県神通川流域におけるイタイイタイ病は、昭和30年10月に原因不明の奇病として学会に報告され、43年5月、厚生省が、「イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化及び栄養としてのカルシウム等の不足等が誘引となって生じたもので、慢性中毒の原因物質としてのカドミウムは、三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の排水以外は見当たらない」とする見解を発表しました。44年12月、神通川流域が救済法の施行とともに指定地域として指定され、49年9月には、救済法を引き継いだ公健法により第二種地域に指定されました。平成24年12月末現在の公健法の被認定者数は4人(認定された者の総数196人)です。また、富山県は将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できない者を要観察者として経過を観察することとしていますが、平成24年12月末現在、要観察者は1人となっています。
エ 慢性砒素中毒症
宮崎県土呂久地区及び島根県笹ヶ谷地区における慢性砒素中毒症については、平成24年12月末現在の公健法の被認定者数は、土呂久地区で47人(認定された者の総数187人)、笹ヶ谷地区で3人(認定された者の総数21人)となっています。
石綿を原因とする中皮腫及び肺がんは、[1]ばく露から30~40年と長い期間を経て発症することや、石綿そのものが当時広範かつ大量に使用されていたことから、どこでばく露したかの特定が困難なこと、[2]予後が悪く、多くの方が発症後1~2年で亡くなること、[3]現在発症している方が石綿にばく露したと想定される30~40年前には、重篤な疾患を発症するかもしれないことが一般に知られておらず、自らには非がないにもかかわらず、何の補償も受けられないままにお亡くなりになる方がいることなどの特殊性にかんがみ、健康被害を受けた方及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、健康被害の迅速な救済を図る、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号。以下「石綿救済法」という。)が平成18年3月27日に施行されました。
その後、医療費等の支給対象期間の拡大や特別遺族弔慰金等の請求期限の延長等を定めた改正石綿救済法が平成20年12月1日より施行されました。
また、平成22年5月6日に提出された中央環境審議会の答申を受け、「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺」及び「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」を石綿救済法の指定疾病として追加する政令が、平成22年7月1日より施行されました。
さらに、平成23年6月20日には今後の石綿健康被害救済制度の在り方について中央環境審議会からの答申があり、「現行の石綿健康被害救済制度については、今後とも制度を取り巻く事情の変化を注視しつつも、当面は現行の基本的な考え方を維持していくこととするほかない」とされました。
平成23年8月30日には、議員立法による改正石綿救済法が施行され、特別遺族弔慰金等の請求期限が更に10年延長されました。
救済給付に係る申請等については、平成24年度末時点で12,236件を受け付け、うち8,647件が認定、1,933件が不認定、1,656件が取り下げ又は審議中とされています。
ア 環境保健施策基礎調査等
(ア)大気汚染による呼吸器症状に係る調査研究
地域人口集団の健康状態と環境汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるため引き続き、全国38地域で3歳児、全国39地域で6歳児を対象とした環境保健サーベイランス調査を実施しました。
その他、独立行政法人環境再生保全機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を行いました。
(イ)環境要因による健康影響に関する調査研究
熱中症対策については、関係省庁が緊密に連携して取り組みました。環境省としては暑さ指数(WBGT)の情報提供、「熱中症環境保健マニュアル」等の配布や熱中症対策講習会の実施等による予防・対処法の普及啓発を実施しました。
花粉症対策には、発生源対策、花粉飛散量予測・観測、発症の原因究明、予防及び治療の総合的な推進が不可欠なことから、関係省庁が協力して対策に取り組んでいます。環境省では、スギ・ヒノキの花粉総飛散量、飛散開始時期及び終息時期等の予測を実施しました。さらに、「花粉観測システム(愛称:はなこさん)」では、全国的に設置した花粉自動測定機による花粉の飛散状況を環境省ホームページ上でリアルタイムで公開しています(http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/index.html(別ウィンドウ))。
国と地方自治体で進める花粉発生源対策
平成20年に実施された「鼻アレルギー全国疫学調査」によると、全国民に対する我が国のスギ花粉症患者の割合が26.5%に上ると報告されるなど、国民的な問題となっています。花粉症発症のメカニズムについては、食生活などに代表される生活習慣の変化や大気汚染などの要因が挙げられていますが、まだ十分に解明されていません。
林野庁では、森林・林業面からの花粉発生源対策として、少花粉スギ等の花粉症対策品種の開発や苗木の普及等を通じて、少花粉スギ林や広葉樹林等花粉の少ない森林への転換に取り組んでいます。こうした取組を進めてきた結果、少花粉スギ等の花粉症対策苗木の年間生産量は年々増大(平成17年度の9万本から平成23年度は142万本と約16倍に増加)しており、さらに生産量を増大させるため、生産体制の整備等の取組を進めています。
地方自治体においても、スギ花粉対策に積極的に取り組んでいます。奥多摩地区を中心に広大なスギ林を有する東京都では、「花粉の少ない森作り運動」を推進しています。この運動では、都民や民間企業に対し、募金や多摩産材の積極的な活用のほか、ボランティア活動への参加などを呼びかけています。都民に対しては、500円玉3枚(1,500円)の募金額でスギ1本を切り出し、花粉の少ないスギに植え替えることができる「花粉の少ない森づくり募金」のほか、花粉の少ないスギの植樹会や森林インストラクターによる自然観察会の実施等、都民が参加できるボランティア活動やイベントを主催する「森づくりのパートナー」という運動も展開しています。他方、民間企業に対しては「企業の森」という取組を展開しています。この取組では、多摩地域の森林を企業や森林所有者等で費用負担して、森林整備や森づくりに関する協定を締結し、企業や団体の協賛によって花粉の少ないスギ品種等の植林を進めています。
これらの取組は花粉症対策につながると同時に、森林の整備・保全、木材供給、木材の有効利用等の取組を一体的に進めることにより、水源のかん養や国土の保全、二酸化炭素の吸収・固定といった森林の多面的な機能の発揮にもつながっていくことが期待されています。
黄砂の健康影響については、引き続き情報収集に努めるとともに、疫学調査を実施し、健康影響の評価・検討を行いました。また、「身のまわりの電磁界について」や「紫外線環境保健マニュアル」等を用いてその他の環境要因による健康影響について普及啓発に努めました。
イ 重金属等の健康影響に関する総合研究
メチル水銀の毒性メカニズム、低濃度メチル水銀へのばく露による健康影響等、いまだ十分に解明されていない課題に対応するため、基礎的研究及び応用的研究の推進、情報収集・整理等により、水俣病やメチル水銀に関する最新の知見の収集に努めました。
イタイイタイ病の発症の仕組み及びカドミウムの健康影響については、なお未解明な事項もあるため、基礎医学的な研究や富山県神通川流域の住民を対象とした健康調査などを実施し、その究明に努めました。
ウ 石綿による健康被害に関する調査
石綿を取り扱っていた事業場周辺においては一般環境を経由した石綿ばく露による健康被害の可能性があるため、横浜市鶴見区、岐阜県羽島市、大阪府泉南地域等、兵庫県尼崎市、奈良県、北九州市門司区及び佐賀県鳥栖市の7地域において、健康リスク調査として、住民を対象とした問診、胸部エックス線及びCT検査を実施し、石綿のばく露歴や石綿関連疾患の健康リスクに関する実態把握を行いました。また、石綿関連疾患に係る医学的所見やばく露状況の解析調査及び諸外国の制度に関する調査等を行いました。
東京電力福島第一原子力発電所事故により、東京電力福島第一発電所周辺地域の方の被ばく線量の把握や、放射線の健康影響を考慮した健康管理の重要性が指摘されています。また、「自身が受けた放射線量がわからない」「将来の健康影響が心配」など、大きな不安を抱え、ストレスが増大しており、「基本的な情報の不足」や「情報の質のばらつき」がこれに拍車をかけています。これらの不安・ストレス、さらには避難所生活の長期化等により、基礎疾患が悪化する等、心身の健康状態が悪化する可能性が増大しています。
このような状況を踏まえ、福島県民の中長期的な健康管理を可能とするため、平成23年度第二次補正予算により、福島県が創設した「福島県民健康管理基金」に782億円の交付金を拠出し全面的に県を支援しています。福島県では、この基金を活用して、全県民を対象に県民健康管理調査を実施し、行動調査に基づく被ばく線量の把握や健康状態を把握するための健康診査等を行うこととしています。この他に、個人線量計やホールボディカウンターによる被ばく線量の測定などを実施しています。また、福島県の「県民健康管理調査」検討委員会に、国もオブザーバーとして参加してきたところですが、第8回検討委員会(平成24年9月11日)からは、国も検討委員会の委員として出席しています。
さらに、放射線による健康不安に対して適切に対応していくことが重要であり、平成24年5月31日、以下の4つの重点施策からなる「原子力被災者等の健康不安対策に関するアクションプラン」を決定しました。
[1]関係者の連携、共通理解の醸成
[2]放射線影響等に係る人材育成、国民とのコミュニケーション等
[3]放射線影響等に係る拠点の整備、連携強化
[4]国際的な連携強化
公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つがあります。
公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)や広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)などについて、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。
ア 公害等調整委員会に係属した事件
平成24年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は24件で、これらに前年から繰り越された40件を加えた計64件(責任裁定事件30件、原因裁定事件27件、調停事件6件、義務履行勧告事件1件)が24年中に係属しました。その内訳は、表6-8-3のとおりです。このうち24年中に終結した事件は34件で、残り30件が25年に繰り越されました。
終結した主な事件としては、「神栖市におけるヒ素による健康被害等責任裁定申請事件」があります。
この事件は、茨城県神栖市等の住民(申請人)が、国及び茨城県を相手方(被申請人)とし、有機ヒ素化合物による地下水汚染によって健康被害を受けたとして、損害賠償を求めたものです。
公害等調整委員会は、17回の審問期日を開催するとともに、ヒ素による健康被害等に関する専門的事項を調査するために必要な専門委員5人を選任し、現地調査、申請人本人及び参考人尋問を実施するなど手続を進め、平成24年5月、被申請人茨城県に対し、慰謝料として2,826万円の支払をするよう命ずる裁定を行い、本事件は終結しました。
イ 都道府県公害審査会等に係属した事件
平成24年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は36件で、これに前年から繰り越された37件を加えた計73件(調停事件72件、義務履行勧告申出事件1件)が24年中に係属しました。このうち24年中に終結した事件は34件で、残り39件が25年に繰り越されました。
ウ 公害紛争処理に関する連絡協議
公害紛争処理制度の利用の促進を図るため、都道府県・市区町村や弁護士会、法テラスと情報・意見交換を行いました。また、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、都道府県公害審査会等との相互の情報交換・連絡協議に努めました。
ア 公害苦情処理制度
公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものと規定され、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。
イ 公害苦情の受付状況
平成23年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は80,051件で、前年度に比べ44件減少しました(対前年度比0.1%減)。
このうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる典型7公害の苦情件数は54,453件で、前年度に比べ392件減少しました(対前年度比0.7%減)。
一方、廃棄物投棄など典型7公害以外の苦情件数は25,598件で、前年度に比べて348件増加しました(対前年度比1.4%増)。種類別に見ると、廃棄物投棄が11,846件(典型7公害以外の苦情件数の46.3%)で、前年度に比べて460件減少(対前年度比3.7%減)、その他(日照不足、通風妨害、夜間照明など)が13,752件で、前年度に比べて808件増加しました(対前年度比6.2%増)。
ウ 公害苦情の処理状況
平成23年度の典型7公害の苦情処理件数のうち、35,380件(70.8%)が、苦情を受け付けた地方公共団体により、1週間以内に処理されました。
エ 公害苦情処理に関する指導等
地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導などを行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談員等ブロック会議を開催しました。
環境犯罪について、特に産業廃棄物の不法投棄事犯等を重点対象として、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を中心に取締りを推進しました。平成24年中に検挙した環境犯罪の検挙事件数は6,503事件(23年中は6,503事件)で、過去5年間における環境犯罪の法令別検挙事件数の推移は、表6-8-4のとおりです。
平成24年中に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)違反で検挙された5,655事件(23年中は5,700事件)の態様別検挙事件数は、表6-8-5のとおりです。このうち不法投棄事犯が51.3%(23年中は52.4%)、また、産業廃棄物事犯が17.8%(23年中は18.2%)を占めています。
平成24年中の水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)違反に係る水質汚濁事犯の検挙事件数は4事件(23年中は1事件)でした。
平成24年中における罪名別環境関係法令違反事件の通常受理・処理人員は、表6-8-6のとおりです。受理人員は、廃棄物処理法違反の7,499人が最も多く、全体の約81.9%を占め、次いで、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律違反(531人)となっています。処理人員は、起訴が4,936人、不起訴が3,875人となっており、起訴率は約56.0%となっています。起訴人員のうち公判請求は316人、略式請求命令は4,620人となっています。最近5年間に検察庁で取り扱った環境関係法令違反事件の受理・処理人員の推移は、表6-8-7のとおりです。24年中の通常受理人員は9,155人で、前年より293人増加しています。
前ページ | 目次 | 次ページ |