環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定されており、上位の計画や政策段階の戦略的環境アセスメントについて我が国での導入に向けた検討を行いました。
環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。同法に基づき、平成25年3月末までに計308件の事業について手続が実施されました。そのうち、24年度においては、新たに105件の手続開始、また、13件が手続完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-7-1)。
平成23年4月に成立した「環境影響評価法の一部を改正する法律」(図6-7-1)に盛り込まれている法改正事項のうち、平成24年4月に同法の一部が施行され、方法書段階での説明会開催や、電子縦覧等の手続が導入されました。さらに、平成25年4月の同法の完全施行に向けて、新設される配慮書及び報告書に係る手続等を定めるため、関係する法施行令及び施行規則を平成24年10月に改正しました。
また、環境影響評価の具体的な実施方法(基準・指針)に関する事業種横断的な基本的事項(環境省告示)について、平成24年4月に策定、公表しました。これを受けて、対象事業種ごとに定められる主務省令についても、各所管府省において改正を行いました。
風力発電事業を環境影響評価法の対象事業に追加するための施行令の一部を改正する政令が平成23年11月に公布され、平成24年10月に施行されました。この施行にあたっては、施行期日において国の行政指導指針や地方公共団体の条例等に基づく環境アセスメントを実施中の事業者に対し、経過措置を設け、法手続への適切な移行を図りました。
また、火力発電所のリプレースや風力・地熱発電所の設置の事業については、従来3~4年程度要していた環境アセスメント手続に係る期間を、運用上の取組により、火力発電所リプレースについては最大1年強まで短縮、風力・地熱発電所については概ね半減させるための具体的方策を検討し公表しました。
そのほか、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、これらの情報等を集積し、インターネット等を活用して国民や地方公共団体等への情報支援を行いました。
ア 災害復旧のための発電設備の設置に係る環境影響評価法の適用除外について
環境影響評価法第52条第2項の規定に基づき、同法の適用除外とされた災害復旧のための発電設備の設置事業の実施については、これらの事業の実施による環境への負荷をできる限り回避・低減し、環境保全について適正な配慮が行われるよう、当該事業による環境影響を最小化するための実行可能な最大限の配慮を行うことや、関係地方公共団体及びその地域住民に対する説明や意見聴取等の措置について、事業者の取組状況のフォローアップを行い、法の趣旨に則った可能な限りの措置がなされていることを確認しました。
イ 適用除外の対象となる土地区画整理事業における環境への配慮
東日本大震災の被災地の復興に際し、被災市街地復興特別措置法(平成7年法律第14号)第5条第1項に基づく被災市街地復興推進地域において土地区画整理事業が行われる場合には、環境影響評価法第52条第2項の規定により、同法に基づく手続の適用除外になると解されるものの、環境影響の予測や環境保全措置の検討など、法の趣旨に則った可能な限りの措置が講じられるべきであるとの技術的助言を、各地方公共団体に対して発出しました。
ウ 復興特区における特定環境影響評価手続
平成23年12月に施行された東日本大震災復興特別区域法に基づき、被災した地域での復興整備事業のうち、環境影響評価法の対象事業となる土地区画整理事業並びに鉄道・軌道の建設及び改良事業については、簡易な手法・手続による環境アセスメント(特定環境影響評価)をもって環境影響評価法の手続に替える特例規定を設けました。また、特例規定の円滑な推進に資することを目的に、特定評価書の作成にあたり必要な技術的な情報を提供する技術手引を関係自治体に向けて配布しました。平成24年度は、1件の特定環境影響評価が実施され「復興事業への迅速な着手」と「環境保全」の両立が図られました。
港湾法(昭和25年法律第218号)、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等に基づいて行われる事業の認可、計画等の策定等に際し、環境保全の見地から検討を行いました。
平成24年度末現在、都道府県と政令指定都市を合わせた67団体のうち62団体において環境影響評価条例が公布・施行され、さらに知事意見を述べる際の審査会等第三者機関への諮問や事業者への事後調査の義務付けを導入しています。
対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されています。
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