化学物質審査規制法に基づき、平成24年度は、新規化学物質の製造・輸入について702件(うち低生産量新規化学物質については248件)の届出があり、事前審査を行いました。
また、持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)における「2020年(平成32年)までに、化学物質による人の健康や環境への著しい悪影響を最小化する」という目標を踏まえて、平成21年5月に化学物質審査規制法が改正されました。平成23年4月には全面施行され、1トン以上の化学物質すべてについて、法に基づき着実にスクリーニング評価・リスク評価によって有害性情報等の収集が行われる仕組みが構築されました。これを受けて、一般化学物質等についてスクリーニング評価を行い、新たに45物質を優先評価化学物質に指定しました(図5-3-1)。
さらに、産業界と国が連携し、既存化学物質の安全性情報の収集と、化学物質の安全性について広く国民に情報発信することを目的に平成17年6月に開始した官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(通称:Japanチャレンジプログラム)は、得られた情報の発信を行うデータベース(J-CHECK)で公開するとともに、改正化審法の枠組みにおけるスクリーニング評価・リスク評価へ移行しました。
化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)については、同法施行後の第11回目の届出として、事業者が把握した平成23年度の排出量等が都道府県経由で国へ届け出られました。届出された個別事業所のデータ、その集計結果及び国が行った届出対象外の排出源(届出対象外の事業者、家庭、自動車等)からの排出量の推計結果を、平成25年2月に公表しました(図5-3-2、図5-3-3、図5-3-4)。また、平成22年度から、個別事業所ごとのPRTRデータをインターネット地図上に分かりやすく表示し、ホームページ上に公開しています。事業者間で化学品を取引する際の情報伝達について、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)との整合性を図り、確実でわかりやすいものとするため、化学物質排出把握管理促進法に基づく省令等の改正を平成24年4月に行いました。
平成23年度のダイオキシンに係る環境調査結果は表5-3-1のとおりです。
また、24年度の一日摂取量調査において、23年度に人が一日に食事及び環境中から平均的に摂取したダイオキシン類の量は、体重1kg当たり約0.69pg-TEQと推定されました(図5-3-5、図5-3-6)※食事からのダイオキシン類の摂取量は0.68pg-TEQです。この数値は経年的な減少傾向から大きく外れるものではなく、耐容一日摂取量の4pg-TEQ/kg/日を下回っています。
ダイオキシン類対策は、「ダイオキシン対策推進基本指針」(以下「基本指針」という。)及びダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「ダイオキシン法」という。)の2つの枠組みにより進められています。
平成11年3月に策定された基本指針では、排出インベントリー(目録)の作成、測定分析体制の整備、廃棄物処理・リサイクル対策の推進などを定めています。
ダイオキシン法では、施策の基本とすべき基準(耐容一日摂取量及び環境基準)の設定、排出ガス及び排出水に関する規制、廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理に関する規制、汚染状況の調査、土壌汚染に係る措置、国の削減計画の策定などが定められています。
ダイオキシン法及び基本指針に基づき国の削減計画で定めたダイオキシン類の排出量の削減目標が達成されたことを受け、平成24年に国の削減計画を変更し、新たな目標として、当面の間、改善した環境を悪化させないことを原則に、可能な限り排出量を削減する努力を継続することとしました。我が国のダイオキシン類の排出総量は年々減少しており、平成23年における削減目標の設定対象に係る排出総量は、目標量を下回っており、排出削減目標は達成されたと評価されます(図5-3-7)。
ダイオキシン法に定める排出基準の超過件数は、平成23年度は大気基準適用施設で61件、水質基準適用事業場で1件、合計62件(平成22年度60件)で、前年度に比べ増加しました。また23年度において、法に基づく命令が発令された件数は、大気関係20件、水質関係0件で、法に基づく命令以外の指導が行われた件数は、大気関係2,030件、水質関係103件でした。
ダイオキシン類による土壌汚染対策については、環境基準を超過し、汚染の除去等を行う必要がある地域として、これまでに5地域がダイオキシン類土壌汚染対策地域に指定されています。これら5地域では、対策計画に基づく事業が完了しました。さらに、ダイオキシン類に係る土壌環境基準等の検証・検討のための各種調査を実施しました。
ア ダイオキシン類の測定における精度管理の推進
「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」又は「ダイオキシン類の環境調査に係る精度管理の手引き(生物検定法)」に基づいて実施するダイオキシン類の環境測定を伴う請負調査について、測定に係る精度管理を推進するために、申請に係る負担軽減に配慮しつつ、測定分析機関に対する受注資格審査を行いました。
イ 調査研究及び技術開発の推進
ダイオキシン法附則に基づき、臭素系ダイオキシン類の毒性やばく露実態、分析法に関する情報を収集・整理するとともに、臭素系ダイオキシン類の排出実態に関する調査研究等を進めました。
また、環境中でのダイオキシン類の実態調査などを引き続き実施しました。
農薬は、生理活性を有し、意図的に環境中に放出されるものであり、正しく使用しなければ、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあることなどから、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき規制されており、農林水産大臣の登録を受けなければ製造、販売等ができません。農薬の登録を保留するかどうかの要件のうち、作物残留、土壌残留、水産動植物の被害防止及び水質汚濁に係る基準(農薬登録保留基準)を環境大臣が定めています。
特に、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準は、個別農薬ごとに基準値を設定しており、平成24年度は、水産動植物の被害防止に係る登録保留基準について36農薬に基準値を設定し、29農薬を基準値設定不要としました。水質汚濁に係る農薬登録保留基準については59農薬に基準値を設定し、29農薬を基準値設定不要としました。
また、農薬登録保留基準について、国内外の知見や国際的な動向を考慮して、その充実を図るための検討を行いました。
特定農薬については、「特定防除資材(特定農薬)指定のための評価に関する指針」に基づき、個別資材の指定に向けた検討を行いました。
さらに、農薬の環境リスク対策の推進に資するため、農薬使用基準の遵守状況の確認、農薬の各種残留実態調査、農薬の生態影響調査、農薬の飛散対策に関する調査、農薬の吸入毒性に関する調査等を実施しました。また、「鳥類の農薬リスク評価・管理手法暫定マニュアル」の作成や「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル優良事例集」の作成など、農薬メーカーや地方自治体等において、適切なリスク管理措置が講じられるような取組を実施しました。
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