環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第5章>第2節 化学物質の環境リスク評価

第2節 化学物質の環境リスク評価

1 化学物質の環境リスク評価の推進

 環境施策上のニーズや前述の化学物質環境実態調査の結果等を踏まえ、化学物質の環境経由ばく露に関する人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれ(環境リスク)についての評価を行っています。その取組の一つとして、平成24年度に環境リスク初期評価の第11次取りまとめを行いました。この中では、18物質について健康リスク及び生態リスクの初期評価を行い、さらに追加5物質について生態リスク初期評価を行いました。その結果、健康リスク初期評価について1物質、生態リスク初期評価について2物質が、相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」と判定されました。

 なお、生態系に対する影響に関する知見をさらに充実させるため、経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインを踏まえて実施している藻類、ミジンコ、魚類等を用いた生態影響試験を、平成24年度は1物質について行いました。

 また、平成21年5月に化学物質審査規制法が改正されたことを受け、平成24年1月に優先評価化学物質のリスク評価手法について取りまとめ、順次、優先評価化学物質のリスク評価に着手しました。

 さらに、ナノ材料については、環境・省エネルギー等の幅広い分野で便益をもたらすことが期待されている一方で、人の健康や環境への影響が十分に解明されていないことから、国内外におけるナノ材料に対する取組に関する知見の集積を行うとともに、ナノ材料の生態影響と環境中挙動を把握するための方法論を検討しました。

2 化学物質の内分泌かく乱作用問題に係る取組

 化学物質の内分泌かく乱作用問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、環境中濃度の実態把握、試験方法の開発、生態系影響やヒト健康影響等に関する科学的知見を集積するための調査研究を、OECDにおける活動を通じた多国間協力や二国間協力など国際的に協調して実施しています。

 これまでの調査研究においては、魚類において、4物質で、環境中の濃度を考慮した濃度で内分泌かく乱作用を有することが推察されていますが、哺乳類においては、ヒト推定ばく露量を考慮した用量で、明らかな内分泌かく乱作用が認められた物質はありません。

 環境省では、平成22年に取りまとめた「化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応-EXTEND2010-」に基づき、これまでに得られた知見や開発された試験法を活用し、評価手法の確立と評価の実施のための取組を進めています。23年度は、一部の化学物質について試験管内試験や生物試験を実施しました。

 厚生労働省では、厚生労働科学研究において、小児や妊婦(胎児)など化学物質に対して脆弱と考えられる集団に関して、疫学調査を通じた知見の集積を継続するとともに、これら集団に特有の有害性発現メカニズムの解明を通じ、新たな毒性概念を確立し、これら高感受性集団に対する作用を検出可能な評価手法の開発に資する研究を推進しています。

 さらに、水環境中の内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査及び主要な下水道における流入・放流水の水質調査を引き続き実施しました。