環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

 平成25年3月15日に、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地球温暖化対策推進本部において「当面の地球温暖化対策に関する方針」が決定されました。この方針において、平成25年度以降、国連気候変動枠組条約の下のカンクン合意に基づき、平成32年(2020年)までの削減目標の登録と、その達成に向けた進捗の国際的な報告・検証を通じて、引き続き地球温暖化対策に積極的に取り組んでいくこととされました。まず、2020年までの目標について、本年11月の国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)までに、25%削減目標をゼロベースで見直すこととされました。その実現のための地球温暖化対策計画の策定に向けて、中央環境審議会・産業構造審議会の合同会合を中心に、関係審議会において地球温暖化対策計画に位置付ける対策・施策の検討を行うこととされました。この検討結果を踏まえて、地球温暖化対策推進本部において地球温暖化対策計画の案を作成し、閣議決定することとされました。

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 国土交通省、環境省、経済産業省の三省は、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)と相まって、都市の低炭素化を図り、もって都市の健全な発展に寄与することを目的として、都市の低炭素化の促進に関する法律案を提出し、平成24年9月に同法成立、同年12月に施行されました。

 環境負荷の小さいまちづくりの実現に向け、公共交通機関の利用促進、未利用エネルギーや自然資本等の面的活用を支援するため、CO2削減効果評価ツールの開発に向けた検討を行いました。

 都市整備事業の推進、民間活動の規制・誘導などの手法を組み合わせ、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 低炭素なまちづくりの一層の普及のため、温室効果ガスの大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆け的な取組にチャレンジする都市として、既存の13都市に加え、平成25年3月に新たに7都市(茨城県つくば市、新潟県新潟市、岐阜県御嵩町、兵庫県神戸市、兵庫県尼崎市、岡山県西粟倉村、愛媛県松山市)を環境モデル都市として選定しました(表1-3-1)。


表1-3-1 環境モデル都市一覧

 また、環境未来都市では、都市の低炭素化をベースに、環境・超高齢化等などを解決する成功事例を都市で創出し、国内外に展開して経済成長につなげることを目的としており、平成23年度に選定した被災地域6都市を含む11都市について、平成24年5月に環境未来都市計画を定めました(表1-3-2)。


表1-3-2 環境未来都市一覧

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路網の整備や高度道路交通システム(ITS)の推進等の交通流対策等を行いました。

 物流体系に関しては、モーダルシフト関連施策の推進を含め、荷主と物流事業者の連携による環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。

 再生可能エネルギーの導入に関しては、地域の住民等のステークホルダーで構成する協議会が主体となって地域主導による再生可能エネルギーの導入に向けた検討を行う取組や、東日本大震災の被災地において再生可能エネルギーを導入するための調査、調整等を支援しました。また、我が国初となる商用スケール(2MW)の浮体式洋上風力発電実証機の設置・運転に先立ち、平成24年度には実海域において、パイロットスケール(100kW)の小規模試験機の設置・運転を実施しました。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業分野等の事業者が行う省エネ効果の高い設備投資に対する補助を行いました。特に、平成23年度は節電効果の高い事業についても重点支援を行いました。

 産業界の中心的な取組である自主行動計画について、審議会による厳格な評価・検証を実施しました。2011年度(平成23年度)実績に基づく2012年度(平成24年度)の評価・検証では、福島第一原子力発電所事故に起因する原子力発電所の長期停止により、電力排出係数が前年度比で約2割程度悪化したため、CO2総量/原単位を目標とする業種においては、軒並み実績が悪化することとなりました。そのため、2011年度単年での目標達成業種は、全体としては減少しました。一方、電力排出係数を、電力事業者が目標を達成した場合に固定した際の実績に注目すると、目標達成業種は増加しており、従来からの各業種における技術革新、省エネ設備や高効率設備の導入、燃料転換、設備の運用改善などの取組が進展していることが分かりました。また、最終的な5ヶ年平均(2008~2012年度)での評価を見据えたこれまでの4ヶ年実績で評価した場合、未だに目標に達していない業種もあることから、これらの業種については、引き続き、目標達成を促すことが重要です。中小企業における排出削減対策の強化のため、中小企業の排出削減設備導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等(いずれの自主行動計画にも参加していない企業として、中堅企業・大企業も含む。)が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する国内クレジット制度、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、これら建設機械の取得時の融資制度を措置し、また世界で初となる建設機械の統一燃費測定手法及び燃費基準値を策定しました。

 ※国内クレジット制度については、制度開始以降、平成24年3月時点で、全国各地から提出された事業計画のうち1,037件が承認され、平成24年度末までに累計約154万トンCO2の排出削減が見込まれています。また、平成25年度以降の制度の在り方について、関係省庁で検討を実施し、平成25年度からは、オフセット・クレジット(J-VER)制度と統合した新たなクレジット制度「J-クレジット制度」として運営することとなりました。

 農林水産分野においては、バイオマスの利活用や食品産業の自主行動計画の取組を推進しました。また、施設園芸、農業機械における二酸化炭素排出削減対策を推進しました。

(イ)業務その他部門の取組

 エネルギー消費量が増加傾向にある住宅・ビルにおける省エネ対策を推進するため、建築材料等に新たにトップランナー制度を導入すべく、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する等の法律案を第183回国会に提出しました。また、建築物の省エネ基準について、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価する基準を策定するとともに、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の認定基準を策定しました。さらに、環境関連投資促進税制により、省エネ効果の高い窓、空調、照明等の設備から構成される高効率ビルシステムの普及の推進を行うとともに、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援のほか、環境不動産の形成を促進するための官民ファンドの設置等を行いました。トップランナー基準については、さらに個別機器の効率向上を図るため、対象を拡大するとともに、すでに対象となっている機器の対象範囲の拡大及び基準の強化を図りました。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施しました。

(ウ)家庭部門の取組

 消費者等が省エネルギー性能のすぐれた住宅を選択することを可能とするため、住宅等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)や住宅性能表示制度の充実・普及、「住宅事業建築主の判断の基準」に適合していることを表示する住宅省エネラベルの情報提供を実施しました。また、平成22年6月から「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」を開催し、住宅・建築物における取組について、住まいのあり方や住まい方を中心に、低炭素社会に向けた広範な取組と具体的施策の立案の方向性等の検討を進め、中間とりまとめの提示を行いました。また、住宅の省エネ基準について、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価する基準を策定するとともに、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の認定基準を策定しました。一定の省エネ基準を満たす住宅の新築・リフォーム等に対し、さまざまな商品等と交換できるポイントを発行する復興支援・住宅エコポイント事業やゼロエネルギー住宅の建設に対する支援等を実施しました。加えて、平成23年度より、各家庭のCO2排出実態やライフスタイルに合わせた、きめ細やかなアドバイスを行う家庭エコ診断制度の創設に向けた基盤整備を行っています。更に、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の利活用や削減アドバイスにより、家庭におけるエネルギー使用量の「見える化」を促進し、需要側にとって負担のないCO2削減に向け、検討を実施しました。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行うとともに、環状道路等幹線道路網の整備等の推進による交通流対策やLED道路照明灯の整備を実施しました。特に、乗用自動車燃費基準については、省エネ法のトップランナー制度に基づき、目標年度を2020年度(平成32年度)とする新たな燃費基準(2009年度(平成21年度)実績からの燃費改善率24.1%)を策定しました。また、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、モーダルシフトに要する経費の一部を補助する「モーダルシフト等推進事業」や国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備等を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による取組に対する支援を行いました。

 海上輸送については、海洋環境イニシアティブとして、国際海事機関(IMO)において船舶の燃費規制に係る条約改正(2011年(平成23年)7月採択、2013年(平成25年)1月発効)を主導するとともに、規制に対応する、船舶の革新的な省エネ技術の開発を支援しました。また、次世代内航船(スーパーエコシップ)の普及促進等に取り組みました。また、航空分野においては、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や環境にやさしい空港(エコエアポート)等を推進しました。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、ガスコージェネレーションやヒートポンプ、燃料電池など、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進により化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化を推進しました。

 また、農地からの一酸化二窒素等の排出量の削減に向け、有機質資材の施用に伴う一酸化二窒素発生量の調査等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象とされています。その排出抑制については、産業用途で削減が進んだこと等から大幅に目標を強化し、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画においては基準年総排出量比1.6%減の目標を設定しました。

 この目標に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、平成19年10月から施行された特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)の一部改正法に基づくフロン類回収の一層の徹底のため、引き続きフロン回収・破壊法の周知を行うとともに、都道府県における施行強化、「見える化」の一環としてのフロン量の二酸化炭素換算表示の導入を推進しました。また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 また、先導的な排出抑制の取組に対する補助の強化、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。

 さらに、産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会及び中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会の合同会議において、フロン類の製造、製品への使用、回収、再生・破壊といったフロン類のライフサイクル全体にわたる排出抑制に向けた取組について議論、平成25年3月に意見具申「今後のフロン類等対策の方向性について」が公表されました。この内容を踏まえて、フロン類対策の抜本的な強化に向け、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」が第183回通常国会に提出されました。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量1,300万炭素トン(基準年度総排出量比約3.8%)の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進等の総合的な取組を内容とする森林吸収源対策を展開しました。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。

2 横断的施策

(1)地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定・実施

 地球温暖化対策推進法に基づき、都道府県及び市町村は、京都議定書目標達成計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとされ、特に、特例市以上の地方公共団体は、4つの法定事項(再生可能エネルギーの利用促進、省エネルギーなどの事業者又は住民の活動の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進等の地域環境の整備及び改善、循環型社会の形成)を盛り込んだ地方公共団体実行計画の策定が義務付けられています。

 環境省としては、自治体職員向けの研修を実施するなどして、より多くの自治体が実効的な計画を策定・実施するよう取り組んでおり、平成24年10月1日時点で、特例市以上では82%、特例市未満では14%の自治体が計画を策定しました。

(2)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度により、フランチャイズチェーンも含む全国の一定規模以上の事業者による自らの温室効果ガス排出量等の算定・報告に向けて説明会等で周知を図るとともに、報告された排出量等を集計し公表しています。

(3)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、事業者が、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされており、こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した排出抑制等指針については、平成25年4月に産業部門(製造業)において策定しました。

(4)国民運動の展開

 地球温暖化防止のために政府が推進する国民運動「チャレンジ25キャンペーン」を引き続き展開しました。「チャレンジ25キャンペーン」では、オフィスや家庭などにおいて実践できるCO2削減に向けた具体的な行動を「6つのチャレンジ」として提案し、その行動の実践を広く呼びかけており、趣旨に賛同していただいたすべての個人、企業・団体に対し、「チャレンジ25キャンペーン」への参加・登録を呼びかけました。

 キャンペーンの一環として、東日本大震災を受けた電力需給のひっ迫を踏まえ、家庭及びオフィスにおける節電の具体的なポイントをホームページ等で呼びかけました。

 また、以下の取組を中心に各主体の協力を得てさまざまな呼びかけを行いました。

 「COOLBIZ(クールビズ)」「SUPER COOLBIZ(スーパークールビズ)」:夏期の冷房時の室温を28℃にしても快適に過ごせるビジネススタイル「クールビズ」の期間を5月~10月に延長するとともに、6月からは「スーパークールビズ」として、さらなる軽装の強化、ワークスタイルの変革の呼びかけを強化しました。また、スーパークールビズの一環として、一人一台のエアコンをやめ、涼しい場所をみんなでシェアする「クールシェア」を呼びかけました。

 「ライトダウンキャンペーン」:全国のライトアップ施設や家庭の照明を消す呼びかけを継続して実施しました。平成24年度は夏至、七夕(クールアースデー)を特別実施日としたほか、6月22日から7月7日までの間、広くライトダウンを呼びかけました。

 「WARMBIZ(ウォームビズ)」「WARM SHARE(ウォームシェア)」:冬期の暖房時の室温を20℃にしても快適に過ごせるビジネススタイル「ウォームビズ」について、「集まることであったまろう。暖房止めて外に出よう」をテーマに、"あったか忍者「あった丸」"をキャラクターとして、「衣食住」のあらゆる場面での工夫を提案し、暖房に頼りすぎずに快適に暖かく過ごす取組を広く呼びかけました。また、ウォームビズの一環として、みんなで暖かいところに集まったり、家庭の暖房を止めて、街に出かけることでエネルギー消費の削減になる「ウォームシェア」を呼びかけました。

 「smart move(スマート・ムーブ)」:"「移動」を「エコ」に。"をテーマに、よりCO2排出量の少ない「移動」にチャレンジする「smart move(スマート・ムーブ)~地球にやさしい移動にチャレンジ!」を提案し、エコなだけでなく、便利で快適に、しかも健康にもつながるライフスタイルを呼びかけました。

 「朝チャレ!(朝型生活にチャレンジ)」:朝から活動して夜には早く休み、夜遅くまで使用していたエアコン、テレビ、照明などの使用時間を減らすとともに、1日を有意義に健康的に過ごし、自分にも地球にとってもプラスの習慣を「朝チャレ!」と名付け、呼びかけを行いました。

(5)「見える化」等の推進

 温室効果ガス排出量の「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルにいたるまでのライフサイクル全体を通しての温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品・サービスに簡易な方法で分かりやすく表示する「カーボンフットプリント制度」の構築・普及等の取組を進め、平成23年3月末現在でPCR(商品種別算定基準)の数は73、認定商品数は469となっています。また、平成24年度は、算定されたCFPの値を活用してカーボン・オフセットを行う取組みの試行事業を実施したほか、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄などサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の見える化を促進するため、昨年度作成した当該排出量の算定方法に関するガイドラインに基づき、算定支援・優良事例収集、業種別解説の拡充を行いました。加えて、事業者の設備の導入・運用状況等を無料で計測・診断することで自主的なCO2削減や節電を促しています。さらに、前述した家庭エコ診断等において、各家庭における温室効果ガスの削減効果の把握を行いながら、家庭における「見える化」の促進を行いました。

(6)公的機関の率先的取組

 政府における取組として、地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」が旧実行計画を引き継ぐ形で平成19年3月に閣議決定されています。この新しい計画は、平成19年度から平成24年度までの期間を対象とし、平成22年度~平成24年度の平均の温室効果ガス排出量を、平成13年度比で8%削減することを目標としています。

 なお、平成23年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は144万トン(平成13年度値の27.7%減)でした。

 また、地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに、関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。

(7)税制のグリーン化

 「地球温暖化対策のための税」の導入や車体課税のグリーン化などの税制全体のグリーン化は、地球温暖化対策のための重要な施策です。

 税制のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照してください。

(8)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度(平成17年度)から、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、現在まで延べ389者が参加しています。

 2008年(平成20年)10月からは、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」を開始しました。2011年度(平成23年度)の目標を設定した80者のうち78者については、自らの排出削減に加えて排出枠の取引等も活用し、目標を達成しましたが、2者は目標未達成となりました。

 環境省では、平成22年4月に中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会を設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度の在り方について専門的な検討や論点整理を行い、同年12月に制度の在り方について中間整理を取りまとめました。

 また、経済産業省では、平成22年6月に産業構造審議会環境部会地球環境小委員会政策手法ワーキンググループを設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度を含む温暖化対策に関する各政策手法について検討し、同年9月に議論の中間整理を取りまとめました。

 平成22年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度について、地球温暖化対策の柱としつつ、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

 環境省では、閣僚委員会の方針で示された産業界に対する負担や雇用への影響等の課題について整理した「国内排出量取引制度の課題整理報告書」を平成24年3月に公表するとともに、中央環境審議会に報告しました。

 また、平成24年10月から「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討会」において、排出削減対策導入の阻害要因を分析するとともに、排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策について、国内排出量取引制度も含めて検討し、平成25年5月にその検討結果をまとめた「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討について」を公表しました。(ただし、「国内排出量取引制度の課題整理報告書」や「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討会」における国内排出量取引制度に係る検討は、関係省庁を含めた政府全体としての見解を取りまとめるものではなく、国内排出量取引制度の導入に関する議論等の方向性について何ら予断を与えるものではありません。)

(9)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

 「カーボン・オフセット」とは、市民、企業等が、[1]自らの温室効果ガスの排出量を認識し、[2]主体的にこれを削減する努力を行うとともに、[3]削減が困難な部分の排出量を把握し、[4]他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)の購入、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動の実施等により、[3]の排出量の全部又は一部を埋め合わせることにより、幅広い主体の自主的な温室効果ガス排出削減を促す仕組みです。カーボン・ニュートラルは、カーボン・オフセットの深化版として、より広い範囲の排出量を対象とし、全部を埋め合わせる仕組みです。適切なカーボン・オフセット(以下「オフセット」という。)の普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成20年2月)に基づき、以下を含むさまざまな取組を行っています。

(10)地球温暖化への適応策

 温室効果ガスを削減するための緩和策に加え、今後中長期的に避けることのできない温暖化によるさまざまな分野への影響に対処するため、影響の評価及び影響への適切な対処(=適応)を計画的に進めることが必要です。平成22年11月には、「気候変動適応の方向性」をとりまとめるなど、我が国における気候変動への適応策の着実な推進のため、気候変動の影響や適応策の実施に関する知見の取りまとめや、適応策実施にあたっての基本的な考え方の整理をしてきました。平成24年度は、我が国における温暖化の影響に関する最新の科学的知見をとりまとめた「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート」を策定しました。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定手法の改善等

 国連気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する技術の高度化及び有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池、蓄電池並びに二酸化炭素の回収及び貯留等に関連する技術の開発及び普及を促進しました。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、研究及び技術開発を強化しました。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、森林や農地土壌などの吸収機能向上技術の開発を推進しました。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進しました。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進しました。

 農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した生産安定技術の開発を推進しました。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。また、環境研究総合推進費では、平成22年度から、戦略プロジェクトである「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」を実施しています。

 また、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、平成21年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)から得られたデータを活用し、全球における月別及び地域別の二酸化炭素吸収排出量の推定結果や、二酸化炭素濃度の三次元分布推定データの一般公開を開始しました。さらに、観測精度の一層の向上を目指した「いぶき」の後継機の開発に着手しました。

4 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、我が国では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やオゾン層破壊物質の回収・破壊に関する日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。臭化メチルについては、「不可欠用途臭化メチルの国家管理戦略」に基づき、土壌病害虫の防除への利用は2012年(平成24年)で全廃し、収穫したくり果実の害虫防除への利用は2013年(平成25年)で全廃することとなっています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図1-3-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。

(3)フロン類の回収・破壊の促進

 我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、すでに全廃されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCは京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン回収・破壊法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。平成23年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-3図1-3-2のとおりです。


表1-3-3 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成23年度)

図1-3-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成23年度)

 平成19年10月に施行された改正フロン回収・破壊法には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が新たに規定され、これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知等、フロン類回収の一層の徹底を図っています。