環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第8節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

第8節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

1 経済的措置

ア 政府関係機関等の助成

 政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表6-8-1のとおりでした。


表6-8-1 政府関係機関等による環境保全事業の助成

イ 税制上の措置等

 平成23年度税制改正において、[1]環境関連投資促進税制の創設、[2]排出ガス規制新基準に適合した特定特殊自動車に係る課税標準の特例措置の創設、[3]国立公園特別保護地区等の生物の多様性の保全上重要な土地に係る税制上の特例措置の創設、[4]既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除等の見直し(※税額控除額の上限設定について見直しの上、適用期限を2年延長)、[5]低公害車用燃料供給設備に係る特例措置の延長(※対象から充電設備を除外)、[6]日本環境安全事業株式会社が取得する一定の不動産に係る非課税措置の延長等の措置を講じました。

 また、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成23年度税制改正では、「地球温暖化対策のための税」が盛り込まれたところですが、国会における審議の結果、この改正事項については見送られることとなりました。この改正事項については、平成24年度税制改正大綱において、地球規模の重要かつ喫緊の課題である地球温暖化対策を進める観点から、引き続き実現を図ることとされ、第180回国会において本税を盛り込んだ税制改正法案(租税特別措置法等の一部を改正する法律案)が可決・成立、「地球温暖化対策のための税」が導入されることとなりました。

 具体的な手法としては、広範な分野にわたりエネルギー起源CO2排出抑制を図るため、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税にCO2排出量に応じた税率(289円/t-CO2)を上乗せする「地球温暖化対策のための課税の特例」を設けるものです。この特例は、2012年(平成24年)10月1日から施行することとされており、その導入に当たっては、急激な負担増とならないよう、3年半かけて税率を段階的に引き上げるとともに、一定の分野については、所要の免税・還付措置を設けることとしています。併せて、燃料の生産・流通コストの削減や供給の安定化、物流・交通の省エネ化のための方策や、過疎・寒冷地に配慮した支援策についても実施することとしています。

ウ 地方公共団体における環境関連税の導入の動き

 地方公共団体において、環境関連税の導入の検討が進められています。例えば、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税について、平成23年4月末現在、27の都道府県で条例が制定され施行されました。税収は、主に産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てられています。

 また、森林環境税や森づくり税等名称こそ違え、森林整備等を目的とする税が31県において導入されています。例えば、高知県では、県民税均等割の額に500円を加算し、その税収を森林整備等に充てるために森林環境保全基金を条例により創設するなど、実質的に目的税の性格を持たせたものとなっています。

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入の推進

 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号、以下「グリーン購入法」という。)(図6-8-1)に基づく基本方針に即して、国等の各機関は、平成23年度の環境物品等の調達の推進を図るための方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。


図6-8-1 グリーン購入法の仕組み

 また、グリーン購入の取組をさらに促すため、最新の基本方針について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした説明会を全国10か所において開催しました。

 グリーン購入の推進のためには、各地域において行政、地元の事業者、住民等によるネットワークが組織されることが重要です。そこで、グリーン購入地域ネットワークの構築を推進するために、地方公共団体、消費者、事業者等に対し、情報提供や啓発のためのセミナーを全国3か所で開催しました。また、グリーン購入の取組が進んでいない地方公共団体等にも無理なくグリーン購入を始めてもらうために策定した「地方公共団体のためのグリーン購入取組ガイドライン」を活用し、普及・啓発を行っています。

(2)環境配慮契約(グリーン契約)

 平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号、以下「環境配慮契約法」という。)(図6-8-2)に基づき、国の各機関や独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体などの公的機関は、価格だけでなく環境負荷をも考慮した「環境配慮契約」を推進しています。


図6-8-2 

 環境配慮契約法に基づく基本方針(閣議決定)は、平成22年2月に見直されており、現在、電力の供給を受ける契約、自動車の購入等に係る契約、船舶の調達に係る契約、ESCO(省エネルギー改修)事業に係る契約、建築物に関する契約の5分野について、具体的な環境配慮の仕方や手続を定めています。国及び独立行政法人等は、基本方針にしたがって環境配慮契約に取り組む義務があり、機関ごとに契約の締結実績を公表し、環境大臣へ報告することになっています。

(3)環境ラベリング

 消費者が環境負荷の少ない製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベル等環境表示の情報の整理を進めました。日本で唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度では、ライフサイクルを考慮した指標に基づく商品類型を継続して整備しており、平成23年12月末現在、エコマーク対象商品類型数は49、認定商品数は5,099となっています。

 事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等については、各ラベリング制度の情報を整理、分類して提供する「環境ラベル等データベース」を引き続き運用・更新しました。また、グリーン購入法に基づく特定調達物品等の表示の信頼性を確保するため、「特定調達物品等の表示の信頼性確保に関するガイドライン」を見直し、説明会等を通じて、その普及・啓発に努めました。

 また、環境物品等を国際的に流通させてグリーン購入の取組を推進するためには、各国の環境ラベル制度における基準の共通化等が必要であるため、わが国のエコマークを中心に、各国環境ラベル間の相互認証に関する調査・分析を行いました。

(4)標準化の推進

 日本工業標準調査会(JISC)は、平成23年度は「JIS A5021 コンクリート用再生骨材H」などの環境JIS制定・改正を行うとともに、環境関連法令等の中での環境JISの位置づけを確認しながら、自治体・企業・消費者のグリーン購入等における環境JISの活用状況・ニーズの調査を踏まえ、個別具体的な環境JISの制定・改正・活用促進に向けた検討を行いました。

(5)ライフサイクルアセスメント(LCA)

 政府は、原材料採取から製造、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体で環境に与える影響を定量的に分析・評価するLCAの手法を活用して、製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガス排出量を算定し、消費者に分かりやすく表示するカーボンフットプリント試行事業を平成21年より実施し、平成23年3月末現在でPCR(商品種別算定基準)の数は73、認定商品数は469となっています。また平成24年度からの民間事業移行へ向けて、これまでの試行事業における成果や課題を踏まえた算定・表示のルールの見直しや事業者・消費者双方への制度理解促進に向けた取組等を実施し、カーボンフットプリント貼付商品販売の推進に取り組みました。また、国内のルール構築等を踏まえ、ISOにおける国際標準化の議論に貢献しました。

(6)家電エコポイント・住宅エコポイント

 地球温暖化対策の推進、経済の活性化及び地上デジタル放送対応テレビの普及を図ることを目的として、高い省エネ性能を持つエアコン、冷蔵庫及び地上デジタル放送対応テレビの購入に対し、多様な商品等と交換できるポイントを付与する家電エコポイント事業を実施しました。平成21年7月より申請受付を開始し、これまで約4,600万件を超える申請がありました。制度実施期間(平成21年5月~平成23年3月)における家電エコポイント制度等による省エネ家電製品の普及により、年間約270万トンのCO2削減効果があったと推計されています。

 また、一定の省エネ基準を満たすエコ住宅の新築、二重サッシ化や複層ガラス化などの窓の断熱改修、外壁や天井等への断熱材の施工といったエコリフォーム、及びエコリフォームに併せて設置する住宅設備(太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽)等に対して、多様な商品等と交換できるポイントを発行する住宅エコポイント事業を実施しました。平成22年3月より申請受付を開始し、平成24年2月末現在で約128万戸の申請がありました。なお、当初の想定を大きく上回る活用が図られ予算額に達する見込みとなったことから、ポイントが発行される工事の対象期間を5か月間短縮し、平成23年7月末までに変更しました。その後、平成23年10月から、東日本大震災の復興支援も目的として制度を再開し(復興支援・住宅エコポイント)、エコリフォームと併せて行うことでポイントの発行対象となる工事等に耐震改修やリフォーム瑕疵保険への加入を追加したほか、発行されたポイントの半分以上を復興支援商品に使うこととしました。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

 環境マネジメントシステムについて情報提供等を行い、幅広い事業者への普及を図りました。特に、中小企業向けに策定された「エコアクション21」(環境活動評価プログラム)については、「建設業」「産業廃棄物処理業」など、特定の業種に対応した業種別のガイドラインを策定しました。また、中小企業への環境マネジメントシステムの普及を図るため、環境マネジメントシステムの認証登録を要件とする低利融資制度により、事業者のエコアクション21の認証取得及びそれに伴う環境対策投資の支援等を実施しました。平成24年3月末現在、環境マネジメントシステムISO14001の認証登録件数は約2万件、エコアクション21の認証登録件数は約7千件です。

(2)環境会計

 環境会計については事業者による効率的かつ効果的な環境保全活動の推進に資するため、さらなる環境会計の促進と質の向上に向けて環境会計ガイドライン改訂の検討を実施しました。

 企業経営に役立つ環境管理会計の一手法であり、廃棄物削減と生産性向上を同時に実現するマテリアルフローコスト会計については、普及・促進のため、普及事業の拠点となる事業者団体等におけるセミナー等の開催、導入実証事業と普及指導を担う人材育成のためのインターンシップ事業を実施しました。また、平成20年3月にISOにおいて承認されたマテリアルフローコスト会計の国際標準規格化については、わが国が議長及び幹事を務める作業部会ISO/TC207/WG8にて議論されており、わが国の主導により、平成23年9月に国際規格(ISO 14051)としてISO発行され、日本工業規格(JIS)についても平成24年3月に、JIS Q14051(環境マネジメント-マテリアルフローコスト会計-一般的枠組み)を制定・公示しました。

(3)環境報告書

 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)では、環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人に対する環境報告書の作成・公表の義務付け等について規定しています(図6-8-3)。環境報告書の作成・公表及び利用活用の促進を図るため、環境配慮促進法に基づく特定事業者の環境報告書を一覧できるサイトとして「もっと知りたい!環境報告書」を運用しました。また、民間企業・団体の環境報告書を検索可能な形で搭載したサイトとして「環境報告書プラザ」を運用しました。


図6-8-3 

 また、環境報告書作成にあたっての実質的な手引きである環境報告ガイドラインについて、さらなる情報開示の促進と質の向上に向けた改訂の検討を実施しました。環境報告書の表彰制度である環境コミュニケーション大賞において、優れた報告書の表彰を行いました。さらに、戦略的環境経営と情報開示をテーマに環境コミュニケーションシンポジウムを開催するなど、引き続き環境報告書に関する取組を支援しました。

(4)公害防止管理者制度

 工場における公害防止体制を整備するため、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)によって一定規模の工場に公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。

 同法に基づく公害防止管理者等の資格取得のため、昭和46年度以降国家試験が毎年実施されており、平成23年度の合格者数は6,220人、これまでの延べ合格者数は33万3,413人です。

 また、国家試験のほかに、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者が公害防止管理者等の資格を取得するには、資格認定講習を修了する方法があり、平成23年度の修了者数は2,103人、これまでの修了者数は26万1,794人です。

(5)効果的な公害防止の取組の促進

 近年の環境問題の多様化や激甚な公害の対応を担ってきた職員の退職等を背景として、公害防止対策を取り巻く状況が変化しており、こうした中で、昨今、排出基準の超過や測定データの改ざん等が明らかになっており、事業者や地方公共団体における効果的な公害防止対策の推進の必要性が高まっています。

 このような状況を踏まえ、改正された大気汚染防止法及び水質汚濁防止法が平成23年4月に全面施行され、事業者による測定結果の保存が新たに義務付けられるとともに、測定結果の未記録や改ざん等への罰則が強化されました。また、水質汚濁防止法については、事故時の措置の対象物質として新たに52の指定物質を定めるなど拡充がなされました。

 また、平成22年1月の中央環境審議会答申(「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について」)を踏まえ、事業者や地方公共団体が公害防止を促進するための方策等の検討を行い、公害防止のための新しい地域とのパートナーシップに関する指針を策定中です。

(6)温室効果ガスの有効化審査員・検証員の力量に関する標準化

 温室効果ガスの有効化審査員・検証員の力量に対する要求事項に関する国際規格(ISO14066)の平成23年4月発行をうけて、日本工業規格(JIS)を平成24年3月に発行しました。

(7)ICT利活用による環境負荷軽減の効果の評価手法

 ICT利活用による環境負荷軽減の効果を評価するもののうち、平成24年3月にICTサービス等を構成するハードウェア資源、消費するエネルギーや物量に伴うCO2排出量を、「物の消費」や「人・物の移動」等「8つの活動項目」に整理し、それぞれ「原材料取得」「製造」「使用」「廃棄/リサイクル」にいたるライフサイクル全体にわたって算出する「ICT製品・ネットワーク・サービスの環境影響評価手法(L.1410)」がITU-T勧告として採用されました。

4 環境金融の促進

(1)環境投融資に係る支援

 環境に配慮した事業活動を行う事業者を支援するため、環境面からのスクリーニング手法を用いた金融機関が行う低利融資について、温暖化防止の観点から利子補給を実施しました。また、日本政策金融公庫より、大気汚染対策や水質汚濁対策、廃棄物の処理・排出抑制・有効利用、温室効果ガス排出削減、省エネ、エコアクション21等の環境対策に係る融資施策を引き続き実施しました。そのほか、低炭素機器をリースで導入した場合に、リース事業者に対してリース料の助成を実施しました。

 なお、金融機関が自主的に策定した「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」について事務局として支援を行いました。

(2)投資判断に資する企業の環境情報開示等

 投資判断に資する、企業の環境情報の提供促進について検討を行うとともに、環境報告ガイドラインの改訂へ反映を行いました。

5 その他環境に配慮した事業活動の促進

(1)地域等での環境に配慮した事業活動

 環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境と経済の好循環が実現する持続可能な社会を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

 わが国の環境ビジネスの市場・雇用規模については、環境省の調査によれば、平成22年の市場規模は約69兆円、雇用規模は約185万人となっています(表6-8-2)。前年(平成20年)はそれぞれ約67兆円、約180万人と推計されており、市場規模、雇用規模ともに増加傾向が示唆され、金融危機後の回復基調がその一因と考えられます。


表6-8-2 環境ビジネスの市場規模及び雇用規模の現状

 地域における企業、NPOや自治体の関係者が一体となって、地域の特性を活かしながらコミュニティの環境配慮活動を活性化する「環境配慮活動活性化ビジネス」を発掘し、その展開を支援しました。

(2)エコ・アクション・ポイント

 環境省では、経済的インセンティブを付与することで国民一人ひとりの環境配慮行動(エコアクション)を促す取組を進めるため、環境配慮型の商品・サービスの購入・利用や省エネ行動によりポイントが貯まり、様々な商品等と交換できる仕組みである「エコ・アクション・ポイント」のモデル事業を平成20~22年度に実施してきましたが、平成23年度からは、民間事業者が主体となり、全国のあらゆる業種・業態の事業者が参加できる仕組みが構築されています。平成23年度は、3年間のモデル事業の実績・課題等を検証し、また、プログラム運用のチェック・評価を行うことで、今後の改善に向けた検討・提言を行いました。

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)農林水産業における取組

 環境と調和のとれた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着を引き続き推進しました。さらに、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の認定促進や、環境と調和のとれた持続的な農業生産を推進するために必要な共同利用機械・施設、土壌・土層改良等の整備に関する支援を引き続き行いました。新たに21年度から、エコファーマーの技術や経験の交流を図るための全国ネットワーク化を支援しました。

 また、化学肥料、化学合成農薬の5割以上低減する取組とセットで行う地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に対する支援を行うとともに、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づく有機農業の推進に関する基本的な方針に即し、産地の販売企画力、生産技術力強化、販路拡大、栽培技術の体系化の取組等の支援、施設の整備に関する支援を行いました。

 畜産業において発生する家畜排せつ物からの環境負荷を低減するため、たい肥化施設等の施設整備を推進し、家畜排せつ物法に基づく適正な管理を確保するとともに、たい肥化による農業利用や、エネルギー利用等の一層の推進を図りました。

 森林・林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理、炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の推進に引き続き努めました。

 水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理や資源回復計画に基づく取組を支援しました。また、沿岸域の藻場干潟の造成等、生育環境の改善を実施しました。養殖業については、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進するとともに、種を組み合わせた養殖による環境負荷低減技術の開発を進めました。

(2)運輸・交通

 運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化の指導等を実施しました。また、同法による車種規制の円滑な施行を図るため、担保要件の緩和を含む政府系金融機関による低利融資等の普及支援策を講じました。

ア 低公害車の開発等

 次世代低公害車の技術開発としては、ディーゼルエンジンの高い熱効率を維持したまま排出ガスの低減を図ることを目的とした予混合圧縮燃焼エンジン技術、革新的後処理システム技術の開発を進めるとともに、低公害性の抜本的な改良を目指すジメチルエーテル自動車、非接触給電ハイブリッド自動車等の開発を進め、実証走行試験等を実施しました。

 また、交通分野において、早期に実用化が必要かつ可能なエネルギー起源二酸化炭素の排出を抑制する技術の開発及び実証研究として、配送用トラックのEV化や小型ソーラー水素ステーションと燃料電池車を組み合わせたCO2排出ゼロシステムに係る技術開発等を行いました。

 さらに、車両導入に対する各種補助、自動車税のグリーン化及び自動車重量税・自動車取得税の時限的免除・軽減措置等の税制上の特例措置並びに政府系金融機関による低利融資を講じ、低公害車のさらなる普及促進を図りました。

イ 交通管理

 新交通管理システムUTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。また、交通公害低減システムEPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、3メディア対応型道路交通情報通信システムVICS)車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。

 また、都市部を中心に各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システムPTPS)の整備等を推進しました。また、都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、違法駐車の取締りの強化、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の運用等のハード、ソフト一体となった駐車対策を推進しました。

ウ 公共交通機関利用の促進

 自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進するため、バスを中心としたまちづくりを行うオムニバスタウンの整備推進、バス・鉄道共通ICカードの普及促進、バスロケーションシステムの普及促進、ノンステップバスの導入促進等、バスの利用促進策を講じました。また、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行う一方、都市鉄道新線の整備、複々線化等の輸送力増強による混雑緩和や、速達性の向上を図りました。さらに、貨物線の旅客線化、駅施設や線路施設の改良など既存ストックを有効活用するとともに、乗継円滑化等に対する支援措置を講じることや駅のバリアフリー化を推進することにより利用者利便の向上策を講じました。

 また、通勤交通グリーン化の推進のため、事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度の普及・促進を図り、406事業所を認証するなど、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。