環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第4節 国際的な循環型社会の構築

第4節 国際的な循環型社会の構築

ア G8における3Rイニシアティブの推進

 2008年(平成20年)5月に、神戸でG8環境大臣会合が開催され、今後G8各国が3Rの一層の推進に向けて取り組む具体的な行動が列挙された「神戸3R行動計画」が合意されました。当該計画は、同年7月に北海道洞爺湖で開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいて、G8各国の首脳間でも支持されました。また、G8環境大臣会合の際には、日本として、アジア等における循環型社会の構築に向けて進めていく国際的取組を列挙した「新・ゴミゼロ国際化行動計画」を発表しました。

 2011年(平成23年)5月にドーヴィル(フランス)で開催されたG8サミットでは、首脳宣言において「神戸3R行動計画」への支持が再確認され、同年5月にOECDが発表した神戸3R行動計画に基づく報告書「G8及びOECD諸国における資源生産性」が歓迎され、OECDがこの問題に引き続き取り組むことが奨励されました。

イ アジアにおける取組

(ア)アジア3R推進フォーラム

 わが国の提唱により、アジアでの3Rの推進に向け各国政府、国際機関、援助機関、民間セクター、研究機関、NGO等を含む幅広い関係者の協力の基盤となるものとして、2009年に「アジア3R推進フォーラム」が設立され、同フォーラムの下で、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援の促進、3R推進に役立つ情報の共有、関係者のネットワーク化等を進めることとなりました。わが国は2009年の同フォーラム設立会合を東京で開催し、それ以降、同フォーラム会合を開催国政府、国連地域開発センターとともに主催してきました。

 2011年10月には同フォーラムの第3回会合がシンガポールで開催され、その成果文書として議長サマリー及びシンガポールフォーラム提言が採択されました。次回はベトナム政府と協力し、第4回会合を開催する予定となっています。

 また、多様な主体同士での国際的な連携を目指し、アジア3R推進フォーラムの会合と連携してアジアのNGO/NPOが開催する「アジア3R推進市民フォーラム」を支援しています。

(イ)二国間協力

 わが国は、ベトナム、インドネシアなどにおいて、国連地域開発センター(UNCRD)、国連環境計画UNEP)及び地球環境戦略研究機関IGES)と連携して、国別の状況に応じて3Rを国家として推進するための計画・戦略の策定を支援しています。

 2009年度はベトナムにおいて、2010年度はバングラデシュにおいて国家戦略が策定されました。

 中国との間では、2009年(平成21年)6月に、日本国環境大臣と中国環境保護部長が、川崎市と中国・瀋陽市による循環経済の発展を通じた環境にやさしい都市構築の協力を支援する覚書を締結しました。それ以降、協力事業として、瀋陽市へのリサイクル事業展開の実現可能性調査を実施するとともに、日本の3Rの取組を紹介するワークショップを中国・瀋陽市等において開催する等の協力を行っています。

 また、インドネシアとの間では、2010年にインドネシア環境省と固形廃棄物、有害・毒性廃棄物管理の分野における協力覚書を交わし、同国における有害廃棄物処理システムの構築に向け、有害・毒性廃棄物の発生・処理状況調査やジャワ島東部における有害廃棄物処理システムの実現可能性調査の実施等の協力を行っています。

 さらに、マレーシアとの間では、2010年にマレーシア住宅・地方自治省との食品廃棄物管理における協力に関する書簡の交換を行い、同国における「食品廃棄物管理に関する国家戦略計画」の策定に向け、わが国の技術的知見の提供等の支援を行っています(図3-4-1)。


図3-4-1 3R・廃棄物対策に関するアジア各国との二国間協力

(ウ)3Rに関する情報拠点・研究ネットワークの整備

 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)と共同してアジア全体における循環型社会構築に向けた政策の立案・実施に役立つ知見の提供を目的とした国際共同研究を行っています。

(エ)日中韓三カ国環境大臣会合TEMM)の下での取組

 日中韓サミットや日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)等を通じて、東アジア地域における循環型社会構築に向けた協力を深めています。TEMMの下で2011年(平成23年)4月には第6回循環経済/3R /循環型社会セミナーを開催し、各国3R推進施策の状況、使用済自動車の資源循環システム、有害廃棄物の越境移動に関する協力の検討などを行いました。

(オ)川崎市と瀋陽市の環境にやさしい都市構築に関する協力

 2009年(平成21年)6月に、日本国環境大臣と中国環境保護部長官は、川崎市と中国・瀋陽市による循環経済産業の発展を通じた環境にやさしい都市構築の協力を支援する覚書を締結しました。2011年(平成23年)3月には、協力事業の一環として、環境省は中国国家環境保護部とともに、循環型社会構築に関する政策、技術の情報共有を目的としたワークショップを中国・北京市と瀋陽市において開催しました。

(カ)アジアにおけるリサイクルビジネス展開可能性調査

 わが国企業によるアジアでのリサイクルビジネス展開を促進させることを目的として、アジア各国における、法制度、市場規模、収益性及び事業リスク等を調査・分析し、リサイクルビジネス展開の可能性調査を行っています。

 2011年度は、タイ国での電炉ダストリサイクル事業と廃家電等の電気電子機器廃棄物のリサイクル事業について、インドネシアでは工場廃棄物(非鉄金属系)のリサイクル事業について調査を実施しました。

(キ)アジアエコタウン協力(循環型都市協力)

 2007年度から実施してきたアジアエコタウン協力事業は、わが国がエコタウン整備を通じて蓄積した経験・ノウハウを、自治体間協力の枠組みの下アジア各国に移転しつつ、わが国リサイクル産業の海外展開を支援するものです。2010年度には、中国において北九州市-大連市、茨城県-天津市、福岡県-江蘇省との間で事業実施可能性調査、人材育成事業等を実施しました。また、中国以外のアジア各国へも協力を拡大し、秋田県-タイ、秋田県-マレーシアとの間で協力事業を実施しました。

(ク)リサイクル技術に関する協力の実施

 各地域で直面している廃棄物・リサイクル問題を解決するため、わが国のリサイクル技術・システムを活用した実証事業を実施しました。2011年度には、2010年度から引き続き、大連市においてセメントキルンを利用した廃棄物リサイクル実証事業を実施しました。

ウ 静脈産業の海外展開の促進

 2011年度(平成23年度)より、わが国静脈産業が海外において事業展開することを支援し、世界規模で環境負荷の低減を実現するとともに、わが国経済の活性化につなげるため、「日系静脈産業メジャーの育成・海外展開促進事業」を実施しています。

 具体的には、基盤戦略策定、わが国静脈産業による海外展開計画事業についての実現可能性調査(FS)等への支援、海外情報の収集と国内事業者への提供、事業者・地方公共団体・関係団体等による情報共有・意見交換を行うフォーラムの開催、わが国静脈産業及び技術に関する海外への情報発信等を行っています。

エ 有害廃棄物の適正な管理

 有害廃棄物の輸出入等の規制を適切に実施するため、2004年度から毎年度環境省が主宰する「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」の活動を開始し、アジア各国のバーゼル条約担当官と税関職員、関係国際機関との対話促進や連携強化のための取組を行っています。さらに、アジア太平洋地域のE-waste及びコンピュータ機器廃棄物の環境上適正な管理、有害廃棄物の環境上適正な管理に関するガイドライン策定等、バーゼル条約の下で各国が進めるプロジェクトについて、財政的・技術的支援を行っています。

オ 国連との協力

 1992年の地球サミットで採択された「アジェンダ21」の実施状況を年次計画に基づいて評価している国連持続可能な開発委員会CSD)では、平成22年(2010年)から平成23年(2011年)の2年間に「廃棄物管理」がテーマの一つとして取り上げられました。CSDの議論に積極的に貢献するため、環境省は国連と共同で、2010年3月と2011年2月にCSD会期間会合として「国連持続可能な廃棄物管理会議」を東京で主催しました。2011年の会議では「地方自治体の廃棄物管理サービスを拡大するための国際パートナーシップ(IPLA)」の設立が合意され、同年5月に開催されたCSD第19会期(CSD19)のサイドイベントにおいて正式に発足しました。

カ その他の取組

 OECDにおいて進められている物質フロー及び資源生産性のプロジェクトを重視し、積極的に議論をリードしています。また、国連環境計画(UNEP)が、天然資源の利用による環境への影響の科学的評価などを目的に2007年に設立した「持続可能な資源管理に関する国際パネル」についても、資金拠出や科学的知見の提供等の支援を行うとともに、同パネルの報告書等の成果を国内に普及啓発するための公開セミナーを開催しています。


循環型社会の形成に向けた国民、民間団体等の取組事例


 現在、さまざまな取組が進められていますが、ここでは、3R活動推進フォーラム(※1)並びに環境省が主催する「循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰」、リデュースリユースリサイクル推進協議会(※2)が主催する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」における内閣総理大臣賞において平成23年度に表彰された、民間団体における先進的な取組事例を紹介します。

※1 3R活動推進フォーラム

 平成18年1月設立した「3R活動推進フォーラム」は、地方公共団体や民間団体を会員とし、3Rに関する社会的取組や先進的技術による取組をさらに進め、循環型社会への変革を強く意識した3R活動を一層推進しています。平成23年度は、「第6回3R推進全国大会」を環境省、京都市と共催し、展示会等のイベントを通して3R施策の普及啓発を行いました。大会式典で環境大臣表彰を行った3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から約8千点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しています。10月の3R推進月間では環境省、経済産業省と共同で「環境にやさしい買い物キャンペーン」を実施し、全国の都道府県や流通事業者・小売事業者の協力を得て、環境に配慮した商品の購入、マイバッグ持参など3R行動の実践を呼びかけました。また、循環型社会の形成や食品リサイクルを推進したすぐれた取組などの環境大臣表彰の推薦、わが国の3R制度・技術・経験の変遷についての調査研究を実施するとともに、これら3Rに関する情報をホームページやメールニュース等により、全国に提供しています。

※2 リデュース・リユース・リサイクル推進協議会

 行政・消費者・産業界等が連携してリサイクルを推進することを目的に、平成3年9月「リサイクル推進協議会」として設立されました。平成14年6月に、これからの資源・廃棄物問題に対処するにはリサイクルのみならず3R(リデュース・リユース・リサイクル)を通じた循環型社会の構築が必要であることを踏まえ、「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会」と改称し、3R推進のための啓発・普及活動を実施しています。

1 循環型社会形成推進功労者等環境大臣表彰

 循環型社会形成推進功労者表彰は、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の適切な推進に顕著な功績があった個人、企業、団体を表彰し、その功績をたたえて、循環型社会の形成の推進に資することを目的として、平成18年度から実施しています。

 平成22年度の受賞者数は、5個人、11団体、13企業の計29件であり、平成23年10月に、京都市で開催された「第6回3R推進全国大会」式典において、表彰式が行われました。以下では、表彰された取組の数例を紹介します。

(1)平成23年度循環型社会形成推進功労者・3R活動推進功労(団体)

 大垣市環境市民会議(岐阜県大垣市)

 レジ袋を辞退することでポイントが付与される市内共通で使用できるポイントカードを作成し、ポイントを貯めると植樹ができる運動や段ボールコンポストによる生ごみの堆肥化やその講座を小学校などで実施するなどの活動を行っています。

(2)平成23年度循環型社会形成推進功労者・3R活動優良企業(企業)

 日本電気株式会社玉川事業場(神奈川県川崎市)

 製造年月日、壊れていないなどの条件を設定し、買取りサービスを実施し、パソコンの修理再生、販売、使用済自社製品の回収、リサイクル、社員食堂から発生する生ごみのコンポスト堆肥化など、廃棄物削減活動に取り組んでいます。

2 リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰

 リデュースリユースリサイクル推進協議会では毎年、3R(リデュース・リユース・リサイクル)に率先して取り組み、顕著な実績を挙げている方々を表彰し、これらの活動を奨励することを目的に「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」を実施し、「内閣総理大臣賞」を含む関係省庁大臣賞を交付しています。

 平成23年度内閣総理大臣賞

 受賞者名:広島県福山市立千年小学校(広島県福山市)

 受賞テーマ:人と人とのふれあいを通じ、自然の大切さ、資源の大切さ、環境を守る大切さを学習し、身近な生活の中で実践できる環境保全の活動(食品トレー回収活動、牛乳パックやダンボールの古紙回収活動など)や、自然豊かな地域の特性を活かした環境教育を、学校並びに保護者、地域が常に連携し絆を深め、学びあい・みがきあい・ひびきあい、そして支えあいながら実践しています。