環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第3節 循環型社会を形成する基盤整備

第3節 循環型社会を形成する基盤整備

(1)財政措置等

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、循環型社会の形成を推進するための経費は、平成23年度当初予算額で約2,029億7,554万円となっています。

(2)循環型社会ビジネスの振興

ア 循環型社会ビジネスの振興へ向けた取組

 グリーン購入ネットワークなどとも連携しながら、グリーン購入法に基づく環境物品等の調達の促進を進めています。同法に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」に定められる特定調達品目(国等の各機関が重点的に調達を推進する調達物品等の種類)及びその判断の基準等については、適宜見直しを行っていくこととしており、平成23年には、「自動車」、「印刷」、「LED照明器具」、「電球形状のランプ」等に関する判断の基準の拡充を図るなど、15品目の見直しを行いました。

 また、地方公共団体のグリーン購入の取組を促進するため策定したグリーン購入取組ガイドラインについて普及を行っています。

 優良な廃棄物事業者の育成を図り、「悪貨が良貨を駆逐しない」環境整備に取り組んでいます。平成23年度は、産業廃棄物処理業の優良化を一層推進するため、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)の対象契約に産業廃棄物の委託を追加すべく、優良産廃処理業者認定制度の認定事業者を積極的に評価する検討を開始しました。また、優良な産業廃棄物処理業者の積極的な情報発信等の支援策の充実を図っています。

(3)経済的手法の活用

 平成12年4月施行の地方分権一括法によって、課税自主権を尊重する観点から法定外目的税の制度が創設されたことなどを受け、廃棄物に関する税の導入を検討する動きが各地で見られます。

 環境省の調査によると、平成23年4月現在、47都道府県中27道府県(三重、鳥取、岡山、広島、青森、岩手、秋田、滋賀、奈良、山口、新潟、宮城、京都、島根、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、宮崎、熊本、福島、愛知、沖縄、北海道、山形、愛媛)及び政令市60市中1市(北九州)において、産業廃棄物に係る法定外目的税の条例が制定されています。

(4)教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成

 インターネットを利用する若い世代に対し、恒常的に周知徹底を図るため、WEBマガジン「Re-Style」(PC版:Re-Style(PC版)(別ウィンドウ)、携帯版:Re-Style(携帯版)(別ウィンドウ))を運営し、循環型社会の形成に関する最新データやレポート等の掲載、循環型社会基本計画の周知及び循環型社会に向けた多様な活動等の情報発信を行い、国民、民間団体及び事業者等における活動の促進を図っています。

 経済産業省では、生活者が自ら積極的に3Rに取り組むことを分かりやすい形で促進するため、子どもから大人まで対象にした普及啓発用DVD「レッツゴー3R」等の貸出等を実施しました。また、容器包装リサイクル教材等3R教育に資する教材の地域における学習拠点への設置や貸出を実施するとともに、企業・団体等が行っている3R教育に役立つ取組を紹介した取組事例集を広く配布しました。

 また、学校における環境教育の推進を図るため、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)協力校の指定を行いました。さらに、文部科学省と環境省の連携・協力の下、「環境教育・環境学習データベース」において情報の整理・提供を行うとともに、環境教育を担当する教員等の資質能力の向上のため「環境教育リーダー研修」を実施しました。

(5)調査の実施・科学技術の振興

 循環型社会形成推進科学研究費は、平成23年度から環境研究総合推進費と統合し、「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」(中央環境審議会答申)に沿った競争的資金の活用により、平成23年度は104件の研究事業及び9件の技術開発事業を実施しました。

 研究事業については、資源生産性や有害物質対策の観点から、早期の技術開発が期待されている「使用済み製品等、廃棄物からのレアメタル回収技術に関する研究」や「3R推進のための研究」、「廃棄物系バイオマス利活用推進のための研究」、「循環型社会構築を目指した社会科学的複合研究」等を重点テーマとし、廃棄物をとりまく諸問題の解決とともに循環型社会の構築に資する研究を推進しました。

 技術開発事業については、日系静脈産業メジャーの海外展開に資する次世代廃棄物処理技術開発として、「熱利用の推進に関する技術開発」、「廃棄物の処理・リサイクル技術の高度化・低コスト化」等を重点テーマとし、途上国でも利用可能な廃棄物処理等に係る技術の開発を図りました。

 また、農林水産省においては、国産バイオマスエネルギーの生産コストを大幅に低減するため、バイオ燃料製造技術の開発を加速化するとともに、バイオマスマテリアル製造技術の開発、バイオマス循環利用モデルの構築、藻類の利用技術の開発等を推進しました。

 省・脱レアアース・レアメタルの取組として、経済産業省では、平成22年度補正予算で[1]代替材料の開発及び使用量削減のための技術開発、[2]リサイクル、[3]ユーザー企業への設備投資支援等のレアアース総合対策を実施し、ユーザー企業の日本国内での安定的な生産活動をサポートしてきました。その結果、研磨剤や自動車の排ガス触媒等、いくつかのサプライチェーンにおいて、省レアアースや脱レアアース、更には供給源の多様化が実現できたところです。引き続き、平成23年度第三次補正予算を活用し、供給リスクが高いレアアースであるジスプロシウムを中心に、国内のレアアース・レアメタルユーザー企業の安定操業に対する対策を講じています。具体的には、レアアース等の直接的なユーザーである磁石メーカー等の素材メーカーに加え、国内すべての自動車用小型モーターメーカーの協力のもとに、レアアースの使用量削減・代替材料技術開発や省・脱レアアース部素材への代替に伴って必要となる製品設計開発及びリサイクルの事業化に必要な開発等の支援を実施しており、今後、HV、PHV、EVを始めとする次世代自動車や、洋上風力発電等の増加に伴い、レアアース磁石の需要拡大が見込まれる状況において、ジスプロシウムの使用量削減を加速する取組を行っております。

 文部科学省と経済産業省は連携して、「元素戦略/希少金属代替材料開発プロジェクト」を推進しています。文部科学省は「元素戦略プロジェクト」の中で、物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し利用する観点から、希少元素をユビキタス元素で代替し新しい材料の創製につなげる研究開発を推進しています。一方、経済産業省は、「希少金属代替材料開発プロジェクト」で、液晶パネル等に使用される透明電極向けインジウム、希土類磁石向けジスプロシウム及び超硬工具向けタングステンの代替/使用量低減に向けた技術開発に着手しました。

 また、文部科学省は太陽光で水を分解して水素を得る光触媒の開発や、セルロースなど植物の非可食部位を分解し糖に変換する固体酸触媒の開発を進めています。さらに、経済産業省では、環境制約、資源制約克服を目指し、都市資源の大規模・高効率回収、再資源化を推進するため、使用済製品の混合破砕プラスチックを素材別に高速自動識別する技術開発等を助成しました。

 国立環境研究所においては、第3期中期計画(計画期間:平成23年度から27年度)に掲げられた重点研究プログラムの一つである「循環型社会研究プログラム」の着実な実施を図りました。特に東日本大震災に対応して、災害廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物等に関する緊急的な調査研究を実施しました。

(6)施設整備

 近畿圏においては、「広域臨海環境整備センター法」(昭和56年法律第76号)に基づき大阪湾フェニックス計画が推進されており、尼崎沖処分場、泉大津沖処分場、神戸沖処分場に加え、平成21年10月からは大阪沖処分場において近畿2府4県内の168市町村(平成24年1月11日現在)から排出される廃棄物を受け入れています。

 港湾における廃棄物処理対策として、平成23年度は、20港において廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施しました。また、資源のリサイクルの促進のため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を平成6年度に開始し、平成23年度は小名浜港において建設発生土の受入れを実施しました。

(7)不法投棄等の未然防止・拡大防止対策及び残存事案対策

 不法投棄等の未然防止・拡大防止対策として、廃棄物処理法の厳格な適用を図るとともに、平成19年度から毎年度5月30日から6月5日までを「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」として設定し、国と都道府県等とが連携して、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動等の取組を一斉に実施しています。また、ITを活用した不法投棄等監視体制の整備、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインの運用をするとともに産業廃棄物の実務や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等現場へ派遣し都道府県等による行為者等の責任追及の支援等を行いました。

 残存事案対策としては、平成10年6月16日以前に生じた産業廃棄物の不法投棄等事案を対象とする産廃特措法についてはその期限が平成24年度末となっています。また、平成10年6月17日以降に生じた産業廃棄物の不法投棄等事案を対象とする廃棄物処理法に基づく支援についても、引き続き産業界からの理解と協力を確保することが必要となっています。このため、全国の残存事案についての詳細調査の結果も踏まえ、産廃特措法の延長も含め、生活環境保全上支障等がある事案に対する今後の財政的支援のあり方について、検討を進めています。

(8)その他の政府の取組

ア ゼロ・エミッション構想の推進

 地域における資源循環型経済社会の構築を目的に、環境省及び経済産業省が連携して実施している「エコタウン事業」に対して、既存施設や基盤を最大限活用することで、エコタウンの環境保全効果や地域活性化効果を増大させる方策を検討するとともに、事業運営に資する情報提供や、情報交換の場の設定などの支援を行いました。

イ 使用済小型電子機器等のリサイクルに関する事業

 経済産業省及び環境省は、適正かつ効果的なレアメタルのリサイクルシステムの構築を目指すべく、平成20年度から平成22年度まで「使用済小型家電からのレアメタルの回収及び適正処理に関する研究会」を開催し、全国7地域でモデル事業を行いながら、効率的・効果的な回収方法の検討を行うとともに、回収された使用済小型電子機器に係るレアメタルの含有実態の把握や、使用済小型電子機器のリサイクルに係る有害性の評価及び適正処理等についての検討等を行い、リサイクルシステムのオプションの評価を実施しました。

 この研究会及びモデル事業を通して得られた結果をもとに、平成23年2月9日付けで環境大臣から中央環境審議会に「小型電気電子機器リサイクル制度及び使用済製品の有用金属の再生利用の在り方」について意見を求めており、中央環境審議会に設置された小型電気電子機器リサイクル制度及び使用済製品中の有用金属の再生利用に関する小委員会において審議を重ねました。その結果、平成24年1月31日付けで中央環境審議会から環境大臣に「小型電気電子機器リサイクル制度の在り方について」答申されたところです。また、モデル事業は環境省単独で平成23年度も継続しており、回収量の増加による回収及び処理の合理化・効率化を促進するため、地域を拡大して実施しています。

ウ レアメタルのリサイクルシステム構築に向けた検討 

 レアメタルは次世代自動車やIT製品等の製造に不可欠な素材であり、わが国の産業競争力の要でありながら、資源価格の高騰や中国のレアアース輸出枠の大幅削減等により、安定供給確保の重要性が近年急速に高まっています。こうした背景から、平成21年度に策定された「レアメタル確保戦略」においては海外資源確保、代替材料開発、備蓄と並ぶ4本柱の一つとして、レアメタルリサイクルを推進していくこととされています。レアメタル等のリサイクルシステムの構築に当たっては、使用済製品の回収量の確保や国内資源循環の促進、経済的なリサイクル技術の開発など様々な課題が山積していることから、平成23年11月より産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合において、レアメタル等を多く含む主要製品全般を横断的に対象として、対応策を検討しています。

エ 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築

 廃棄物や再生資源・製品の輸送については、リサイクル対象品目の増加、再生利用率の向上などによって、輸送の大量化・中長距離化が進むことが予想されます。また、大都市圏における廃棄物・リサイクル施設の集中立地や拠点形成により、拠点間の相互連携によるリサイクル等の廃棄物処理に的確に対応した物流システムの整備が必要となってきます。

 平成21年7月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2009-2013)」においても、循環型社会の形成に向けて、引き続き、適正な処理・輸送を確保した効率的な静脈物流システムの構築を推進していく必要があるとされました。

 循環型社会の実現を図るため、広域的なリサイクル施設の立地に対応した静脈物流の拠点となる港湾を「総合静脈物流拠点港リサイクルポート)」(全国22港)に指定し、官民連携の推進、港湾施設の整備など総合的な支援策を講じています。

 平成23年度は境港(鳥取県)における循環資源取扱支援施設の整備を支援しました。

オ 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理

 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理を推進するため、全国段階において、再生品の需要拡大を図るための普及啓発等を行うとともに、都道府県・市町村段階において、関係者の協力体制の確立、処理・減量化計画の策定、排出量を削減するための生分解性プラスチックフィルム等導入技術実証、普及啓発等を行いました。

カ 使用済FRP船の再資源化の推進

 FRP(繊維強化プラスチック)船については、平成17年11月から国土交通省が確立したリサイクル技術を踏まえ、(社)日本舟艇工業会が廃棄物処理法に基づく広域認定制度を活用して「FRP船リサイクルシステム」の段階的な構築及び運用に取り組んでいるため、同システムの普及啓発及び事業評価などによる支援及び協力を実施しました。平成20年度には、全国において同システムの本格運用を開始し、平成23年度は666隻のFRP船をリサイクル処理しました。

キ 廃エアゾール製品等の適正処理

 消費者が使用し、ごみとして廃棄された廃エアゾール製品については、充填物が残留したまま廃棄されることが原因となって、市町村でのごみ収集時の収集車両の火災事故の発生等を招いています。このようなことから、エアゾール製品関連業界は充填物を容易に排出できる装置が装着された製品への転換を進める一方、市町村とエアゾール製品関連業界が協力して、消費者に対し、そうした装置を利用して充填物の除去を行った上でごみとして廃棄するよう周知活動等の取組を行いました。

 また、消費生活用製品安全法施行令を一部改正し、安全対策を施したライター以外は販売できなくなりました。このため、ガスが残存するライターが従前より多量に廃棄される事態を想定し、関係省庁等が連携して、ライター使用の注意喚起及び家庭内で不要となった使い捨てライターを自治体のルールに沿って正しく廃棄すること等を促すリーフレットを作成・配布しました。

ク 標準化の推進

 わが国の標準化機関である日本工業標準調査会(JISC)は平成14年4月に策定した「環境JISの策定促進のアクションプログラム」に基づき、環境JISの整備に取り組んでいます。平成23年度は、前年に実施した調査・検討の結果を踏まえ、環境関連法令等の中での環境JISの位置づけを確認しながら自治体・企業・消費者のグリーン購入における環境JISの活用促進に取り組みました。

ケ 廃棄物・リサイクルガバナンスガイドラインの策定

 排出事業者における廃棄物管理を徹底し、経営的な観点から廃棄物・リサイクルに関するマネジメントを行うための自主的取組を推進するため、産業構造審議会において、平成16年9月に「排出事業者のための廃棄物・リサイクルガバナンスガイドライン」を策定しました。平成17年度は、廃棄物・リサイクルガバナンスガイドラインの普及に向け、各種事業者団体への説明や中小企業内人材の育成支援、セミナー等を通じて企業における廃棄物の適正処理及びリサイクルの推進に取り組みました。さらに、平成20年度には、社会・経済・環境の側面から企業に求められる社会的責任が変化してきたことから、廃棄物・リサイクルガバナンスガイドラインの見直しに向けた調査を実施しました。

コ 品目別・業種別廃棄物処理・リサイクルガイドラインの改定

 品目別・業種別廃棄物処理・リサイクルガイドラインは、事業者による3Rリデュースリユース・リサイクル)に関する自主的取組の促進を図ることを目的として、品目別・業種別に平成2年に策定されました。平成18年度の改定では、容器包装リサイクル法の改正に伴い、紙(紙製容器包装、段ボール製容器包装、飲料用容器包装)、ガラスびん、スチール缶、アルミ缶、プラスチック(ペットボトル、プラスチック製容器包装)について減量化に向けた新たな目標値を盛り込むとともに、3品目、4業種について有用金属(レアメタルを含む。)に関する取組を盛り込みました。

サ バイオマスの利用の加速化

 バイオマスの活用の推進に関する施策についての基本的な方針、国が達成すべき目標等を定めた「バイオマス活用推進基本計画」(平成22年12月閣議決定)に基づき、以下の取組を実施しました。

 なお、平成24年2月には、バイオマス利用技術の到達レベルの横断的な評価と事業化に向けた戦略の検討を行うため、バイオマス関係7府省合同の「バイオマス事業化戦略検討チーム」を設置しました。

 このほか、水産系副産物である貝殻の再資源化により資源の循環的利用を推進しました。

 また、農業集落排水事業においては、処理過程で発生する汚泥について、コンポスト化や建設資材利用等によるリサイクルを推進するとともに、地域の実情に応じて余剰汚泥の減容化を進めました。

シ 使用済製品等のリユース促進事業

 循環型社会基本法においてリサイクルよりも上位に位置付けられているリユースについて様々な取組の活性化を図るため、平成22年度に引き続き「使用済製品等のリユース促進事業研究会」を開催し、市町村とリユース業者との連携によるリユースモデル事業の実証、リユース業者や大口排出事業者とのリユース事例等の調査を行い、リユース業者の優良化の検討等を通じて、今後のリユース推進に向けた課題や支援策等を検討しました。