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保全活用に関する文献検索

文献名
なわばりと共有思想-1890年代日本の内水面における水産資源の変動と環境問題-
出版年
1997
出版社
雑誌のため省略
掲載雑誌
環境社会学研究
巻/号/ページ
記載無し / 3号 / 86-99ページ
著者名
秋道 智彌
Tomoya Akimichi
目次
雑誌のため省略
キーワード
なわばり、内水面漁業、近代化、環境観、河川と山・海
要約
 日本の山野河海は、明治以降の近代化のなかでさまざまな変化をとげてきた。なかでも、発展のための環境利用はかならずしも生活に良い影響をもたらさなかったことが指摘され、開発の功罪が問われている。発展か保護かという二項対立的な発想による問題解決の方法をいかにして超えることができるだろうか。川が山と海をむすぶ生態学的な媒介となっている点に注目して、なわばりという観点から川の問題をとりあげ、近代化の意味を考えた。 近代化が開始された時期に、環境がどのようにみなされていたかを明らかにするため、資料として明治25年(1892)年に農商務省により実施された『水産事項特別調査』の結果をとりあげ、そのなかの河川湖池における漁獲物の増減にかんする理由の記述内容を検討した。とくにサケとアユのような河川を遡上する魚類に注目した。漁獲の減少した要因には、鉱山開発や森林伐採、農業用の肥料である石灰の河川への流入、漁業者自体の増加などが大きな要因とされている。増加ないし減少ではなく、漁獲が変動するわけについては、雨量、温度、出水の有無などの自然的な要因が関与するとみなされている。 漁具・漁法の制限と養殖をもとにした資源の管理と増産をもくろむ発想は、現代にも通じる資源観といえる。しかし、漁獲の減少を進歩に伴う害と位置づけた点は負の意味で注目しなければならない。すなわち、川を犠牲にし山と海をむすぶ生態系の役割を軽視する産業偏重の近代化がすすめられたことを意味するからである。

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