環境省
VOLUME.60
2017年8・9月号

challenge! わたしたちのエコ宣言

2030年までに、温室効果ガス26%削減(2013年度比)という目標を掲げた日本。目標の実現には、企業やNPOなど、あらゆる主体の協力が欠かせません。

ここでは、さまざまな企業・NPO・学校等が描く未来と、それを実現するための取り組みを紹介します。

FROM:COMPANY <富士通株式会社> 私たちは、2050年までに、自らの
「CO2ゼロエミッション」を目指します。/株式会社富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所 デバイスイノベーションプロジェクト 主管研究員 廣瀬達哉さん

FROM:COMPANY <富士通株式会社> 私たちは、2050年までに、自らの
「CO2ゼロエミッション」を目指します。/株式会社富士通研究所 デバイス&マテリアル研究所 デバイスイノベーションプロジェクト 主管研究員 廣瀬達哉さん

富士通では、従来の約3分の1の時間で充電できる世界最小・最高効率のACアダプターを開発した。
家庭用コンセントから取り込んだ交流の電気を直流に変換する際のエネルギー損失を抑制。
この商品が広く普及することで、CO2排出量を大幅に削減することが期待されている。

昨年10月に瓢箪を収穫。持ちきれないほどの実がなった

▲ 通常のアダプターより小さく、2.5cm角のサイコロのような外観をしている

急速充電実現のカギは「窒化ガリウム」

 小型化・高効率化を実現した要因は、電力を小分けにして高速にスイッチングする高周波電力変換技術にある。開発にあたった廣瀬達哉さんは「ACアダプター内部では電流を交流から直流に変換するために、電流を制御する半導体部品であるトランジスタが電子回路のスイッチをオン・オフに切り替えたり、トランスと呼ぶ部品で変圧したりしています。このスピードが速いほどトランスなどの磁気部品を小型化できますが、素材にシリコンを使った従来のトランジスタでは限界がありました」と語る。
 そこで、素材に窒化ガリウムを使うことにした。同社ではすでに、従来のトランジスタより電子を流れやすくした独自構造のトランジスタ「HEMT(ヘムト)」を開発していた。このHEMTと窒化ガリウムを組み合わせたトランジスタを組み込むことで、高い周波数で電子が素早く動き、小型でも出力を高めることに成功した。

世界最小・最高効率のACアダプター

モバイル機器の急速な普及にとともに、充電時の消費電力削減が課題に。一般的なスマートフォンの充電には3時間ほどかかるが、このアダプターなら約1時間で完了し、更に無駄な電力が削減できる

▲ モバイル機器の急速な普及にとともに、充電時の消費電力削減が課題に。一般的なスマートフォンの充電には3時間ほどかかるが、このアダプターなら約1時間で完了し、更に無駄な電力が削減できる

世界のCO2削減に貢献したい

 富士通グループでは、2050年までの中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を策定。同ビジョンは、ICTを活用し自社の「脱炭素化」にいち早く取り組むとともに、ビジネスを通して気候変動の「緩和」と「適応」に貢献することを狙いとして、「①自らのCO2ゼロエミッションの実現」「②脱炭素社会への貢献」「③気候変動への適応に貢献」の3つの軸で構成されている。このACアダプターの技術は、気候変動の「緩和」に貢献する。
「一般的なACアダプターでは、交流から直流への変換時に約30%の電力が熱エネルギーの形で失われていますが、このACアダプターでは13%まで低減することができます。今後もさらに研究を進め、世界のCO2削減に貢献していきたいですね」

2050年までの中長期環境ビジョン

富士通グループでは、このビジョンのもと、ICT(情報通信技術)を活用して「脱炭素社会を牽引する」ことを目指し、技術革新を創出していく

▲ 富士通グループでは、このビジョンのもと、ICT(情報通信技術)を活用して「脱炭素社会を牽引する」ことを目指し、技術革新を創出していく

プチeco宣言 ― ゲリラ豪雨による氾濫の兆候を未然に検知

マンホール蓋の裏側に取り付けて下水道の水位を測るセンサーを商品化。マンホール蓋の昼夜の温度差で生じる熱エネルギーを電力へ変換する装置を活用することで、バッテリ交換サイクルを長期化できる。局所的な大雨など、気候変動への「適応」に貢献するソリューションだ。

ゲリラ豪雨による氾濫の兆候を未然に検知

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