改正菜摘氏画像1
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持続可能な
ファッションECを
目指して
「プラットフォーム」
にできる
貢献のかたち

ファッションEC「ZOZOTOWN」
を運営する株式会社ZOZOは、
2024年にファッション業界ではじめて
環境省のエコ・ファースト制度※1
の認定を受けるなど、
自社や業界のサステナビリティ課題に
積極的に取り組んでいる企業です。
同社のサステナビリティ
推進ブロック・ブロック長の
改正菜摘さんに、
企業文化と結びついた環境への
貢献についてお聞きしました。

※1業界を牽引して
環境保全に取り組む企業を環境大臣が認定する制度。

ファッション業界のサステナブル課題を
ユーザーと一緒に考えていきたい

大量生産・大量消費・大量廃棄や、製造から販売までにさまざまな工程が必要なことによる環境負荷が課題とされるファッション業界。ZOZOは2021年に「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」というステートメントを発表し、電力の再生可能エネルギーへの切り替えや情報発信など、サステナビリティに関する取り組みを積極的に行っています。

「ZOZOは創業時より『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』という企業理念を掲げています。サステナビリティや環境問題への世界的な関心の高まりを受けて、2020年に専門部署として『サステナビリティ推進ブロック』を立ち上げました。

ZOZOは、出店するブランド企業とユーザーであるお客様をつなぐ『プラットフォーマー』としての役割を担っています。サステナビリティに関しても自社のみで進める取り組みだけでなく、お客様の生活やお買い物がサステナビリティにつながるようサポートをしたり、情報を発信したりしていくことも重要だと考えています。

たとえば、さまざまな地域に住む幅広い年代のお客様に利用いただいている『ZOZOTOWN』の強みを活かし、2022年には同サイト内で、サステナブルなブランドの取り組みや環境・人に配慮した商品などの情報を発信する常設コンテンツ『elove by ZOZO(エラブバイゾゾ)』を開始しました。お客様は買い物を楽しみながら気軽にサステナビリティについて知ることができます」

elove by ZOZOではサステナブルな商品や著名人のインタビュー記事などを展開している。(写真提供: ZOZO)

elove by ZOZOではサステナブルな商品や著名人のインタビュー記事などを展開している。(写真提供: ZOZO)

ファッションECの課題解決が
サステナビリティへ自然と結びつく

改正さんが所属するサステナビリティ推進ブロックは、社内の他部署と協力してさまざまなサステナビリティの課題に取り組んでいるそうです。

「お客様の利便性向上とサステナビリティを両立させるためにどんなことができるか、物流に関することならフルフィルメント本部、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に関することなら人自本部※2など、それぞれの部署とともに日々検討しています。たとえば、フルフィルメント本部からは、置き配の場所を指定でき、再配達を削減できる『あんしん置き配』のサービスや、一定期間に同じお客様から受けた複数の注文を自動的に一箱にまとめて配達する機能が生まれています。これらはお客様の利便性を高めるだけでなく、環境負荷や運輸業界の人手不足を軽減することにもつながっています。こうした取り組みをよりお客様に知って活用いただけるよう、各部署連携して発信していきたいと考えています」

※2 ZOZOでは「人事」のことを、「人事(ひとごと)」ではなく、スタッフ一人ひとりが他人の事も自分の事として考えるという意味を込めて、「人自」と表記している。
2023年9月から商品の受け取り方法の初期設定を「あんしん置き配」に変更。現在は置き配可能な注文のうち約80%※3が置き配で配送されている。(写真提供:ZOZO) ※3 2025年5月時点

2023年9月から商品の受け取り方法の初期設定を「あんしん置き配」に変更。現在は置き配可能な注文のうち約80%※3が置き配で配送されている。(写真提供:ZOZO)
※3 2025年5月時点

ZOZOは2012年からブランド古着の買い取り・販売サービス「ZOZOUSED(ゾゾユーズド)」を運営しており、新品の販売だけでなく衣類のリユースを進めてきた企業でもあります。

「ZOZOUSEDのオープン当時はまだサステナビリティに対する社会の関心が高くはありませんでした。しかし現在ではサステナビリティの側面も重視されており、2024年度には約1,182万点のアイテムを回収し、新たにアイテムを生産した場合と比較すると約2万2,230トンの二酸化炭素(CO2)削減効果※4をあげています。

ZOZOの社内でも元々ファッションが好きで、『こだわりの一着を大切に着続けたい』といった価値観を持ったスタッフがたくさんいます。ものを大切にしたい姿勢が、自然とサステナビリティへの興味にも結びついています」

※4 スギの木の吸収量に換算すると約158万本。環境省が推奨する3R原単位の算出方法に基づき、新品の生産・流通・廃棄時に排出される二酸化炭素量を推計。
社内に配置された洋服回収ボックス。不要になった衣類をリユースし、開発途上国にワクチンを寄付するアクションも行われている。

社内に配置された洋服回収ボックス。不要になった衣類をリユースし、開発途上国にワクチンを寄付するアクションも行われている。

ブランドとユーザーにとっての便利さと
環境保全を両立する「ZOZOらしい」仕組み

ブランドとユーザーをつなぐZOZOならではのサービスに、2022年に始まった生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO(メイドバイゾゾ)」があります。ZOZOTOWN上で注文が入ってから生産を始め、最短10日ほどで配送できる仕組みです。

「ZOZOにはファッション業界出身の人材が集まっており、多くのスタッフが生産過程での環境負荷の課題や、ファッションアイテムの在庫ロスの問題をどうにか解決したいという思いを持っていました。そこで受注生産の支援に踏み込んで『Made by ZOZO』を開始しました。

ファッションアイテムの生産現場ではデジタル化が進んでいない工場などもあり、仕組みを整えるのが難しいという課題があります。そこで、テクノロジーに強みを持つZOZOがシステム化して受注生産の機会を提供したことに利点を感じていただき、ナノ・ユニバース様やシップス様などのブランドをはじめ活用が広がっています。お客様にもブランドにも環境にも三方よしの取り組みです」

「Made by ZOZO」の商品注文から発送までの流れ。受注生産のためサイズの細かい設定が可能で、幅広い顧客の要望に応えている。

「Made by ZOZO」の商品注文から発送までの流れ。受注生産のためサイズの細かい設定が可能で、幅広い顧客の要望に応えている。

Made by ZOZOは在庫ロスの課題の解消に貢献するのはもちろん、ブランドとユーザーそれぞれにとってもメリットの大きい仕組みです。

「ブランドは在庫リスクゼロでアイテムを展開できるので、まだ売れるかどうか分からない商品でも販売しやすくなります。また店舗ではどうしても売れ筋のカラーやS・M・Lの3サイズだけを陳列することになりがちですが、受注生産なら丈の長さやカラーのバリエーション、XSやXXLなどのマルチサイズを展開できます。お客様には、自分の身体に合った、着たいデザインの洋服を購入でき、長く使えることにメリットを感じていただいています。また、2024年8月からはMade by ZOZOの仕組みを用いて、ファッションブランドがZOZOTOWN上でインクルーシブウェア※5を受注販売できるサービス「キヤスク with ZOZO」を開始するなど、活用の幅が広がっています。

ZOZOは自社のフィロソフィーを体現する言葉『ソウゾウのナナメウエ』『日々進歩』『愛』という3つを『ZOZOらしさ』として掲げています。ブランドとユーザーの双方にとって便利で、かつ今まで誰も取り組んでこなかった『ソウゾウのナナメウエ』のサービスであるMade by ZOZOはとても『ZOZOらしい』取り組みだと思います」

※5 障がいの有無や体型の違い、性別などに関係なく、誰もが便利に使える「インクルーシブデザイン」の考え方を取り入れた服。
本社エントランスにはオブジェを展示している。(写真提供:ZOZO)

本社エントランスにはオブジェを展示している。(写真提供:ZOZO)

オフィス内のいろいろな場所にアート作品が展示され、社員の創造性を刺激している。

オフィス内のいろいろな場所にアート作品が展示され、社員の創造性を刺激している。

さまざまなステークホルダーの「ハブ」として
取り組みやすいかたちをつくる役割

ブランド・メーカーをはじめとするさまざまなステークホルダーとのつながりが深いことも、ZOZOならではの活動を展開する上での強みだといいます。

「FREAK'S STOREを運営しているデイトナ・インターナショナル様と協業して、2024年から、地域の課題や環境問題に向き合う 『コネクトプロジェクト』が始まりました。その一環として、今年の5月3日みどりの日にZOZO本社前の広場で『Green Connect Day』というサステナビリティイベントを行いました。洋服のフリーマッケットや、お客様がお持ちのアイテムにシルクスクリーンのプリントを行ったほか、ZOZOと同じ千葉県の企業である京成電鉄様にも参加いただき、廃棄予定の座席シートをアップサイクルして、千葉大学の学生やFREAK'S STOREが新たなアイテムに仕立て直しました。地元の方や鉄道ファンなど、多くの方にご来場いただきました」

Green Connect Day当日の様子。いつも着ている洋服がシルクスクリーンで新鮮な印象に変化する。(写真提供:ZOZO)

Green Connect Day当日の様子。いつも着ている洋服がシルクスクリーンで新鮮な印象に変化する。(写真提供:ZOZO)

「ブランドにも元々それぞれのフィロソフィーがあるので、サステナビリティやSDGsを押し出すと、場合によってはお客様にとって唐突に感じられてしまうこともあります。けれどもそこでZOZOを交えた何社かで協業することで、お客様側も楽しみながら発信を受け取ってもらえるようになる。実際に、この取り組みを見た他のブランドからも『ZOZOと一緒にやればよかったんだ』といった感想をいただいています。ハブになっていろいろな企業をつないだり、協業したりしていくのもZOZOならではの役割ですね」

最後に、ZOZOはエコジン(エコロジー+人)としてどんな役割を担いたいと考えているのか、改正さんに聞いてみました。

「Made by ZOZOやZOZOUSEDといったサービスが、お客様にとって環境にやさしいお買い物につながること、またブランドとの協業やelove by ZOZOでの発信を通じて、お客様にサステナビリティへの理解を深め、親しみを持っていただくことを目指しています。今後の取り組みとしては、ZOZOTOWNの商品説明において『これはフェアトレードのアイテムです』『リサイクル素材が何パーセント使われています』といったサステナビリティに関する情報を、ブランドと協力しながら分かりやすく表示できるよう検討していきたいと考えています。

こういったサービスの提供を通じて『お客様がZOZOのサービスを利用することで、自然とエコな取り組みにつながっている状態』をつくることが、プラットフォーマーとしての私たちの重要な役割であり、同時に『ZOZOらしさ』を体現することにもつながると思っています」

改正菜摘氏画像3
改正菜摘(かいしょう なつみ)

株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン本部 コミュニケーションデザイン部 サステナビリティ推進ブロック ブロック長。大学で環境問題を学び、PR会社を経て2021年に入社。同社のサステナビリティにおける推進のみならず、ハブとなって多くの企業やブランドをつなぐ活動なども積極的に行う。

【企業情報】

株式会社ZOZO
本社:千葉市稲毛区緑町1-15-16
従業員:1,900名 ※グループ全体(2025年6月末時点)
設立 :1998年5月21日

写真/榊水麗
原稿/甲斐荘秀生

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