核実験が行われた1950~1963年には、これに起因する放射性降下物(フォールアウト)が地球全域に降り注ぎました。これによってトリチウムによる年間の平均個人線量が増大し、1962年にピークの7.2μSvに達しました。その後は半減期に伴ってトリチウム量が減少するため、個人線量への寄与は少なくなり、1999年にはピーク時の700分の1程度、0.01μSvとなっています。
核実験ではトリチウムのほか、セシウムやプルトニウム、ストロンチウムも環境中に放出されました。
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告によれば、トリチウムの公衆被ばくの影響に関して、これまでの疫学研究からは、トリチウム特有のリスクは確認されていません。また、1960年代前半の核実験が盛んな時期以降においても小児白血病の増加が認められていないことより、トリチウムの健康リスクが過小評価されている可能性は低いとされています。
(関連ページ:上巻P78「大気圏核実験による放射性降下物の影響」)
本資料への収録日:2021年3月31日