放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(令和3年度版、 HTML形式)

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第6章 事故の状況
6.3 廃炉に向けた取組と進捗

タンクに保管されている水の処理方法

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2021年4月13日、政府は、トリチウム以外の核種について「環境に放出する場合の規制基準」を満たした水を「ALPS処理水」と定義し、この処理水について海洋放出により処分する基本方針を公表しました。同基本方針では、「ALPS処理水」は、トリチウムの濃度を1,500Bq/L未満とするために海水で100倍以上に希釈した上で海洋に放出することとしています。この1,500Bq/Lという値は、稼働中の原子力発電所等に対しても適用されているトリチウムの規制基準(告示濃度限度)の40分の1です。また、世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインにおける、飲料水に含まれるトリチウムの指標(ガイダンスレベル)の7分の1程度です。なお、ALPS処理水を希釈することにより、トリチウム以外の核種も「環境に放出する場合の規制基準」(告示濃度比総和)の100分の1未満まで希釈されることとなります。(関連ページ:下巻P15「放射性物質を環境へ放出する場合の規制基準」
事故後、多核種除去設備(ALPS)等で処理された水は、東京電力福島第一原子力発電所内に設置されたタンクに貯蔵されています。しかし、2022年1月時点で、タンクに保管されている水の約7割には、トリチウム以外の放射性物質(核種)も「環境に放出する場合の規制基準」を超える濃度で含まれています。この水はすなわち「ALPS処理水」の定義を満たしていません。その理由としては、ALPSを運用し始めた2013年頃は、①ALPSの浄化性能が劣っていたこと、②大量の汚染水が発生していたことから、放射線リスクをできるだけ早く低減させるため「敷地内で保管する場合の規制基準」をまず満たすことを重視して作業を進めたことなどが挙げられます。
そこで、基本方針に沿って海洋放出する際には、「敷地内で保管する場合の規制基準」よりもさらに厳しい「環境に放出する場合の規制基準」を満たすように、再度ALPS又は逆浸透膜装置を使った浄化処理(二次処理)が行われます。2020年9月より東京電力ホールディングス株式会社が実施した二次処理の性能試験において、トリチウム以外の核種については「環境に放出する場合の規制基準」未満まで浄化できることが確認されています。

本資料への収録日:2022年3月31日

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